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2009年7月28日火曜日

「マレーシア・ハラール・マーケット投資セミナー」(JETRO主催、農水省後援)に参加(2009年7月28日)-ハラール認証取得でイスラーム市場を攻略





 本日(2009年7月28日))午後、ジェトロ主催のセミナー 「マレーシア・ハラールマーケット投資セミナー」に参加してきた。会場は六本木のANA・IHGホテル。

 現在、マレーシア政府は、マレーシアを世界のハラール産業のハブとする戦略を打ち出しており、世界のムスリム18億人をターゲットにしたイスラーム市場へのゲートウェイとする国家戦略を遂行している、という。

 マレーシアのこの政策と、日本の農水省が意図する日本の食品産業の海外売上比率を向上させる政策がシンクロして今回のセミナー開催となったようだ。

 マレーシアでハラール認定を取得して、日本の食品メーカーは、東南アジアと中近東を中心としたイスラーム圏の市場を攻略せよ、という大方針である。

 本日のプログラムは以下のとおり。
13:30~13:35 主催者挨拶
13:35~14:15 「マレーシアにおける食品産業のビジネス機会」 :マレーシア工業開発庁(MIDA)東京事務所 所長 ラジェンダラン 氏
14:15~14:30 休憩
14:30~14:40 ビデオ「世界は今 ‐JETRO Global Eye」「マレーシア 世界のハラル・ハブ」上映
14:40~15:40 「マレーシア・ハラールハブ ‐世界のハラル市場へのゲートウェイ」 :ハラール産業開発公社(HDC) 最高経営責任者(CEO)ダトスリ・ジャミル・ビディン 氏
15:40~16:00 質疑応答

「ハラール」とは何か?

 まず、ハラール(Halal)とは何かについて見ておかないといけない。

 セミナーで講演した、マレーシア・ハラール産業開発公社(HDC:Halal Industry Development Corporation) の最高経営責任者(CEO)ダトスリ・ジャミル・ビディン氏は、こう説明していた。

 アラビア語の "Halalan Tayyiba" であるとは、Halal(=permissible、Shariah compliant)Tayyiba(=Good)、すなわちシャリーア(イスラーム法)に適法でかつ善であること、だと。これを満たす食品がハラール・フードということになる。

 これだけだと簡潔すぎるので、岩波イスラーム辞典』(岩波書店、2002)の説明を引用してみよう。
「イスラーム法的に合法な食品。とくに肉および肉製品についていう。イスラーム法では天然の食物は原則としてハラール(合法)であるが、豚肉、死肉、偶像に捧げられた動物の肉、血などが禁じられている。牛、羊、鶏等についてはアッラーの名において屠り、血抜きをすることがイスラーム法で決められている。・・(中略)・・現代では非イスラーム圏からの食料品輸入の増加によって、しばしば輸入品についての疑義が呈される事態となっている。2000年12月には、インドネシア味の素の製品が製造過程で触媒に豚製品を使ったとして大きな問題になった。・・(後略)・・」(小杉泰)

 私が大学時代から使っていた『平凡社イスラム事典』(1982年初版)には、「ハラール」という項目はない。

 おそらく『岩波イスラーム辞典』の記述にもあるように、2000年のインドネシア味の素事件のインパクトは日本企業にとってはきわめて大きなものだったのだ、と考えられる。ちなみに余談だが、インドネシアでは味の素のことを Masako という。

 平凡社版(初版)と岩波版(初版)のあいだの20年で、イスラームは、アラブの石油やイラン革命といった大きな出来事から、食品という日常的な場面にまで細かく目が届くようになったということだろうか。


 ハラール・フードとは、したがってイスラーム法に則った合法的な(=シャリーア・コンプライアンスな)食べ物のことで、わかりやすい例でいえば、とくにいかなる形であれ豚肉を使用していないこと、またアルコールを使用していないことが求められる。肉類の屠殺方法だけでなく、調味料その他すべてにおいて、これらの材料が成分として使用されてはならない。

