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2017年11月29日水曜日

書評 『なぜ私たちは生きているのか-シュタイナー人智学とキリスト教神学の対話-』(平凡社新書、2017)-人間存在の「個別性」と「一回性」という観点に立ち「見えないもの」を見る感受性を研ぎ澄ます


2017年11月の新刊 『なぜ私たちは生きているのか-シュタイナー人智学とキリスト教神学の対話-』(平凡社新書、2017)という本を読んでみた。

副題にあるとおり、シュタイナー人智学の日本での第一人者である高橋巌氏とキリスト教神学(・・より正確にいえばプロテスタント神学)の佐藤優氏との3回の対話である。この組み合わせが面白いと思って読んだのだが、自分にとっての主たる関心はシュタイナーであって、キリスト教神学の方は副次的なものだ。

年齢からいったらはるかに先輩にあたる高橋巌氏が、同時代人として読書をつうじて親しみを感じてきたという佐藤優氏に教えを請うようなスタイルになっている。ホストが主催するセミナーにゲストを呼んで対話を行った記録を編集したこともあるのだろうが、やや違和感を感じないではない。

逆にいえば、高橋氏の謙虚な姿勢の現れといえるだろうが、本来的にグノーシス的な傾向のあるシュタイナー人智学への佐藤優の歩み寄りによって対話が成り立っている、という面もあるように思われた。

正直いって、この本を読んでも本書のタイトルである「なぜ私たちは生きているのか」という問いに対する直接的な答えは得られないだろう。そのためには、「見えないもの」に対する感受性を研ぎ澄まさなければならないことが両者に共通する結論であろうか。

「見えないもの」は「神」と呼んでもいいし、それ以外の表現でもいい。ただし、「なぜ私たちは生きているのか」という能動態の問いではなく、「なぜ生かされているのか」という受動態の問いの方が日本人にはしっくりくるような気がする。タイトルは編集者がつけるものだから対話者の意向かどうかはわからないが。

人間存在の、時間と空間における「個別性」と「一回性」という観点に立つ点は両者に共通している。また、ともに「道の途上」にあるという求道者性も共通している。

ともに抽象的な議論はしないという点には共感を感じる。これはキリスト教であろうが、シュタイナー人智学であろうが、仏教であろうが、その他の宗教であれ重要なことだ。

わたくし個人の感想としては、本書で論じられている「国家・資本・宗教」のうち、「宗教」は面白いと思ったが、「国家」と「資本」に関しては、違和感を感じる内容もあったと正直に書いておく。この両者はともに「経済人」ではないからだろう。とくに佐藤優氏の発言は牽強附会なものが多いのは相変わらずだ。

ともにドイツ思想の圧倒的影響下にある人たちだ。 プロテスタント神学はドイツ思想、マルクスもドイツ思想である。シュタイナーはドイツロマン派の流れのなかにある。その意味では、対話者はまったく無縁の立場というわけでもない。

シュタイナー人智学やキリスト教神学といったテーマに関心のある人にとっては読む意味のある本だと思うが、内容については是々非々の評価を下せばよい。

現在の日本では佐藤優氏のほうがはるかに知名度が高いので、本書を手に取る人は圧倒的にそちらからのアプローチが多いと思うが、この本で初めて高橋巌氏について知ることになる人にとっては、ある意味では「シュタイナー入門」の「入門」になるかもしれない。





目 次

はじめに(佐藤優)
  
 I 国家-一人ひとりの時間と空間の共同体
 道半ばを歩く者として
 見えるものと見えないもの
 キリスト教はオカルト?
 ぎりぎりのところで神と出会う
 普遍主義では世界宗教になりえない
 ドイツのキリスト教とナチス
 見えない世界を言語化する
 時間と空間は溶けるのか
 人は形而上学から逃れられない
 日米安保と北方領土問題
 個人と国家と社会
 国家における性の二重構造
 社会の力を強化する
 日本の教育と子どもの未来
 フィクションの力で他者を想像する
II 資本-お金と働くこと
 資本主義の男性原理と女性原理
 お金がすべて?
 プロテスタンティズムと資本主義は関係ない
 現象をとらえる宗教学的手法と内在論理をつかむ神学的手法
 日本文化とキリスト教の女性原理
 生活のなかに植え付けられた資本主義
 労働力の商品化
 見えるお金が見えない心を縛る
 不安定な社会だからこそ必要とされるもの
III 宗教-善と悪のはざまで
 現代人は悪に鈍感
 善と悪のはざまで生きる
 悪はどこから入りどこから去っていくのか
 破壊的な悪の力を包むには
 人間の努力を重視するグノーシス
 意志の力を超えて働く縁と召命
 音楽や本との出会いも召命
 悪は人間の言葉から生まれる
 人間関係のなかにいる神と悪
 愛をリアルに感じるためには
 なぜ私たちは生きているのか

おわりに(高橋巖)


著者プロフィール
佐藤優(さとう・まさる)1960年生まれ。同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。主任分析官として対ロシア外交の最前線で活躍。2002年背任と偽計業務妨害容疑で逮捕され、2009年最高裁で執行猶予付有罪が確定し失職。2014年、執行猶予期間を満了し、刑の言い渡しが効力を失った。2005年発表の『国家の罠』(新潮社)で毎日出版文化賞特別賞受賞。著書に『自壊する帝国』(新潮社、大宅壮一ノンフィクション賞)など多数。 (本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)


高橋巖(たかはし・いわお)東京・代々木生まれ。ミュンヘンでドイツ・ロマン派美学を学ぶなか、ルドルフ・シュタイナーの著書と出会う。73年まで慶應義塾大学で美学と西洋美術史を担当。その後シュタイナーとその思想である人智学の研究、翻訳を行う。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)



<ブログ内関連記事>

■シュタイナー関連

「ルドルフ・シュタイナー展 天使の国」(ワタリウム美術館)にいってきた(2014年4月10日)-「黒板絵」と「建築」に表現された「思考するアート」

「生命と食」という切り口から、ルドルフ・シュタイナーについて考えてみる

シュタイナー研究家の西川隆範氏による仏教書は、教団や教派とは関係のないフリーな立場に身を置いた個人ベースのスピリチュアリティ重視の仏教を志向する

子安美知子氏の「シュタイナー教育」関連本をまとめて読んで「シュタイナー教育」について考えてみる


■プロテスタント神学関連

書評 『聖書を語る-宗教は震災後の日本を救えるか-』(中村うさぎ/ 佐藤優、文藝春秋、2011)-キリスト教の立場からみたポスト「3-11」論

『はじめての宗教論 右巻・左巻』(佐藤優、NHK出版、2009・2011)を読む-「見えない世界」をキチンと認識することが絶対に必要


■宗教学関連

書評 『オウム真理教の精神史-ロマン主義・全体主義・原理主義-』(大田俊寛、春秋社、2011)-「近代の闇」は20世紀末の日本でオウム真理教というカルト集団に流れ込んだ

書評 『現代オカルトの根源-霊性進化論の光と闇-』(大田俊寛、ちくま新書、2013)-宗教と科学とのあいだの亀裂を埋めつづけてきた「妄想の系譜」

「宗教と経済の関係」についての入門書でもある 『金融恐慌とユダヤ・キリスト教』(島田裕巳、文春新書、2009) を読む




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2017年11月24日金曜日

いきなりビール瓶で殴られそうになったら?-日馬富士の「泥酔暴行事件」に関連して「護身術」を紹介(2017年11月)

("Dynamic Aikido" by Gozo Shioda より)

横綱・日馬富士(はるまふじ)による「泥酔暴行事件」だが、この事件は報道されている内容による限り言語道断と言わざるを得ない。

後輩モンゴル人力士・貴ノ岩に対して、泥酔状態で暴行したこの事件は、九州場所の前半で最初に報道されてから情報が二転三転している。だが、ビール瓶で殴ったかどうかは定かではないものの、少なくとも日馬富士が素手で殴って暴行を加えたことは否定できなようだ。

だがなぜこのような事件が発生するのか? ただ単に相撲界だけの問題ではなかろう。 この背景にあるものは何か? まず言えるのは、モンゴルが「泥酔文化圏」にあることだ。

日本人はかつてのようにあまり酒を飲まなくなったようだが、それでも酒の席での無礼講が黙認される傾向がなくなったわけではない。

私はこれを指して「泥酔文化圏」といっているのだが、「泥酔文化圏」は日本から、朝鮮半島を経由して、モンゴル、そしてロシアと連続して分布している。 この件については、ブログ記事を参照いただきたい。 「アタマの引き出し」は生きるチカラだ!: 「泥酔文化圏」日本!-ルイス・フロイスの『ヨーロッパ文化と日本文化』で知る、昔から変わらぬ日本人

もちろん、酒の上の無礼講が暴力騒ぎにつながることが皆無とは言わないが、暴力沙汰は言語道断であることは言うまでもない。社会的な潤滑油である飲酒だが、過ぎたるは及ばざるがごとし、である。


いきなりビール瓶で殴られそうになったら?

