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2010年12月26日日曜日

『ソビエト帝国の崩壊』の登場から30年、1991年のソ連崩壊から20年目の本日、この場を借りて今年逝去された小室直樹氏の死をあらためて悼む(2010年12月26日)




 本日(2010年12月26日)は、ソ連が崩壊してから20年目になる。ソ連が崩壊したのは、1991年12月25日だから正確にいうとまる 19年ということになる。

 小室直樹の『ソビエト帝国の崩壊-瀕死のクマが世界であがく-』(光文社カッパビジネス、1980)という衝撃的な内容の本が出版されたのは、ソ連崩壊の11年前。出版されてから本年でなんと 30年になる。

 高校二年のとき父親の蔵書だったものを、何度も何度も繰り返し読んだが、この本は現在の私を形成するうえで、きわめて大きな意味をもった本のなかでも、最重要な一冊といえる。

 小室直樹氏は2010年9月4日に77歳でお亡くなりになっていたことは後から知った。まだまだ旺盛な知的腕力による活動を期待していたのだが。
 今年は、梅棹忠夫氏など、知的世界の巨星がいくつも墜ちたが、小室直樹氏もまた、その諸著作が私の血肉になってきたこともあり、直接師事したことがないとはいえ、私にとっては残念でならない。

 今回は、今年惜しくも亡くなった小室直樹の一般書デビュー作『ソビエト帝国の崩壊』を振り返りながら、ソ連邦崩壊について考えて見たいと思う。


 『ソビエト帝国の崩壊』の出版当時は、ソ連が崩壊するなど荒唐無稽だとみなされていたが、実際に小室直樹の「予言」どおり、11年後の1991年には崩壊した。
 本書は、その後出版された膨大な数の小室直樹の一般書のなかでも最高の一冊であると、私はいまでも思っている。

 出版の前年、第二次石油ショックの原因となった「イラン・イスラーム革命」、その後のメッカのカーバ神殿占拠事件が起こった1979年の年末に始まった、ソ連のアフガニスタン侵攻作戦、これがよもやソ連の命取りになったとは、ソ連自身も考えもしなかったことだろう。

 私はその頃いつも聞いていた FEN(米軍極東ネットワーク)のラジオニュースで聞いて驚いたことを覚えている。Soviet troops invaded Afghanistan. というのが、米軍放送のアナウンサーの第一声であった。米国はジミー・カーターが大統領であった時代である。

 このアフガン侵攻が、ソ連にとっての泥沼のベトナム戦争となり、国力を疲弊しただけでなく国民全体のモラールダウンを招いていったことは、ソ連が崩壊してから明らかになった。

 またこのアフガン戦争に、米国の支援を受けて参加したムジャヒディーンたちが、後にアルカーイダを形成し、米国自身に刃(やいば)を向くことになるとは米国自身も考えもしなかったことだろう。アフガンは米国にとって「第二のベトナム戦争」になりつつある。まさに「禍福はあざなえる縄のごとし」である。


 『ソビエト帝国の崩壊』の内容については、ソ連に属していた各共和国のソ連邦からの離脱可能性が、ソ連憲法において法的に認められていること、天上の権力と地上の権力が皇帝に集中していた点において、ソ連がビザンツ帝国の末裔であることなど、その後の私のものの考え方の基本を作ってくれた本の一冊である。
 
 実際に、ソ連が崩壊してしまってからは、書店の店頭から姿を消してしまって久しいが、できれば復刻して、社会科学における仮説に基づく予測を現実に起こった結果で検証するケーススタディーとして、大いに研究するべきだと思う。

 ここまで大胆な予測(・・予言?)を的中させた学者、しかもアカデミズムのワクには納まりきらなかったホンモノの学者は、戦後日本ではあまり多くない。

 世界的に見ても先駆的といえるだろう。フランスのソ連研究者エレーヌ・ダンコースのソ連崩壊ものよりも時期的には早かったのではないか。



 『ソビエト帝国の崩壊』の初版カッパビジネス版の裏表紙には、山本七平の「推薦のことば」が掲載されていたと記憶しているが、たしか「これほど学問が好きで仕方がないという人は珍しい」といった趣旨のことが書かれていた。(* 確認したところ実際にそう記されていた)。

 以後、私は山本七平による小室直樹の評価を基準に、世の全ての学者判断することとしている。そのテーマがほんとうに好きで好きで研究しているといった「学者バカ」はとくに大学には少ないと思う。

