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2014年4月12日土曜日

『エンデの遺言-「根源」からお金を問うこと-』(河邑厚徳+グループ現代、NHK出版、2000)で、忘れられた経済思想家ゲゼルの思想と実践を知る-資本主義のオルタナティブ(4)


2008年のリーマンショックを機会に経済と金融についてあらためて考え直すことを断続的に行っているが、この本もその一環として2010年に購入したものだ。もともとNHK・BS1の番組として製作され、1999年5月に放送さfれたものだ。残念ながら番組を見ていない。

2000年の初版が、10年後の2010年にはなんと 19刷(!)になっているから、そうとう読まれたのであろう。その後2011年には文庫化されている。文庫化されてから買えば良かったと思ったが後の祭りであった。

今回読んでみようと思ったのは、先日のことだが、たまたまリアル書店で 『ミヒャエル・エンデが教えてくれたこと-時間・お金・ファンタジー-』(池内 紀・子安美知子・小林エリカほか、新潮社、2013)という本を見つけてさっそく購入し、それ以来ついつい読みふけってしまったからだ。

エンデと「時間」の関係については、「時間どろぼうと ぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた不思議な女の子の物語」という長い副題をもった『モモ』を読んで以来、ミヒャエル・エンデと「時間」はわかちがたい連想としてアタマのなかにある。いまからもう30年くらい前の話だ。

エンデと「おカネ」の関係については、ほとんど考えてこなかったのは正直なところだ。番組も見てなかったし、この本の存在そのものも出版から10年間も知らなかったからだ。1997年のアジア金融危機とIMFショックは「対岸の火事」(?)として詳しくウォッチしていたが、その後1998年の日本の金融危機においては自分自身が実質的な「当事者」としてその渦中にいたので、エンデどころではなかったこともあるだろう。

ようやく気がついたのは先に書いたように、2008年のリーマンショックで再び金融問題に目覚めてからだ。

エンデが亡くなったのは1995年なので、2008年のリーマンショックも、1997年のアジア金融危機も知らずに逝ったわけだが、本書のタイトルにあるようにNHKのの教養番組のディレクターである著者たちが、プレ取材としてテープに録音したエンデの語りが文字通り日本人にむけて遺した『エンデの遺言』なったらしい。その予言的な内容には、2014年のいま読んでも驚くばかりだ。

著者の河邑厚徳氏が中心になって製作したNHKスペシャル『チベット死者の書-仏典に秘められた死と転生-』(1993年)は、番組も見たし単行本も読んでいる。

本書には『チベット死者の書』にかんする言及はなったくないが、わたしは『エンデの遺言』とは通底するものがあると感じている。




エンデの「遺言」-マネー本来の「交換機能」を取り戻せ!

ドイツ以外ではエンデの作品がもっとも読まれているのは日本だという。夫人がエンデの日本語訳者であったこともあり、エンデ自身も日本には特別の思い入れがあったらしい。

エンデは、「個人の価値観から世界像まで、経済活動と結びつかないものはない。問題の根源はおカネにある」と言う。こういうテーマ設定は文学者や哲学者ならではのものである。エンデの場合は詩人としての直観というべきだろうか。

マネーの本質についての探求は、経済学者やビジネス関係が考えるのを避けてきた「禁断のテーマ」である。マネーを所与の前提として、それ以上突っ込んで深く考えない方が、実務家としては精神衛生に良いとされているからだ。ある種の技術主義であり操作主義という処世術である。

エンデの思考は一言で要約すれば、貨幣のもつ「交換機能」を阻害しているのが、貨幣を「商品化」するという発想である。マネー支配からどうやって現代人を解放すべきかという思索である。

「金本位制」のもとにおいては金(ゴールド)という裏付けがあるので無制限に貨幣を発行することはできなかったが、1971年のニクソンショック以降、紙幣としての貨幣は発行主体の信用のみを裏付けにするものとなり、商品化されたカネはマネーゲームとして、それ自体が投機の対象となる。その行き着くところは、実体経済から完全に乖離(かいり)したマネー経済の暴走とクラッシュの連続である。

