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2012年12月29日土曜日

書評 『21世紀の歴史-未来の人類から見た世界-』(ジャック・アタリ、林昌宏訳、作品社、2008)-12世紀からはじまった資本主義の歴史は終わるのか? 歴史を踏まえ未来から洞察する


2006年の原著出版から6年、日本語版出版から4年たった現時点で、日本の政治家たちの多くも目を通したという評判のこの本をはじめて読んだのは今年の3月のことである。

著者のアタリの予測の正しさを裏付けるように、原著出版後の2008年には「リーマンショック」が発生し、マネー暴走によるアメリカ型のマネー資本主義の終焉がまったくの絵空事ではなくなってきたようだ。

いまから読み始めることを決意した人は、本書の出版後に書かれた『金融危機後の世界』((ジャック・アタリ、林昌宏訳、作品社、2009)を先に読んでおくといいかもしれない。

いずれにせよ現時点では、本書の趣旨や内容にはとくに修正の必要はなさそうだ。


個人の欲望が世界史の原動力

フランス語の原題は『未来についてのある簡潔な歴史(あるいは物語)』(Une brève histoire de l'avenir, 2006)である。

資本主義と民主主義を人類史の中心テーマと捉え、過去を簡単に振り返って発展のパターンを抽出したうえで、大胆な予測を21世紀の人類史について行ったのが本書の内容だ。

アタリの歴史観の根幹には、個人のパワー拡大欲求こそが世界を動かしてきたという観点がある。世界を動かしてきたのは、宗教人・軍人・商人という三つの人間類型であるが、発展の主導力となったのは「商人」であり、商人が主導してきたのが世界史である。この視点はさすがである。

経済における個人の欲望が市場を発達させ、市場の発達が宗教人と軍人よりも商人層を支配者層に押し上げ、その結果として商人層が政治においては民主主義を発展させることになる。そして、20世紀の終わりから「マネー暴走」により市場は民主主義を凌駕するようになっていく。これがアタリの人類史の見取り図だ。

「市場 vs 民主主義」という図式にまとめることができるだろうか。

この図式に従えば、市場が生み出した民主主義も、まさにその市場のパワーによって危うくなりもともと民主主義国家ではない国家においても市場が優勢になっていくことも説明が可能になる。

成功するがゆえに、みずからの内部矛盾の増大によって自壊するというのは、十分に納得のいく予測だ。これが社会科学的なものの見方というものだ。弁証法的思考でもある。

「市場 vs 民主主義」という図式である以上、市場のパワーをどこまで制御できるかが、理想社会実現のカギなのである。


これまでの世界史、これからの人類史

第Ⅰ章は資本主義前史、第Ⅱ章は「中心都市」成立と資本主義の誕生、そして第Ⅲ章ではアメリカが絶頂を迎えるまでを扱っている。人類の過去の歴史を経済史の観点から振り返っておくことは、未来について考えるための前提である。

資本主義のはじまりをブリュージュから始める記述はあまり一般的ではないが、西洋経済史と西洋商業史を中心に据えた記述は、未来に適用されるパターンを知るためにもきキチンと読んでおいたほうがいい。

また、日本では言及されることの少ないイタリアの都市国家ジェノヴァついての記述は重要だ。日本では塩野七生氏の歴史小説の影響もあってヴェネツィア共和国への関心は深いが、資本主義の歴史においてはジェノヴァ共和国と国外で活躍したジョノヴァ商人の役割のほうがはるかに重要なのだ。

もちろん、『未来史』というタイトルをもつ本書の中心は第Ⅳ章以降にある。

第Ⅳ章は、21世紀に押し寄せる「第一波」として民主主義・政治・国家を破壊する「超帝国」について言及される。第Ⅴ章ではつぎの「第二波」として従来の戦争や紛争を超える「超紛争」が発生することが語られる。市場と民主主義、その興亡の未来史が「第一波」と「第二波」である。

現在も進行中の学校や軍事など公共サービスの民営化は、先進国が軒並み財政危機にあえぐなかでは、さらに推進されていくことは大いに予想されることだ。そこに出現するのは、市場の勝利と民主主義の敗北である。