泥酔した日馬富士がモンゴル人の後輩力士をビール瓶で殴ったとされる暴行事件。

もしそれが事実であれば、たとえ故意ではないとしても、一歩間違えば被害者が死亡していた可能性も否定できない。ビール瓶でアタマを殴ることは、金属バットで殴るのと同じようなものだ。

実際にそういう場面に出くわすことは滅多にないと思うが、念のために、いきなりビール瓶で殴られそうになった際の「護身術」を紹介しておこう。

("Dynamic Aikido" by Gozo Shioda より)

合気道養神館の館長であった塩田剛三(しおだ・ごうぞう)先生(故人。 開祖・植芝盛平翁の高弟)の英文著書 Dynamic Aikido には、Practical Application (応用編)として、「いきなり飲み屋で隣の席に座っているヤツからビール瓶で殴られそうになる」というシチュエーションが写真入りで解説されている。

("Dynamic Aikido" by Gozo Shioda より)

画像が薄くてわかりにくいかもしれないが、左に座っている男がいきなりビール瓶を振り下ろしてきたとき、咄嗟に男の首を左手で押さえる。シンプルだが役に立つと解説にある。

「そういう場面に出くわさないことがベター」であり、そんな場合でも「戦わずして逃げるのがベスト」ではありましょう。とはいえ、こういうシンプルなワザが非常時には役に立つということで。

ちなみにこの本は、アメリカの大学に留学中、縁あって大学生に Aikido を指導する際の参考書として購入したものだったと記憶している。日本語の原題はわからない。もちろん、学生にはこんな応用技は教えてませんよ。

ちなみに、わたくしは塩田剛三先生ではなく、開祖植芝盛平晩年の内弟子であった合気会本部の有川定輝先生の不肖の弟子です。





PS  日馬富士が引退を表明(2017年11月29日)

日馬富士が先手を取って相撲からの引退を表明した(2017年11月29日)。引退勧告が出る前にみずから引退を申し出たのは賢明であったといえよう。いまだ真相は明らかではないが、動機がいかなるものであれ暴行を振るった事実は本人も認めているのであり、なんらかの処分は免れなかったためだ。そえにしても横綱・朝青龍に続いてのモンゴル出身力士の暴行事件がらみの引退、見苦しいものがあると言わねばなるまい。(2017年11月30日 記す)。



<ブログ内関連記事>

合気道・道歌-『合気神髄』より抜粋

一橋大学合気道部創部50周年記念式典が開催(如水会館 2013年2月2日)-まさに 「創業は易し 守成は難し」の50年

カラダで覚えるということ-「型」の習得は創造プロセスの第一フェーズである

『武道修行の道-武道教育と上達・指導の理論-』(南郷継正、三一新書、1980)は繰り返し読み込んだ本-自分にとって重要な本というのは、必ずしもベストセラーである必要はない




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2017年11月22日水曜日

久々に JSA というコトバをニュースで聞いて、韓国映画 『JSA』(日本公開2000年)のことを思い出した(2017年11月)


つい最近(2017年11月13日)のことだが、朝鮮半島の「DMZ」(=南北非武装地帯)の「JSA」(=共同警備区域)で北朝鮮軍の兵士が亡命、北朝鮮軍によって銃撃され40発も銃弾を撃ち込まれたが瀕死の重傷を負いながらも、九死に一生を得たという事件が発生した。 JSAからの亡命は10年ぶりのことだという。

久々に「JSA」というコトバを聞いたなと思ったが、その際に韓国映画に『JSA』という作品があったことを思い出した。 おなじく南北問題をテーマにしたアクション娯楽大作『シュリ』に次いで日本でも公開された作品だ。1999年製作で日本公開は2000年だから、いまからもう17年も前の映画である。

(DVD 『JSA』の特典映像をキャプチャ)

映画『JSA』は、南北間での銃撃戦とその真相の解明がテーマであったが、当時の感想としては『シュリ』ほど面白くなかったのがは正直なところだ。日本では『シュリ』メガヒットにはならなかったと記憶している。韓国内の反応と日本での反応が異なるのは当然というべきだろう。



映画が日本公開されたのは「韓流ブーム」以前のことで、しかもその「反動」(?)としての「嫌韓派」などというコトバも実体もなかった頃の作品だ。1997年の「IMFショック」で瀕死状態にあった韓国経済だが、韓国映画には勢いがあった。キム・デジュン(金大中)大統領のもと、「太陽政策」という北朝鮮政策を含めて大きな転換があった。

(DVD 『JSA』の特典映像をキャプチャ)

「JSA」(=Joint Security Area)は南北境界線の板門店(パンムンジョム)の周囲に設定されている。韓国軍を中心とする国連軍と北朝鮮軍が向き合っている。1999年か2000年だったと思うが、わたしも板門店には行ってみた

「JSA」には「中立国監視委員会」が設置されており、現在でも中立国のスイスとスウェーデンから将校が派遣されている。 映画では、イ・ヨンエ演じる朝鮮系スイス人のスイス軍の女性将校が真相解明にあたるという内容であった。

(DVD 『JSA』の特典映像をキャプチャ)

まあ、韓国に対しては、わたし自身は好きでもキライでもなく、あくまでも「中立」の立場に立ちたいと思っている。曇りなき目で見るために。









(付録)韓国映画 『JSA』日本公開時の感想


ニフティで開設していた「ホームページ」(・・なつかしい響きだ)に投稿した「つれづれなるままに」(2001年5月27日)の記事を以下に再録しておこう。

韓国映画『JSA』と異文化マーケティング というタイトルで投稿した記事だ。

ニフティのホームページは現在は削除されたため閲覧ができなくなってしまった。ホームページ(正確にはウェブサイト)を故人で開設することがブームになった頃の話である。

原文には一切手を加えていない。記事作成時点と現在では考えに変化があるとしても、記事の歴史性を重視するためである。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

つれづれなるままに(2001年5月27日)

韓国映画『JSA』と異文化マーケティング

JSAとは、Joint Security Area の略である。つい昨日封切られたばかりの韓国映画のタイトルでもある。韓国と北朝鮮を隔てる非武装地帯の板門店(パンムンジョム)に設けられた国連統治下の共同警備区域のことで、南北会談の会議場としてつかわれる部屋は、日本のTVでもおなじみである。

韓国で大ヒットを飛ばし、日本で公開されてもヒットしたハリウッド張りの娯楽大作『シュリ』を超える大作、とのプロモーションが連日行われているのでご存知の方も多いと思う。私もさっそく封切り初日にロードショーを見に行ってきた。

映画の内容は見てのお楽しみ、としておきたいが、乱暴に要約すれば、日々対峙する立場にある、国境最前線の南北の兵士たちの間に芽生えた「奇妙な友情」とその「劇的な破綻」、およびその「悲劇的な幕切れ」、とでもいっておこうか。もちろん、南北の兵士の間の友情というのは、あくまでも虚構であって実際にはありえない設定である。しかし、こういう虚構を設定することによって見えてくるものがあり、これが折からの南北和解ムードのなかで、特に若い韓国人を中心に大いに受け入れられた結果大ヒットになったのであろう。

しかし、日本では『JSA』は『シュリ』を超えることはないだろう。『シュリ』も同じく南北対立という現実に、北の女性工作員と南の男性警察官との恋愛という虚構(しかしこの虚構はありえなくはない設定だが)をからませた作品だが、基本的に「北が敵であるという大前提」は崩していないので、そう感じている多くの日本人にとっては、ある意味では安心してみることのできる娯楽映画であったといえる。だから日本でも大ヒットした。

それに対して『JSA』は、実はかなり重い映画だ。むしろ従来型の韓国映画の枠組みのなかにあるといっていいかもしれない。字幕という制約もあるが、日本人の観客からもれる笑い声も少なく、最後まで緊張感を強いられた。

