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2012年3月28日水曜日

書評 『大英帝国の異端児たち(日経プレミアシリーズ)』(越智道雄、日本経済新聞出版社、2009)-文化多元主義の多民族国家・英国のダイナミズムのカギは何か?


文化多元主義の多民族国家・英国のダイナミズムは「異端児」たちによって生み出されてきた

ともにその絶頂期を過ぎてから久しい英国と日本であるが、同じくユーラシア大陸の西端と東端に位置する島国という性格を共有するのに、マインドが大きく違う。

英米研究家の越智道雄氏は「異端児」というキーワードで、現在の文化多元主義の多民族国家・英国と英国人の特質を抽出してみせる。

本書に登場する英国人は、すべてが英国出身ではない

英国を代表する百貨店ハロッズを買収したエジプト出身の実業家アル・ファイードのようなわかりやすい例だけではない。

ヴィクトリア女王時代の首相ディズレーリ(D'Israeli)は "イスラエル人"(Israeli)という意味の名字のユダヤ系だし、そもそも現在のウィンザー王家はドイツ北部のハノーファーに出自をもつドイツ系である。また、メディア王マードックは英連邦のオーストラリア出身である。

英国生まれの生粋の英国人であっても、実業家のリチャード・ブランソンやダイアナ妃のような「異端児」が時代を引っ張ってきた。

本書にはこれらの「異端児」以外にも数多くの登場人物が分析されているが、英国史上初の女性首相であるマーガレット・サッチャーとその夫で石油会社の重役であったデニス・サッチャー夫妻を描いた第二章「妻のパワープレイ、夫のステータスゲーム」が興味深い。

2012年に日本公開された映画『マーガレット・サッチャー-鉄の女の涙』にも重要なバイプレイヤーとして登場するデニスだが、彼のような典型的な英国流ユーモアを語る英国紳士と、パブリックスクール出ではない英国人らしからぬマーガレットのカップルが英国復活を支えたのだと思うと、なかなか英国というのは面白い国だと思うのである。女王陛下を戴く英国は、男性にとってのある種のロールモデルを提供してくれる先進国である。

第一章で扱われている離婚後のダイアナ妃とエジプト出身の実業家アル・ファイードの息子との関係や、ヴァージン・グループの総帥である実業家リチャード・ブランソンについては、いろいろと本もでているので目新しさはないが、「異端児」というコンセプトで一括してまとめたことに本書の意味があるというべきだろう。

現代人だけでなく、ふたりの英国首相ディズレーリとグラッドストーンを描いた19世紀までさかのぼって記述された本書を通読すると、大英帝国とのその遺産が何であるか、おぼろげながらもわかってくる

日の沈むことのない植民地ネットワークを構築した海洋国家・英国は、植民地帝国の遺産として現在は文化多元主義の多民族国家という複雑な存在となっているのである。

「異端児」をコンセプトにした本書は、英国礼賛でも英国批判でもない。著者の文体は、やや含みをもったものであり、情報を詰め込みすぎていているのでけっして読みやすくないが、英国社会の複雑さをそのままつかみとるうえでは、読んで損はない一冊である。


<初出情報>

■bk1書評「文化多元主義の多民族国家・英国のダイナミズムは「異端児」たちによって生み出されてきた」投稿掲載(2012年3月27日)
■amazon書評「文化多元主義の多民族国家・英国のダイナミズムは「異端児」たちによって生み出されてきた」投稿掲載(2012年3月27日)






目 次
第1章 民衆のプリンセスの光芒 Royal Family-ダイアナ・スペンサー vs 英王室
第2章 妻のパワープレイ、夫のステータスゲーム Premier Family-サッチャー夫妻とその息子
第3章 旧植民地始発のビジネス登攀競争 Business-アル・ファイード vs タイニー・ロウランド
第4章 イギリスを覇権国家へと押し上げたライバル Politics-ベンジャミン・ディズレーリ vs ウィリアム・グラッドストーン
第5章 世界帝国の作り方 Empire & Media-セシル・ローズとルパート・マードック
第6章 祖国に背いた「第三の男」たち Intelligence-キム・フィルビーとグレアム・グリーン、そして「ケンブリッジ5」
第7章 アイデアを残さずつかまえろ Venture-サー・リチャード・ブランスン


著者プロフィール
越智道雄(おち・みちお)    
明治大学名誉教授。1936年、愛媛県今治市生まれ。広島大学大学院文学研究科博士課程修了。明治大学商学部教授を経て現在は著述、翻訳に専念。文化多元主義・宗教・ポップカルチャーなどの視点から、現代アメリカ及びイギリス、英語圏新世界諸国を研究している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


<書評への付記>

古くて新しいロンドンの「海賊」と「異端児」というDNA

英米研究家の越智道雄氏は「異端児」というキーワードで英国のDNAを一括してみせたが、エコノミストの浜矩子氏は、英国復活のカギとなたDNAを「海賊」というキーワードで語っている。

「異端児」も「海賊」も、ともに比喩的なイメージとして受け取るなら、英国人の進取の気性をよくあらわしているものといえよう。

「海賊」というキーワードは、『ネクタイを締めた海賊たち-「元気なイギリスの謎を解く-』(浜矩子、日本経済新聞社、1998)で展開されている。現在は品切れ。

もちろん「海賊」ですべてを表現するのはムリがあるが、英国のエリート層が、「陸にあがった海賊」という見方は面白い。すくなくとも、英国海軍が海賊の合法化として発展したことを考えれば、それは十分に頷ける。

浜矩子氏は、小学生時代の4年間と、三菱総研の初代ロンドン駐在員所長、駐在エコノミストとして1990年から1998年まで8年間ロンドンで過ごしている。

1997年のIMFショックの際には、BBCの討論番組にも出席して論客ぶりを示したらしい。BBCの番組は見ていないのでわからないが、日本のTV番組に出席してしゃべている姿をみれば、おおよその推測はできる。

戦後になって大英帝国は解体し、その後の長い景気停滞期は「英国病」と揶揄されていたのだが、これに徹底的にメスを入れて大改造を行ったのが保守党のサッチャー首相であった。

1980年代はまさにサッチャー時代そのものなのだが、その時代は金融の世界では「ビッグバン」や「ウィンブルドン化」が語られた時代である。徹底的な規制撤廃によって、旧来の停滞した市場が大改革された荒療治であったが、そのおかげで英国はふたたび復活することになった。

2008年の「リーマンショック」後、英国経済はふたたび苦境に陥っているが、旧植民地の英連邦から移民を受け入れてきた文化多元主義で多民族社会の英国は、国の内外から「異端児」を受け入れることさえできれば、また復活することは確実だろう。

ここまで書いてきて、ふと京都のことを思い出した。京都もまた、よそから多くの人材を集めてきて、みずからを活性化してきた歴史をもつ都市だ。京都の同志社大学は、エコノミストの浜矩子氏を招聘してビジネス研究科の教授にしている。古くて新しい点は、英国のロンドンも京都も同じ。ともに都市として同型のDNAをもっているのだろう。

「海賊」精神と「異端児」の存在、日本だって、もともとはそういうDNAをもちあわせていたのではないかと思うのである。官僚組織がそれを阻害しているが、民間は官やマスコミのいうことなど黙殺して、自由に航海に乗り出すべきだろう。

英国はもとより、日本も「海洋国家」なのであるから!






<ブログ内関連記事>

映画 『マーガレット・サッチャー-鉄の女の涙-』(The Iron Lady Never Compromise)を見てきた

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