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2013年6月13日木曜日

書評『見える日本 見えない日本 ー 養老孟司対談集』(養老孟司、清流出版、2003)- 「世間」 という日本人を縛っている人間関係もまた「見えない日本」の一つである



『見える日本 見えない日本』という魅力的なタイトルのこの対談集は、出版されてから10年たつがいっこうに文庫化される気配がない。だから単行本の段階で読む。そして2013年現在でも読んで面白い。

本書に収録された対談が行われたのは、1996年から2002年までの6年間。月刊『薬の知識』(ライフサイエンス社)という、おそらくその世界に関係ある人しか知らないであろう雑誌に連載されたものである。

読むとじつにおもしろいので、ついつい最後まで読んでしまう。

2003年のベストセラー 『バカの壁』(新潮新書)で一躍ときの人となった養老氏だが、この対談集でもその独特なものの見方が存分に発揮されている。

また、本人もある対談のなかで語っているのだが、1937年(昭和12年)生まれという「世代論」で説明できるようだ。

つまり、日本が敗戦をむかえた1945年(昭和20年)の時点ではまだ中学生であり、価値観の大転換を目の当たりにした世代なので、なにも信じなくなったのだということだ。

もちろん、医学のなかでも解剖学を専門としていたことも理由であるようだ。解剖学は医学の基礎部門であるが、ある特定の病気の治療を目的とした学問ではない。外科における実用の学でもありながら、それじたいは実用の学ではないという不思議な存在である。

この対談集は対談相手の発言も面白い。対談相手が著名人であっても、その人の対談集に収録されていないものもあるので、この対談集で読む意味がある。

テーマ別に三部に編集されている。この編集はじつに巧みだ。全体的に「脳と身体の関係」をベースにした養老節なのだが、わたしなりにタイトルをつけるとするとこんな感じだろうか。

第一部 いわゆる理系的教養で「見えない世界」をみる
第二部 「見えないもの」への感受性がカギ
第三部 「見えない日本」としての世間を理解し、それをどう越えるか

対談が行われた1996年時点で阿部謹也(1935~2006)の「世間論」にもっとも深い理解を示し、その後 「世間論」を徹底的に使いこなして独自のものの見方にまで発展させているのは養老氏がピカイチであろう。

それは、養老氏が定年を前にして東大教授を辞めるという形で、ご自身も「世間」から外に飛び出た人だからだろう。この点は、ドイツ文学者の池内紀氏も同様だ。「世間」のなかにいては、「世間」そのもの対象化して捉えることは至難のわざである。

不文律としての「世間」、暗黙のルールとしての「世間」、書かれざる憲法である「世間」。意識化すると問題がしょうじるのが「世間」の不文律。

問題提起を行ったのは歴史家の阿部謹也先生だが、養老氏の理科系的な発想も踏まえて、「世間」はより立体的に捉えることが可能になった。

妊娠中絶が倫理的問題にならないのに脳死が問題になっている日本(・・2013年時点でも臓器提供する人はまだまだ少ない)、こんな事例をつうじて日本における法律の意味もわかってくる。

いまだ生まれていない者はメンバーではなく、死ぬことによってはじめて脱出できるのが、利害関係でつながった人間関係である「世間」なのである。

日本ではなぜ「個」として生きるのが難しいのか、その理由は「公」(おおやけ)としての「世間」の存在にあるのだが、「世間」について考えたかったら、養老孟司も読むべきだと思う。


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目 次

第一部
荒俣宏(作家)-混ざる文化・混ざらぬ文化
奥本大三郎(フランス文学者)-虫を愛でる日本人の自然観
田崎真也(ソムリエ)-香りの認識のメカニズム
酒井忠康(美術評論家)-日本の景観とパブリック・アート
藤原正彦(数学者・作家)-数学と日本的美意識
第二部
水木しげる(マンガ家・妖怪研究家)-無意識に身を任せる
横尾忠則(画家)-魂の復権
岸田秀(評論家)-現実とは脳が作り出した産物
中村桂子(生物学者)-“個”を救済する新たなシステムを
上田紀行(文化人類学者)-疑似“癒し”からの脱却
第三部
大石芳野(写真家)-ベトナムの森に思う
池内紀(ドイツ文学者。エッセイイスト)-言葉の壁を超えて
ピーター・バラカン(ブロードキャスター)-メンバーズ・クラブの国、日本
阿部謹也(歴史学者)- “世間” から飛び出して生きる
黒川清(医学者)-“本気”のスピリット