先に触れた虚構を軸にしているとはいえ(その虚構じたい、韓国人の濃密な人間関係の意味をしらないと理解しにくい)、テーマそのものはきわめて重い。韓国が置かれている現状、とくに南北問題の軍事的な意味と経緯、徴兵制がとくに若い韓国人男女にとってもつ意味、挿入主題歌が韓国人の若者にとってもつ意味・・・といったいわば韓国人にとっての「常識」、いいかえれば韓国に特有の文脈を理解することなく、大作映画の一つとして日本で流通させることは難しいのではないだろうか。

『JSA』には激しい戦闘シーンがあるが、通常の戦争映画につきもののある種の快感を感じることがまったくなかった。「奇妙な友情の劇的な破綻」をきっかけに勃発した、南北の国境警備隊の間でマシンガンの激しい応酬が数分間つづくが、なぜ自分はこのシーンをみていて快感を感じることがないのか、映画を見終わったあとしばらく考えていた。おそらく、北が敵なのか、南が敵なのか、そのどっちも敵なのか、あるいは敵でないのか、見ている人間にわからなくなってしまうためだろう。何のための戦闘なのかわからなくなってしまうのである。そういう意味では監督の力量はきわめて高いといわざるをえない。韓国で大ヒットした理由はこのあたりにあるのではないか。南北対立など民族にとってはまったく無意味なのだと、大上段にふりかぶって説教することなく生理的に訴えているから。

とすると、おそらく大半の日本人にとって、この映画の意味は、頭ではある程度まで理解できても、体感することはきわめて難しいだろう。韓国特有の文脈を超えた、普遍的な要素があるとはいえ、これがそのままこの国で大衆的なヒットになるとは考えにくい。

異文化のソフトをコンテクストの異なる他国の市場で流通させることは、ハードの製品の海外展開よりはるかに難しい。とはいえ、『JSA』は、2002年のワールドカップをひかえ、韓国人をより深いレベルで理解する必要のある日本の若い世代にはぜひ見てもらいたい。そしてこの映画をきっかけにいろいろ韓国と韓国人について勉強してもらいたいものだ。 (5月27日)。

(以上)


(NHKの国際情報番組よりキャプチャ 2017年11月19日)



<ブログ内関連記事>

「斬首作戦」は韓国軍の特殊部隊が実行すべき作戦-未遂に終わった1971年のキム・イルソン暗殺作戦をテーマにした韓国映画『シルミド』(2003年)を見るべし!

書評 『朝鮮半島201Z年』(鈴置高史、日本経済新聞出版社、2010)-朝鮮半島問題とはつまるところ中国問題なのである!この近未来シミュレーション小説はファクトベースの「思考実験」

書評 『日米同盟 v.s. 中国・北朝鮮-アーミテージ・ナイ緊急提言-』(リチャード・アーミテージ / ジョゼフ・ナイ / 春原 剛、文春新書、2010)

韓国映画 『八月のクリスマス』(1998年)公開から15年





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2017年11月21日火曜日

JBPress連載コラム13回目は、「31歳のイケメン首相誕生か?オーストリアに注目せよ-「ハプスブルク帝国」崩壊から100年、今も中欧で求心力を発揮」(2017年11月21日)


JBPress連載コラム13回目は「31歳のイケメン首相誕生か?オーストリアに注目せよ-「ハプスブルク帝国」崩壊から100年、今も中欧で求心力を発揮」
⇒ http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51624


先日の2017年10月15日にオーストリアで実施された総選挙(下院選挙)で第1党の座を確保した国民党の党首セバスティアン・クルツ氏が、世界中の注目を浴びている。

その理由は、クルツ氏がなんとまだ31歳という若さで、しかも貴公子然とした甘いマスクのイケメンだからだ。

栗色の髪の毛をオールバックにしたヘアスタイルが個性的だが、若き日のバイエルン国王ルートヴィヒ2世を想起させるものがある(下の写真)

(左がクルツ氏、右はルートヴィヒ2世 筆者作成)

中欧のオーストリアでは中道右派が総選挙で第一党になり、右派ポピュリスト政党との連立交渉の真っ最中にある。ポーランドでもハンガリーでも右派政権。オーストリアの翌週に総選挙が実施されチェコでも中道右派が第1党になり第2党の極右政党よ連立交渉中だ。

中欧で相次ぐ右派政権誕生は「共振現象」か?

ハプスブルク帝国が崩壊した1918年11月11日から今年は100年目。 ハプスブルク帝国は、現在のハンガリーとチェコ、スロヴァキア、ポーランドの一部、ウクライナの一部、スロヴェニア、クロアチアなど広範囲にわたって支配した中欧の帝国であった。

オーストリアを中核にした「中欧」に注目!

つづきは本文にて)


ぜひご一読ください。

次回のコラムは、12月5日公開予定です。お楽しみに!







<ブログ内関連記事>

書評 『ハプスブルク帝国、最後の皇太子-激動の20世紀欧州を生き抜いたオットー大公の生涯-』(エーリッヒ・ファイグル、北村佳子訳、 朝日選書、2016)-第一次世界大戦後から冷戦構造崩壊までのヨーロッパ現代史

「サラエボ事件」(1914年6月28日)から100年-この事件をきっかけに未曾有の「世界大戦」が欧州を激変させることになった

オーストリア極右政治家の「国葬」?
・・オーストリア共和国の政治風土の一端について取り上げた

バイエルン国王ルートヴィヒ2世がもっとも好んだオペラ 『ローエングリン』(バイエルン国立歌劇場日本公演)にいってきた-だが、現代風の演出は・・・




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2017年11月20日月曜日

書評 『ハプスブルク帝国、最後の皇太子-激動の20世紀欧州を生き抜いたオットー大公の生涯-』(エーリッヒ・ファイグル、北村佳子訳、 朝日選書、2016)-第一次世界大戦後から冷戦構造崩壊までのヨーロッパ現代史


 『ハプスブルク帝国、最後の皇太子-激動の20世紀欧州を生き抜いたオットー大公の生涯-』(エーリッヒ・ファイグル、北村佳子訳、 朝日選書、2016)という本を読んだ。 ヨーロッパ現代史の知られざる裏面を明らかにした生き証人の記録だ。

第一次世界大戦の原因となったハプスブルク帝国(=オーストリア=ハンガリー二重帝国)は、敗戦の結果として崩壊し中欧の大国は解体された。6歳のオットー・フォン・ハプスブルク=ロートリンゲンは「ハプスブルク帝国最後の皇太子」となり、以後2011年に亡くなるまで激動のヨーロッパの一世紀を生き抜くことになる。

日本人でオットー大公と交友関係があったのが、意外な組み合わせのように思えるかもしれないが、実業家で国士であった田中清玄氏であった。わたしは『田中清玄自伝』で、オットー大公のことを知ってから20年たつ。この二人は、じつは反共で伝統主義者であることが共通していた。

オットー大公の生涯は、この本に収録された1992年のインタビューで本人が語っているように、まさに「ヒトラーと共産主義との戦いの生涯」であった。 亡命生活のなか、オットー大公は米国のルーズヴェルト大統領を動かし、英国のチャーチル首相を動かすことで、第二次世界大戦後の欧州でのオーストリア再興に尽くす。まさに「ノーブレス・オブリージュ」の発揮である。この間のスリリングな状況は、まるでドラマのようだ。

いわゆる「ハル・ノート」という無理難題を記した事実上の「最後通牒」で日本を対米開戦に追い込んだ米国の国務長官コーデル・ハルは、オットー大公による「オーストリア再興」の邪魔をした人物として本書に何度も登場する。オーストリアはナチス・ドイツに「併合」されたが、大戦後の「再興」のためにオットー大公は奔走していたのだ。この事実は本書で初めて知った。ハルっていうのは、そういうヤツだったのか、と不快感と怒りを新たにする。ここに特記しておきたい。

日本は第一次大戦ではオーストリア(=ハプスブルク帝国)の敵国、第二次世界大戦ではドイツと同盟国になったために、ナチスを敵に回したオットー大公とは反対側に立つことになったのであるが、昭和天皇に拝謁した際には、オットー大公はどのような話をされたのだろうか? 交友関係のあった田中清玄氏とは、はたして国務長官ハルのことは話題にしたことがあったのだろうか? そんな想像をしてみたくなる。

(ドイツ語原書 1992年刊)

