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2010年4月14日水曜日

書評 『フリー-<無料>からお金を生み出す新戦略-』(クリス・アンダーソン、小林弘人=監修・解説、高橋則明訳、日本放送出版協会、2009)-社会現象としての FREE の背景まで理解できる必読書




正直いってこの本は長すぎるのではないかと思うが、全部読むと社会現象としての FREE の背景まで理解できるので、ビジネスパーソン以外の一般人にも読むことをすすめたい

 この本のなかでも説明されているように、英語の Free というコトバには、「無料」という意味だけでなく、「自由」という意味もある。後者の「自由」というのは、「~からの自由」という意味だ。これが価格についていわれるとき、「価格から自由」すなわち「無料」ということになる。

 最近よく目にする「無料」だが、現象自体は著者も詳細に説明しているように、けっして目新しいものではない。

   ラジオも民放TVも、そもそもの最初から視聴するのは「無料」だし、試供品(サンプル)は「無料」で配布されている。また、「無料」でご招待、というのもあるし、ボランティアのような、お金を介在させない「無償の行為」というものも存在してきた。

 とくに中国では蔓延している海賊版という、ただ乗りの「無料」もある。

 これだけでは当たり前すぎて面白くも何ともない。また、著者がいいたいのもこういうことではない。

 著者がいいたいのは、とくにグーグルなどのネット企業が主導する「無料」をベースにしたビジネスモデルのことだこれを「フリーミアム」(Freemium)という

 大多数の使用者には基本製品(またはサービス)を「無料」で使用させるが、高機能のプレミアム製品(またはサービス)を使用したい一部の顧客には課金するというビジネスモデルのことである。このモデルは、グーグルだけでなく、スカイプなども同様であり、いまだビジネスモデルが確立していないツイッターなども同様の方向を向いている。

 試供品や無料ご招待などは、著者の分類によれば「直接的内部相互補助」になる。携帯電話本体を「無料」で配布して回線使用料収入で儲けるビジネスモデルなどがそれに該当する。

 民放などのコンテンツの無料放送は「三者間市場」。視聴者は無料で視聴できるが、第三者であるスポンサー企業が CM という形で広告料を放送事業者に支払うモデル。

 アマゾンのブックレビューなど「無償の行為」は、金銭以外の動機付けによるもので、注目(traffic)や評判(link)などが報酬となる「非貨幣的市場」である。

 著者は「無料」モデルを以上の4つに分類して説明しており、読者のアタマの整理になる。

 日本人は昔から「タダほど高いものはない」とクチにしていた。そう、世の中にはタダのものなど本来存在しないのである。誰かがどこかで、あなたのかわりにお金を払っているのである。ところが、タダ(=無料)が当たり前の世の中になってきていることもまた、否定できない事実である。

 それは、実体経済から情報経済に移行しつつあるからだ。著者の表現を使えば、実体経済はアトム(atom)の世界、情報経済とはビット(bit)の世界である。集積回路の価格が劇的に下がり、記憶容量は劇的に上がった結果、情報処理能力と記憶容量、通信帯域帯(bandwidth)の3つのテクノロジーのコストがそろって同時に下がってゆくことで、インターネット世界のコストは限りなくゼロに近づいているのである。

 いまだゼロから遠いのは電力コストだけだ。だからグーグルはスマートグリッド(smart grid)に熱心に取り組んでいるのだ。

 この現象をさして、かつてインターネットビジネスにおける「収穫逓増(ていぞう)の法則」という表現が経済学で使われたが、情報世界では、経済学用語を使えば「限界費用」(marginal cost)、すなわち複製という形で情報を一単位余分につくるのにかかる費用が、限りなくゼロに近くなっている、ということなのだ。

 これは実体世界としてのリアルの世界では依然としてありえないことである。これが、著者のいう「アトム」ではなく「ビット」の世界の実態なのである。

 そしてこの、限りなくコストがゼロに「近づいている世界では、情報はあふれんばかりに潤沢に存在し、さらに日々増大している。かつての実体経済が中心だった頃の「希少財」という概念が、情報世界では成り立たなくなってきているのである。デジタルのものは遅かれ早かれ「無料」になって潤沢になる。「ポスト希少社会」、これは新しいパラダイムである。


 著者はこういったことを、日本語版の翻訳で300ページ以上にわたって、えんえんと書いているのだが、エッセンスだけ知りたいのであれば、「週刊ダイヤモンド」(2010年3月13日号)「特集 FREE の正体」を読むのが手っ取り早い。

