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2011年8月9日火曜日

書評 『原爆を投下するまで日本を降伏させるな-トルーマンとバーンズの陰謀-』(鳥居民、草思社、2005 文庫版 2011)-きわめて大胆な仮説的推論。じっさいに自分で読んで内容が是か非か判断してほしい


きわめて大胆な仮説的推論。じっさいに自分で読んで内容が是か非か判断してほしいと思う

 本日(2011年8月9日)、いうまでもなく「長崎の原爆記念日」だ。

 そしてまた、スターリンが「日ソ中立条約」を一方的に破棄して、ソ連軍が怒濤の如く満洲と北方領土に攻め込んできた翌日でもある。

 この二つの「記念日」にかかわる内容の本として、きわめて大胆な仮説を展開した『原爆を投下するまで日本を降伏させるな』 という本を、文庫化されたのこの機会に紹介しておきたいと思う。

 もともとは、6年前の 2005年に『原爆を投下するまで日本を降伏させるな-トルーマンとバーンズの陰謀-』(鳥居民、草思社、2005)に「トルーマンとバーンズの陰謀」という副題をつけて出版されたものだ。トルーマンはいうまでもなく原爆投下を意志決定した大統領、そしてバーンズとは国務長官の名前である。

 日本降服後の1946年7月にトルーマン大統領に提出された「米戦略爆撃調査団の総括報告」には、原爆を使用しなくても、「1945年12月31日以前、あらゆる可能性を考えに入れても1945年11月1日までに」は、無条件降伏していただろう、と述べられているという。

 ではなぜ、米大統領トルーマンは、原爆投下という人類に対する犯罪行為を「正義」の名のもとに行ったのか? 

 これまでもさまざまな説明がなされてきた。その代表的なものといえば、以下のものがあげられるだろう。

 敗戦当時の首相・鈴木貫太郎が「ポツダム宣言」を、いわゆる「黙殺」したから、あるいは、日本本土上陸作戦が実行された際には、米軍側に大量の死傷者が発生することが予想されたので原爆投下によって日本の敗戦を早めることを意図した、あるいは、同じ枢軸側であっても、白人国家のドイツとは違って、日本は黄色人種の国だからだ、などなど多数ある。現在でもそのような説明がなされてことも多い。

 著者は本書で、これらの通説を真っ向から覆すことを試みている。

 著者は、原爆投下にいたる 4つの重要な日付に着目している。すなわち、「原爆実験の日」、「原爆投下準備完了の日」、「ポツダム会談の開催日」、そして「ソ連参戦の日」である。最後の「ソ連参戦の日」とは、まさに長崎に原爆が投下された前日の 8月8日のことだ。

 これらの日付をめぐって、ルーズベルト大統領の急逝後、副大統領から急遽新大統領となったトルーマンと、その最側近であった国務長官バーンズが、いかなる言動を行っていたかを、著者はさながら推理小説のように綿密に追跡し跡づけていく。


 著者の結論はこうだ。結論を知ったうえでぜひ読んでほしいと思うので、あえて書いておこう。

 トルーマンとバーンズの二人は、日本の降伏を早めたいという考えなど当初から念頭にはなかったのだ。

 ルーズベルト大統領の指示によって研究開発が行われ、完成するに至った原子爆弾を、前大統領の急逝という偶発的な事情で手にすることになった二人は、政府や軍の高官たちを欺いてまで、極秘のうちに巧妙な計画を立て、原爆投下を実行させたのである。

 日本降服よりも、原爆投下さきにありきだったのだ!

 そのため、原爆投下のまえに日本が降服してはならなかったのだ! 

 そしてまた、それはソ連が対日戦争を始めるまでに実行しなくては意味がないというタイムリミットが存在したのだ! 

 なんという恐ろしい、卑劣でかつ愚劣な、悪魔のような意志決定とその実行であったことか!

