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2017年9月29日金曜日

ちょっとした違いが大きな効果を生み出す-駅のベンチの並べ替えで転落事故を防止

(新京成電鉄の高根木戸駅にて筆者撮影)

千葉県内を南北に走る新京成電鉄の高根木戸駅のホームをひさびさに利用してみたら、知らないうちに、駅のベンチが新しくなっていた。しかも、並べ方が90度変化しているとに気がついた。線路に対してヨコ方向からタテ方向に並べ替えられていたのだ。

上下線を同じホームで対応する「島式ホーム」の場合だけだが、進行方向に向かってベンチが並べられているのはすばらしい。これだと、上り線だろうが下り線だろうが、あまり気にせず座席に座ることが心理的に可能になる。

進行方向に向かって座るか、背を向けて座るかだけの違いになるからだ。記憶によれば、座席数に変化はないと思う。

(新京成電鉄の高根木戸駅にて筆者撮影)

このタイプのベンチは大阪にもあるようだ。最近は大阪にいってないので気がつかなかったが、この写真をfacebookに投稿したところ、いろいろ意見が寄せられた。その一つをここに紹介しておこう。

「JR西日本を真似たのかもしれませんね。転落事故対策で。立ち上がってふらふらと前に進んで落ちるというのが統計上多かったそうです。酔っ払い客ですが。」

なるほど! 線路に面してベンチがあると、乗降客の少なくなった深夜などは、立ち上がった酔客がフラフラと線路に転落したり、列車に吸い込まれてしまう人身事故もあるわけか。ホームドアがあれば、通過列車のことはいっさい心配する必要はないが、そうでないと酔客(それ以外の自殺志願者も含めて)人身事故が発生するというわけなのだな。

駅のベンチの転落防止用の並べ替えは、ちょっとしたアイデアが大きな違いを生む事例といえよう。英語で言えば A little idea goes a long way. てなところだろう。 実際のところ、転落事故や人身事故がどれくらい減少したのか、検証レポートがあれば見てみたいものだ。

関東ではあまり見ていないので、ぜひ関東の鉄道各社も見習って欲しいアイデアだ。







<ブログ内関連記事>

『新京成電鉄-駅と電車の半世紀-』(白土貞夫=編著、彩流社、2012)で、「戦後史」を振り返る

"世界最小の大仏" を見に行ってきた・・そしてついでに新京成線全線踏破を実行

書評 『京成電鉄-昭和の記憶-』(三好好三、彩流社、2012)-かつて京成には行商専用列車があった!

書評 『「鉄学」概論-車窓から眺める日本近現代史-』(原 武史、新潮文庫、2011)-「高度成長期」の 1960年代前後に大きな断絶が生じた

書評 『鉄道王たちの近現代史』(小川裕夫、イースト新書、2014)-「社会インフラ」としての鉄道は日本近代化」の主導役を担ってきた




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2017年9月28日木曜日

クルド人の独立国家樹立は心情的には共感するのだが・・・。増殖が止められない主権国家の弊害が指摘される現在、「民族自決」原則の積み残し課題はどうなるのか?


イラクのクルド人自治区で独立の是非をめぐって住民投票が実施されると報じられている。(2017年9月25日付け情報)。

イラクとイラン、そしてトルコの三か国にまたがった「クルディスタン」という山岳地帯に居住するクルド人は、いまだに自分たち自身の国をもったことがない民族だ。クルド人にかんしては、「民族自決」が否定されたままなのだ。

第一次世界大戦後、オスマン帝国の崩壊によって、クルド人居住区が三か国に分割されてしまったが、トルコ共和国のケマル・パシャはクルド国家樹立に激しく反対した結果、クルド人は時ぶんんたちの国家をもつことができなかったまま現在に至っている。

(CIAの発表したクルド人居住地域の地図 wikipediaより)


投票が行われても開票に時間がかかり、結果が判明するまでには時間がかかるが、独立支持が過半数を超えると予想されている。住民投票を主催した側は、住民投票の結果、賛成多数となればイラク政府と2年間の期限付きで交渉に入るとしている。


心情的には共感するのだが・・・

個人的には、クルド人の独立国家樹立は心情的には共感するの だが、中東の秩序を大幅に揺るがすことは容易に予想できることだ。大英帝国が設計した「人工国家イラク」は妥協の産物であり、いわゆる「民族国家」ではない。大英帝国の負の遺産というべき存在なのだ。