マネーの無限増殖の根源に「利子」の存在があることは、「複利計算」の意味を理解していればすぐにわかることだ。「利子」が「複利」となることで利払いが指数関数的に増大することは電卓をたたいてみればすぐにわかるはずだ。

「利子」が「時間」と密接な関係にあることは、わたし自身は大学学部の卒論で考察していたが、本書で取り上げられている「忘れられた経済思想家シルビオ・ゲゼル」の生涯と思想、そしてゲゼルの経済思想を実践した第一次大戦後のドイツ語圏欧州の事例を知り、あらためて本質論を考察することの必要性をつよく感じている。


■エンデに大きな影響を与えた「忘れられた経済思想家ゲゼル」

本書によれば、エンデはドイツの経済学者シルビオ・ゲゼル(Silvio Gesell)の「自由貨幣の理論」と、ドイツの思想家ルドルフ・シュタイナー(Rudolf Steiner)の「老化するおカネ」の2つの経済思想に大きな影響を受けているという。

エンデがシュタイナーの熱心な読者であったことはよく知られていることだが、ゲゼルという経済思想家については、いまのいままでまったく知らなかった。

本書によれば、なんとケインズが『一般理論』のなかで、「未来の人々はマルクスよりもゲゼルの精神から多くを学ぶだろう」と評しているという(注)。ゲゼルについて知ることができたのは、本書の最大の収穫である。

シルビオ・ゲゼル(1862~1930)とルドルフ・シュタイナー(1861~1925)は一歳違いの同時代人で、両者のあいだには交流もあったらしいことが本書で指摘されている。

両者に共通するのは、第一次大戦敗戦後のドイツ語圏において、社会変革の担い手として実践活動に関与したことだが、なによりも基本的な発想に共通性がある。世の中に存在する物質はすべて劣化する運命にあるということだろう。食べ物はもちろん、それ以外のモノはすべて。もちろんマネーも含めて!

モノが劣化するのにマネーが劣化しないわけないだろうという発想は、まさに逆転の発想である。言われなければなかなか気がつかない発想である。

時間の経過によって劣化しないから、多くの人が金(ゴールド)にあこがれるわけだが、マネーもまた劣化しないと思い込んでいるからマネーに執着する気持ちが生まれる。もしマネーが劣化し、価値が減少していくのであれば、退蔵しておく意味はないということにある。腐ってしまう前に使ってしまわなくてはならない気持ちになるというわけだ。

(経済思想家ゲゼルと「スタンプ貨幣」 『エンデの遺言』第3章の扉)

ゲゼルの「自由貨幣の理論」から、「時間の経過とともに価値を減少させていく貨幣」というアイデアが生まれたらしい。マネーは劣化するのだから、人為的に減価させる仕組みを導入しなくてはならないという発想である。

その具体的なアイデアの一つが「スタンプ貨幣」であった(上掲の写真)。1週間ごとに一定額のスタンプを貼らないと紙幣が使用できないという条件を設定した紙幣(あるいは証書)のことだ。

「スタンプ貨幣」を入手した人は、早く手放してしまわなければスタンプ代支払いの分だけ価値が減少してしまうから、持っているだけで損してしまう。そういう気持ちを抱くことになるから、マネーの退蔵が防止され、マネーの流通が増えることになる。全体でみればマネーの回転数が高まるので経済が活性化され、失業者も減少することになるという発想だ。

これは「マイナス金利」という発想である。「時間」という概念を前提にしている点は「利子」の発想と同じであるが、時間の経過ととにマイナスの利子が課せられるという発想は、マネー退蔵に対する保有税という形のペナルティーと考えることもできる。仕組みとしてはひじょうに面白い。

じっさいに1929年の大恐慌直後のオーストリアのある町で導入され、経済が活性化され失業者が劇的に減少したという。「シュヴァーネンキルヘンの奇跡」である。だが成功したがゆえに、通貨発行権を究極の国家主権と考える国家からは危険視され、最終的にはつぶされてしまう

本書のなかでもある経済学者が述べているが、もしこの成功した「実験」が欧州全体に拡大していれば、失業者救済を旗印に勢力を急拡大したヒトラーのナチス党が政権掌握することはできなかった可能性も否定できない。