 以上が本書の内容の要約だが、著者の仮説的推論はじつに興味深い。ただ、この推論が正しいかどうかは、公式文書にも、秘密文書にも基づいていない部分が本書には含まれているので、裏付けも検証のしようがないのは残念なことだ。

 すくなくとも、日本人が非白人だったからという理由よりは説得力があるよう思われる。

 すでにわたしも、書評 『原爆と検閲-アメリカ人記者たちが見た広島・長崎-』(繁沢敦子、中公新書、2010) に書いておいたが、米陸軍航空軍の上層部は、「原爆を投下しなくても日本は降伏した可能性がある」ことを十分に認識していたのである。

 わたしもまた、ドイツのドレスデン大爆撃と同様、いやそれ以上に、原爆投下は人道に対する犯罪行為以外の何者でもないと考えている。

 原爆投下の最終決定を下したトルーマン大統領の座右の銘が「The Buck Stops Here」(最終責任は自分ががとる)であったことはよく知られている。

 しかしながら、トルーマンが最終的に下した決断が道義的には是とされなかったことは、本人が一番よくわかっていたようだ。死ぬまで良心の呵責に苦しめられていたという話もある。

 わたしは単行本が出版された2005年に、すぐに購入して本書を読んだのだが、内容的にはおそらくそうだろうと思いつつも、イマイチ納得しかねるものを感じながらも最後まで読んだ。

 ぜひ直接手に取って、著者の推論をじかに味わってもらいたいと思う。そのうえで、結論が是か非か自分で考えてみてほしい。



<初出情報>

 このブログのオリジナル記事です。







目 次

序章 六月二十二日、天皇、「時局収拾」を求める
1. 一号作戦
2. グルーか、スターリンか
3. トルーマンとバーンズ


著者プロフィール

鳥居 民(とりい・たみ)

1929年、東京生まれ、横浜に育つ。日本および中国近現代史研究家。夥しい資料を渉猟し、徹底した調査、考察をもとに独自の史観を展開。2004年に上梓した『「反日」で生きのびる中国』では、1995年から始まった江沢民前国家主席による「愛国主義教育キャンペーン」の狙いを、毛沢東、鄧小平がおこなってきた統治手法に比して考究。反日デモで現実化した恐ろしい事態を正確に予測した。その分析は、日本における対中認識の一つの趨勢をつくった。ライフワークの『昭和20年』は現在もなお刊行中(本データは単行本が刊行された当時に掲載されていたものに増補)。


<関連サイト>

ハーバードでは「トルーマンと原爆」をどう学ぶのか サンドラ・サッチャー教授に聞く(1) (佐藤智恵、日経ビジネスオンライン、2014年11月5日)
・・HBS(ハーバード・ビジネス・スクール)の「リーダーシップと倫理」で取り上げられるケーススタディ。日米双方の視点を踏まえたうえで、指導者の意志決定と倫理の問題が教室で討論される

(2014年11月5日 情報追加)


<ブログ内関連記事>

広島の原爆投下から66年-NHKスペシャル 「原爆投下 活かされなかった極秘情報」 をみて考える

書評 『ナガサキ 消えたもう一つの「原爆ドーム」』(高瀬毅、文春文庫、2013 単行本初版 2009)-"最初の被爆地" 広島と "最後の被爆地" 長崎の背後にあった違いとは?

書評 『原爆と検閲-アメリカ人記者たちが見た広島・長崎-』(繁沢敦子、中公新書、2010) 

書評 『アメリカに問う大東亜戦争の責任』(長谷川 煕、朝日新書、2007)
・・「・・やがていつかは、あの絶対的軍事力に支配された被占領期の対米奴隷根性も日本人の間から消えるのだろう。しかし、その時に日本人は被占領期の先祖の姿に嫌悪をもよおし、GHQへの阿諛追従(あゆついしょう)も、対日無差別絨毯爆撃指揮者への勲一等叙勲も弾劾されずにはすまないと予感する」(P.99)。 

原爆記念日とローレンス・ヴァン・デル・ポストの『新月の夜』

「原爆の日」-立場によって歴史観は異なって当然だ

書評 『ランド-世界を支配した研究所-』(アレックス・アペラ、牧野洋訳、文藝春秋社、2008)

64年前のきょう、ソ連軍が「対日宣戦布告」して侵攻を開始した(2009年8月8日)

(2014年8月6日 情報追加)





(2012年7月3日発売の拙著です)










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