クルド人国家独立という課題は、イラク内でもハードルが高いだけでなく、なによりもトルコが過敏に反応する問題である。トルコ国内では、たびたびクルド人によるテロが発生している。クルド人は、トルコ国民の13%を占めている。間違いなくトルコは猛反発するだろう。

ISIS(=イスラーム国)掃討戦におけるクルド兵部隊の活躍をみてわかるとおり、かれらは勇猛果敢な戦士でもある。しかも女性部隊すら大いに活躍している。


『クルドの星』(1986~1987年)というマンガ

そんなクルド人テーマにした本は、最近でこそ増えてきたが、かつてはきわめて少なかった。安彦良和氏によるマンガ『クルドの星 全三巻』は、そのなかでも先駆的な作品だ。

日本人の父親とクルド人の母親のもとに生まれた少年を主人公とした冒険活劇プラスアルファ。まあ内容的にはさておき、エンターテイメントとして楽しむべき作品だ。さすが、歴史大作マンガ『虹色のトロツキー』の作者ならではのものだ。いや、ガンダムの作画監督ならではというべきか。

国際情勢は『ゴルゴ13』を筆頭にすべてマンガで学んだというのは自民党の麻生太郎氏だが(笑)、クルド人が置かれた厳しい状況はこのマンガを読めばわかる(はず)。発表は1986年なのでソ連崩壊前、すでに30年前ではあるが、ソ連が崩壊してクルディスタンが旧ソ連のアルメニア国境と接することになった以外は、基本的に大きな情勢変化はない。


「民族自決」原則の積み残し課題はどうなるのか

「民族自決」原則は、帝国主義による植民地主義を否定する米国のウィルソン大統領が、第一次世界大戦後の国際秩序構想として主唱したものだが、いまだ民族独立が実現できない民族は多数ある。

しかしながら、主権国家が細分化され無限増殖しているというソ連崩壊後の弊害が指摘されるようになり、「民族独立運動」そのものにも否定的な見解さえ少なくない。

今週日曜日(2017年10月1日)には、欧州スペインのカタロニア自治区で独立の是非を問う住民投票が行われることになっている。「カタロニアはスペインではない!」。かつて米国留学中に、カタロニア出身の留学生から激しい剣幕で叱られたことを思い出す。「クルドはイラク(あるいはトルコ、イラン)ではない!」

2017年9月のいま、そんな状況にようやく変化が生まれようとしている。その動きについては当事者ではないわたくしも、見守っていきたい。間違いなく「苦難の道」は続くことであろうが。

もちろん、このアジアにおいては、チベットとウイグル、そしてモンゴルもまた同様だ。外モンゴルはソ連の衛星国家としてかろうじて独立を保ったが、中国統治下に残された内モンゴルでは過酷なジェノサイドが行われている。

「民族の牢獄」と批判されていたソ連が崩壊して「諸民族」が解放されたが、いまだ「民族の牢獄」でありつづける中国からの「解放」は達成されていない

クルド人問題は、けっして遠い中東の地の問題ではないのだ。








<関連サイト>

クルド人悲願「独立国家樹立」を阻む難題の山 住民投票は賛成多数になるとみられるが… (池滝 和秀 : 中東ジャーナリスト、東洋経済オンライン、2017年9月26日)


なお、クルド人問題については、拙著『ビジネスパーソンのための近現代史の読み方』の第4章(P.268~269)を参照



<ブログ内関連記事>

書評 『イラク建国-「不可能な国家」の原点-』(阿部重夫、中公新書、2004)-「人工国家」イラクもまた大英帝国の「負の遺産」
・・英国が創ったイラクという「人工国家」の不可能性

書評 『イスラム国-テロリストが国家をつくる時-』(ロレッタ・ナポリオーニ、村井章子訳、文藝春秋、2015)-キーワードは「近代国家」志向と組織の「近代性」にある
・・「自称イスラーム国」の首都ラッカが陥落したいま(2017年10月18日)、オスマン帝国崩壊後の越境による国境線引き問題の焦点はクルド人問題に移行する