もちろん後付けの「イフ」ではあるが、アルゼンチンに渡って実業家として成功し、景気変動の激しいなかで破産もせず生き残ったゲゼルのアルゼンチンにおける実体験が、なかなか当時の欧州では共有されなかったのは、じつに残念なことである。


「有限性」を織り込んだ「代替貨幣」

現代日本でもごくフツーに使用されているクーポン券やバウチャーもまた、囲い込みが目的であるとはいえ一定の時間を経過すると価値を失う性格をもっている。

発行主体が一企業や一商店で使用目的が限定されており、記名者が商品やサービスを購入する際にしか使用できず、しかも譲渡可能ではないので狭義のマネーではないが、実質的にはマネーのような働きをしている。使用期限が限定されているマイレージポイントなども、また同様と考えていいだろう。

これらは時間の経過とともに段階的に減価していくという仕組みではないのでゲゼルの発想とは異なるが、「有限性」を意識的にビルトインして設計されたものである。

マネーの「額面価値」そのものは時間が経過しても不変である。じっさいはインフレによって目減り(=減価)することがあるので、「額面価値」(=名目価値 ノミナル・バリュー)と実質価値(リアル・バリュー)はかならずし差異が生じるのが常識である。

だが、限りなくゼロ金利に近い低金利が定着しデフレ状態が続いている先進国においては、額面価値と実質価値にほとんど差異がない。この状態においては、カネをつかわずにキャッシュとして退蔵することに痛みが伴わない。預金してもプラスの利子はつかないし、タンス預金として退蔵し続けても目減り(=減価)しないからだ。だから消費税増税などよほどのことでもない限り、誰も急いでカネを使おうとしないのだ。

日本を筆頭に、欧州でも米国でも、人為的にインフレ状態を作り出すことを目的にジャブジャブになるまでに資金供給しているにもかかわらず、いっこうに消費が喚起されないのはそのためだ。先進国内部には「資本主義にとってのフロンティア」がもはや存在しないため、投資も消費も喚起されるjことがないのである。

こういう状態で消費を喚起し、経済を活性化する仕組みとして「地域通貨」に着目することも必要だろう。経済成長を志向しないでサステイナブルな経済を回していく仕組みとしての「地域通貨」。これもまたゲゼルの発想の延長線上にある。


ドイツ発の経済思想が米国に移植され、1970年代以降に再びよみがえる

「地域通貨」(LETS : Local Exchange Trading System)についてはアメリカの「イサカ・アワー」(Ithaca Hour)という事例が面白い。コーネル大学が立地する大学町、ニューヨーク州イサカの事例である。

1960年代のヒッピー思想の延長線上にあるオルタナティブな経済思想とその実践である。ライフスタイルと価値観の変化も背景にある。

本書が出版された2000年時点では成功事例として完全に定着しているようだが、導入が開始された1991年のニューヨーク州の経済状況が惨憺たるものであったことは、その当時おなじくニューヨーク州トロイに住んでいたわたしには実感できることだ。大恐慌ほどではないが、経済不況はなにか新たな取り組みを開始するチャンスではある。

「イサカアワー」は、ゲゼルの「減価する貨幣」という発想を「地域通貨」として実践している事例だが、アメリカでは問題とはなっていないようだ。グローバルマネーとしての米ドルに対して、補完通貨(complementary currency)としての位置づけが当局からも認定されているからである。

「地域通貨」が国家が発行する通貨にとってかわることはないが、小規模であれ、「補完通貨」として機能するのであれば、地域経済の活性化をつうじてコミュニティの健全でサステイナブルな発展を支えることができる。これはすばらしいことだ。

米国の通貨の歴史を振り返れば、むかしから地域自立型だったという本書の指摘は新鮮な印象を受けた。移民がつくった国である米国は、それぞれのバックグランドごとにコミュニティが形成され、独自の通貨が使用されていたらしい。現在でもかたくなに移民当時のライフスタイルを守り続けるアーミッシュなども存在するのが米国である。

大恐慌後の1930年代米国では「緊急通貨」も導入されている。ドイツで生まれ実験が行われた「減価する貨幣」というゲゼルの経済思想にもとづくものだ。ケインズもそうだが、大恐慌期アメリカを代表する経済学者アーヴィング・フィッシャーの名前がゲゼルがらみで本書に登場するのも興味深い。

