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2012年6月11日月曜日

日本語の本で知る英国の名門大学 "オックス・ブリッジ" (Ox-bridge)


オックス・ブリッジの話に入る前に、わたし自身のオックス・ブリッジとのかかわり(のなさ?)について書いておきたい。

大学学部では中世ヨーロッパ史を専攻したので、当然のことながら大学の起源リベラルアーツ(=七自由学芸)といった話題には精通している。

欧州の大学は、世界最古のボローニャ大学(・・先日、大きな地震の被害があったイタリア北部)も、中世から有名な、スペインのサラマンカ大学も、ポルトガルのコインブラ大学も訪問している。パリ大学の周辺カルチエ・ラタン(ラテン街)はもちろんのこと、ドイツのゲッティンゲン大学も訪問している。

また、大学院はアメリカの大学は卒業しているので、キャンパスの雰囲気は西海岸も東海岸も熟知している。

だが、英国の大学、とくにオックス・ブリッジについては、訪問したことすらないのだ。なぜかと言われても困るのだが、限られた滞在日数を英国にはあまりつかいたくないという気持ちが働いたため訪問は断念したまま今日に至るといったところだろうか。


オックス・ブリッジ(Ox-bridge)とは

オックス・ブリッジ(Ox-bridge)とは、英国を代表するトップ大学、オックスフォード大学(Oxford)とケンブリッジ大学(Cambridge)を総称したものだ。

英文学やイギリス映画にはよくでてくるので、オックス・ブリッジというコトバは比較的知られているのではないだろうか。オックスドードを漢字で表記して牛津といったり、ケンブリッジを剣橋といった表記も知っている人は知っているだろう。

わが母校の一橋大学は、その強みであるボートレースにおいては、自らをケンブリッジ(剣橋)になぞらえきたものだ。一橋を英語でワンブリッジ(One bridge)と直訳したダジャレは卒業生ならみな知っているだろう。もちろん、東大をオックスフォードになぞらえての話である。商東戦という対抗戦も、カウンターパートからすれば東商戦となる。早慶戦と慶早戦のような関係か。

だが、社会科学の総合大学である一橋大学にとっては、英国の大学ではむしろLSE(London School of Economics)のほうが近い。そもそもドイツのフンボルト型の大学の影響を多大に受けた一橋大学は、大学の伝統であるゼミナールゼミナールというコトバからわかるようにドイツ語である。

戦後は米国の影響を受けており、思ったよりも英国的な要素は強くない。これは福澤諭吉以来の英国びいきである慶應との違いであろう。

自然科学や社会科学の世界ではケンブリッジ大学の存在は大きい。たとえば、経済学者のジョン・メイナード・ケインズはその代表的存在だといっていい。

しかし、政治の世界ではオックスフォード大学出身者が圧倒的に多い現在の首相デイヴィッド・キャメロン(1966年生まれ)は、イートン校を経てオックスフォード大学ブレーズノーズ・カレッジでPPE(哲学・政治学・経済学)を専攻している。このPPEは政治家養成コースのような存在である。

タイ前首相のアピシット・ウェーチャチーワ(1964年生まれ)もおなじくイートン校を経てオックスフォード大学セント・ジョンズ・カレッジでPPE(哲学・政治学・経済学)専攻している。

ちなみに、マーガレット・サッチャー英国元首相(1925年生まれ)は、オックスフォード大学サマヴィル・カレッジで化学専攻アウンサンスーチーさん(NLD党首 ミャンマー連邦国会議員、1945年生まれ)は、オックスフォード大学セント・ヒューズ・カレッジでPPE(哲学・政治学・経済学)専攻である。

オックス・ブリッジにおいては、大学もさることながら、カレッジ(あるいはコレッジ)の存在が大きい。こういったことは、知識としてだけでも知っておきたいことだ。


日本語の本で知るオックス・ブリッジ
    
高校時代にロングセラーの名著 『自由と規律-イギリスの学校生活-』(池田潔、岩波新書、1949)を熟読していたことがある。

この著者も慶應大学で教授を務めた方だが、パブリックスクールを経てケンブリッジ大学を卒業した大学教授の回想録である。だが、いかんせん、出版から60年以上たっているだけでなく、内容は著者が体験した1920年代の古き良き大英帝国時代の話なので、いかにも古すぎるのが玉に瑕だ。
    
つい最近のことだが、この人は戦前の三井財閥の総帥であった銀行家・池田成彬の息子であることを知った。

こういう次第で、オックス・ブリッジ訪問したことはいまだにないのだが、気になったことがあったので、しばらく前のことになるが、日本人が日本語で書いたオックス・ブリッジ関連の、比較的あたらしい本をまとめて読んでみた。