ブランデーで有名なアルメニアはコーカサスのキリスト教国-「2014年ソチ冬季オリンピック」を機会に知っておこう!
・・マンガ『クルドの星』で重要な意味をもつアララット山は、ブランディーの名前にもなっているようにアルメニア人にとってはきわめて大きな意味をもつ存在だが、現在はトルコ国内にある

『ソビエト帝国の崩壊』の登場から30年、1991年のソ連崩壊から20年目の本日、この場を借りて今年逝去された小室直樹氏の死をあらためて悼む

書評 『「シベリアに独立を!」-諸民族の祖国(パトリ)をとりもどす-』(田中克彦、岩波現代全書、2013)-ナショナリズムとパトリオティズムの違いに敏感になることが重要だ

書評 『ノモンハン戦争-モンゴルと満洲国-』(田中克彦、岩波新書、2009)-もうひとつの「ノモンハン」-ソ連崩壊後明らかになってきたモンゴル現代史の真相

「チベット蜂起」 から 52年目にあたる本日(2011年3月10日)、ダライラマは政治代表から引退を表明。この意味について考えてみる

(2017年10月20日 情報追加)




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2017年9月27日水曜日

JBPress連載第9回目のタイトルは、「「先進的」伝統を作り出した英国の2人の女王-脇役のアルバート公もロールモデルに」(2017年9月26日)


JBPressの連載コラムの最新コラムが本日公開です。連載開始から9回目となります。

タイトルは、「「先進的」伝統を作り出した英国の2人の女王-脇役のアルバート公もロールモデルに」
⇒ ここをクリック http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51114

NHKで2017年7月30日から9月17日まで合計8回にわたって放送された海外歴史ドラマ『女王ヴィクトリア 愛に生きる』をご覧になったでしょうか?

62年間の在位期間を誇り、大英帝国の全盛期を象徴するヴィクトリア女王(1819~1901年)を主人公にした歴史ドラマで、即位してからの最初の4年間を描いたものでした。

この歴史ドラマを題材に、配偶者をもって子どもを産んでいる二人の英国女王、ヴィクトリアとエリザベスについて、その「先進的モデル」のもつ意味について考えます。

女王ヴィクトリアの影(?)にアルバート公という「脇役」のローウモデルあり。この組み合わせが「先例」となって、エリザベス二世とフィリップ殿下という組み合わせ、さらには旧植民地の独立後のインド圏での女性首相たち誕生にも影響があったかもしれません。

さらに、歴史ドラマの正しい(?)見かたについても考えます。

では、本文をお読みいただきますよう。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51015


次回の更新は2週間後の10月10日の予定です。お楽しみに。



<ブログ内関連記事>

NHK海外ドラマ 『女王ヴィクトリア 愛に生きる』(全8回)が面白い(放送:2017年7月30日~9月17日)-18歳で即位してからの4年間を描いた歴史ドラマ

書評 『大英帝国という経験 (興亡の世界史 ⑯)』(井野瀬久美惠、講談社、2007)-知的刺激に満ちた、読ませる「大英帝国史」である

JBPress連載第2回目のタイトルは、「怒れる若者たち」の反乱-選挙敗北でメイ首相が苦境に、目を離せない英国の動向」(2017年6月20日)





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2017年9月24日日曜日

熟れつつあるゴーヤは三色に変化-外皮が緑から黄色に変化するだけでなく中身のタネが深紅な物体に!

(まさに「色の三原色」そのものの熟れたゴーヤ 筆者撮影)


近在の農家の野菜直売所で買ってから2~3日そのまま常温で放置していたゴーヤ(=苦瓜)が、あれよあれよというまに黄色くなっていった。

先端が黄色くなったのを見て、早く食べないと思っていた翌日、気がついたら全体的に黄緑色に変色。やばいなあと思って、ビニール袋に入れてあったゴーヤを手で持ち上げたら、先端がポロリと崩れ落ちた。

しかも驚いたことに、中から出てきたのは鮮やかな深紅に変色した物体。なんだ、これは!ギョっとするほどのオドロキだ。気持ち悪い、というのがそのときの正直な感想だった。

タネがこんなにぬるぬるで深紅に変化してしまうとは! 食用のためのゴーヤの「劣化」は、じつに速い! 