ドイツ語圏と同様に米国における試みもまた、社会主義的なニューディール政策によって否定された。戦後の国際金融制度再構築においてはあらたな覇権国となった米国の主張が採用され、ゲゼル的な発想は地下に潜ってしまう。

だが、「地域通貨」という形でゲゼル的なものが復活しつつある。スイスのヴィーア銀行(WIR Bank)という「交換リング」も興味深い。中小企業を中心にした参加者間のクローズドな決済クリアリングシステムのことである。最近、社会面の話題にもなった「ビットコイン」という「仮想通貨」もまた「補完通貨」としての性格をもつ。

本書の最後で中世ヨーロッパにおける「デマレージ」(demmurage)が取り上げられている。「貨幣改鋳」という支配者の恣意によって領民が被る不利益を、価値の永続性があると考えられたプロジェクトに振り向けたケースである。領主の意図とは異なる結果となったわけだが、中世の大聖堂建築にあたって、資金がどうやって調達されたかを考えることは意味あることだ。

「時間の経過とともに価値を減少させていく貨幣」というゲゼルの思想の先駆的形態が、「資本主義以前」にすでに大規模に実践されていることを知ると、「資本主義終焉後の経済」の一つの解答があることに気がつくのではないだろうか。

わたしは本書を出版から14年後(!)にはじめて読んだのであるが、得るとことはきわめて多かった。いまでも遅いことはないので、ぜひ一読を薦めたいとつよく思う次第だ。




(注) ケインズは『雇用、利子、お金の一般理論』(John Maynard Keynes, The General Theory of Employment, Interest and Money, 1936)のなかで経済思想かのゲゼルについて以下のように触れている。

ネット上に公開されている山形浩生氏による全訳(2011年)から、該当箇所を引用させていただく。(*太字ゴチックは引用者=さとう)。じっくりと読んでみるといいだろう。

なお、原文の該当箇所は以下を参照。⇒ http://www.marxists.org/reference/subject/economics/keynes/general-theory/ch23.htm 山形氏の訳文は、わかりやすいがかなりクセがある簡約版なので、ケインズの原文と照合して見た方がよいだろう。

Section VI

36. ここで不当に無視されている奇妙な予言者シルビオ・ゲゼル (1862-1930) に触れておく。かれの研究には深い洞察があって、単にそれを十分掘り下げられていないだけだ。自分も古典派思想に毒されていたときにはこいつがイカレポンチだと思っていて、その価値に気がついたのは最近だ。

37. ゲゼルはドイツの商人で、その後アルゼンチンに行って、そこの経済問題を見て理論を構築した。その後スイスに引退し、著作と実験農業に専念した。

38. その後、かれの信奉者は変なカルトになってる。でも、理論的にもアーヴィング・フィッシャーに評価されている

39. 崇拝者には変な予言者扱いされてるけれど、ゲゼル自身の著作は冷静で科学的だ。ちょっと社会正義方面の議論に熱がこもりすぎてはいるけど。一種の反マルクス的社会主義理論で、マルクスとちがって古典派理論を受け入れず、競争も否定しなかった。いずれマルクスより影響が大きくなるだろう。

40. ゲゼルは、利率と資本の限界効率をはっきり区別していて、実質資本の成長を左右するのは利率だと指摘。また利率は純粋に金融的な現象だということ、お金が奇妙なのは、富の保有手段として保管コストがないことで、その他の保管コストを持つ財がリターンをもたらすのは、お金の設定する基準のせいだ、というのを主張。

41. でもゲゼルの理論には大きな欠点がある。財のストックを貸して収益が得られるのは金利水準があるからだというのをゲゼルは示した。でも金利がマイナスになれないと述べただけで、なぜ金利がプラスなのか、というのを説明せずにすませているし、金利がなぜ生産資本からの収益に左右されないかも説明していない。かれは流動性選好という概念を思いつかなかったからだ。