著者プロフィール  

養老孟司(ようろう・たけし)
1937年神奈川県鎌倉市生まれ。東京大学医学部卒業後、インターンを経て解剖学教室に入り、東京大学大学院医学系研究科基礎医学専攻博士課程修了。標本作りなど、研究のかたわら、文学的領域でも活動の場を広げてきた。1995年に東京大学医学部教授を退官、1996年より北里大学教授。東京大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


<関連サイト>

養老孟司×隈研吾×廣瀬通孝 鼎談:日本人とキリスト教死生観(2) (日経ビジネスオンライン 2014年3月25日)
・・「相対評価」ではなく「絶対評価」が個人主義を育む」  近代精神の主導者であるイエズス会系の栄光学園という男子校出身者の三人が語りあう記事。養老孟司氏が阿部謹也の「世間論」をいちはやく理解した背景がわかる。一部引用しておこう。

- 以前、養老先生は、日本人とキリスト教は折り合いが悪いとおっしゃっていました。
養老: そうね、だから世間にふたつの基準ははいらない、という。
- 若い時にキリスト教的な価値観を浴びたことで、ご苦労されたことはありますか。
養老: 苦労というか、考え方ですよね。これは自分じゃなかなか分からないんですけど、考え方は相当、影響を受けているんじゃないですか。キリスト教的な考え方に合う、合わない、というもとの性質はあるとは思いますけど。だって僕は日本の世間とは、もともとあまり合わないじゃないですか。・・(後略)・・


なお、上記の対談は『日本人はどう死ぬべきか?』というタイトルで日経BP社から単行本化されている(2014年11月28日 記す)



<ブログ内関連記事

■養老孟司氏関連

『形を読む-生物の形態をめぐって-』(養老孟司、培風館、1986)は、「見える形」から「見えないもの」をあぶり出す解剖学者・養老孟司の思想の原点

書評 『唯脳論』(養老孟司、青土社、1989)-「構造」と「機能」という対比関係にある二つの側面から脳と人間について考える「心身一元論」

書評 『身体巡礼-[ドイツ・オーストリア・チェコ編]-』(養老孟司、新潮社、2014)-西欧人の無意識が反映した「文化」をさぐる解剖学者の知的な旅の記録


■阿部謹也と「世間論」

クレド(Credo)とは
・・後半の「クレド(credo)とは-その原義をさかのぼる」で、『世間を読み、人を読む-私の読書術-』(阿部謹也、日経ビジネス人文庫、2001)から長い引用を行って「信徒信経」としてのクレドについてくわしく解説した

書評 『新・学問のすすめ-人と人間の学びかた-』(阿部謹也・日高敏隆、青土社、2014)-自分自身の問題関心から出発した「学び」は「文理融合」になる
・・「世間」について触れてある

「釈尊成道2600年記念 ウェーサーカ法要 仏陀の徳を遍く」 に参加してきた(2011年5月14日)
・・「特別対談:『無智の壁』 養老孟司氏&スマナサーラ長老 司会:釈徹宗氏」

「自分のなかに歴史を読む」(阿部謹也)-「自分発見」のために「自分史」に取り組む意味とは

書評 『「空気」と「世間」』(鴻上尚史、講談社現代新書、2009)-日本人を無意識のうちに支配する「見えざる2つのチカラ」。日本人は 「空気」 と 「世間」 にどう対応して生きるべきか?


■その他の対談者の著作

書評 『ことばの哲学 関口存男のこと』(池内紀、青土社、2010)

書評 『富の王国 ロスチャイルド』(池内 紀、東洋経済新報社、2008)

(2014年3月25日、7月27日、9月1日 情報追加)


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