まずは、17歳でオックスフォード大学に合格した帰国子女で、卒業後はケンブリッジ大学で講師を務めた経験をもっているという才媛・川上あかねさんの体験記を二冊。『わたしのオックスフォード』( 川上あかね、晶文社、1995) と 『ケンブリッジの贈り物』(川上あかね、新潮社、2003)。出版社は異なるが、カバーのイラストは同じイラストレーターの手になるのので、統一感があるのがいい。
   
ただし、これすら、すでに17年前の出版であり、オックスフォード入学はさらに以前のものであるから、状況は変化しているかもしれない。ともに現在は品切れ中なので、古本を入手して読んでみた。




川上あかねさんの本は、入学試験を受けてオックスフォード大学に進学した人であり、しかも英語も日本語も堪能な人であるので、得難い体験談となっている。さらにオックスフォードとケンブリッジを比較してみる視点があって、この二冊をあわせ読むと、じつに貴重な視点を得ることができる。

さらに、『遙かなるケンブリッジ-一数学者のイギリス-』(藤原正彦、新潮文庫、1994 初版単行本 1991) と 『ケンブリッジのカレッジ・ライフ-大学町に生きる人々-』(安部悦生、中公新書、1997)を読んでみた。




この二冊は、ともに Visiting scholar としてケンブリッジ大学に一年間滞在した日本の大学教授が書いたものであり、その意味では、学生や現地採用の講師として体験した川上あかねさんのものと比べるとインサイダー性には劣るものがある。

藤原正彦氏は、『国家の品格』で有名になった人。数学者というよりもエッセイストといった肩書きで知られているが、作家・新田次郎の長男である。偏屈者ぞろいの数学世界であるが、アメリカの大学と比較してのケンブリッジ大学の描写が興味深いだけでなく、悲憤慷慨する日本男児といった筆致が、読んで面白い作品になっているといえる。

安部悦生氏は、経営史の研究者。ほんとうは鉄鋼史の研究のためスコットランドのある大学にしたかったのだが、家族連れということで治安の安定したケンブリッジ大学にしたとのことだ。

さらに、以前買ったまま読んでなかった、小川百合、『英国オックスフォードで学ぶということ-今もなお豊かに時が積もる街-』(講談社、2004)もついでに読んでみた。

これはチャンスに恵まれてオックスフォード大学の聴講生となることのできた画家の体験記。学位を取得するのが目的ではなく、また学者でもないので、知的好奇心を満足させることのできるオックスフォード大学という環境をアウトサイダーの目で描いたものだ。


オックスフォードは英語の辞書や出版局の存在で有名だが、意外なことに、日本人の手になるオックスフォード大学体験記はケンブリッジ大学と比べるとあまり多くない。

日本人の英語学習者にとっては、オックスフォード大学出版局から刊行された各種辞書などつかう機会が多いので不思議な感じもする。わたしも、高校時代からオックスフォード大学出版局の学習者用英英辞典をつかってきた(・・さすがにOEDはつかってない)。ケンブリッジは日本人の英語学習世界にはあまり入り込んでないので身近ではないような気もする。


オックス・ブリッジ教育の顕著な特性は一対一の徹底的訓練

日本語で書かれたオックス・ブリッジ体験記を読んで、うらやましく思うのは、オックスフォード大学のチュトリアル(tutorial)、ケンブリッジ大学のスーパービジョン(supervision)という、一対一の教育である。オックスブリッジの学生は、教師との一対一の個人指導が特色だが、徹底的に鍛えられるのである。

理系は研究室単位であることは日本と同じなので、さすがに一対一は予算の関係やマンパワー的には不可能なようだ。

日本でもゼミナールというドイツ由来の制度があって、わたしも体験したが、オックス・ブリッジのほうがより徹底しているような印象を受けた。それだけ教師の負担も重そうだ。

わたしの大学時代は、ことさらむずかしくて敬遠されがちな授業を多く受講していたので、講義でありながら少人数の授業を体験することができた。

バブル時代前夜のレジャーランド化していた大学キャンパスは、いかにして安直に単位を取るか(・・当時はチョンボというスラングで表現されていた)が最大のテーマだったのだ。天の邪鬼名(あまのじゃく)的性格をもつわたしは、あえて大勢には背を向けて、自分で自分がやることを設計していたわけだ。あえて言えば、「ひとりリベラルアーツ体制」というべきか。

同じカネを払うなら、濃い授業のほうがいい。フランス語も、その他のマニアックなテーマの授業もそうやって、教師と一対一や少人数で学ぶことができたのはじつに幸いであった。もちろん予習はたいへんだが、確実に身につくことは言うまでもない。

マスプロ教育は、学生の側からみればサボるのには都合がいいし、教師の側からみれば一方通行のブロードキャスティング型なのでラクはラクだろう。最近はさすがにないだろうが、かつては30年も同じノートを読み上げる教授というのが揶揄されていたものだ。