第2次大戦後に「オーストリア再興」というミッションを見届けた後は、欧州議会の議員としてEU統合のために身を尽くすことになる。交友関係があったリヒャルト・クーデンホーフ=カレルギー伯爵の「汎ヨーロッパ主義」に共鳴していたオットー大公もまた、同じような志向をもっていたのである。ちなみにクーデンホーフ=カレルギー伯爵の母親は日本人である。

「ベルリンの壁崩壊」(1989年)につながったのが「汎ヨーロッパ・ピクニック」というイベントだが、このイベントを思いつき主催したオットー大公は、ヨーロッパでの冷戦構造崩壊の功労者なのである。オーストリアとハンガリーの国境が開放され、東ドイツ人を含む東側の人たちが大量に西側に脱出した「事件」である。

オーストリア=ハンガリー二重帝国ゆえに、ハプスブルク家はハンガリーの君主でもあった。オットー大公が関与していた件は、ずいぶんと前のことだが「NHKスペシャル」で取り上げていた記憶がある。


歴史を深く知ることで、未来への「先見性」が磨かれる

インタビューで語られるオットー大公の発言には、深い洞察と教養にもとづいた金言のようなフレーズがちりばめられている。さすが欧州で650年つづいた帝国のハプスブルク家は違うなあ、という感慨を抱くのである。

オットー大公は、1992年のインタビューで次のように語っている。

「私が長い政治家としての人生から何かを学んだとしたら、それは政治の世界には二つの言葉、「決して(し)ない」という言葉と、「恒久的な(永遠に)」という言葉は見当たらないということです。「恒久的」なのは神であり、歴史を少しでも知る人であればおわかりでしょうが、その根本法則は変化です。この根本的なことはどれほど強調してもしすぎることはありません」(P.366 太字ゴチックは引用者=さとう)

歴史を深く知ることで、未来への先見性が磨かれるのである。それを体現してたのがオットー大公であった。深い関わりをもったチャーチル英首相も、EU構想の父であるクーデンホーフ=カレルギー伯爵もまた、歴史の素養の深い「教養人」であった。

オットー大公の判断の軸となっていたのがキリスト教であり、しかもカトリック信仰であったことは、カトリックの保護者であるハプスブルク家ならではといえるだろう。

ハプスブルク帝国(=オーストリア=ハンガリー二重帝国)が1918年11月11日に崩壊してから今年で100年になる。それは、第一次世界大戦後から第2次世界大戦を経て、冷戦構造の成立から崩壊後まで含んだ激動の一世紀である。

1912年11月20日に生まれて、2011年7月4日に98歳で亡くなったオットー大公は、まさにこの激動の一世紀を体現した人物であった。本日(2017年11月20日)は、奇しくもオットー大公の生誕105年に当たる。





目 次

オットー・フォン・ハプスブルク=ロートリンゲンの人生(関口宏道=監訳者)
第1章 幼年時代(1912~1929)
 第1節 オーストリア=ハンガリー帝国
 第2節 レケイティオ
第2章 青年時代(1929~1940)
 第1節 ヒトラーの演説を聞く
 第2節 国家社会主義と対峙
 第3節 シュテーノッケルゼール
第3章 アンシュルス(=ドイツによるオーストリア併合 1938)
 第1節 コードネームは「オットー作戦」
 第2節 極秘文書、ドイツ国防軍司令部発ヒトラーの指示
第4章 パリ(1939~1940)
 第1節 オーストリア再興のために
 第2節 パリへ向かう
 第3節 「オーストリア代表部」「亡命オーストリア人部隊」設立に動く
 第4節 フランスはオーストリア再興の必要性を承認
第5章 挑戦し続けるオットー(1940)
 第1節 最初のアメリカ行き
 第2節 パリ。オットーによる救出作戦
 第3節 「ナーハ ヴェスト」(西へ)
第6章 再びアメリカへ(1940~1944)
 第1節 オーストリア救援に力を尽くす
 第2節 政治力と情報戦
第7章 オーストリア再興のための戦い 
 第1節 アメリカのオットー、ロンドンのローベルト
 第2節 オーストリア大隊編成をめぐる反対勢力の詭弁
第8章 中央ヨーロッパの命運(1943~1944)
 第1節 ケベック会議
 第2節 パン・ヨーロッパへの始動
第9章 モスクワ宣言発効(1944)
 第1節 ロンドンライン
 第2節 アメリカを関与させる
第10章 ハンガリー
 第1節 オットーの尽力
 第2節 ハンガリー、ソ連の最初の犠牲になる
第11章 第二次世界大戦終結後(1945~1991)
 第1節 ヨーロッパへの帰還
 第2章 ヨーロッパの国々の中で
 第3節 統一ヨーロッパへ
 第4節 共産主義崩壊後の世界
 第5節 オリエントへの旅
第10章 東西冷戦終結
 第1節 パン・ヨーロッパ・ピクニックはこうして始まった
 第2節 ハンガリーの「聖シュテファンの王冠」
訳者あとがき
ハプスブルク=ロートリンゲン家略系図
オットー・フォン・ハプスブルク=ロートリンゲン年譜
人名索引

著者プロフィール

エーリッヒ・ファイグル(Erich Feigl)
1931年ウィーン生まれ。テレビドキュメンタリーの映像作家であり著述家でもある。ツィタ皇后とオットー大公に直接インタビューをし、また多くの資料を入手し、ハプスブルク家に関する著作やフィルムを数々作成。その優れた仕事に対して学問と芸術における栄誉賞を授与され、またウィーンの市民として金の栄誉賞も受けている。2007年死去。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)
日本語訳者プロフィール

北村佳子(きたむら・よしこ)

1974年早稲田大学第一文学部ドイツ文学専攻卒業。ゲーテ・インスティテュート東京上級クラス修了。ウェラ化粧品、コメルツ銀行東京支店などに勤務。ドイツ人役員や支店長の秘書として翻訳通訳業務を行う。2001年コメルツ銀行退職。現在はフリーランスとしてドイツ語の翻訳業務に携わる。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)





<ブログ内関連記事>

書評 『身体巡礼-[ドイツ・オーストリア・チェコ編]-』(養老孟司、新潮社、2014)-西欧人の無意識が反映した「文化」をさぐる解剖学者の知的な旅の記録
・・「第1章 ハプスブルク家の心臓埋葬-ヨーロッパの長い歴史は、無数の死者と共にある、 第2章 心臓信仰-日本人には見えない、ヨーロッパの古層 でハプスブルク家の「心臓埋葬」について取り上げられている。オットー大公の心臓もまた同様の扱いとなったようだ

書評 『向う岸からの世界史-一つの四八年革命史論-』(良知力、ちくま学芸文庫、1993 単行本初版 1978)-「社会史」研究における記念碑的名著 ・・失敗に終わった「1848年革命」をウィーンを舞台に描く

「サラエボ事件」(1914年6月28日)から100年-この事件をきっかけに未曾有の「世界大戦」が欧州を激変させることになった

書評 『未来の国ブラジル』(シュテファン・ツヴァイク、宮岡成次訳、河出書房新社、1993)-ハプスブルク神話という「過去」に生きた作家のブラジルという「未来」へのオマージュ

書評 『知の巨人ドラッカー自伝』(ピーター・F.ドラッカー、牧野 洋訳・解説、日経ビジネス人文庫、2009 単行本初版 2005)
・・1909年ウィーンに生まれたドラッカーは、第一次大戦に敗戦し帝国が崩壊した都市ウィーンの状況に嫌気がさして17歳のとき(1926年)、商都ハンブルクに移っている

書評 『西洋史学の先駆者たち』(土肥恒之、中公叢書、2012)-上原専禄という歴史家を知ってますか?
・・歴史家の上原専禄は、ハプスブルク帝国崩壊後の1923年からウィーンに留学している

書評 『ヒトラーのウィーン』(中島義道、新潮社、2012)-独裁者ヒトラーにとっての「ウィーン愛憎」

映画 『悪童日記』(2013年、ハンガリー)を見てきた(2014年11月11日)-過酷で不条理な状況に置かれた双子の少年たちが、特異な方法で心身を鍛え抜きサバイバルしていく成長物語

ハイテク界の巨人逝く(2016年3月21日)-インテル元会長のアンドリュー・グローヴ氏はハンガリー難民であった

オーストリア極右政治家の「国葬」?
・・オーストリア共和国の政治風土の一端について取り上げた

『大アジア燃ゆるまなざし 頭山満と玄洋社』 (読売新聞西部本社編、海鳥社、2001) で、オルタナティブな日本近現代史を知るべし!
・・田中清玄の頭山満にかんする発言を取り上げてある