(上掲の写真のゴーヤの全体 筆者撮影)

食用としては、緑色で固い状態のゴーヤを輪切りにして、なかのワタとタネを取り除いてから調理するのだが、白くて固いタネが、深紅でゼリー状の物質にくるまれたタネに変化してしまうとは!

見慣れぬものを見ると、人間はまずは驚くというのが最初の反応だ。宗教学でいう「ヌミノーゼ」感覚に近いものがあうといっても過言ではないだろう。畏怖と魅惑の両義的な感覚のことだ。

(調理前に輪切りにしてワタとタネを取り除いたゴーヤ 筆者撮影)

あらためて、wikipedia で「ゴーヤ」を検索すると、そのまま「ツルレイシ」の項目に飛ぶ。ツルレイシを漢字で書けば蔓茘枝。ウリ科の植物である。項目には以下のような記述がある。

熟すと黄変軟化し裂開する(収穫しても、常温で放置しておくと同じ状態となる)。完熟した種子の表面を覆う仮種皮は赤いゼリー状となり甘味を呈する。腐敗しているわけではなく食すこともできるが、歯ごたえのある食感は失われる。元来野生状態では、この黄色い果皮と赤くて甘い仮種皮によって、果実食の鳥を誘引し、さらに糞便によって種子散布が行われる。
なるほど、さらにこのまま放置したら、裂けて果実が開くわけか。

黄色くなったゴーヤも食べることはできるようだが、歯ごたえはないようだ。しかも、深紅のタネの仮種皮もまた食べることができるようだ。

考えてみればパパイヤみたいな感じでもある。パパイヤはパパイア科目の常緑樹木であって、一年草のウリ科の植物ではないし、タネも小粒で真っ黒。黄色いパパイアはデザートになるが、緑のパパイアはサラダにする。ゴーヤにかんする wikiの記述を先に読んでいれば、黄色いゴーヤと深紅のゼリーも食べてみたかもしれない。

ゴーヤの立場から見れば、生命をつなぐために必要不可欠なことではあるのだが、もっぱら食用として利用している人間にとっては「迷惑」な話ではある。

とはいえ、緑と黄色と深紅の三色という、なんだか「色の三原色」を見せられたような感じで、自然界の不思議さをまた大いに感じさせられたのでもあった。


(農家の野菜直売所で購入した秋の味覚 なすはおまけ 筆者撮影)






<ブログ内関連記事>

ゴーヤ棚はすでに日本の夏の風物詩

万病に効く!-パパイヤ健康法のススメ

「世界のヒョウタン展-人類の原器-」(国立科学博物館)にいってきた(2015年12月2日)-アフリカが起源のヒョウタンは人類の移動とともに世界に拡がった




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2017年9月23日土曜日

「白い彼岸花」をはじめて見た-目の前に現れた現実が固定観念や常識を壊していく


本日9月23日は秋分の日。お彼岸ですね。

お彼岸といえば彼岸花。ちょうどお彼岸の頃に咲く真っ赤な花。葉っぱのない茎だけの植物に毒々しいまでの真っ赤な花が咲く。

お彼岸のことに咲く彼岸花は赤だと思い込んでいましたが、白い彼岸花もあることを生まれてはじめて知りました。散歩中のことです。へえ、という感じです。固定観念を完全に打ち砕かれた思いです。


生まれてはじめて目にした白い彼岸花。でも考えてみれば、白い彼岸花のほうが、白百合みたいに清浄で、仏教っぽいような気もします。

東南アジアの上座仏教圏では仏前に供えるのは白蓮日本では霊前にふさわしいのは白菊。いずれも共通するのは白。この感覚はアジアでは朝鮮民族以外は共通しています。

彼岸花は真っ赤な花ですが、白い彼岸花もある。赤と白。不思議なコントラストでありますね。固定観念を破るのは、つねに目の前に現れた現実。幻影(まぼろし)ではない現実(うつつ)。写真は、その証拠が残存させる。
  
事実を事実として受け取ることが、あらたな発見と認識の変化をもたらすわけです。そしてそれは仏教的なものの見方でもあります。

これからは、彼岸花といえば赤という「常識」を捨てることにしたいと思います。「気づき」をありがとうございます。合掌。



<ブログ内関連記事>

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「ながつきの 彼岸過ぎても 彼岸花」

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「におい」で秋を知る-ギンナンとキンモクセイは同時期に「臭い」と「匂い」を放つ・・・





