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2014年10月2日木曜日

書評  『「夢の超特急」、走る!-新幹線を作った男たち-』(碇 義朗、文春文庫、2007 単行本初版 1993)-新幹線開発という巨大プロジェクトの全体像を人物中心に描いた傑作ノンフィクション



2014年10月1日で、東海道新幹線開業から50年となるのを前に、すでに買っていながら読んでなかった本を読んでみた。

 『「夢の超特急」、走る!-新幹線を作った男たち-』(碇 義朗、文春文庫、2007)がその本だ。単行本初版 1993年で、そのときは本屋の店頭で立ち読みして大いに関心をそそられたが購入しないまま見送ってしまった。その後、だいぶたって忘れていた頃に文庫化された際には迷わず購入しておいたものの積ん読で7年。ようやくこの機会を利用して読み終えた次第だ。

新幹線という巨大プロジェクトの全体像を人物中心に描いた傑作ノンフィクションともいうべき作品で、じつに読みでがある。日本に鉄道技術が導入されてから当時は100年、世界最速の新幹線をつくりあげた技術陣の熱意と執念の熱い物語である。

戦前の満洲で広軌による「特急あじあ号」を走らせたという満鉄の経験、敗戦後に海軍の航空技術者を大量に雇用したことで飛躍的に向上した高速鉄道の技術湘南電車ではじまった電化技術世銀融資を導入した政治的な理由岐阜羽島駅誕生にまつわる大物政治家伝説の真偽など、技術面にとどまらず金融やその他もろもろまでプロジェクト全体を捉えた力作であった。

東海道新幹線開発という巨大プロジェクトはいかにして実現にこぎつけたか。主人公は「新幹線の父」と呼ばれた71歳で国鉄総裁に就任した十河信二と、彼の絶大な信頼を受けた技術トップの島秀雄である。当時はまだ国鉄といういう半官半民の巨大官僚組織であり、国鉄と政治との関係、敗戦後日本と復興などの時代背景をもととに語られる物語だ。

新幹線開発においては、大東亜戦争という中断があったものの、技術という観点からみると戦前と戦後を一貫して継続していることがわかる。新幹線開発当時すでに100年近い鉄道技術の蓄積があったのであり、しかも満洲での広軌鉄道の運営という経験にはきわめて大きなものがあったのだ。

戦前の満洲の「遺産」といえば、広軌の高速鉄道を実現しなくてはならないという強い信念と行動力をあわせもった十河真二の存在はきわめて大きいが、新幹線は満鉄の「特急あじあ号」そのものではない。

明治維新後、英国の技術によって鉄道が導入された日本は「狭軌」で出発したが、輸送量増大とスピード化実現のため国際標準の「広軌」化を実現しようという機会は戦前にもあった。だがまことにもって残念なことに、政治の思惑によって広軌化は葬り去られていたのだ。線路の広軌化よりも、票につながりやすい新線敷設のほうが地元への利益誘導の観点から優先されたためである。

だからこそ、広軌の高速鉄道、しかも広軌で電化の高速鉄道実現は、新幹線プロジェクトの推進者たちとっては、どうしても実現しなくてはならない悲願であったのだ。そのための組織内外における苦闘は筆舌に尽くせないものであったようだ。この点もこのノンフィクションには詳しく書き込まれている。

在来線とはまったくの別軌道で、貨物列車も走らせない高速鉄道のみの広軌で電化された新路線を敷設することが可能となったことが、その後の高密度のダイヤでありながら無事故記録を更新しつづける原動力となったことは怪我の功名というべきだろうか。結果として新幹線にとっては幸いなことであった。鉄道先進国のフランスでもドイツでも、高速鉄道と在来線は同じ軌道を共有しているのである。

しかも電気機関車が客車を牽引する欧州型の特急ではない、新幹線という自走型の高速列車を実現させたことが、日本を鉄道技術におけるトップランナーとしたのである。新幹線開業後のフランスとドイツ、とくに TGV に代表されるフランスのすさまじいまでの対抗意識についてはここで指摘するまでもあるまい。

「性能優先の検知から最先端技術を導入しようとする元飛行機屋と、絶対的な安全追求の立場から手堅い経験工学を重視する鉄道屋と、それぞれの良さをうまく取り混ぜて東海道新幹線をまとめ上げた島秀雄国鉄技師長の柔軟な思考と手腕」(文庫版のための「あとがき」から)

海軍が開発してきた最先端の航空技術とインクリメンタル(累進的)な経験技術を特色とする鉄道技術のハイブリッドが新幹線なのであった。技術開発の観点からも、じつに内容豊富で読ませる内容の本なのである。

買ってすぐ読んでおけばよかったという思いとともに、単行本出版からすでに20年以上たっているのに、まったく古さを感じさせない内容であるのは、当時はまだ存命中であった関係者への綿密な取材をもとにしたノンフィクション作品だからであろう。なによりも最後まで読み切らせる著者の筆力がすごい。

