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2013年5月6日月曜日

書評 『マレーシア新時代-高所得国入り-(第2版)』(三木敏夫、創成社新書、2013)-「進む社会経済のイスラーム化」は必読



2013年5月5日に実施されたマレーシア総選挙では、政権交代が実現しなかった。

だが与党は、「獲得議席は3分の2の回復には遠く及ばず、前回総選挙の140議席さえ下回ったほか、人口の約4分の1を占める華人系の支持離れが一層鮮明になっている」(時事ドットコム 2013年5月6日付)。

1957年に英国から独立して以来50年以上にわたって政権を握ってきた UMNO(統一マレー国民組織)政権においては、さまざまな問題を抱えていることが浮き彫りになったといってよいだろう。

『マレーシア新時代-高所得国入り-(第2版)』(三木敏夫、創成社新書、2013)は、2011年出版の第2版である。以前ほどマレーシアには行かなくなっていたこともあり、最新事情を知るためにコンパクトにまとめた本書を通読してみた。

マレーシアについてある程度知っていれば、最新の状況がアタマに入る記述になっているといっていいだろう。先進国入りを目指しているが、「中進国のワナ」(middle income gap)にとらわれているマレーシアの現状である。

日本人の多くがそうであろうが、22年間政権の中心にいたマハティール元首相があまりにもカリスマ的すぎて、マレーシアというとマハティールという連想がつよすぎるきらいがある。正直なところ、マハティール以降の首相の名を言えといわれてもすぐにでてこないのは仕方あるまい。

しかもマレーシアが立憲君主制であることも、あまり強調されていないので知らない人も少なくないだろう。スルタンが5年ごとに交代して王位につくというめずらしい形態である

さて本書についてだが、ながくマレーシア研究にかかわってきた元JETRO職員だったこともあり、経済を中心に政治や社会まで幅広く言及した記述となっている。経済にかんしては、やや統計数字が多すぎてうっとおしいと思う感もなくはないが、これは飛ばし読みすればよい。だいたいのところはつかめるはずだ。

下記の目次をみればわかるように、重要なポイントは網羅されているといっていいだろう。

第1章 長期滞在先としての魅力
第2章 経済の自由化と社会改革を促進
第3章 外国人労働者に依存した経済
第4章 社会に根付いたブミプトラ政策
第5章 進む社会経済のイスラム化
第6章 マレー人女性の社会進出と社会の変容

マレーシアの特徴は、マレー系を中心としながら、中国系とインド系などの多民族によって形成された「人工国家」である点だが、その根幹にあるのがマレー系優先政策としての「ブミプトラ政策」。アメリカのアファマティブ・アクションにも似たクオータ(割り当て)制度である。

これは植民地統治をおこなった英国が、マレー系の身分制度の頂点にたつスルタン制を活用したことに原因がある。多民族国家ミャンマー(ビルマ)もそうだが、マレーシアもまた大英帝国の負の遺産といわざるをえない。

本書でもブミプトラ政策の功罪の両面について語られているが、著者にはマレー系の肩をもち過ぎる傾向があるように感じられる。「中国人の無知」などの表現には正直いって違和感をもってしまう。

著者がいう「中国人」とは「中国系マレー人」のことである。このほか本書には著者独自の表記法があるので混乱しないことが重要だ。とくに中国人、マレー人、インド人という表現は誤解を招きかねない。日本人読者の大半は、中国人といえば大陸の中国人のことと受け取るのが普通だからである。

より正確にいうなら、華人系マレーシア人、あるいは中国系マレーシア人というべきだ。英語なら ethnic Chinese のことである。同様に、マレー人もマレー系、インド人もインド系と表記するのが望ましい。

(クアラルンプールのツインタワー)

本書の記述で重要な点は、マレーシアにおける近年の「イスラーム化」にかんするものである。マハティール時代の「ルックイースト政策」によって達成された電子立国という顔から、先進国入りを目指してさらなる発展を実現するために、イスラーム金融立国やハラール認証など「イスラーム化」を軸にする方向に向かっていることである。