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木になるからキウイ!?-ニュージーランド産が普及するキウイだがトロピカルフルーツではない

(千葉県船橋市内にて筆者撮影)

キウイというとニュージーランドという連想が「ゼスプリ」ブランドのプロモーションによって固定観念にまでなっているかもしれません。

ニュージーランドは南半球にあるので、南国イメージがあるキウイですが、トロピカルフルーツではありません。ニュージーランドは亜熱帯から温帯気候。キウイは、日本でも栽培が可能なことは、店頭で産地情報を見ていればわかることでしょう。

この写真はキウイがなっている様子を写真に撮ったもの。散歩中に撮影。いまの季節は秋。キウイもまた秋の実り。 もちろん「木になるからキウイ」ではありませんよ(笑) 気になる話ではありますが。

キウイ(kiwi)はニュ-ジーランドに生息する「飛べない鳥」の仲間。ニュ-ジーランドが特産物にするためにキウイフルーツと命名したからキウイとなったわけです。

キウイフルーツは、ネコが大好きな「マタタビ属」の植物です。そう考えると、人間が好きなキウイというのは不思議なフルーツでありますねえ。




<ブログ内関連記事>

ゼスプリ(Zespri)というニュージーランドのキウイフルーツの統一ブランド-「ブランド連想」について

"あきづき" という梨の新品種について

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タイのホテルの朝食はオールシーズン「フルーツ三点セット」-タイのあれこれ(番外編)

イスラエル産スウィーティーの季節





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2017年9月18日月曜日

写真集 『妖怪の棲む杜 国立市 一橋大学』(伊藤龍也、現代書館、2016)で、ロマネスク風建築にちりばめられた建築家・伊東忠太の「かわいい怪物たち」を楽しむ

(一橋大学の国立キャンパス)


建築家・伊東忠太の代表作といえば、東京は築地本願寺のインド風の寺院建築物ということになうだろう。

ずいぶん昔のことになるが、はじめて築地本願寺を見たとき、ほんとうに不思議な感じがしたものである。浄土真宗のお寺なのに、ぜんぜん日本風ではないからだ。あまりにもエキゾチックな仏教寺院。

(伊東忠太設計になる築地本願寺 筆者撮影)

インド風ということでいえば、千葉県市川市の中山法華経寺にもインド風の建造物があるが、こちらはあまり知られていないようだ。日蓮聖人関連の宝物を収蔵した「聖教殿」である。一般的には、日蓮宗のほうがインド風の建造物は似合っているといえよう。

築地本願寺が浄土真宗でありながらインド風の建築物となったのは、大陸に雄飛した大谷光瑞の趣味も反映しているのであろう。

(伊東忠太設計になる中山法華経寺の「聖教殿」 筆者撮影)

伊東忠太が、法隆寺はギリシアのパルテノン神殿のエンタシスの影響にあるという説を打ち出したのは、みずからの3年におよぶユーラシア大陸横断というフィールドワークで得た知見によるものだ。このように、伊東忠太は建築家であると同時に建築史家であり、スケールの大きさはユーラシア大陸を股にかけた調査旅行から生まれてきたのであった。


インド風建築だけが伊東忠太の代表作ではない

だが、インド風建築だけが真骨頂ではない。一橋大学(当時は東京商科大学)のキャンパスにある兼松講堂もまた伊東忠太の代表作の一つである。

テレビドラマのロケでよく使用されるので、見たことがある人も少なくないだろう。直近では、土曜日午後6時からNHK総合でやっていた土曜時代ドラマ『悦ちゃん-昭和駄目パパ恋物語-』の最終回(2017年9月16日)で兼松講堂と図書館と池が使用されていた。主人公を演じたユースケ・サンタマリアの後ろにあるのが「兼松講堂」だ。獅子文六の原作は1936年(昭和11年)なので、時代的にもこの建築物はドラマのはふさわしい。

(ドラマ『悦ちゃん』のテレビ画面より筆者がキャプチャ) 

この建築物は、現在では講堂以外にコンサートホールとしても使用されているが、外観は西欧中世のロマネスク風である。バロックが近代であれば、ゴチックは後期中世、それ以前がロマネスクとなる。

