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2017年9月28日木曜日

クルド人の独立国家樹立は心情的には共感するのだが・・・。増殖が止められない主権国家の弊害が指摘される現在、「民族自決」原則の積み残し課題はどうなるのか?


イラクのクルド人自治区で独立の是非をめぐって住民投票が実施されると報じられている。(2017年9月25日付け情報)。

イラクとイラン、そしてトルコの三か国にまたがった「クルディスタン」という山岳地帯に居住するクルド人は、いまだに自分たち自身の国をもったことがない民族だ。クルド人にかんしては、「民族自決」が否定されたままなのだ。

第一次世界大戦後、オスマン帝国の崩壊によって、クルド人居住区が三か国に分割されてしまったが、トルコ共和国のケマル・パシャはクルド国家樹立に激しく反対した結果、クルド人は時ぶんんたちの国家をもつことができなかったまま現在に至っている。

(CIAの発表したクルド人居住地域の地図 wikipediaより)


投票が行われても開票に時間がかかり、結果が判明するまでには時間がかかるが、独立支持が過半数を超えると予想されている。住民投票を主催した側は、住民投票の結果、賛成多数となればイラク政府と2年間の期限付きで交渉に入るとしている。


心情的には共感するのだが・・・

個人的には、クルド人の独立国家樹立は心情的には共感するの だが、中東の秩序を大幅に揺るがすことは容易に予想できることだ。大英帝国が設計した「人工国家イラク」は妥協の産物であり、いわゆる「民族国家」ではない。大英帝国の負の遺産というべき存在なのだ。

クルド人国家独立という課題は、イラク内でもハードルが高いだけでなく、なによりもトルコが過敏に反応する問題である。トルコ国内では、たびたびクルド人によるテロが発生している。クルド人は、トルコ国民の13%を占めている。間違いなくトルコは猛反発するだろう。

ISIS(=イスラーム国)掃討戦におけるクルド兵部隊の活躍をみてわかるとおり、かれらは勇猛果敢な戦士でもある。しかも女性部隊すら大いに活躍している。


『クルドの星』(1986~1987年)というマンガ

そんなクルド人テーマにした本は、最近でこそ増えてきたが、かつてはきわめて少なかった。安彦良和氏によるマンガ『クルドの星 全三巻』は、そのなかでも先駆的な作品だ。

日本人の父親とクルド人の母親のもとに生まれた少年を主人公とした冒険活劇プラスアルファ。まあ内容的にはさておき、エンターテイメントとして楽しむべき作品だ。さすが、歴史大作マンガ『虹色のトロツキー』の作者ならではのものだ。いや、ガンダムの作画監督ならではというべきか。

国際情勢は『ゴルゴ13』を筆頭にすべてマンガで学んだというのは自民党の麻生太郎氏だが(笑)、クルド人が置かれた厳しい状況はこのマンガを読めばわかる(はず)。発表は1986年なのでソ連崩壊前、すでに30年前ではあるが、ソ連が崩壊してクルディスタンが旧ソ連のアルメニア国境と接することになった以外は、基本的に大きな情勢変化はない。


「民族自決」原則の積み残し課題はどうなるのか

「民族自決」原則は、帝国主義による植民地主義を否定する米国のウィルソン大統領が、第一次世界大戦後の国際秩序構想として主唱したものだが、いまだ民族独立が実現できない民族は多数ある。

しかしながら、主権国家が細分化され無限増殖しているというソ連崩壊後の弊害が指摘されるようになり、「民族独立運動」そのものにも否定的な見解さえ少なくない。

今週日曜日(2017年10月1日)には、欧州スペインのカタロニア自治区で独立の是非を問う住民投票が行われることになっている。「カタロニアはスペインではない!」。かつて米国留学中に、カタロニア出身の留学生から激しい剣幕で叱られたことを思い出す。「クルドはイラク(あるいはトルコ、イラン)ではない!」

2017年9月のいま、そんな状況にようやく変化が生まれようとしている。その動きについては当事者ではないわたくしも、見守っていきたい。間違いなく「苦難の道」は続くことであろうが。

もちろん、このアジアにおいては、チベットとウイグル、そしてモンゴルもまた同様だ。外モンゴルはソ連の衛星国家としてかろうじて独立を保ったが、中国統治下に残された内モンゴルでは過酷なジェノサイドが行われている。

「民族の牢獄」と批判されていたソ連が崩壊して「諸民族」が解放されたが、いまだ「民族の牢獄」でありつづける中国からの「解放」は達成されていない

クルド人問題は、けっして遠い中東の地の問題ではないのだ。








<関連サイト>

クルド人悲願「独立国家樹立」を阻む難題の山 住民投票は賛成多数になるとみられるが… (池滝 和秀 : 中東ジャーナリスト、東洋経済オンライン、2017年9月26日)

住民投票で独立が遠のいたクルドの根深過ぎる問題(Newsweek日本版、2017年11月11日)


なお、クルド人問題については、拙著『ビジネスパーソンのための近現代史の読み方』の第4章(P.268~269)を参照

(2017年11月23日 情報追加)





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(2017年10月20日 情報追加)



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