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2013年2月10日日曜日

書評 『「紙の本」はかく語りき』(古田博司、ちくま文庫、2013)-すでに「近代」が終わった時代に生きるわれわれは「近代」の遺産をどう活用するべきか


文庫オリジナルである。筑摩書房の「ちくま」に2009年から3年間連載されたものをまとめたものだという。もとの文章は読んでいなかったので、古田ファンとしてはありがたい。

著者の表現をつかえば、モダン(近代)の時代に出版という形で蓄積されてきた知的遺産を、ポストモダン(後近代)に生きる現代人がどう活用するかが本書のテーマである。

本書が書かれた背景は、いまという時代の状況がある。インターネットで検索すれば、たちどころに情報が収集できて、なにかしらのまとまった発言を行うことが容易になった時代である。

だが、著者の言うことに耳を傾けてみる必要があるだろう。

ネットに蓄積された知識を活用するとき、一番の問題は、それがどれくらい内容的に深いか、どのくらい広く領域をカバーしているのか、まるでわからないことである。もう一つの問題は、紙の知識と異なり、編集者や校閲者の目配りを経ていないため、事実上の誤認、誤記、誤植がまったくチェックされないまま、人々の目に触れることである。
これらの欠点を克服するためには、普段から広く深く紙の知識を漁り、相互に関連づけながら備えていくことが必要だろう。(P.22)

そう、まったくそのとおりだ。インターネットという日々進化する膨大な知識ベースに簡単にアクセスできる現代人は、その玉石混交(ぎょくせきこんこう)の膨大な情報の真贋を見極めるための目をもたなければならないのである。「目利き」にならなくてはならないということだ。

そのための試みが本書である。目利きとは技術の問題である。自分のアタマで考えるための技術である。

いまや Google Books がすべての単行本の内容を一元化して閲覧できる取り組みを行っている最中にある。現在は英語の単行本が対象となっているようだが、著作権の切れた日本語の本は国立国会図書館もマイクロフィッシュ化していることであるし、いずれデジタルデータとして容易に活用できる日も来ることだろう。

だが、日本語で出版された本が完全にインターネット上で読めるとは考えないほうがいいだから、紙の本も読む必要が大いにあるということだ。それは本書で取り上げられた書籍名を一瞥(いちべつ)してみればすぐにわかることだ。

そしてまた、インターネットで調べたらわかるようなことで事実誤認がないよう、ブログなどの文章をアップする際には、細心の注意を払って事実関係の確認を行うことも同時に重要だ。ネットで調べればわかるような事実に言及していないのは怠漫と言わねばならない。

紙の本を読む習慣を身につけておいたほうがいいのは、自分なりの世界の見方、切り口を身につけるためである。それは権威にもたれかからないという姿勢をつくることでもある。判断を他人の言説にゆだねないということだ。

人文科学や社会科学の分野では、いまだにヘーゲルやマルクスに体現されたゲルマン的な観念論で語る人たちが少なくないようだ。「偉人」の虎の威を借りた、まことにもって愚かな習性である。

古田氏の議論は、周辺にいる人文社会科学の研究者たちの言動を前提にしているようだ。リアル世界に生きているビジネスパーソンにとっては、基本的に古田氏の主張のほうが、きわめてまっとうなものと映る。

膨大な情報の真贋を見極めるための目をもたなければならないためには、アングロサクソン的な経験論が不可欠となる。

アングロサクソン的な経験論は、ビジネスパーソンであれば当然のことながら身につけていなければならないことだ。アングロサクソン的発想の「粋」(すい)であるビジネス教育をMBAコースで学んだ人なら、決定論ではなく確率論で考えると表現するところだろう。これはビジネスに限らず理工系では当たり前の思考方法である。

その意味では、本書の基本姿勢は、社会科学や理科系の発想に慣れていない人には、よい手引きにはなるだろう。いまだに「近代的思考」から抜け出せない人が少なくないようだが、そういった人には、本書のような毒消しが必要だ。もちろん近代の成果は大いに使いこなしての上であるが。