書評 『レッドブルはなぜ世界で52億本も売れるのか-爆発的な成長を遂げた驚異の逆張り戦略-』(ヴォルフガング・ヒュアヴェーガー、長谷川圭訳、日経BP社、2013)-タイの 「ローカル製品」 を 「グローバルブランド」に育て上げたストーリー ・・レッドブルの本社はオーストリアのザルツブルク近郊にある

JBPress連載コラム13回目は、「31歳のイケメン首相誕生か?オーストリアに注目せよ-「ハプスブルク帝国」崩壊から100年、今も中欧で求心力を発揮」(2017年11月21日)

(2017年11月21日、2018年1月4日 情報追加)




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2017年11月19日日曜日

オスネコの本能である「エクスカーション」を知る-「NHKダーウィンが来た-生き物新伝説」で全2回の「ネコ特集」!(2017年11月12日・19日)

(大怪我を負って戻ってきたノーブル君 筆者撮影)

「NHKダーウィンが来た-生き物新伝説」で、待望の「ネコ特集全2回」が放送された。猫島として有名な福岡県の相島(あいのしま)に生きる、茶猫のノラネコの若いオスの生態を追ったものだ。その若いオスネコは、個体識別法により「コムギ」と名付けられている。

第1回(11月12日)は、本能にプログラムされたオスネコの「エクスカーション」、第2回(11月19日)は「猫口密度」の高い狭い島で、オスネコがあらたに身につけた「社会性」とでもいうべき新発見を扱っている。

とくに第1回の放送は、この番組はノラネコ研究のいいおさらいになった。『わたしのノラネコ研究』(山根明弘、さえら書房、2007)の著者で、フィールドワークによるノラネコ研究の第一人者・山根明弘氏が監修している。

かつて、うちに近くにいたオスのノラネコ「ノーブル君」が大けがして戻ってきたことがあったが、あれは「エクスカーション」だったのだ(上掲写真)。

(高貴なたたずまいの若いオスネコ「ノーブル君」 筆者撮影)

「エクスカーション」とは、オスが自分のいつもの居場所から離れて「遠征」にいくことだ。数日から十数日にわたる遠征には突然ふいと出かけてしまうだけでなく、突然戻ってくるものの怪我をしていることもあるので飼い猫の飼い主を驚かせることがある。飼い猫といえでも、オスネコの本能は消えることはないのである。

(土足で他ネコの領域に踏み込む傍若無人なノーブル君 筆者撮影)

高貴なたたずまいだったので、私が勝手に「ノーブル君」と命名していたのだが、やや無謀なところのある、眼光鋭い若武者だった「ノーブル君」は、けっして逃げないネコだった。

激しいキャッツファイトで負傷したのだろう。その後、彼は姿を消して二度と戻ってこなかった。いまから6年前、2011年のことだ。

ノラネコ観察中に撮影したオスネコどうしの激しいケンカのシーンを動画に撮影しているので、ここであらためて紹介しておこう。タイトルは、「炸裂するキャッツ・ファイト!オスネコどうしのガチンコ対決」。おお、なんと視聴回数が10万回を超えているではないか! 

コンテンツとして評価されているのだろう。NHKではキャッツファイトそのものは残酷という批判を恐れて放送しないのだろうか?ぜひご覧いただきたい。


今回の2回の放送には3年間をかけているという。これまた密度の濃い番組なのだ。またいつの日か、「NHKダーウィンが来た-生き物新伝説」でのネコ特集の放送を大いに楽しみにしていう。




<ブログ内関連記事>

猛暑の夏の自然観察 (2) ノラネコの生態 (2010年8月の記録)

ノラネコに学ぶ「テリトリー感覚」-自分のシマは自分で守れ!

ハイエナは英語でなんというの?
・・「NHKダーウィンが来た-生き物新伝説」で取り上げられたハイエナ





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2017年11月15日水曜日

「歴史の三層構造」の視点を用いて歴史を見る必要性-「Hello, Coaching」連載中の「逆回し」で見えてくる「現在」の本質!」の最終回が公開(2017年11月13日)



コーチング関連の専門サイト 「Hello, Coaching」(コーチA)に連載中の「「逆回し」で見えてくる「現在」の本質!」

今年(2017年)5月に出版した拙著『ビジネスパーソンのための近現代史の読み方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の「書籍紹介」の形で、文字通り「ビジネスパーソンのための近現代史の読み方」について紹介します。

いよいよ今回が最終回。全5回の第5回です。

「第5回 「歴史の三層構造」の視点を用いて歴史を見る必要性」が公開。

第5回 「歴史の三層構造」の視点を用いて歴史を見る必要性
⇒ https://coach.co.jp/books-intro/20171113.html

 「「短期」であれ「中期」であれ、「現在」に生きるビジネスパーソンは、英米アングロサクソンがつくりだしてきた歴史と密接な関係にある。ビジネスの範囲が日本国内に限定されようと、中国や東南アジアであろうと、英米アングロサクソンが作り出してきた日常に私たちは浸かって生きているのだ。・・・ (つづきは本文

小見出しは以下のとおりです。

「すでに世界はネットワークによってほぼ完全に「一体化」している
「現在」とは英米アングロサクソンが主導する世界
20世紀最高の歴史家ブローデルによる「歴史の三層構造」
「歴史の三層構造」の視点を用いて歴史を見る

「歴史の三層構造」」とは、20世紀最高の歴史家とされる、フランスの歴史家フェルナン・ブローデルによるものです。

   
全5回は以下のとおりです。あらためて第1回から通読していただけると幸いです。

第1回 「現在」を知るために「歴史」をさかのぼる
第2回 トランプ大統領が誕生した裏には、どんな潮流があったのか
第3回 今の都市型ライフスタイルは、どんな風につくられてきたのか
第4回 都市型ライフスタイルを送る現代人特有の「2つの意識」
第5回 「歴史の三層構造」の視点を用いて歴史を見る必要性


さらにいえば、ぜひ拙著『ビジネスパーソンのための近現代史の読み方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、2017)を直接お手にとって読んでいただければ、幸いそれにすぐるものはありません。(終わり)



<ブログ内関連記事>

2017年5月19日に5年ぶりに新著を出版します-『ビジネスパーソンのための近現代史の読み方』(佐藤けんいち、ディスカヴァー・トゥエンティワン、2017)

都内の書店をフィールドワーク-「平積み」状態の新著『ビジネスパーソンのための近現代史の読み方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、2017)

「逆回し」とは?--『ビジネスパーソンのための近現代史の読み方』は常識とは「真逆」の方法で製作された歴史書であり、ビジネス書である

「ビジネス書か歴史書か、それが問題だ!」-『ビジネスパーソンのための近現代史の読み方』を書店のどのコーナーに並べるか?

書評 『歴史入門』 (フェルナン・ブローデル、金塚貞文訳、中公文庫、2009)-「知の巨人」ブローデルが示した世界の読み方




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2017年11月13日月曜日

シュタイナー研究家の西川隆範氏による仏教書は、教団や教派とは関係のないフリーな立場に身を置いた個人ベースのスピリチュアリティ重視の仏教を志向する


「お彼岸」だからというわけではないが、ここのところずっと仏教書ばかり読んでいる。以前から読んでいる本を読み返している(*注)

といっても、普通の仏教書ではない。いまは亡き西川隆範氏による仏教書だ。西川氏はルドルフ・シュタイナーの著作や講演録の翻訳者として、膨大な業績を残してくれた。

だが、西川隆範氏は20歳代の前半に出家して、高野山で伝法阿闍梨灌頂(でんぽうあじゃり・かんじょう)を受けている人だ。ベースは仏教にある。しかも、大乗仏教の最終段階である密教である。その後、シュタイナー思想と出会って、シュタイナー思想の精力的な伝道者となった。

すでに西欧近代化されてしまっている日本人にとって、旧来型の仏教がいまいちしっくりこないのは当然といえば当然だ。その意味では、西欧神秘主義のシュタイナー思想とその実践にも精通している西川氏が説く仏教が現代人にアピールするものがあるのは当然ではないだろうか?