 私が最初に就職した金融系コンサルファームはシンクタンク部門と一緒になっていたが、三度の飯よりも学問が好きというような人はほぼ皆無に近かったように思う。シンクタンク研究員というものも、しょせんサラリーマンに過ぎないようだ。

 小室直樹はもともと数学を専攻していたが、経済学を森嶋通夫、政治学を丸山真男、経済史を大塚久雄、人類学を中根千枝、法社会学を川島武宜と、当代一流のホンモノの学者から一対一で教えを請い、そのすべてを自家薬籠中のものとした大学者である。

 大学時代の前期課程時代、小平キャンパスに招かれて講演をした小室直樹を、私は見たことがある。「田中角栄を殺すな!」とテレビで絶叫して、テレビからは永久に干されたあとのことである。

 そのときたしか、女性をめぐってスペイン人(?)と喧嘩して前歯を折ったことがあるとか言ってたようなことを、いま思い出した。事の真偽と私の記憶が正しいかどうかは、なんともいえないが。

 このエピソードは、アジア人をバカにする不良英国人にたまりかねて、大英博物館のなかで殴った南方熊楠を思い出す。

 
 『ソビエト帝国の崩壊』は、もともと生物学志向だった私が、大学で社会科学を専攻することにしたキッカケの一つといえるかもしれない。

 小室直樹の本としては、このほか『危機の構造』(ダイヤモンド社、1982)をあげておきたい。この本もまた、社会科学とはなんぞやを知るための必読書であり、私の血肉となった本である。現状では、あまりにも古書価が高すぎるので、ぜひ復刻していただきたい。

 在野の立場から、ホンモノの学問を探究して、一般国民向けに講じてやまなかった小室直樹氏。
 いまこの場を借りて、あらためてご冥福を祈るとともに、長年にわたる感謝の意を表したいと思う。合掌。







<ブログ内「小室直樹」関連記事>

 小室直樹については、これまで以下の文章で取り上げているので、該当箇所を再録しておこう。2010年現在でも、十分に通用する骨太の議論を、狭いアカデミズムの世界向けではなく、広く一般国民に向けて書いていただいたことは、日本人として心から深く感謝しなくてはならない。


書評 『日本教の社会学』(山本七平/小室直樹、ビジネス社、2016 単行本初版 1981)-「日本教」というキーワードで日本社会をあざやかに分析した濃密かつ濃厚で骨太な議論
・・1980年代の日本の論壇で大きな影響力をもった骨太の思想家・山本七平と知の超人・小室直樹の共同作業。1981年の著作が2016年にようやく復刊

最近ふたたび復活した世界的大数学者・岡潔(おか・きよし)を文庫本で読んで、数学について考えてみる
・・「具体的な処方箋としては、私は数学者から出発した小室直樹の本を読むべしと答えておこう。とくに『数学嫌いな人のための数学-数学原論-』(小室直樹、東洋経済新報社、2001)、痛快なタイトルの 『超常識の方法-頭のゴミを取れる数学発想の使い方-(知的サラリーマン・シリーズ)』(小室直樹、祥伝社NONブック、1981)。ともに新刊では入手できないのが問題だが。ほかにも「数学ブーム」のおかげでいろいろ本がでているので、自分にあったものを見つけたらいいと思う。私も、小室直樹と同様、幾何学的思考と数学的思考が、学問のすべての基礎だと信じて疑わない」

ひさびさに宋文洲さんの話をライブで聞いてきた!
・・「中国人の個人主義の本質を知りたければ、『小室直樹の中国原論』(小室直樹、徳間書房、1996)が必読書である。中国人の人間集団は、個人を中心に幇(パン)、情誼(チンイー)、関係(グワンシ)、知り合い(友人)という「同心円構造」の「多重世界」である。幇(パン)から順番に、関係の度合いが薄くなってゆく。幇の内側は絶対の世界、幇の外側は相対の世界。そして地縁を越えた血縁集団としての「宗族」(そうぞく)が存在する。この幇と宗族の二つが、中国人の人間関係を理解するカギである、と小室直樹は結論している。幇の外、宗族の外の人間は、中国人であってもソト側の人、日本人のいう外人といっても構わないような存在であるが、宗族でなくても情誼(チンイー)、関係(グワンシ)、知り合いとなれば、ウチ側の人間となる」

