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2013年12月24日火曜日

書評 『バチカン近現代史-ローマ教皇たちの「近代」との格闘-』(松本佐保、中公新書、2013)-「近代」がすでに終わっている現在、あらためてバチカン生き残りの意味を考える


『バチカン近現代史-ローマ教皇たちの「近代」との格闘-』は、フランス革命以降の「政教分離」を推進する「近代国家」の登場で、領土や権威を失い弱体化していったバチカンが、いかにみずからの生き残りをかけて生き抜いてきたかを描いた近現代史である

本書の圧巻は、なんといっても「反近代」の立場を貫いたバチカンが、環境変化にあわせてみずからを「近代化」させつつ、不倶戴天の敵であった「共産主義」という「悪魔」を、武力というハードパワーではなくソフトパワーによって打倒した外交史であり、国際政治史を描いた第Ⅴ章以降にある。

近現代の国際政治のメインプレーヤーが英米を中心とするアングロサクソンであったことは言うまでもないが、これをバイプレイヤーであったバチカンの側から描いてみせたのが本書の最大の特色であろう。

プロテスタント国である米国も英国も「反バチカン」では一貫してきたが、この姿勢に転換が生まれたのが第二次大戦後の冷戦構造の成立であった。

米国にとっては正式な外交関係はなかったものの、実質的な「反共」のパートナーとしてのバチカンの存在は大きかったのだ。カトリック地帯であるポーランドをはじめ、カトリック国であるハンガリーやチェコが共産主義国家ソ連の影響下である共産圏に入ってからは、バチカンのもつネットワークが米国にとっては大きな意味をもったからだ。

無神論を標榜する共産主義はまさに「近代」の産物そのものであり、政教分離を強力に推進したフランス革命以降の「近代」は、バチカンにとっては領土と影響力を失っていった苦難の時代であった。「近代」の推進者であったプロテスタント国の英国や米国とは真逆の状態にあったわけだ。

イタリアの独裁者ムッソリーニとのあいだで締結された「ラテラノ条約」(1929年)がバチカンにとっては反転攻勢のキッカケとなる。世界最小の主権国家・バチカン市国として再出発することになったが、無神論の共産主義との対決姿勢からナチスドイツともかかわりをもち、第二次大戦後は米国に接近することとなった。このプロセスをつうじて国際政治におけるプレイヤーとしての存在感を増し、威信と影響力を回復していく。

「変わらないためには変わらなくてはならない」というのは、ヴィスコンティ監督の『山猫』のなかの有名なセリフだが、バチカンもまた近代世界という環境に適応するために大胆な自己変革を断行する。いわゆる「第二バチカン公会議」(1962~1965年)である。ここには詳述しないが、「第二バチカン公会議」以前と以後の違いは著しい。

冷戦崩壊からすでに20年以上の月日がたち、世界に残る共産党政権が中国や北朝鮮、ベトナムやキューバしか存在しなくなった現在、共産主義との戦いといってもリアリティを欠いているように聞こえるかもしれない。

だが、まさにその共産主義との戦いを同時代人としてリアルタイムで経験してきたわたしのような世代の人間にはじつに感慨深い。この時代を知らない若い世代にはぜひ熟読してしていただきたいと思う。中国共産党が存在し信仰の自由を抑圧する体制がつづく限り、バチカンの戦いが完全に終わったとは言えないからだ。

米国とのパートナーシップのもと共産主義との戦いに勝利し、冷戦構造が崩壊したあとは、ナチスドイツとの関係など過去の歴史が逆風が吹くことにもなった。さらに現在は、聖職者による少年の性的虐待やバチカン銀行によるマネーロンダリングなどさまざまな問題が噴出する渦中にあり対応に苦慮しているが、ラテラノ条約(1929年)以前のことを考えれば乗り切れない問題ではなかろう。

ことしは600年ぶりのローマ教皇退位とバチカンがふたたび大きな注目を浴びたが、清貧を説いたアッシジのフランチェスコから名前をとったあたらしい教皇フランシスコ一世はバチカン改革をすすめることであろう。

これまでバチカンが生き残ることができたカギが「反近代」にあった。「近代」においてはすでに「普遍」ではなく、「アンチ」としての存在感のほうがアイデンティティとしては大きかったバチカンであるが、ようやく「アンチ」ではなく、ポジティブな価値観で人類社会に貢献できるようになったいえようか。

それは、近代世界のなかで確立してきた普遍的原理である「人権」を前面に打ち出し、擁護推進する主体としてである。この意味では、現在のバチカンは単純な「反近代」とはいえないだろう。「近代」を経験し、みずからを「近代化」しつつ「近代」を超えるという課題にチャレンジしているように思われる。

「近代」がすでに終わっているいまだからからこそ、バチカンに目を向ける意味もある。なんといっても世界最古の組織がバチカンである。自己刷新なくして組織は生き延びることができないことの典型的な事例といっていいだろう。