 日本人識者のコメントも多数掲載されているので、むしろ解説としては読者にとってありがたいつくりになっている。

 あらたに「無料」ビジネスモデルを考えたい人や、自社の「無料」モデルの問題点を考えたいビジネスパーソンは、本書『フリー』の巻末付録「フリーを利用した50のビジネスモデル」とウェブサイト(www.freemium.jp)、そして「週刊ダイヤモンドの特集」も手元においてリファレンスとして活用したい。

 しかし、背景も含めて FREE の意味を根本的に理解したいと思う人は、この日本語版を通読する意味はあると思う。この FREE というのは、ただ単にビジネスモデルも問題と捉えるべきではないし、またテクノロジーだけの問題でもないからだ。

 著者もいうように、30歳を分水嶺として、「FREE が当たり前の30歳台以下の人たち」と、「FREE に対しては懐疑的な30歳台以上の人たち」に分離される。FREE がすでに当たり前のものとなって疑問をもたない「フリー世代」の人たちの存在は社会現象として考えるべきであり、30歳以上の人たちはその社会現象の意味を考えることが必要になってくる。30歳以下の世代がいずれマジョリティになるからだ。



 日本語版のタイトルが『フリー-<無料>からお金を生み出す新戦略-』となっている。日本語版のタイトルづけは、ビジネス書として最近にない大成功した大きな要因であるが、ビジネス書にはまったく関心のない人たちの関心からはずれてしまう恐れがある。英語の原題は、FREE: The Future of a Radical Price である。

 ゼロという概念は、古代インド人が発見したこと著者も触れているように、無料=ゼロとは1円でも10円でもなく、ゼロ円なのである。この「ラディカルな価格設定」が現在進行する世界においていかに大きな意味をもつかは、行動経済学者が実験をつうじて明らかにしてきていることでもある。

 この本は、思想書とまではいわないが、いままさに進行しつつある社会現象を解読するための思索が書き込まれた本として読んでみてもいい。そう考えれば、ビジネスパーソン以外の、一般人も目を通す価値のある本であるとわかるはずだ。

 著者クリス・アンダーソンは、そもそもがビジネスマンではなく、サイエンスとテクノロジーの世界で長年ジャーナリストとして活躍してきた人である。現在は IT の専門誌『ワイアード』(Wired)編集長である。サブカルチャーまでカバーするこの雑誌は、ウェブ版も印刷媒体もともに発行しており、この両者に編集長として関与して得た知見も本書には十分に反映されている。

 変化しつつある「21世紀型資本主義社会」を理解するためにも必読書といっていいだろう。ビジネスパーソンはもとより、広く一般にもすすめたい本である。          



<初出情報>

■bk1書評「正直いってこの本は長すぎるのではないかと思うが、全部読むと社会現象としての FREE の背景まで理解できるので、ビジネスパーソン以外の一般人にも読むことをすすめたい」投稿掲載(2010年3月29日)

*再録にあたって、字句の一部を修正した。





目 次
  
プロローグ
第1章 フリーの誕生-無料とは何か?
第2章 「フリー」入門-非常に誤解されている言葉の早わかり講座
第3章 フリーの歴史-ゼロ、ランチ、資本主義の敵
第4章 フリーの心理学-気分はいいけど、よすぎないか? デジタル世界のフリー
第5章 安すぎて気にならない-ウェブの教訓=毎年価格が半分になるものは、かならず無料になる
第6章 「情報はフリーになりたがる」-デジタル時代を定義づけた言葉の歴史
第7章 フリーと競争する-その方法を学ぶのにマイクロソフトは数十年かかったのに、ヤフーは数ヶ月ですんだ
第8章 非貨幣経済化-グーグルと21世紀型経済モデルの誕生
第9章 新しいメディアのビジネスモデル-無料メディア自体は新しくない。そのモデルがオンライン上のあらゆるものへと拡大していることが新しいのだ
第10章 無料経済はどのくらいの規模なのか?-小さなものではない、無料経済とフリーの世界
第11章 ゼロの経済学-一世紀前のジョークがデジタル経済の法則になったわけ
第12章 非貨幣経済-金銭が支配しない場所では、何が支配するのか
第13章  (ときには)ムダもいい-潤沢さの持つ可能性をとことんまで追究するためには、コントロールしないことだ
第14章 フリー・ワールド-中国とブラジルは、フリーの最先端を進んでいる。そこから何が学べるだろうか?
第15章 潤沢さを想像する-SFや宗教から<ポスト稀少>社会を考える
第16章 お金を払わなければ価値のあるものは手に入れられない-その他、フリーについての疑問あれこれ
結び-経済危機とフリー