皇紀2670年の「紀元節」に、暦(カレンダー)について考えてみる
・・「元外交官の法学者・色摩力夫(しかま・りきを)がよく使っていた「出生の秘密」(status nascens)というライプニッツのコトバがあるように、その紀元に何をもってくるか、その紀元の本質が何であるか、によってその後の「歴史」はすべて決定されてくるのである。色摩力夫は自衛隊の「出生の秘密」が自衛隊という軍事組織の性格を規定している、という文脈でこのコトバを使用している。『国民のための戦争と平和の法-国連と PKO の問題点-』(小室直樹/色摩力夫、総合法令、1993)P.145 などを参照」

(2017年10月28日 情報追加)


P.S. この投稿で、ちょうど本年度 365本目となった。5日前倒しで「ほぼ毎日更新中!!」を達成できたことになる。これもまた、小さいながらも「目標達成」であり、「達成感」を感じている。

PS2 あらたに写真一枚を追加した。『ソビエト帝国の崩壊』のカバー表裏である。 (2014年2月4日)

PS3 小室直樹の全体像を描いた骨太の評伝『評伝 小室直樹 上下』(村上篤直、ミネルヴァ書房、2018)が出版されている。生前には一度も会うことがなかったが、フリークともいうべき弁護士が書いた評伝だ。まずこれを越える評伝が出ることは当分ないだろう。(2021年2月25日 記す)





<ブログ内関連記事>

書評 『評伝 小室直樹 上下』(村上篤直、ミネルヴァ書房、2018)-かつて小室直樹という桁外れの知的巨人がいた
・・小室直樹の全体像を描いた骨太の評伝。生前には一度も会うことがなかったが、フリークともいうべき弁護士が書いた評伝だ。まずこれを越える評伝が出ることは当分ないだろう。

書評 『グーグル秘録-完全なる破壊-』(ケン・オーレッタ、土方奈美訳、文藝春秋、2010)-単なる一企業の存在を超えて社会変革に向けて突き進むグーグルとはいったい何か?
・・ソ連でユダヤ系の数学者の家に生まれて、崩壊前のソ連から米国に家族と移住したセルゲイ・ブリンはグーグルの創業経営者の一人である

資本主義のオルタナティブ (3) -『完全なる証明-100万ドルを拒否した天才数学者-』(マーシャ・ガッセン、青木 薫訳、文藝春秋、2009) の主人公であるユダヤ系ロシア人数学者ペレリマン
・・ソ連に生まれ育った数学者だが、米国に移住したブリン・ファミリーとはまたく異なる道を選択したグリゴーリー・ペレリマン

書評 『ソ連史』(松戸清裕、ちくま新書、2011)-ソ連崩壊から20年! なぜ実験国家ソ連は失敗したのか?

「チェルノブイリ原発事故」から 25年のきょう(2011年4月26日)、アンドレイ・タルコスフキー監督最後の作品 『サクリファイス』(1986)を回想する

『チェルノブイリ極秘-隠された事故報告-』(アラ・ヤロシンスカヤ、和田あき子訳、平凡社、1994)の原著が出版されたのは1992年-ソ連が崩壊したからこそ真相が明らかになった!

自動小銃AK47の発明者カラシニコフ死す-「ソ連史」そのもののような開発者の人生と「製品」、そしてその「拡散」がもたらした負の側面

書評 『「シベリアに独立を!」-諸民族の祖国(パトリ)をとりもどす-』(田中克彦、岩波現代全書、2013)-ナショナリズムとパトリオティズムの違いに敏感になることが重要だ
・・小室直樹の指摘どおり「連邦」から離脱した旧ソ連諸国はソ連憲法のたまものであった

マンガ 『沈黙の艦隊』(かわぐちかいじ、講談社漫画文庫、1998) 全16巻 を一気読み
・・冷戦時代、日本の「仮想敵国」はソ連であった

『レッド・オクトーバーを追え!』のトム・クランシーが死去(2013年10月2日)-いまから21年前にMBAを取得したRPIの卒業スピーチはトム・クランシーだった
・・ソ連の原子力潜水艦を追え!

書評 『バチカン近現代史-ローマ教皇たちの「近代」との格闘-』(松本佐保、中公新書、2013)-「近代」がすでに終わっている現在、あらためてバチカン生き残りの意味を考える
・・「反共」の立場からソ連崩壊と東欧革命に影響力を行使したバチカン

(2013年10月31日、2013年12月25日、2014年8月20日、2021年2月25日 情報追加)


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