バチカンの秘密文書館にもアクセスし、信者ではないもののカトリック教育を10年間受けてきた著者によるこの新書本は、歴史のなかの存在よりも、リアルタイムでプレイヤーとして活動しているバチカンを理解するために、日本人として読んでおきたい一冊である。





目 次

はじめに
序章 前近代のバチカン-起源から一七世紀まで
第1章 フランス革命の衝撃-超保守主義の台頭
第2章 ピウス9世の近代化政策と "豹変"-イタリア王国統一への抵抗
第3章 イタリア政治への介入-第一次世界大戦下の多角外交
第4章 ムッソリーニ、ヒトラーへの傾斜-バチカン市国成立と第二次世界大戦
第5章 ピウス12世の反共産主義-冷戦下、米国への接近
第6章 第二バチカン公会議-他宗教との和解と対共産主義・無神論
第7章 独自の対共産圏外交の追求-パウロ6世の意図
第8章 ポーランド人教皇の挑戦-ベルリンの壁崩壊までの道程
第9章 グローバル時代の教皇-宗教・民族紛争への介入
終章 バチカンと国際政治
【コラム】 コンクラーベ-教皇選出
      マリア信仰Ⅰ-信仰承認とピウス9世
      満洲国承認
      バチカンの統治システム
      マリア信仰Ⅱ-ファティマの奇跡とその後
あとがき
参考文献
バチカン近現代史関連年表

著者プロフィール

松本佐保(まつもと・さほ)
1965年神戸市生まれ。88年聖心女子大学文学部歴史社会学科卒業。90年慶應義塾大学大学院文学研究科修士課程修了。97年英国ウォーリック大学社会史研究所博士課程修了。Ph.D.取得。その間イタリア政府給費留学生としてローマのリソルジメント研究所に研究員として滞在。現在、名古屋市立大学人文社会学部教授。専攻は国際関係史(イギリス、イタリア、バチカン政治・外交・文化史)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。




・・『ローマ法王の権力と闘い』(小坂井澄、講談社+α新書)は、2002年の出版ではあるが、『バチカン近現代史』では取り上げられていないバチカンの組織内の問題を扱っているので、機会があれば参照するとよいだろう。英語なら文献は多いが、日本語だと意外に公平な記述によるまともな本が少ないのがバチカン関連本の世界




PS アメリカの TIME誌恒例の "Person of the Year" は、ことし2013年度は教皇フランシスコ1世(Pope Francis)に決まった。バチカンにあって清貧を実践するイエズス会出身の新教皇への期待といってよいだろう。




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バチカン関係

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・・バチカン銀行によるイタリアの政局を巻き込んだマネロン疑惑

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600年ぶりのローマ法王退位と巨大組織の後継者選びについて-21世紀の「神の代理人」は激務である

アッシジのフランチェスコ 総目次 (1)~(5)
・・教皇フランシスコ一世は清貧を説いたアッシジのフランチェスコから名前をとった

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「近代」とは? 「近代」の問題とは?

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書評 『神父と頭蓋骨-北京原人を発見した「異端者」と進化論の発展-』(アミール・アクゼル、林 大訳、早川書房、2010)-科学と信仰の両立をを生涯かけて追求した、科学者でかつイエズス会士の生涯
・・フランス人司祭でイエズス会士のピエール・テイヤール・ド・シャルダンは「近代主義」である「進化論」の主張により「異端」とされ、その著作は「禁書」扱いとなった


反共産主義

『ソビエト帝国の崩壊』の登場から30年、1991年のソ連崩壊から20年目の本日、この場を借りて今年逝去された小室直樹氏の死をあらためて悼む

書評 『東京裁判 フランス人判事の無罪論』(大岡優一郎、文春新書、2012)-パル判事の陰に隠れて忘れられていたアンリ・ベルナール判事とカトリック自然法を背景にした大陸法と英米法との闘い
・・英米とは異なり、バチカンが「反共」の立場から満洲国を承認した数少ない主権国家のひとつであったことはアタマのなかにいれておいたほうがいい

書評 『ろくでなしのロシア-プーチンとロシア正教-』(中村逸郎、講談社、2013)-「聖なるロシア」と「ろくでなしのロシア」は表裏一体の存在である
・・ソ連崩壊による共産主義敗北後のロシアでいま進行していることは全体主義か?


継承と承継

「世襲」という 「事業承継」 はけっして容易ではない-それは「権力」をめぐる「覚悟」と「納得」と「信頼」の問題だ!
・・血縁原理を重視する儒教圏、輪廻転生を重視するチベットと異なり、コンクラーベという秘密投票による選挙で後継者を決めるバチカン

(2015年7月7日 情報追加)




(2012年7月3日発売の拙著です)






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