そんな西川氏の『生き方としての仏教入門』(河出書房新社、1998)は知られざる名著といっていいと思う。初期仏教から大乗仏教への展開、浄土・禅・密教をベースに「生き方としての仏教」を淡々と平易に語ったものだ。まったく説教臭くないのが最大の特徴といっていいかもしれない。スピリチュアリティとしての仏教である。

『薔薇十字仏教-秘められた西方への流れ-』(国書刊行会、1998)という本は、なんだかオカルトめいた風変わりで奇妙なタイトルだが、内容はきわめて面白い。仏教は、インドから発して東南アジアや中国(その後、朝鮮と日本)、そしてチベット(さらにモンゴル)に伝わったというのが常識だが、じつは「東方」だけでなく、インドから「西方」にも拡がっていたのである。

その痕跡がキリスト教のなかに残存しているのだ。内容について詳しくは書かないが、シュタイナー派の解釈による仏教書で、きわめて異色の仏教書だ。日本の既存の教団や教派とは「無縁」の存在である。そこにあるのは、霊的次元におけるキリスト教と仏教との深いレベルでの相互関係(インタラクション)

つい最近知ったのだが、『仏教は世界を救うか-[仏・法・僧]の過去/現在/未来を問う』(地湧社、2012)という本があることを知った。「東京自由大学特別企画《現代霊性学講座》連続シンポジウム」の記録である。

パネリストは、井上ウィマラ、藤田一照、西川隆範の3氏で、司会は鎌田東二氏。それぞれ上座仏教、禅仏教、密教とシュタイナー、宗教学が専門。西川隆範氏の発言を読みたくて入手して読んでみたら、その他二人の仏教者のパネリストだけでなく、神道だけでなく仏教にも精通した司会者の発言もたいへん興味深いものがあって、没入して読み込んでしまった。

西欧人には理解しがたいようだが、日本人にとっては神道プラス仏教という「神仏習合」が本来のあり方であり、もちろんこのわたしも例外ではない。この点にかんしては、明治維新以前に戻る必要がある。 

西川隆範氏は、不治の病に冒されて、このシンポジウムの翌年の2013年に60歳でお亡くなりになっている。「人生100年時代」などというフレーズが横行しているが、人間はいつ死ぬかわからない存在だ。いつでも死を迎えることができるように準備をすることがいかに大事なことか、西川氏の生き方(=死に方)そのものが語っているような気がする。

西川隆範氏の仏教書のなかでは、『生き方としての仏教入門』をイチオシにしたいところだが、残念ながら「品切れ重版未定」だ。『薔薇十字仏教』は敬遠してしまう人も少なくないだろう。その意味では、最後にあげた『仏教は世界を救うか-[仏・法・僧]の過去/現在/未来を問う』は、さまざまな観点から現代人にとっての仏教の意味を考えるうえで、大いに得るものがある。ぜひ読むことをすすめたい。

 「仏教」と「仏教教団」はわけて考えなくてはならない。スピリチュアリティとしての仏教と宗教(レリジョン)としての仏教もまたイコールではない

教団や教派とは関係のない、フリーな立場に身を置いた個人ベースのスピリチュアリティ重視の仏教だ。そんな立場にある個人が、何事にも束縛されない自由な立場で語り合う。

こういうあり方が、現代人にはもっともフィットしたものではないかと思う。


*(注)アップするのが遅れてしまったが、このブログ記事を書いたのは、2017年9月の「お彼岸」である。





プロフィール

西川隆範(にしかわ・りゅうはん)
1953年、京都市に生まれる。青山学院大学仏文科卒業、大正大学大学院(宗教学)修士課程修了。奈良西大寺で得度、高野山宝寿院で伝法潅頂。ゲーテアヌム精神科学自由大学(スイス)、キリスト者共同体神学校(ドイツ)に学ぶ。シュタイナー幼稚園教員養成所(スイス)講師、シュタイナー・カレッジ(アメリカ)客員講師を経て、多摩美術大学非常勤講師。シュタイナーの著作の日本語訳が多数ある。2013年に逝去。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものに追加)。







<ブログ内関連記事>

シュタイナー関連

「ルドルフ・シュタイナー展 天使の国」(ワタリウム美術館)にいってきた(2014年4月10日)-「黒板絵」と「建築」に表現された「思考するアート」

「生命と食」という切り口から、ルドルフ・シュタイナーについて考えてみる

子安美知子氏の「シュタイナー教育」関連本をまとめて読んで「シュタイナー教育」について考えてみる


■仏教関連

書評 『知的唯仏論-マンガから知の最前線まで ブッダの思想を現代に問う-』(宮崎哲弥・呉智英 、サンガ、2012)-内側と外側から「仏教」のあり方を論じる中身の濃い対談

書評 『仏教学者 中村元-求道のことばと思想-』(植木雅俊、角川選書、2014)-普遍思想史という夢を抱きつづけた世界的仏教学者の生涯と功績を "在野の弟子" が語る

書評 『「無分別」のすすめ-創出をみちびく知恵-』(久米是志、岩波アクティブ新書、2002)-「自他未分離」状態の意識から仏教の「悟り」も技術開発の「創出」も生み出される

マンガ 『月をさすゆび ①~④』(永福一成=原作、能條純一=作画、小学館、2015~2016)-この「仏教マンガ」は人生の岐路にある人すべての心の奥底に触れるものがある

書評 『講義ライブ だから仏教は面白い!』(魚川祐司、講談社+α文庫、2015)-これが「仏教のデフォルト」だ!

書評 『「気づきの瞑想」を生きる-タイで出家した日本人僧の物語-』(プラ・ユキ・ナラテボー、佼成出版社、2009)-タイの日本人仏教僧の精神のオディッセイと「気づきの瞑想」入門

書評 『仏教要語の基礎知識 新版』(水野弘元、春秋社、2006)-仏教を根本から捉えてみたい人には必携の「読む事典」





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2017年11月11日土曜日

マンガ 『月をさすゆび ①~④』(永福一成=原作、能條純一=作画、小学館、2015~2016)-この「仏教マンガ」は人生の岐路にある人すべての心の奥底に触れるものがある



『月をさす指』(原作:永福一成、作画:能條純一、小学館ビッグコミックス、2015~2016)というマンガがある。『ビッグコミックス』に連載され、全4巻で完結した作品だ。

内容は、第1巻の帯に書いてあるように、「仏教の学校で紡がれる青春譜」。主人公はフリーの男性カメラマン38歳独身。親族の実家のお寺を継ぐために仏教僧侶の資格を取得することを求められ、そのための専門学校に入ることになる。

カバーに描かれた画像からわかるように、東京の築地本願寺付属の仏教学校を舞台にした青春マンガだ。築地本願寺なので、浄土真宗ということだろう。しかも西本願寺系列の本願寺派ということになる。

つい最近までこのマンガのこと知らなかったが、amazonで書籍検索しているうちに、たまたま知った。さっそく第1巻を取り寄せて読んでみたところ、面白いので一気に読んでしまった



仏教に目覚める。それがみずからの内から発する内面の声に従った「内発的動機」か、あるいは「外発的な動機」かは、とくに問う必要はなかろう

主人公のカメラマンは外発的動機から仏教に触れることになったが、学友たちはお寺の息子や娘、あるいは定年退職後の第二の人生を住職に設定している元ビジネスマンなど、多岐にわたる。なかには仏教オタクともいうべき論争好きの若者も。かれらをひとまとめにしているのは、まさに「仏縁」というべきであろう。

1年間の仏教専門学校の生活をつうじて、主人公や学友たちは、それぞれ仏教への関わりを深めていく。そして、最後には京都の西本願寺で「得度」し、僧侶としての資格を取得、卒業後はそれぞれの道(=人生)を歩んでいくことになる。成長物語でもあり、恋愛ものでもある。


■「月をさす指」とは?