そして最後に「第三波」として民主主義を超える「超民主主義」が出現するのだという。だが、あらかじめ著者自身も予防線張っているとはいえ、やや理想的に響くのは仕方かなかろう。なんだか『黙示録』の構造を想起するが、最後が正義が勝つ、ということか。

重要なことは、アタリ自身は明確に書いていないが、21世紀の「第二波」は「第一波」と同時進行で進展するのと同様、「第三波」も「第一波」と「第二波」と同時並行的に進行していくであろうということだ。

「第二波」として従来の戦争や紛争を超える「超紛争」が発生することが語られるが、この状況を考えるためには、「第二波」は現在のアフリカで見られるような混乱した状況になると考えればよいとアタリは言う。日本人であれば16世紀の「戦国時代」を想定してみればいいのではなかろうか。

ちょうど500年前の1492年にはじまった大変動期は、西洋世界とパラレルな関係にある日本においても、中世世界が崩壊し近世に転換する大激動期であった。21世紀の「第二派」に該当する戦国時代も、最終的には天下一統によって平和な時代へと転換することになる。ただし、西洋においては域内では平和、域外では資本主義的収奪が続いたことは、日本の江戸時代のパックス・トクガワーナ(=徳川時代の平和)とは異なる。

アタリの『1492』を読むと、近代資本主義がいかに域外を収奪しながら発展していったかがわかるだろう。1492年から500年で近代資本主義が限界にぶつかり、現在は中世から近世にかけての大激動期に匹敵する大転換期であるという自覚が必要なのではないかと思う。したがって、21世紀の「第二波」がかなり厳しい時代になることは避けられまい。わたしも「第二波」の到来は避けがたいものと覚悟しなくてはならないと考える。

「第三波」として民主主義を超える「超民主主義」が出現することについては、アタリ自身も「そう願っている」「そう期待している」という言い方で、願望を表明し、かつみずからが実践的に関与することでその動きを推進しようと奮闘している。

同時進行で利他主義にもとづいて「第三波」に向けて活動を続けることが、「資本主義」以降の未来を創るために不可欠であるのだ。

はたして、著者の言うように「利他主義」だけで可能なのか?
もしそうであれば、21世紀後半はブッダの世界になるのだろうか?
人間の欲望は尽きることないのか?

2012年の現時点では、まだ答えを出すのは早すぎるようだ。地球レベルでマネー暴走を制御するための装置をどのように設計するのかという点については、まだまだ道のりは遠い。


終わりに

著者のジャック・アタリは、ソ連崩壊後の中東欧など旧ソ連から独立した諸国を金融的に支援するための欧州復興銀行(EBRD)の初代総裁を務め、金融の世界にも詳しいだけでなく、思想家として数々の刺激的な本を書いてきた人だ。

全体的に国家規制が大好きな官僚国家フランスのエリートの発言であるという印象がなくもないが、アタリはフランスの植民地であったアルジェリアで宝石商の家に生まれたユダヤ系であることを知っておいてもいいだろう。「ノマド論」を最初にいいだしたのがアタリであることは、その出自からいっても不思議でもなんでもない。

ビジネスパーソンは、今後メインになるのが保険業と娯楽産業だという指摘はアタマのなかに入れておくといいだろう。その心は、プライバシーがなくなり監視がつよまる世界のなかで、ますます強まる不安を解消するニーズがさらにつよまるということだ。

本書は、ジャック・アタリにとっての総決算の書であるという訳者の評価はそのまま受け取っていい。未来予測であきらかになる困難な時代への覚悟を決め、そのなかで個々人がいかなる行動をすべきかについて考えるための必読書である。





目 次

21世紀、はたして日本は生き残れるのか?-日本語版序文にかえて
序文 21世紀の歴史を概観する
第1章 人類が、市場を発明するまでの長い歴史
第2章 資本主義は、いかなる歴史を作ってきたのか?
第3章 アメリカ帝国の終焉
第4章 帝国を超える“超帝国”の出現-21世紀に押し寄せる第一波
第5章 戦争・紛争を超える“超紛争”の発生-21世紀に押し寄せる第二波
第6章 民主主義を超える“超民主主義”の出現-21世紀に押し寄せる第三波
付論 フランスは、21世紀の歴史を生き残れるか?
21世紀を読み解くためのキーワード集