巻末付録1 無料のルール-潤沢さに根ざした思考法の10原則
巻末付録2 フリーミアムの戦術
巻末付録3 フリーを利用した50のビジネスモデル
日本語版解説(小林弘人)


著者プロフィール
  
クリス・アンダーソン(Chris Anderson)
『ワイアード』誌編集長。「ロングテール」という言葉を2004年に同誌上ではじめて世に知らしめ、2006年に刊行した同名の著書『ロングテール-「売れない商品」を宝の山に変える新戦略-』(早川書房、2006)は世界的ベストセラーとなる。2007年には米『タイム』誌の「世界でもっとも影響力のある100人」に選ばれている。ジョージ・ワシントン大学で物理学の学位を取得、量子力学と科学ジャーナリズムをカリフォルニア大学バークレー校で学ぶ。ロス・アラモス研究所の調査員を務めたあと、世界的科学雑誌である『ネイチャー』誌と『サイエンス』誌に6年間勤務。その後、英『エコノミスト』誌の編集者としてロンドン、香港、ニューヨークで7年間テクノロジーからビジネスまで幅広い記事を扱い、また1994年には同誌のインターネット版を立ち上げる。2001年から現職。以来同誌を全米雑誌賞のノミネートに9度導き、2005年、07年、09年に最優秀賞(General Excellence)を獲得している。現在カリフォルニア州バークレーに妻と5人の子どもと暮らす。著者ブログ(www.thelongtail.com)。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。 その後、『MAKERS-21世紀の産業革命が始まる』(NHK出版、2012)で、3Dプリンターを利用した個人ベースの製造業ブームに火をつけている。






監訳者プロフィール

小林弘人(こばやし・ひろと)
株式会社インフォバーンCEO。1994年『ワイアード』誌の日本版を創刊して編集長を務める。98年に株式会社インフォバーンを設立し、月刊『サイゾー』を創刊。06年には全米で著名なブログメディアの「ギズモード」の日本版を立ち上げる。ブログ黎明期から有名人ブログのプロデュースに携わり、ブログ出版の先鞭をつけるなど、ITメディア界の仕掛け人として多方面で活躍。通称「こばへん」。現在メディアプロデュースと経営の傍ら、講演やメディアへの寄稿をこなす。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。

翻訳者プロフィール

高橋則明(たかはし・のりあき)
翻訳家。1960年東京生まれ。立教大学法学部卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。




<関連サイト>

「フリーミアム」ウェブサイト(日本語) www.freemium.jp (2014年8月30日現在リンク切れ)
「freemium-jp」ツイッター(日本語) http://twitter.com/freemiumjp

●「ダイヤモンドオンライン」独占インタビュー!『FREE』著者のクリス・アンダーソンが語る 「無料経済を勝ち抜く企業と個人の条件」週刊ダイヤモンド『FREE』特集連動企画【第1回】    




PS 読みやすくするために改行を増やし、写真を大判に変えた。あらたに「目次」と「著者プロフィール」を加えた。ブログ記事としての初出時点と状況は変わっているが、ブログ記事もまた「歴史的文書」であるので、文章には手を入れていない。(2014年8月30日 記す)



<ブログ内関連記事>

ZERO か ONE か、それが問題だ!? -新年度に出発進行!



『Sufficiency Economy: A New Philosophy in the Global World』(足を知る経済)は資本主義のオルタナティブか?-資本主義のオルタナティブ (2) ・・「足るを知る経済」はタイのプーミポン国王ラーマ9世が主唱する仏教をベースにした経済思想

資本主義のオルタナティブ (3) -『完全なる証明-100万ドルを拒否した天才数学者-』(マーシャ・ガッセン、青木 薫訳、文藝春秋、2009) の主人公であるユダヤ系ロシア人数学者ペレリマン
・・「知識」と「知的探求」を資本主義のために使わないというきわめてつよい意志

『エンデの遺言-「根源」からお金を問うこと-』(河邑厚徳+グループ現代、NHK出版、2000)で、忘れられた経済思想家ゲゼルの思想と実践を知る-資本主義のオルタナティブ(4)

『ミヒャエル・エンデが教えてくれたこと-時間・お金・ファンタジー-』(池内 紀・子安美知子・小林エリカ、新潮社、2013)は、いったん手に取るとついつい読みふけってしまうエンデ入門

マイケル・ムーアの最新作 『キャピタリズム』をみて、資本主義に対するカトリック教会の態度について考える
・・「近代以前」のメインストリームであったカトリックの思想

書評 『海賊党の思想-フリーダウンロードと液体民主主義-』(浜本隆志、白水社、2013)-なぜドイツで海賊党なのか?

(2014年8月30日 項目新設)






(2012年7月3日発売の拙著です)








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