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2017年8月22日火曜日

書評 『崩壊 朝日新聞』(長谷川 熙、WAC、2015)-徹底した取材によって「悪しき企業風土」がはびこる報道機関の謎を探った歴史ノンフィクション


『崩壊 朝日新聞』(長谷川 熙、WAC、2015)を読んだ。このタイトルでこの出版社だと内容はだいたい推測できると思うが、じつは著者は朝日新聞の「中の人」であった

長谷川氏は、1933年生まれの「老ジャーナリスト」と帯のウラにある。定年まで朝日新聞の記者で、その後『AERA』を経て現在フリーの記者。この本を書くために『AERA』を辞めたのだという。

だいぶ以前だが、『アメリカに問う大東亜戦争の責任』(朝日新書、2009)という本を読んで、アメリカの責任を問うだけでなく、返す刀で日本政府も批判する硬派な姿勢に感心したこともあり、長谷川熙(はせがわ・ひろし)という著者の名前がアタマのなかに刻まれたのである。

「慰安婦問題」がいっこうに解消しない。政府間で解決したはずの問題が、ふたたび韓国政府によって蒸し返されている。こんな状況を前にしたら、ハードコアの「嫌韓派」ではなくてもウンザリしてしまうだろう。

そもそもその原因をつくりだしたのが朝日新聞の「虚報」であることは、いまや周知のことだろう。当の朝日新聞も「虚偽報道」であったことは2014年に認めたが、著者はその件にかんする「特集」が掲載された2014年8月5日をもって朝日新聞は崩壊した、新聞としての実質は最終的に終わったと断言する。

「虚報」を掲載し、長年にわたって「虚偽」を否定せず、歴史を「捏造」してきた朝日新聞社の体質がいかに形成されてきたのか、その原因を取材する著者は、「中の人」であった強みを活かして本書を書き上げた。外からする批判のための批判ではない

企業風土や企業体質は一朝一夕にできあがらない。それは良い企業風土であっても、悪しき企業風土であっても同じことだ。歴史的な蓄積が企業風土に反映する。人間は習慣の奴隷であり、人間が構成する組織もまた無意識のうちに習慣の奴隷となる。だからこそ、企業風土を変えるのはきわめてむずかしい。

朝日新聞社の場合も、「戦後」になってから共産主義シンパが経営者として牛耳ってきただけでなく、「戦前・戦中」の「ゾルゲ事件」でソ連のスパイとして逮捕・処刑された尾崎秀実(おざき・ほつみ)に連なるものであることを追求している。コミンテルンの関与である。一級の知識人であった尾崎秀実は元朝日新聞記者であった。

 「現在」を知るためには「過去」にさかのぼって検証しなくてはならない。本書の後半は、ほとんど歴史ノンフィクションのような趣(おもむき)をもっている。日本近現代史ものを読んでいるような感想をもちながら読み込んでしまう。それは、植民地支配や戦争をつうじたアジアとのかかわりでもある。

 「目次」の文言をみれば、どんな本であるか理解できると思う。わたしにとっては、第2部の第2章がとくに興味深いものであった。『毛沢東 日本軍と共謀した男』(遠藤誉、新潮新書、2015)と響き合うものがある。中国国民党を叩くことは中国共産党の利益となり、ひいてはコミンテルンを指導したソ連の利益になるという構図が重なり合う。

第1部 過去を「悪」と見る条件反射
 第1章 吉田清治を称えた論説委員
 第2章 マレー半島「虐殺報道」の虚実
 第3章 松井やよりの錯誤
第2部 視野が狭くなる伝統
 第1章 朝日にたなびくマルクス主義
 第2章 尾崎秀実の支那撃滅論の目的
第3部 方向感覚喪失の百年
 第1章 歴史を読み誤り続けて
 第2章 一閃の光、そして闇

もちろん、朝日新聞にもまともな記者はいる。それは過去においても現在においても同様だろう。だが、悪しき企業体質をもつ組織のなかで正気を保つのは容易なことではない。会社勤めをして組織の「中の人」になった経験をもっている人なら、感覚的に理解できるはずだ。

おそらく、大半の社員は易きに流され、悪しい企業体質に染まってまうのではないか。組織は「世間」であり、そこには「空気」が醸成される。空気に染まること、それはいわゆる「事なかれ主義」である。さらには、そのことに自覚症状もなくなっていく。「大企業病」である。

本書からむりに教訓を見いだすことは必要ないが、朝日新聞社の百年に蓄積された病巣を振り返ることは、悪しき企業体質がいかに形成されていくかについてのケーススタディーとして読むことも可能だろう。朝日新聞のケースは、報道機関であるだけに、よけい罪が重いということは明記しておかねばならない。