訳者あとがき
「訳者あとがき」のあとに-刊行後、1年を経て
追記:アタリ氏の緊急来日とその後の反響について


著者プロフィール

ジャック・アタリ(Jacques Attali)
1943年生まれ。わずか38歳で、フランスのミッテラン政権の大統領特別補佐官を務め注目を浴び、1991年、自らが提唱した「ヨーロッパ復興開発銀行」の初代総裁を務めた。1989年のドイツ再統一、1992年のEU成立の“影の立役者”と言われている。2009年、初のEU大統領選挙では、フランス側の有力候補となった。2010年10月、仏大統領の諮問委員会「アタリ政策委員会」が、フランスの財政再建戦略をまとめた「第2次報告書」を発表し、現在、激しい議論が戦わされている。この報告書は、本書『国家債務危機』の理念を基にまとめられた。「アタリ政策委員会」は、サルコジ大統領が、アタリ著『21世紀の歴史』(2006年刊)に感銘を受け、2007年、“21世紀フランス”を変革するための戦略づくりを、アタリに直接依頼した諮問委員会である。政界・経済界で重責を担う一方で、経済学者・思想家としても幅広く活躍し、まさに“ヨーロッパを代表する知性”として、その発言は常に世界の注目を浴びている。近年では、『21世紀の歴史』(2006年刊)が、翌年発生した「サブプライム問題」や「世界金融危機」を予見していたために、世界的な大反響を呼んだ。著書は多数あり、経済分析・哲学書・歴史書・文化論と幅広いが、主な邦訳書は以下である。『21世紀の歴史』『金融危機後の世界』(作品社)、『カニバリスムの秩序』『ノイズ-音楽・貨幣・雑音-』(みすず書房)、『アンチ・エコノミクス』『所有の歴史』(法政大学出版局)、『ヨーロッパ 未来の選択』原書房)、『1492 西欧文明の世界支配』ちくま学芸文庫)ほか多数(amazonの書籍紹介より転載)。

訳者:林 昌宏(はやし・まさひろ)
1965年、愛知県生まれ。名古屋市在住。立命館大学経済学部経済学科卒。翻訳家。アタリの金融関連書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものに補足)。



(追記) アタリの『ユダヤ経済史』の日本語版が出版(2015年1月30日)

『ユダヤ人、世界と貨幣-一神教と経済の4000年史-』(ジャック・アタリ、的場昭弘訳、作品社、2015)として日本語版が出版された。訳者はマルクスの『資本論』の研究者。日本語版タイトルは、副題を除けばフランス語をそのまま訳している。訳文については直接手にとって見たわけではないので、この場での論評は差し控えておこう。(2015年1月31日 記す)




<関連サイト>

"欧州の頭脳" ジャック・アタリが世界のリスクと新秩序を大予言! (ダイヤモンド・オンライン、2016年1月4日)

(2016年1月4日 項目新設)


<ブログ内関連記事>

書評 『1492 西欧文明の世界支配 』(ジャック・アタリ、斎藤広信訳、ちくま学芸文庫、2009 原著1991)
・・ジャック・アタリの基本的歴史観が示された名著。このブログ記事には、ジャック・アタリにかんする詳細な解説をつけておいたので、ぜひ参照していただきたい。1492年にはじまった歴史は1989年前後に終わった

書評 『国家債務危機-ソブリン・クライシスに、いかに対処すべきか?-』(ジャック・アタリ、林昌宏訳、作品社、2011)-公的債務問題による欧州金融危機は対岸の火事ではない!

「500年単位」で歴史を考える-『クアトロ・ラガッツィ』(若桑みどり)を読む

書評 『警告-目覚めよ!日本 (大前研一通信特別保存版 Part Ⅴ)』(大前研一、ビジネスブレークスルー出版、2011)-"いま、そこにある危機" にどう対処していくべきか考えるために


法哲学者・大屋雄裕氏の 『自由とは何か』(2007年) と 『自由か、さもなくば幸福か?』(2014年)を読んで 「監視社会」 における「自由と幸福」 について考えてみる

(2016年5月15日 情報追加)



(2012年7月3日発売の拙著です)





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