取り上げられた本はいわゆるスタンダードな書籍ではないが、そんな本もあったのかという「発見」の喜びを得ることもできる。自分にとって「無関心の本」と偶然に遭遇してみる、そういうことも自分の思考枠を広げてくれることになる。「常識」を疑う基盤が自分のなかにできあがるということでもある。

こういったプロセスを繰り返していくことで、「自分で考え、自分で行動する」人間ができあがっていくのである。





目 次

まえがき
第1章 変配の章
第2章 直観の章
第3章 世界化の章
第4章 壊造の章
あとがき
作品名索引
人名索引

著者プロフィール

古田博司(ふるた・ひろし)
1953年横浜生まれ。慶應義塾大学大学院修士課程修了(東洋史専攻)。延世大学、漢陽大学などで日本語講師を務める。滞韓6年の後、帰国。現在は筑波大学大学院教授。著書に『東アジアの思想風景』(サントリー学芸賞)、『東アジア・イデオロギーを超えて』(読売・吉野作造賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。

(2001年に出版された若者向きのこの本も同じ趣旨である)


<ブログ内関連記事>

古田博司氏関連

書評 『ヨーロッパ思想を読み解く-何が近代科学を生んだか-』(古田博司、ちくま新書、2014)-「向こう側の哲学」という「新哲学」

書評 『日本文明圏の覚醒』(古田博司、筑摩書房、2010)-「日本文明」は「中華文明」とは根本的に異なる文明である
・・ 「モダン」(近代)と「ポストモダン」(後近代)の断層は限りなく大きい。19世紀後半から始まった「モダン」は、冷戦構造の終焉から解体がはじまり、いまやほぼ完全に終焉を迎え、不可逆の流れとして「ポストモダン」が進行している。
 「モダン」の時代に確固たるものと思われていた「中心」は、実は空洞であったことが次から次へと露見し、すべてが虚構であったことがわかってしまった。
 30歳台以下の世代と、私もその一人であるが40歳台以上とくに「モダン」時代にマインドセットを形成された50歳台以上の世代との断層は、たんなる世代間格差を超えたものがある。後者の世代が願う、失われた「共同体」再現というノスタルジックな夢は、徒労と終わるだけであろう。時代は完全に変わったのである。あらたな時代に、40歳台以上の人間がとるべき態度はあきらかだろう。
 むしろ、著者が指摘するように、下手に「モダン」の時代を知らない30歳台以下の若年層のほうが、この時代への適応力が強いのは当然だ。インターネットの普及がさらに「ポストモダン」を加速し、因果律ですべてを説明したがるドイツ的知性から、事実列挙式のアングロサクソン的知性への転換が定着しつつある。
 これは、日頃から大学生と接することの多い著者ならではの見解といえよう。著者による、2000年以降の時系列の大学生の観察と大学教育における試行錯誤の記録が、ドキュメントとしてもたいへん興味深く、説得力をもつ」(当ブログ記事から再録)。

書評 『日本人は爆発しなければならない-復刻増補 日本列島文化論-』(対話 岡本太郎・泉 靖一、ミュゼ、2000)
・・日本が「儒教国」ではないことを、文化人類学者の泉靖一の発言を紹介して説明している。また、古田博司の著書について触れている。


紙の本

書評 『脳を創る読書-なぜ「紙の本」が人にとって必要なのか-』(酒井邦嘉、実業之日本社、2011)-「紙の本」と「電子書籍」については、うまい使い分けを考えたい

書評 『もうすぐ絶滅するという紙の書物について』(ウンベルト・エーコ、ジャン=クロード・カリエール、工藤妙子訳、阪急コミュニケーションズ2010)-活版印刷発明以来、駄本は無数に出版されてきたのだ

(2014年8月23日 情報追加)





(2012年7月3日発売の拙著です)





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