42. かれの理論が学問的に無視されたのはこの欠点のせいだ。でも、現実的な提案はできた。実質資本の成長が金利のせいで抑えられていて、金利による制約をなくせばもっと資本は成長する、とゲゼルは考えた。このためには、一時的にゼロ金利でもいいだろう。そこでかれが思いついたのは、フィッシャー教授も絶賛の有効期限印紙式のお金だ。紙幣は毎月新しく印紙(郵便局で販売)を貼らないと価値を保てないことにするわけだ。その印紙代は、年率 5.2 パーセントくらいが提案されているけれど、まあこれはやってみないとわからない。

43. この発想はしっかりしているし、小規模なら実現可能だ。でもゲゼルの考えなかった問題がある。流動性プレミアムを持っているのはお金だけじゃない。だから印紙でお金の流動性をなくせば、別のものが使われるだけだ。外貨とか宝石とか貴金属とか、時には土地だって。

・・(中略)・・

56. 低消費の話としては、最近ではダグラス少佐の理論があるが、これはまともなものじゃない。でもマンデヴィルやマルサス、ゲゼル、ホブソンは、不十分とはいえ真実を見ようとした。古典派理論は、明瞭だけれど、まちがったものを見ているだけだ。







目 次

プロローグ 『エンデの遺言』-その深い衝撃-(内橋克人)
第1章 エンデが考えてきたこと
 1. 遺された1本のテープ
  問題の根源は「お金」にある
  内世界から外世界を変革する
  自明のことを自明にしない
  父の絵がかけられたエンデ家の居間で
 2. エンデが日本人に遺した言葉
  人類はこの惑星上で今後も生存できるか
  いま金融システムを問い直すとき
 3. お金への思索は『モモ』から始まっていた
  エンデの生涯を貫いたテーマ
  熱烈な支持を受けた『モモ』
  『モモ』にお金への問題意識が込められていた
  オンケンの「経済学者のための『モモ』」
第2章 エンデの蔵書から見た思索のあと
 1. ハンス=クリストフ・ビンズヴァンガー-利子が利子を生むお金の錬金術
  お金の錬金術
  未来を食いつぶすお金の正体
  エンデの遺稿「ビンの中の悪魔」
 2. マルグリット・ケネディ-現在のお金のシステムがもたらしたもの
  建築家が書いたお金の本
  1枚の金貨の2000年後の利子
  安定したお金のシステムとは
  死と貧困を生み出す貨幣システム
 3. ルドルフ・シュタイナー-エンデに大きなヒントを与えたもう一つの経済観
  座右にあったシュタイナー全集
  社会全体を問い直すシュタイナー思想
  ゲゼルとシュタイナーの "エージング・マネー"
    友愛による経済とは
  利子を自分で決める銀行
第3章 忘れられた思想家シルビオ・ゲゼル-老化するお金の理論とその実践の歩み
 1. 新たなミレニアムを前にして
  ケインズの予言
  ゲゼルの生い立ち
  ドイツ系アルゼンチン人として
  直耕の日々
  レゾート・ジュネヴィーの農民
  資本主義でも共産主義でもなく
  バイエルンへ
  圧殺されたゲゼルの闘い
  戦後のドイツで
  サンジェルマン伯爵の棺のごとく
 2. なぜお金は減価しなければならないか
  ロビンソン物語
  自由貨幣-減価するお金の仕組み
 3. よみがえる補完通貨の経済史
  FFF運動
  運動の発展
  補完通貨の実践
  シュヴァーネンキルヘンの奇跡
  ヴェルグルの実験
  地下世界へ、そして復活
第4章 貨幣の未来が始まった
 1. 米国の地域通貨イサカアワー(Ithaca Hour)
  イサカアワーの誕生
  イサカアワーを生み出した男
  おもちゃのお金
  イサカアワーの仕組み
  イサカの資源はイサカに
  コミュニティを地域通貨で構築する
  アメリカドルとの関係
  銀行とイサカアワー
  ライフスタイルと価値観の変化
  米国の通貨の歴史-昔から地域自立型だった
  1930年代米国の緊急通貨
  未来学者にお金の未来を聞く
  米国における地域通貨の広がり
  労働貨幣
  LETS(Local Exchange Trading System:地域通貨)の誕生
 2. ヨーロッパに広がる交換リング
  旧東ドイツで市民が失ったもの
  お金なき交換リングのシステム
  交換機能に特化した交換リングの単位
  交換リングの強み
  マイナスが結ぶ共同体意識
  デーマークの創設
  失業者の救済も
  リ・ヴィア2000の挑戦
 3. 銀行の国スイスで生まれたヴィア銀行(WIR Bank)
  シルビオ・ゲゼルから始まって60年
  ゲゼルの自由貨幣からの脱皮
  高度成長期の飛躍と試練の季節
  2つのマネーの平和共存
  ヴィアの「正しい使い方」
第5章 お金の常識を疑う
 お金-見えて見えないもの
 物々交換の不都合とお金の特権
 問題はお金の循環の停滞
 生活や実体経済に打撃を与えるお金
 金融システムの手品
 プラス利子のお金の仕組みがすべてではない
エピローグ 日本でも「お金」を問い直す気運高まる
 幻に終わった東京会議
 チロル山荘での小さな会議
 お金は新しい関係をつくりだす道具である
 芽吹きはじめた日本での地域通貨への動き
おわりに (河邑厚徳)


