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2017年10月9日月曜日

映画 『ドリーム』(2016年、米国)を見てきた(2017年10月9日)-米ソ冷戦時代の熾烈な宇宙開発競争という「非常時」のなか、「知られざる黒人女性たち」が突破口を開いた!


映画 『ドリーム』(2016年、米国)をTOHOシネマズで見てきた(2017年10月9日)。原題は、Hidden Figures(=知られざる人たち)

米ソ冷戦時代の熾烈な宇宙開発競争という「非常時」のなか、NASA(アメリカ航空宇宙局)の有人宇宙ロケット打ち上げミッションを支えた「知られざる黒人女性たち」の実話にもとづいた作品だ(Based on the true events)。

日本語版の『ドリーム』というのは、ちょっといただけない。日本語でいえば、「縁の下の力持ち」というべきであろう。


■「人種の壁」と「男女の壁」に風穴を開けた黒人女性たち

映画の舞台である NASAのラングレー研究所は、南部のヴァージニア州にある。

 「公民権法」(1964年)が施行される前のアメリカ南部では、「人種隔離政策」(=セグレゲーション)が公然と実施されていた。黒人は公然と差別されていたのだ。

「ホワイト」(=白人)と「カラード」(=有色人種)で完全に区分されていたのはバスの座席だけではない。トイレも、図書館も、その他すべての公共施設が厳密に「区分」されていた。する側の白人からみたら「区分」であっても、される側の黒人にとっては「差別」以外の何物でもないという現実。

NASAの開発プロジェクトもまた、白人男性の科学者やエンジニアが支配的地位にある世界。そんな状況のなか、ロケットの軌道計算に従事していた黒人女性たちが、「人種の壁」と「男女の壁」に突破口を開くことに成功したのはなぜか?

1961年当時の冷戦時代の米国は、宇宙開発競争でソ連に遅れをとっていたのだ。「地球は青かった」という名セリフをクチにしたのはソ連のガガーリン大佐である。

追い詰められるNASAの開発陣。そんな「非常時」ともいうべき状況においては、モノを言うのは実力だ。人種の違いも男女の違いも関係ない。結果を出すことで実力が認められていったのだ。

コメディタッチのヒューマンドラマだが、最後まで見たらかならず感動するのは間違いない。いい映画だった。



■「プログレス」(=進歩)の時代がもたらしたもの

1960年代というプログレス(=進歩)の時代、飛躍的に進歩したのはテクノロジーだけでない。人種差別と男女差別にかんしても進歩が実現した。

「冷戦」とはいえ、まさに「有事」であり「非常時」であったからこそ、開発競争において背に腹は代えられなかったのだ。そんな状況であったからこそ、白人男性が支配する科学技術の世界で、黒人女性科学者とエンジニアたちの道が開かれたのであった。チャンスをつかんだのである。

「私には夢がある」(I have a dream)と語ったキング牧師のような活動家たちだけが「黒人解放」を推進したのではない。この映画の主人公たちのような「知られざる人物たち」がいたのだ。

個人的な話になるが、わが母校のレンセラー工科大学(RPI)の現在の学長のシャーリー・アン・ジャクスンは黒人女性の科学者だ。MITで博士号を取得した米国初の黒人女性で、物理学での博士号取得は黒人女性では米国で二番目に当たる。RPIの学長職で黒人女性は初めてのことになる。2014年には、オバマ前大統領から「アメリカ国家科学賞」(National Medal of Science)を授与されている。

シャーリー・ジャクスン氏は1946年生まれ。この映画の主人公たちがNASAでミッションに従事していた頃はまだ15歳だったことになる。彼女たちが切り開いた道に続いていった世代の人だ。

そういう自分にとっては、この映画が描いている世界は、じつに感慨深いのである。





■「プログレス」は諸刃の剣

映画のなかでケビン・コスナー演じる開発部長が口にするセリフに、「プログレスは諸刃の剣」(Progress is double-edged sword)というものがある。「進歩」は人類社会にベネフィットをもたらす、一方、技術の陳腐化をもたらし、仕事がなくしてしまうことにもつながる。

追い込まれた宇宙開発プロジェクトの開発責任者は、IBMのメインフレームコンピュータを導入することで、一気に計算時間を短縮することにする。だがこのために、「縁の下の力持ち」であった黒人女性たちが従事していた計算係という職業があっというまにお払い箱になってしまう。

そんな状況を見越して、職場でプログラムの勉強会を開始する先見の明をもった黒人女性のリーダーシップも印象に残る。

技術の進歩は現在でも止まることなく続いている。だがそれを「プログレス」とは言わなくなったような気もする。「プログレス」といいうと、資本主義であれ社会主義であれ、あの時代のバズワードであった。ソ連的な響きでもあり、アメリカ的な響きでもあった。

ともに未来志向の人工国家であったソ連と米国。この二大超大国が熾烈な競争を行っていた時代こそ、プログレスといえるようなプログレスが存在したのではないか?

退歩や後退といった側面さえ見られなくない2010年代の現在からみると、1960年代はきわめて多くの問題を抱えながらも、希望に満ちた時代であった気がしなくもないのである。

その意味では日本語版のタイトル『ドリーム』は、あながち的外れではないのかもしれない。過ぎ去った過去の時代に生きた人たちを描くのにあたって。







<関連サイト>

映画『ドリーム』 公式サイト(日本版)

映画『ドリーム』は、ついにNASAの「隠れたヒーロー」を描き出すことに成功した (WIRED日本版、2017年9月28日)

The Remarkable Career of Shirley Ann Jackson(MIT Technology Review, December 19, 2017)
・・RPIのシャーリー・アン・ジャクソン学長はこの映画Hidden Figures(=知られざる人たち)の後続世代の黒人女性エンジニア・彼女のまた多様性をもたらしたパイオニアの一人。Shirley Ann Jackson worked to help bring about more diversity at MIT, where she was the first African-American woman to earn a doctorate. She then applied her mix of vision and pragmatism in the lab, in Washington, and at the helm of a major research university.

(2017年12月23日 情報追加)


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「昭和の働く女性-夢と希望と困難と-」(昭和館・東京九段下)は、見る価値ある企画展-「昭和」に限定されているのがちょっと残念だが・・
・・戦争と社会進出




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