朝日新聞社にかんしては、批判のための批判ではなく「他山の石」としなくてはならない。かつて一度たりとも朝日新聞を購読したことのないわたしは、そう思うのである。





著者プロフィール   

長谷川煕(はせがわ・ひろし)

ジャーナリスト。1933年、東京生まれ。慶應義塾大学文学部哲学専攻卒。1961年に朝日新聞社入社。88年初めまで経済部など新聞の部門で取材、執筆し、次いで、創刊の週刊誌『AERA』に異動。93年に定年退社したが、その後もフリーの社外筆者などとして『AERA』で取材、執筆を2014年8月まで続ける。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)


<関連サイト>

朝日新聞の慰安婦虚報は 日本にどれだけの実害を与えたのか デマ報道を基に米国で繰り広げられた反日活動 (古森義久、JBPress、2014年8月20日)

(2017年8月29日 項目新設)


<ブログ内関連記事>

書評 『アメリカに問う大東亜戦争の責任』(長谷川 煕、朝日新書、2007)-「勝者」すら「歴史の裁き」から逃れることはできない


■報道機関の宿痾

書評 『官報複合体-権力と一体化する新聞の大罪-』(牧野 洋、講談社、2012)-「官報複合体」とは読んで字の如く「官報」そのものだ!
・・「新聞社であれ、テレビ局であれ、個々の記者たちに問題意識がないというわけではない。「個」としての記者には良心もあれば、気概もあるはずだ。だが、日本人は見えない「世間」という縛りのなかで生きているので、ついつい組織の意向に同調していまいがちだ。著者の牧野氏もまた、日本経済新聞社のなかにいるときは、言いたいことがいえない、書いた記事がそのまま掲載されないという悔しさを感じ続けていたようだ。「世間」が支配する日本においては、新聞記者は組織の外に出ない限り、存分に活動することはできないのである。一人でも多くの新聞社社員が「脱藩」して、本来の意味のジャーナリストになってほしいものだ。」  この本の著者の牧野氏は日本経済新聞の記者であった

書評 『「空気」と「世間」』(鴻上尚史、講談社現代新書、2009)-日本人を無意識のうちに支配する「見えざる2つのチカラ」。日本人は 「空気」 と 「世間」 にどう対応して生きるべきか?
・・新聞社という企業組織もまた「世間」であり、充満する「空気」に抗うことはむずかしい

『報道災害【原発編】-事実を伝えないメディアの大罪-』 (上杉 隆/ 烏賀陽弘道、幻冬舎新書、2011)-「メディア幻想」は一日も早く捨てることだ!

『大本営参謀の情報戦記-情報なき国家の悲劇-』(堀 栄三、文藝春秋社、1989 文春文庫版 1996)で原爆投下「情報」について確認してみる

書評 『ウィキリークスの衝撃-世界を揺るがす機密漏洩の正体-』(菅原 出、日経BP社、2011)-「無極性時代のパワー」であるウィキリークスと創始者アサンジは「時代の申し子」だ


■「戦後」の日本に蔓延したマルクス主義という害悪

書評 『革新幻想の戦後史』(竹内洋、中央公論新社、2011)-教育社会学者が「自分史」として語る「革新幻想」時代の「戦後日本」論
・・ソ連が崩壊するまで、いや崩壊してもなお現実を見ようとしないマルクス主義者が日本の大学には亡霊のように徘徊して害毒をまき散らしている

書評 『全体主義と闘った男 河合栄治郎』(湯浅博、産経新聞出版、2016)-左右両翼の全体主義と戦った「戦闘的自由主義者」と戦後につながるその系譜

書評 『封建制の文明史観-近代化をもたらした歴史の遺産-』(今谷明、PHP新書、2008)-「封建制」があったからこそ日本は近代化した!


日本近現代史とアジア

「脱亜論」(福澤諭吉)が発表から130年(2015年3月16日)-東アジアの国際環境の厳しさが「脱亜論」を甦らせた

書評 『陰謀史観』(秦 郁彦、新潮新書、2012)-日本近現代史にはびこる「陰謀史観」をプロの歴史家が徹底解剖

書評 『悪韓論』(室谷克実、新潮新書、2013)-この本を読んでから韓国について語るべし!

書評 『醜いが、目をそらすな、隣国・韓国!』(古田博司、WAC、2014)-フツーの日本人が感じている「実感」を韓国研究40年の著者が明快に裏付ける





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