東海道新幹線という巨大プロジェクトについて丸ごと描ききった本書は、ぜひ多くの人に勧めたい読み応えのある好著である。






目 次
第1章 黎明
 走路無限
 海外で開かれた目
 SLよ、さらば
 電化の明と暗
 十河総裁の登場
 広軌新鮮計画の胎動
 東海道線増強調査会
 空気を変えた講演会
 戦前の「弾丸列車」計画
第2章 大きな賭け
 新線調査室
 鉄道か道路か
 高性能電車時代の幕あけ
 東京-大阪を日帰りで
 新幹線への序曲、「こだま」
第3章 零戦から新幹線へ
 旧軍技術者千人を採用
 零戦の空中分解と鉄道の脱線
 動き始めた研究所
 鉄道後進国日本
 世界銀行借款に成功
第4章 立ちはだかる難問
 サムライ「新幹線総局」に集う
 難航する用地買収
 利権の構造
 駅をめぐる動き
第5章 高速への挑戦
 トンネル・橋・ふん尿タンク
 自説を曲げない技術者たち
 天地の難問
 YS11と新幹線
 モデル線での初体験
 黄害と雪害
第6章 「夢の超特急」誕生
 設計者と研究者
 噴出した予算不足
 それぞれの退陣
 最後の難関
 開業へ
あとがき
文庫版のためのあとがき
主要参考文献


著者プロフィール

碇 義朗(いかり・よしろう)
1925年鹿児島県生まれ。東京都立航空工業学校卒。陸軍航空技術研究所を経て、戦後、横浜工業専門学校(現・横浜国立大学)卒。航空、自動車、鉄道など、メカニズムと人間のかかわりをテーマに数多くのノンフィクションを発表してきた。航空ジャーナリスト協会会員、横浜ペンクラブ会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。




<ブログ内関連記事>

書評 『ペルシャ湾の軍艦旗-海上自衛隊掃海部隊の記録-』(碇 義朗、光人社NF文庫、2015)-「国際貢献」の第一歩は湾岸戦争終了後の1991年に始まった ・・本書の著者によるもう一冊のノンフィクション


■新幹線と鉄道関連

祝 新幹線開通から50年!-わが少年時代の愛読書 『スピード物語-夢をひらく技術-(ちくま少年図書館7)』(石山光秋、筑摩書房、1970)を紹介

書評 『「鉄学」概論-車窓から眺める日本近現代史-』(原 武史、新潮文庫、2011)-「高度成長期」の 1960年代前後に大きな断絶が生じた

書評 『有法子(ユーファーズ)-十河信二自伝-』(十河信二、ウェッジ文庫、2010 単行本初版 1959)-「新幹線の父」と呼ばれる前の満洲時代を中心とした貴重な証言
・・ただし国鉄総裁時代の話は含まれていない


日本近代化と日本のものづくり技術

鎮魂!戦艦大和- 65年前のきょう4月7日。前野孝則の 『戦艦大和の遺産』 と 『戦艦大和誕生』 を読む
・・技術の観点からみた戦艦大和健三プロジェクトとその戦後への「遺産」

書評 『ものつくり敗戦-「匠の呪縛」が日本を衰退させる-』(木村英紀、日経プレミアシリーズ、2009)-これからの日本のものつくりには 「理論・システム・ソフトウェアの三点セット」 が必要だ!

書評 『原発事故はなぜくりかえすのか』(高木仁三郎、岩波新書、2000)-「市民科学者」の最後のメッセージ。悪夢が現実となったいま本書を読む意味は大きい
・・自前の技術ではないあ「輸入技術」であった原発の問題


日本近代化と近代の終焉

書評 『高度成長-日本を変えた6000日-』(吉川洋、中公文庫、2012 初版単行本 1997)-1960年代の「高度成長」を境に日本は根底から変化した
・・東海道新幹線と太平洋ベルト地帯の工業化は「高度成長」のシンボルであった

書評 『未完の「国鉄改革」』(葛西敬之、東洋経済新報社、2001)-JALが会社更生法に基づく法的整理対象となり、改革への「最後の一歩」を踏み出したいまこそ読むべき本

書評 『梅棹忠夫の「人類の未来」-暗黒の彼方の光明-』(梅棹忠夫、小長谷有紀=編、勉誠出版、2012)-ETV特集を見た方も見逃した方もぜひ
・・1970年の大阪万博を推進した梅棹忠夫がついに書けなかった『人類の未来』という本

書評 『近代の呪い』(渡辺京二、平凡社新書、2013)-「近代」をそれがもたらしたコスト(代償)とベネフィット(便益)の両面から考える

(2015年10月8日、2017年5月14日 情報追加)




(2012年7月3日発売の拙著です)








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