ロマネスクとは文字通りの意味ではローマ風ということになるのだが、じっさいはキリスト教と土着信仰の融合的存在ともいうべきものであり、そのため建築物の外装には多数の怪物たちが彫刻されているのである。


ロマネスク風建築にちりばめられた「怪物たち」は伊東忠太の創作物

写真集『妖怪の棲む杜 国立市 一橋大学』(伊藤龍也、現代書館、2016)は、伊東忠太が愛した「怪物」たち(・・写真家は「妖怪」と表現しているが)に魅せられた写真家による写真集である。

ヨーロッパ中世史を専攻したわたしは、とくに考えることもなく「ガーゴイル」(・・西欧風建築物にある雨樋の上につけられた怪物の彫刻)だろうと思い込んでいたのだが、建築史家の藤森照信氏によれば、伊東忠太が創作した怪物たちも多数混じっているとのことを知った。この点にかんしては、『伊東忠太動物園』(藤森照信=編・文、増田彰久=写真、伊東忠太=絵・文、筑摩書房、1995)を参照するとよい。

ところで、昭和初期の1931年(昭和6年)に来日して、東京商科大学(=一橋大学)の国立キャンパスを訪れた経済学者シュンペーターは、 暖房設備が不備なことをわびた関係者に対して、"University is not a building."(=大学は建物ではない) と英語で語ったという。

大学の学部が市内に散在しているのが当たり前の西欧出身のシュンペーターとしては当たり前の発言であったことだろうが、伊東忠太の建築物のファンからすれば、「いや建築物こそ大学」と言いたいところだ。

建築史という未開の分野を拓いたパイオニアである一方、「化け物」をこよなく愛し、ひたすら妖怪の画を描き続けた伊東忠太。

ひそかに作り込まれた怪物たちは、じっさいに一橋大学の国立キャンパスに足を運んで見るべきだが、この写真集で楽しんでみるのもいいだろう。






<関連サイト>

「怪物の棲む講堂」 - 一橋大学 (藤森照信)
・・建築史家の藤森照信氏による解説は、伊藤忠太への愛に満ちたオマージュ


<ブログ内関連記事>

書評 『「くにたち大学町」の誕生-後藤新平・佐野善作・堤康次郎との関わりから-』(長内敏之、けやき出版、2013)-一橋大学を中核にした「大学町」誕生の秘密をさぐる

ここにも伊東忠太設計のインド風建築物がある-25年ぶりに中山法華経寺を参詣(2015年1月20日)

「築地本願寺 パイプオルガン ランチタイムコンサート」にはじめていってみた(2014年12月19日)-インド風の寺院の、日本風の本堂のなかで、西洋風のパイプオルガンの演奏を聴くという摩訶不思議な体験 
・・築地本願寺もまた伊東忠太の設計によるインド風建築物


建築家関係

「信仰と商売の両立」の実践-”建築家” ヴォーリズ
・・メンソレータムの生みの親のヴォーリスは、キリスト教伝道のために日本に来たアメリカ人だが、日本に洋風建築を普及させた人でもある

「ルイス・バラガン邸をたずねる」(ワタリウム美術館)
・・ピンクの色調が特徴のメキシコの建築家

『連戦連敗』(安藤忠雄、東京大学出版会、2001) は、2010年度の「文化勲章」を授与された世界的建築家が、かつて学生たちに向けて語った珠玉のコトバの集成としての一冊でもある

本の紹介 『建築家 安藤忠雄』(安藤忠雄、新潮社、2008)
・・いわずとしれた世界的建築家。ヴォーリズとは対照的に、饒舌な人である

(2017年9月30日 情報追加)




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2017年9月12日火曜日

JBPress連載第8回目のタイトルは、「ダイアナ元妃とマザー・テレサの名前の秘密-名前はプロファイリング情報のかたまり」(2017年9月12日)


JBPressの連載コラムの最新コラムが本日公開です。連載開始から8回目となります。

タイトルは、「ダイアナ元妃とマザー・テレサの名前の秘密-名前はプロファイリング情報のかたまり」
⇒ ここをクリック http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51015