タイトルの「月にさす指」とは、いわゆる「指月の譬(たとえ)」のことだ。


(仙厓 「指月布袋画賛」)

これは、仙厓(せんがい)の「指月布袋画賛」。禅仏教の「公案」である。出光佐三翁がこよなく愛して収集した仙厓の代表的作品。

「指月の譬」とは、指がさしている先にある本質と、指そのものを混同するな、という教えのこと。

ブルース・リーのセリフとして有名な Don’t think. feel! の次にでてくる It’s like a finger pointing away to the moon. Don’t concentrate on the finger, or you will miss all the heavenly glory. は、まさに「指月の譬」のことなのである。『燃えよドラゴン』(Enter the Dragon)にこのシーンが登場する。 


浄土真宗という制約条件はあるが・・・

仏教といっても、あまりにも広範囲で多岐にわたるものであり、キリスト教やイスラームのような単一の簡潔な経典があるわけではない。

このマンガの仏教とは、浄土真宗のことだ。浄土真宗は、信者の人口規模で見れば、日本で最大の仏教教派である。「仏教」といっても「大乗仏教」、しかも「日本仏教」で「近代仏教」、そのなかでも「近代化」をリードした日本最大の教派である「浄土真宗」だということを念頭において読むべきだろう。

つい昨日、第3巻と第4巻を一気読みしたが、人生の岐路に立っている主人公たちに感情移入している自分を見いだしていた。読み終えた夜、夢のなかにその続きともいうべきシーンがでてきたくらいだ。自分でも不思議な思いをしている。このマンガは、人生の岐路にある人の心の奥底に触れることは間違いない。

仏教ものであり、人生もののマンガである。「仏教青春もの」である。

たいへん地味なテーマだが、いまこの国の仏教が置かれている状況を踏まえた内容の濃いマンガとして、年齢性別にかかわらず、関心のある人にはぜひ読んでほしいと思う。





<関連サイト>

『月をさすゆび』(小学館の書籍関連サイト)
・・全4巻の一気読みを薦めている



<ブログ内関連記事>

「築地本願寺 パイプオルガン ランチタイムコンサート」にはじめていってみた(2014年12月19日)-インド風の寺院の、日本風の本堂のなかで、西洋風のパイプオルガンの演奏を聴くという摩訶不思議な体験

歌人・九條武子による「聖夜」という七五調の「(大乗)仏教讃歌」を知ってますか?

「法然と親鸞 ゆかりの名宝-法然上人八百回忌・親鸞聖人七百五十回忌 特別展」 にいってきた

書評 『男一代菩薩道-インド仏教の頂点に立つ日本人、佐々井秀嶺-』(小林三旅、アスペクト、2008)-こんなすごい日本人がこの地球上にいるのだ!

シュタイナー研究家の西川隆範氏による仏教書は、教団や教派とは関係のないフリーな立場に身を置いた個人ベースのスピリチュアリティ重視の仏教を志向する

(2017年11月18日 情報追加)



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2017年11月10日金曜日

書評 『習近平 vs. トランプ-世界を制するのは誰か-』(遠藤誉、飛鳥新社、2017)-「米中ビッグディール」という「密約」に警戒せよ!


本日(2017年11月9日)は、ドナルド・トランプ氏が米国大統領に選出されてから1年になる日だ。さらにさかのぼれば、奇しくも1989年に「ベルリンの壁」が崩壊してから28年目になる日でもある。

そのトランプ大統領が、「アジアツアー」の途上にある。日本を皮切りに、韓国を経て中国に至っているが、今回の12日間に及ぶ長い「アジアツアー」の最大目的は当然のことながら中国との交渉であろう。

もしかすると、「米中ビッグディール」が密約として結ばれる可能性があるのではないかという疑心暗鬼が日本にあるのは当然だ。トランプのアメリカは、あくまでも「アメリカ・ファースト」の原理原則で動いているのであって、同盟国の日本は米国にとっては比較的自由に取り扱いがきく手駒の一つに過ぎないと考えるだからだ。韓国など、間違いなくそれ以下の存在であろう。

トランプ大統領は安部首相と相性がいいとニュース報道されているが、習近平とも馬が合うようだ。褒め殺しに限りなく近い印象がなくもないが、習近平を最大限に褒めていることを忘れるべきではない。米中両大国のトップは、巨大オーナー企業同士の頂上会談のようなものと考えるのが適当だろう。

今回は日本が最初の訪問地になったが、日本の頭越しに中国訪問という悪夢が実現しなかっただけでも、よしとするべきではないだろうか? 佐藤栄作首相の時代、米国のニクソン大統領は日本の頭越しに中国を電撃訪問し、国交回復を実現したことは忘れるわけにはいかない屈辱であったのだ。

ことし8月に出版されてすぐに読んだ本だが、『習近平 vs. トランプ-世界を制するのは誰か』(遠藤誉、飛鳥新社、2017)は、米中関係の深層を知るうえで、いまあらためて読み直す必要のある本だ。 出版社による書籍紹介から内容をピックアップしておこう。

<内容紹介> 新・米中蜜月の裏の巨大取引! そこには中国の代弁者キッシンジャーがいた。アメリカを操ってきた世界最大の暗部を、中国研究の第一人者がはじめて解き明かす。
アメリカを私物化するキッシンジャー
・誰も語らない北朝鮮問題の根本矛盾
・AIIB、一帯一路の真の狙い
中国最強の知恵袋・王滬寧(おう・こねい)
大の親中派・イヴァンカ
米中をつないでいる米財界人
清華大経済管理学院顧問委員会リスト初公開

ニクソン大統領による米中国交正常化は、キッシンジャー国務長官の「忍者外交」によって実現した「ビッグディール」というべきだ。

日本嫌いのキッシンジャーがそれ以後、中国の代理人を務めていることは、ある意味では「常識」であったが、本書で事実として確認されたことは、日本人のためにはたいへん喜ばしい。米財界が中国ビジネスをどう見ているかについても、遠藤氏の言うとおりだと納得する。

著者の遠藤誉氏は、中国で生まれて国共内戦時代から中共初期の中国で少女時代を送った人。中国共産党の生態とロジックが手に取るようにわかる人だ。

カバー表紙のイラストは辣椒(ラージャオ)氏によるものだ。『マンガで読む嘘つき中国共産党』(新潮社、2017年)の著者である政治風刺マンガ家。ペンネームである。

辣椒氏は、日本滞在中に「表現の自由」のない中国に帰国することの危険を感じそのままを逃れて日本に「亡命」」したが、民主主義が徹底しない日本には見切りをつけて渡米することにしたのだという。辣椒(ラージャオ)さんとの出会い-亡命漫画家『嘘つき中国共産党』(遠藤誉)を参照されたい。

遠藤誉氏の著書は、ほぼすべて読んでいるが、『習近平 vs. トランプ-世界を制するのは誰か』もまた、いまこの時期だからこそ読むべきだと推奨しておきたい。





目 次 

まえがき

第1章 「一つの中国-水面下で動く米財界と中国
 1. それはトランプのビッグ・ディール第一弾だった
 2. トランプ、突然の表明・・・「一つの中国」原則を尊重
 3. 水面下で中国で深くつながっていた米財界人
 【コラム】 超エリート校・精華大学の由来
 4. トランプ政権はキッシンジャーに乗っ取られていた
第2章 米中蜜月「世紀の大芝居」か
 1. シリア攻撃-ビッグ・ディール第二弾
 【コラム】 中国最強の知恵袋・王滬寧(おう・こねい)
 2. 帰国してから米中首脳電話会談
 3. 米中蜜月を演じて北朝鮮を追い詰める
 4. 中国は中朝軍事同盟を破棄できるか?
第3章 北朝鮮問題と中朝関係の真相
 1. 朝鮮戦争はなぜ始まったのか?
 2. 休戦協定が残したしこりと根本的矛盾
 3. ソ連崩壊後の中朝関係
 4. 中国の制裁はどこまで行くのか
第4章 中国の野望、世界のリスク
 1. 「一帯一路」構想とは何か
 2. 一帯一路構想はいつから練り出されたのか
 3. グローバル経済の覇者を狙う
 4. 習近平の顔に泥! 開幕式直前に北朝鮮がミサイル発射
 5. 日本はAIIBに参加すべきではない
 6. 中国の不戦勝となるのか-トランプ、パリ協定を離脱
第5章 歴史の真相に怯える習近平
 アメリカも気付きはじめた中国の巨大な嘘
 参照: 毛沢東が潘漢年(はん・かんねん)と直接連絡を取った例(「毛沢東年譜」より抜粋) 
 ウォルドロン教授との対談(『Hanada』2017年3月号)

あとがき 金日成派に粛清された延安派-長春を食糧封鎖した挑戦八路

著者プロフィール 

遠藤誉(えんどう・ほまれ)
1941(昭和16)年中国吉林省長春市生まれ。国共内戦を決した「長春包囲戦」を経験し1953年に帰国。 東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。 著書に『卡子(チャーズ)-中国建国の残火』『チャイナ・セブン<紅い皇帝>習近平』(ともに朝日新聞出版)、 『毛沢東-日本軍と共謀した男』(新潮新書)など多数。 (本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)