著者プロフィール

河邑厚徳(かわむら・あつのり)
1948年生まれ。映像ジャーナリスト。女子美術大学教授。71年、東京大学法学部卒業後、NHK入局。主に文化教養番組で芸術、歴史、宗教関係のドキュメンタリー担当。数々のドキュメンタリー番組を手がけ、内外の受賞多数。映画の脚本監督、プロデューサーを務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。





<関連サイト>

ビデオ「エンデの遺言―根源からお金を問うこと」シナリオ要約

ゲゼル研究会

26億円を調達したビットコイン企業米サークルが目指す仮想通貨の「日常ツール化」 (日経ビジネスオンライン、2014年4月21日)
・・「1994年ごろにウェブが誕生して20年が経過したが、商取引のうちネット化されたのはまだ5%に過ぎない。同じように、ビットコイン普及には時間がかかる」  ⇒  現実的な見解に納得。「仮想通貨」も「地域通貨」と同様に基本的に「補完通貨」と捉えるべきである


<ブログ内関連記事>

「戦後ドイツ」とドイツ語圏におけるオルタナティブな思想

「生命と食」という切り口から、ルドルフ・シュタイナーについて考えてみる
・・ミヒャエル・エンデはシュタイナー思想の熱心な信奉者

ミヒャエル・エンデの『モモ』-現代人はキリスト教的な時間から逃れることができない!?

『ミヒャエル・エンデが教えてくれたこと-時間・お金・ファンタジー-』(池内 紀・子安美知子・小林エリカ、新潮社、2013)は、いったん手に取るとついつい読みふけってしまうエンデ入門

書評 『海賊党の思想-フリーダウンロードと液体民主主義-』(浜本隆志、白水社、2013)-なぜドイツで海賊党なのか?

「小国」スイスは「小国」日本のモデルとなりうるか?-スイスについて考えるために ・・「直接民主制」をとるスイス


時間と利子、マネー増殖の関係

書評 『緑の資本論』(中沢新一、ちくま学芸文庫、2009)-イスラーム経済思想の宗教的バックグラウンドに見いだした『緑の資本論』
・・一神教(ユダヤ教・キリスト教・イスラーム)の経済思想。無限増殖するカネを生み出す思考の根本がキリスト教にあること、商業志向のつよいイスラームがその対抗原理として存在すること
・・「時間は私有できない」、「カネはカネを生まない」というアリストテレスの思想トマス・アクィナスを経て、中世スコラ哲学では「時間は普遍的な存在なのでわたくししてはならない」とされていた。それを最終的に打ち壊したのはジャン・カルヴァンであることは、わたしは大学学部の卒論に書いている。そのことをブログ記事に書いておいた。日本人としては福田徳三や上田辰之助といった経済思想家の名前を想起してほしいところである

書評 『マネーの公理-スイスの銀行家に学ぶ儲けのルール-』(マックス・ギュンター、マックス・ギュンター、林 康史=監訳、石川由美子訳、日経BP社、2005)


通貨発行と国家主権、地域通貨(ローカル・カレンシー)

書評 『持たざる国への道-あの戦争と大日本帝国の破綻-』(松元 崇、中公文庫、2013)-誤算による日米開戦と国家破綻、そして明治維新以来の近代日本の連続性について「財政史」の観点から考察した好著