 沖縄料理にラフテーというものがある。いわゆる豚の角煮、中国料理のトンポーロー(東坡肉)のことだが、これはまさにノン・ハラール料理の最たるものだろう。イスラーム法で禁止された豚肉を泡盛(沖縄焼酎)というアルコールで煮込んだ料理だから。

 私が大好きな豚角煮を食べられないというのであれば、この点にかんしてだけいえば、ムスリムになりたいとはあまり思わないなー。


ハラール・マーケットはいま確実に成長している市場

 とはいっても、日本にいると気づきにくいが、ハラール・マーケットはいま確実に成長している市場であることは特筆しておく必要がある。

 ムスリム人口は世界で20億人強ハラール・フードの市場は、全世界で US$5,823.2B (5,823.2億米ドル≒55兆円)と推計されている。しかもこの市場は年々拡張している。

 巨大な市場である。これを無視するのがいかに馬鹿げているか、日本の食品産業はよく認識しなくてはいけない、というわけだ。

 これはイスラーム国ではない東南アジアの仏教国タイでも同様で、私が毎朝食べていた CP-Meiji(タイ最大の食品企業CP社と明治乳業の合弁企業)のヨーグルトはハラール認定マークがついていた。

 国内に約4%のムスリム人口をかかえるだけでなく、間違いなくイスラーム圏への輸出を前提に製造販売されているからである。


食に関する禁止事項に関してはユダヤ教徒も同様

 もちろん食に関する禁止事項に関してはユダヤ教徒も同様で、よく知られているように、厳格に教えを守る人たちはエビやカニなどの甲殻類は禁止、豚肉は禁止、その他の肉類もコーシャー・ミート(Kosher Meat)といってイスラーム同様に決められた屠殺方法により血抜きすること、肉類と乳製品は一緒に摂ってはならないなど、ことこまかに決まっている。

 コッシャーとはヘブライ語で適切な、という意味。イスラームでいうハラールに意味は近い旧約聖書のレヴィ記第11章が根拠である、とのこと。

 私はニューヨーク州の大学院に通っていたが、私が住んでいた地域にあるスーパーマーケットにはコーシャー・コーナーがかならず設けてあった。ニューヨーク州のユダヤ系市民はイスラエルのユダヤ人よりも数が多い。もちろんパンもコーシャーである。

 ちなみに日本のスシはハラール認定されておりムスリムは安心して食べることができる。ニューヨークでもユダヤ教厳格派向けのスシ・バー(sushi bar)もあるらしい。スシが全世界に普及している理由の一端はここにあるのかもしれない。


マレーシアは政府がハラール認証制度を運営

 ハラール産業でマレーシアが優位にたっているのは、ハラール認証制度ににおいて、他のイスラーム諸国が民間団体が認証を実施しているのに対し、マレーシアは政府が認証制度を運営しており、認証費用は約1,000ドルと比較的廉価(・・ただし職員の旅費交通費等は実費)であり、中近東諸国でも信頼性が高く、実質的なデファクト・スタンダードになりつつある、ということにあるようだ。

 ハラール認証制度は、食品産業のHACCP(ハサップ)のような認証制度、もう少し広く捉えればISO(国際標準化機構)のような認証制度に近いといってもいいだろう。

 認証は工場単位であって企業単位ではない。原材料についてだけでなく、生産ライン、仕入れ先、外注先のを含めたサプライチェーンについて審査が行われ、合格すると認証される仕組みである。

 ハラール認証の仕組みにのっとって食品加工を行っていれば、ある意味トレーサビリティが確保されるわけで、食品の安全性の確保にも寄与するところが大きいと考えられる。

 実際、インドネシアでは問題に巻き込まれたものの、味の素は以前からハラール認定は取得しており、東南アジアで生産販売活動を行っている食品企業ではすでに常識といっていいだろう。
 

 会場でも上映されたJETRO制作の番組 ビデオ「マレーシア 世界のハラル・ハブ」は、下記サイトで閲覧可能であるので紹介しておく(*)