イスラームはもともとマレー系のマジョリティの宗教であることから、「イスラーム化」そのものには問題はないかもしれない。著者がいうように、イスラーム化の推進により、マレー系優先政策であるブミプトラがそのなかに発展的解消していくのであれば、それは望ましい方向といえるかもしれない。

ただ、華人(=中国系)がすっかり社会に同化しているタイを知るわたしからみれば、華人を軸に考えると、あきらかにマレーシアはますますタイとは違う方向に進んでいるという印象を受ける。イスラームを強調し過ぎることによる弊害がでないことを望むのはわたしだけではあるまい。

日本人、とくにビジネスパーソンが実際に接するマレーシア人は中国系が多いだろうし、少子化によって人口比率がさらに低くなる傾向にある中国系が肩身の狭い不自由な思いをしているのも否定できない事実である。

人口動態からみてマレー系がさらにマジョリティとなりつつある現在少子化の進む中国系やインド系との融和がどうなるか注視していく必要があろう。

「分割して統治せよ」という「大英帝国の負の遺産」であるミャンマーで、自由化にともなって宗教対立のかたちをとった民族対立が激化しているのは、けっして他人事ではないのではないかと思うからだ。

全体的に繰り返しが多く冗長な感がなくはないが、最新情勢について網羅的に書かれているので、マレーシアのいまを知るのには好著といってよいだろう。





著者プロフィール

三木敏夫(みき・としお)
1972年明治大学大学院政治経済学研究科修士課程経済学専攻修了。日本貿易振興会(ジェトロ)に入会、主に経済協力事業と調査事業に従事。この間マレーシア、米国(世界銀行グループ多数国間投資保証機関)に勤務。札幌学院大学教授。マレーシア国民大学(UKM)客員教授。北海学園大学講師(非常勤)。中小企業診断士(本データは前著が刊行された当時に掲載されていたもの)。


<関連サイト>

Why Malaysia Will Say Almost Nothing About the Missing Plane (By Joshua Kurlantzick, Bloomberg BusinessWeek,  March 12, 2014)
・・国営のマレーシア航空の北京行き239人乗りのB777旅客機が2014年3月8日に連絡を絶って以来、行方不明になっている「事件」にかんして、噴き出しつつあるマレーシア政府への批判。経済成長とくらべて、著しく透明性と説明責任を欠いたマレーシア政府の秘密主義は、1957年の独立以来、単独政党が政権を取りつづけたことにも求められる。隣国のフィリピンやインドネシアとくらべると民主主義の成熟度が低い

【マレーシア】競争力ランキング、世界12位:IMD調査、20年の10位入り視界に[経済] (NNA.ASIA 2014年5月23日)
・・「マレーシア生産性公社(MPC)は21日、スイスの国際経営開発研究所(IMD)による2014年の「世界競争力ランキング」で、マレーシアの順位が世界60カ国・地域中12位だったと発表した。昨年の15位から上昇した。順位は過去4年間で着実に上がっており、MPCでは20年までの上位10位入りも果たせるとみている」

謎多き墜落事故で揺らぐエアアジアの日本市場”再起”-価格破壊の革命児、トニー・フェルナンデスCEOの拡大路線に打撃 (JBPress、2015年1月9日)
・・2014年末にマレーシアのLCC(格安航空会社)のエアアジア機が墜落。マレーシア航空と比較して健全と思われていたエアアジアであったが、2014年でマレーシア関連の航空の墜落は3機目となった



<ブログ内関連記事>

「マレーシア・ハラール・マーケット投資セミナー」(JETRO主催、農水省後援)に参加(2009年7月)

日本のスシは 「ハラール」 である!-増大するムスリム(=イスラーム教徒)人口を考慮にいれる時代が来ている

本日よりイスラーム世界ではラマダーン(断食月)入り

「2015年のASEAN経済統合」の意味をアタマのなかに入れておこう

書評 『イラク建国-「不可能な国家」の原点-』(阿部重夫、中公新書、2004)-「人工国家」イラクもまた大英帝国の「負の遺産」




(2012年7月3日発売の拙著です)





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