最先端の研究成果を学生がわかろうがわかるまいが講義する授業というのは、意欲のある学生にとっては面白いだろうが、教育にはインタラクティブであることが不可欠だろう。

その意味でも、オックス・ブリッジの教育は、英国よりもドイツ型のゼミナール制度をもつ日本の大学教育にも似ている面がある。これを知ったのは大きな収穫だった。

アメリカの大学への留学生が減っているということが問題になっているが、本気で勉強するなら、アメリカであれ英国であれ、日本以外の大学で勉強するのがいいかもしれない。

ただし、英国の場合は、高校段階で進路が理工系か社会科学系か文学芸術系か決まってしまうらしいという話も聞いているので、あまりフレクシブルなシステムではないような印象も受ける。

リベラルアーツという観点からみると、アメリカのリベラルアーツ専門大学や名門大学のほうが、文理にまたがる幅広い選択が自分の関心にしたがって可能なので、わたしとしては好ましい印象をもっている。

英国の思想家 J.S.ミルが言ったとされる "try to know something about everything, everything about something"  の理念は、むしろ現代アメリカのほうによく受け継がれているのではないだろうか。

ただし、英国の大学については、あくまでも本から得た知識であるから、実態とはやや違うのかもしれない。とはいえ、日本の大学はスルーして、これからオックス・ブリッジを目指す高校生はぜひ川上あかねさんの本を読むことをすすめたい

わたしもまた、いつの日か、オックス・ブリッジはともに訪問したいものである。









<関連サイト>

「教養? 大学で教えるわけないよ」 英国名門大、教養教育の秘密【前】 (池上 彰他、日経ビジネスオンライン、2014年6月24日)
・・東工大における「教養教育」の実践者ったいが英国流の「教養」について語り合う

「伊藤: 専門外の人に自分の専門をアピールするためには、単に分かりやすく伝えるだけではなくて、自分の専門が私たちの生きる社会とどのように結びついているか、その部分について相手に実感してもらう必要があります。なぜ、そういった会話が自然にできるのか。それは、イギリスの大学では、社会との関係を常にイメージしながら専門教育を進めているからです。そしてまさにこの部分をイメージする力が教養なのです。イギリスでは、教養は「専門外の知識」ではありません。「専門を活かすための知識」が教養なのです。
池上: なるほど。
伊藤:こうしたイギリスの教養観をひとことで表すのが「transferable skill」という言葉です。

理系、恋愛音痴、コミュ障を「教養豊か」に変えるには英国名門大、教養教育の秘密【後】 (池上 彰他、日経ビジネスオンライン、2014年7月1日)

オックスフォード×ケンブリッジ 英国流創造と学びの技法 (岡本尚也、東洋経済イオンライン、2014年11月28日から連載中)
・・「ケンブリッジ大学物理学部に留学し、博士号を取得、“Nature Materials”に論文を載せるなど物理学者としての実績を上げながら、現在はオックスフォードで近代日本社会の研究に取り組み、特に教育社会学を学ぶ」、1984年生まれの日本人による連載

ケンブリッジ大学に視る英国の大学教育(原麻里子のホームページ)

(2014年6月30日 項目新設)
(2015年2月18日、2017年5月17日 情報追加)


<ブログ内関連記事>

"try to know something about everything, everything about something" に学ぶべきこと
・・J.S.ミルの名言に学ぶもの

最近ふたたび復活した世界的大数学者・岡潔(おか・きよし)を文庫本で読んで、数学について考えてみる
・・藤原正彦氏の数学史の読み物について言及

書評 『教養の力-東大駒場で学ぶこと-』(斎藤兆史、集英社新書、2013)-新時代に必要な「教養」を情報リテラシーにおける「センス・オブ・プローポーション」(バランス感覚)に見る

書評 『私が「白熱教室」で学んだこと-ボーディングスクールからハーバード・ビジネススクールまで-』(石角友愛、阪急コミュニケーションズ、2012)-「ハウツー」よりも「自分で考えるチカラ」こそ重要だ!
・・アメリカ型のリベラルアーツ教育の実際について。英国にはないシステム

書評 『イギリスの大学・ニッポンの大学-カレッジ、チュートリアル、エリート教育-(グローバル化時代の大学論 ②)』(苅谷剛彦、中公新書ラクレ、2012)-東大の "ベストティーチャー" がオックスフォード大学で体験し、思考した大学改革のゆくえ

書評 『名門大学スキャンダル史-あぶない教授たちの素顔-』(海野弘、平凡社新書、2010)-奇人変人の巣窟である大学を人物エピソードで描いた英米名門大学史

(2014年6月30日、2015年3月19日 情報追加)






(2012年7月3日発売の拙著です)







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