(*) 残念ながら現在はリンク切れのようだ。


 マレーシアは、ハラール・フードの認証制度だけでなく、ハラール専用の工業団地もすでに開発しているし、ハラール認定のためのトレーニング・セミナーも世界各国で実施している。日本でも今年度中に実施されるらしい。

 マレーシアは、ハラール・フードの認証制度で、国際的に覇権をとろうという明確な国家戦略を追求している、と私には映る。

 また、イスラーム金融においても、国際的なイニシアティブを握るべく国家戦略として積極的に取り組んでいることもあり、小国マレーシアがイスラーム圏のなかで存在感を示すための姿勢には大いに注目する必要があるだろう。

 国際規格は、欧州と米国とのあいだでのせめぎ合いとだけ理解していては片手落ちのようだ。

 イスラーム圏という巨大市場は日本人の盲点となっていないか!?

 それにしても国際規格の主導権を握れない日本に未来はあるのだろうか・・・

 やはり「日本沈没」ということか?








<付記>

「マレーシア・ハラル制度の実務」(財団法人 食品産業海外事業活動支援センター、2010年3月)という実務解説文書が無料で入手できる。具体的な記述が図解入りで説明されており、役に立つので紹介しておく(2010年4月28日記す)。
http://www.shokusan-sien.jp/sys/upload/166pdf23.pdf
       

PS 小見出しを加えて読みやすくした。2009年から4年、ここ1~2年で急速にハラールが認知されるようになってきたのは喜ばしい。 (2014年1月21日 記す)


<関連サイト>

「NPO日本ハラール協会」

マレーシアで「ハラル」認証を取りイスラム市場を開拓する 【最終回】親日だが日系製品のブランドが通用しない国 (日経ビジネスオンライン 2012年10月11日)

「脱中国の先がブルネイでした」 ソイ&ワールドの三坂大作社長に聞く(日経ビジネスオンライン 2013年10月2日)

「タリバン幹部と鍋を囲みました」 内藤正典 同志社大学大学院教授に聞く (日経ビジネスオンライン 2013年10月4日)
・・「ハラール認証は必須ではないと考えています。マレーシア政府が「ハラール認証を取らないとお客さんが来ませんよ」といったプレッシャーを日本企業に与えるのはおかしい。そもそも、イスラムは国家を超越して成り立っています。ある国家が、ある食品がハラールであるかないかについて審査するという考え方はイスラムに馴染みません。」 認証を取らなくても対応方法はあるようだ

800円フレンチにハラール食、こんなことになっている大学の学食メニュー、サービスを競い合う“大学競争” (JBPress、2014年4月11日)



(ASEAN諸国のハラール認証マーク 出所:アセアンセンター資料)


そのハラル、大丈夫?マーク発行団体が乱立 一歩間違えば国際問題に発展しかねない (東京経済オンライン、2014年7月12日)
・・「ハラルをうたいながらハラムを提供されることは・・(中略)・・日本人の想像以上に、ムスリムにとって大変な凶事に当たる」  ⇒ 深刻に受け止めよ!

日本はイスラム圏の観光客を呼び込めるか 飲食店が直面する「ハラール食」への希望と高い壁 (樋口直哉、ダイヤモンドオンライン、2014年9月25日)

「ハラール認証」に頼らない「ムスリムフレンドリー」なビジネスのあり方 (中田 考、BPNet 小さな企業の組織学、2014年10月21日)

(2014年7月13日、9月25日、10月23日 情報追加)



<ブログ内関連記事>

日本のスシは 「ハラール」 である!-増大するムスリム(=イスラーム教徒)人口を考慮にいれる時代が来ている

タイのあれこれ (18) バンコクのムスリム

本日よりイスラーム世界ではラマダーン(断食月)入り

書評 『マレーシア新時代-高所得国入り-(第2版)』(三木敏夫、創成社新書、2013)-「進む社会経済のイスラーム化」は必読

(2013年12月19日 追加)






(2012年7月3日発売の拙著です)








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