<関連サイト>

トランプ訪中、主人公はアラベラちゃん(遠藤誉、Yahoo!ニュース、2017年11月10日)
・・「それ以外にも活躍していたのは習近平の母校、清華大学にある経営管理学院顧問委員会の米財界人たちだ。そこにはゴールドマンサックスやJPモルガン・チェースCEOなど、目がくらむほどの米財界の大物たち数十名が名を連ねている(この全員のメンバー・リストは『習近平vs.トランプ 世界を制覇するのは誰か』のp.31~34に掲載)。 第19回党大会と一中全会が終わると、習近平は早速、この顧問委員会のメンバーと歓談した。ここで既に今般の米中首脳会談の基本路線は決まっていたと見ていいだろう。(・・中略・・) 清華大学経営管理学院顧問委員会の最も大きな目的は、米中間の経済貿易に貢献する「人財育成」である。投資などが目的ではない。 これは実は時間が経てばたつほど大きな効果を発揮することになる。(・・中略・・) 28兆円の投資協定の裏には、清王朝から続いている、(アメリカのための)清華大学の米大財閥たちとの、恐るべきベースがあることを見逃してはならない。 トランプのアジア歴訪は、ビジネスマン・トランプの一面を発揮したが、表面には出ていない米中の結びつきを、見たくはないだろうが、正視するしかないだろう。」

習近平がトランプに呑ませた「スーパー・ビッグディール」の中身(近藤大介、現代ビジネス、2017年11月14日)
・・「ビッグディール」にかんする一つの推測記事

(2017年11月14日 項目新設)


<ブログ内関連記事>

書評 『完全解読 「中国外交戦略」の狙い』(遠藤誉、WAC、2013)-中国と中国共産党を熟知しているからこそ書ける中国の外交戦略の原理原則
・・「本書の特徴は、とかく日中関係という二国関係だけでものをみがちな日本人に、米中関係という人きわめて強い人的関係をベースにした二国関係の視点を提供してくれている点にある。中国問題は、すくなくとも日米中の三カ国関係でみなければ見えてこない。「大型大国間関係」という、G2=米中二国間関係にちらつくキッシンジャーと習近平の親密な関係、アメリカの世論にきわめて大きな影響力をもつ在米華人華僑の存在、アメリカの中国重視政策と日米同盟のズレなど、米国の中国政策を前提にしないと日中関係も見えてこない。」

書評 『パックス・チャイナ-中華帝国の野望-』(近藤大介、講談社現代新書、2016)-2012年に始まった「習近平時代」を時系列で振り返るとクリアに見えてくるもの

トランプ大統領初来日(2017年11月5日~7日)-この機会に「 トランプ現象」とは何かについてあらためて考えてみる

書評 『仮面の日米同盟-米外交機密文書が明らかにする真実-』(春名幹男、文春新書、2015)-地政学にもとづいた米国の外交軍事戦略はペリー提督の黒船以来一貫している
・・「中国に対しては、キッシンジャー以来、いわゆる「瓶のフタ」論という詭弁で在日米軍の存在を自己正当化してきたことも忘れるべきではない。日本が暴発しないよう、米軍が駐留しているという論である」

書評 『日本近代史の総括-日本人とユダヤ人、民族の地政学と精神分析-』(湯浅赳男、新評論、2000)-日本と日本人は近代世界をどう生きてきたか、生きていくべきか? 
・・米中関係の太さについての重要な指摘が行われている本である。あまり読まれていないのが残念だ。「2章 日米の宿命の関係  1. 同盟国から仮想敵国へ  2. 幻想のアジア  3. 米中同盟=日本の破滅  4. アメリカの日本観  5. 再び日米戦争論」は必読

書評 『中国は東アジアをどう変えるか-21世紀の新地域システム-』 (白石 隆 / ハウ・カロライン、中公新書、2012)-「アングロ・チャイニーズ」がスタンダードとなりつつあるという認識に注目! ・・経済と安全保障のズレが存在するアジア太平洋地域




(2017年5月18日発売の新著です)


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2017年11月8日水曜日

「都市型ライフスタイルを送る現代人特有の「2つの意識」」-「Hello, Coaching」連載中の「逆回し」で見えてくる「現在」の本質!」の4回目が公開(2017年11月6日)



コーチング関連の専門サイト 「Hello, Coaching」(コーチA)に連載中の「「逆回し」で見えてくる「現在」の本質!」

今年(2017年)5月に出版した拙著『ビジネスパーソンのための近現代史の読み方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の「書籍紹介」の形で、文字通り「ビジネスパーソンのための近現代史の読み方」について紹介します。

「第4回 都市型ライフスタイルを送る現代人特有の「2つの意識」が公開。

第4回 都市型ライフスタイルを送る現代人特有の「2つの意識」
⇒ https://coach.co.jp/books-intro/20171106.html

 「さて、今回は「見えないもの」として現代人の「意識」について取り上げて考えてみよう。「意識」というものは、あくまでも脳内世界の存在であるが、自分自身の意識もさることながら他者の意識を知ることはそれ以上に難しい。しかも、生活が習慣化していると無意識となる。「自由な個人」として思考し、行動している。そうは思っていても、実は必ずしもそうではない。無意識のうちに「習慣」となったことを繰り返しているのが日常生活というものだろう。・・・ (つづきは本文

小見出しは以下のとおりです。

「近代」がもたらした「意識」の変化
「空間意識」と「時間意識」
「空間」が「時間」化される

次回の第5回が最終回。来週アップされます。

第1回 「現在」を知るために「歴史」をさかのぼる
第2回 トランプ大統領が誕生した裏には、どんな潮流があったのか
第3回 今の都市型ライフスタイルは、どんな風につくられてきたのか
第4回 都市型ライフスタイルを送る現代人特有の「2つの意識」
第5回 「歴史の三層構造」の視点を用いて歴史を見る必要性


では、次回の最終回をお楽しみに!



<ブログ内関連記事>

2017年5月19日に5年ぶりに新著を出版します-『ビジネスパーソンのための近現代史の読み方』(佐藤けんいち、ディスカヴァー・トゥエンティワン、2017)

都内の書店をフィールドワーク-「平積み」状態の新著『ビジネスパーソンのための近現代史の読み方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、2017)

「逆回し」とは?--『ビジネスパーソンのための近現代史の読み方』は常識とは「真逆」の方法で製作された歴史書であり、ビジネス書である

「ビジネス書か歴史書か、それが問題だ!」-『ビジネスパーソンのための近現代史の読み方』を書店のどのコーナーに並べるか?




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2017年11月7日火曜日

JBPress連載第12回目のタイトルは、「タイではなぜクーデターがスムーズに行われるのか-「勅令・枢密院・不敬罪」3つのキーワードでタイを理解する(2017年11月7日)


JBPress連載コラム12回目は「タイではなぜクーデターがスムーズに行われるのか 「勅令・枢密院・不敬罪」3つのキーワードでタイを理解する」
⇒ http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51506

サブタイトルにある「勅令」「枢密院」「不敬罪」。この3つの言葉から何を連想するだろうか? 日本近代史の授業を思い出す人もいることだろう。

じつはこの3つのコトバは、タイの「立憲君主制」を理解するためのキーワードなのだ。

21世紀のグローバル資本主義の時代に「戦前の日本」が生きているのがタイ王国といっていいかもしれない。

今回は、タイ王国が日本国と同様に「立憲君主制」であるという共通点に焦点を絞り、タイを理解するためのヒントを探ってみたい。

異文化であるタイを理解するためには、まずは共通点を確認した上で、相違点を見ていくのが王道というべきだろう。

つづきは本文にて)


ぜひご一読ください。

次回のコラムは、11月21日公開予定です。お楽しみに!







<関連サイト>

【AFP記者コラム】プミポン前国王の葬儀で見えた秘密と不敬罪の国(AFP、2017年12月12日)

(項目新設 2017年12月12日)



<ブログ内関連記事>

「タイのあれこれ」 全26回+番外編 (随時増補中)


タイのラーマ9世プミポン前国王の「火葬の儀」がバンコクで行われた(2017年10月26日)

タイ王国のラーマ9世プミポン国王が崩御(2016年10月13日)-つひにゆく道とはかねて聞きしかど・・・

書評 『タイ 混迷からの脱出-繰り返すクーデター・迫る中進国の罠-』(高橋徹、日本経済新聞出版社、2015)-「2014年クーデター」は「混迷からの脱出」を可能としたか?

「世襲」という 「事業承継」 はけっして容易ではない-それは「権力」をめぐる「覚悟」と「納得」と「信頼」の問題だ!





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