書評 『やっぱりドルは強い』(中北 徹、朝日新書、2013)-「アメリカの衰退」という俗論にまどわされないために、「決済通貨」「媒介通貨」「基軸通貨」「覇権通貨」としての米ドルに注目すべし

書評 『ユーロ破綻-そしてドイツだけが残った-』(竹森俊平、日経プレミアシリーズ、2012)-ユーロ存続か崩壊か? すべてはドイツにかかっている
・・皮肉なことに(?)、2014年現在、ドイツは欧州最強の経済となっている

書評 『国家債務危機-ソブリン・クライシスに、いかに対処すべきか?-』(ジャック・アタリ、林昌宏訳、作品社、2011)-公的債務問題による欧州金融危機は対岸の火事ではない!

『ピコラエヴィッチ紙幣-日本人が発行したルーブル札の謎-』(熊谷敬太郎、ダイヤモンド社、2009)-ロシア革命後の「シベリア出兵」において発生した「尼港事件」に題材をとった経済小説
・・私企業である日本の中小商社が発行したシベリアで発行した通貨ピコラエヴィッチ。このローカル・カレンシー(=地域通貨)は、競争力をもった実質的な通貨であった


マネー暴走と資本主義の終焉への道

書評 『マネー資本主義-暴走から崩壊への真相-』(NHKスペシャル取材班、新潮文庫、2012 単行本初版 2009)-金融危機後に存在した「内省的な雰囲気」を伝える貴重なドキュメントの活字版

書評 『世紀の空売り-世界経済の破綻に賭けた男たち-』(マイケル・ルイス、東江一紀訳、文芸春秋社)-アメリカ金融業界の周辺部からリーマンショックに迫る人間ドラマ

CAPITALISM: A LOVE STORY ・・映画 『キャピタリズム マネーは踊る』

『資本主義崩壊の首謀者たち』(広瀬 隆、集英社新書、2009)という本の活用法について

「宗教と経済の関係」についての入門書でもある 『金融恐慌とユダヤ・キリスト教』(島田裕巳、文春新書、2009) を読む

書評 『終わりなき危機-君はグローバリゼーションの真実を見たか-』(水野和夫、日本経済新聞出版社、2011)-西欧主導の近代資本主義500年の歴史は終わり、「長い21世紀」を生き抜かねばならない

書評 『世界史の中の資本主義-エネルギー、食料、国家はどうなるか-』(水野和夫+川島博之=編著、東洋経済新報社、2013)-「常識」を疑い、異端とされている著者たちの発言に耳を傾けることが重要だ

書評 『超マクロ展望-世界経済の真実』(水野和夫・萱野稔人、集英社新書、2010)-「近代資本主義」という既存の枠組みのなかで設計された金融経済政策はもはや思ったようには機能しない

書評 『21世紀の歴史-未来の人類から見た世界-』(ジャック・アタリ、林昌宏訳、作品社、2008)-12世紀からはじまった資本主義の歴史は終わるのか? 歴史を踏まえ未来から洞察する


資本主義のオルタナティブ

マイケル・ムーアの最新作 『キャピタリズム』をみて、資本主義に対するカトリック教会の態度について考える
・・「近代以前」のメインストリームであったカトリックの思想

書評 『フリー-<無料>からお金を生み出す新戦略-』(クリス・アンダーソン、小林弘人=監修・解説、高橋則明訳、日本放送出版協会、2009)
・・「フリー経済」とは「贈与経済」の一種である。「シェア」とともに広がりつつある


『Sufficiency Economy: A New Philosophy in the Global World』(足を知る経済)は資本主義のオルタナティブか?-資本主義のオルタナティブ (2) ・・「足るを知る経済」はタイのプーミポン国王ラーマ9世が主唱する仏教をベースにした経済思想

資本主義のオルタナティブ (3) -『完全なる証明-100万ドルを拒否した天才数学者-』(マーシャ・ガッセン、青木 薫訳、文藝春秋、2009) の主人公であるユダヤ系ロシア人数学者ペレリマン
・・「知識」と「知的探求」を資本主義のために使わないというきわめてつよい意志





(2017年5月18日発売の拙著です)



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