英国のダイアナ元妃が交通事故で悲劇的な最期を迎えたのは1997年8月31日のことだった。36歳という若さでの非業の死である。あれからもう20年になる。

ダイアナ元妃の死から1週間もたたない1997年9月5日、インドのカルカッタ(現在はコルコタ)でマザー・テレサが亡くなった。こちらは87歳の大往生。晩年はさまざまな疾患を抱えていたとはいえ、天寿を全うしたといっていいだろう。

ダイアナ元妃の非業の死から1週間もたたずに亡くなったマザー・テレサ。マザーテレサは昨年2016年にカトリック教会で「列聖」され、「コルコタの聖テレサ」となった。文字通り「聖人」となってしまったのである。

だが、ダイアナとテレサの二人には共通点と相違点がある。ダイアナとテレサという女性名にまつわる意味を考えてみよう。

ファミリーネームだけでなく、ファーストネームから読み取れる情報もきわめて多い。名前はプロファイリング情報のかたまりだ。名前から読み取れるものとは何だろうか?

では、本文をお読みいただきますよう。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51015


次回の更新は2週間後の9月26日の予定です。お楽しみに。







<ブログ内関連記事>

JBPress連載第6回目のタイトルは、「独立から70年!いよいよ始まるインドの時代-舞台はインド、日英米はさらに密接な関係に」(2017年8月15日)

本日よりネットメディアの「JBPress」で「連載」開始です(2017年6月6日)

ダイアナ元妃の悲劇的な事故死(1997年8月31日)から20年-神に愛された人は早死にし、永遠に生き続ける

書評 『マザー・テレサCEO-驚くべきリーダーシップの原則-』(ルーマ・ボース & ルー・ファウスト、近藤邦雄訳、集英社、2012)-ミッション・ビジョン・バリューが重要だ!

アッシジのフランチェスコ (4) マザーテレサとインド

書評 『世界を動かす聖者たち-グローバル時代のカリスマ-』(井田克征、平凡社新書、2014)-現代インドを中心とする南アジアの「聖者」たちに「宗教復興」の具体的な姿を読み取る




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2017年9月6日水曜日

「斬首作戦」は韓国軍の特殊部隊が実行すべき作戦-未遂に終わった1971年のキム・イルソン暗殺作戦をテーマにした韓国映画『シルミド』(2003年)を見るべし!

(韓国映画『シルミド』の予告編からキャプチャした画像)


 ここのところ緊張の度合いを増している北朝鮮情勢にかんして、「斬首作戦」の部隊編成を2017年12月1日までに行うと韓国軍部が表明しているが、これはまっとうな話だ。米軍の特殊部隊では北朝鮮侵入作戦は実行不可能。白人や黒人ではすぐにバレてしまう。

情報収集を含め作戦のコントロールは米軍が行うとしても、じっさいに北朝鮮内部に侵入して「斬首作戦」を実行するのは、韓国軍の特殊部隊になるのは当然だ。いわゆる実行部隊である。

韓国にとって「斬首作戦」は初めての作戦ではない朴正熙(パク・チョンヒ)大統領時代の1971年には、特殊部隊による「金日成暗殺作戦」が実行寸前までいっている。金日成(キム・イルソン)はキム・ジョンウンの祖父。当時の最高指導者であった。

作戦のミッションは、「キム・イルソンの首を持って帰ること」(Our mission is to bring back the head of KIM Il-sung.)ターゲットを暗殺して首を持ち帰ること、つまり「斬首作戦」ということになる。上掲のキャプチャ画像を参照。韓国の名優アン・ソンギが演じる特殊部隊の隊長のセリフである。

作戦そのものは直前に中止命令がでて未遂となったのではあるが、現代史の教科書には出てこない。この作戦は、その前に発生した1968年1月に発生した朴正煕(パク・チョンヒ)大統領暗殺未遂事件への報復を意図したものであった。

これは北朝鮮軍による首都ソウル侵入作戦であった。1968年1月21日、北朝鮮軍暗殺隊の31人の兵士が首都ソウルに潜入、韓国大統領府の「青瓦台」(チョンワデ)を囲むところまでいったが未然に発覚し、韓国側との激しい銃撃戦の末、29人が射殺され、1人が自爆したという事件である。



この語られることなく埋もれてた実話をもとに製作されたのが韓国映画の『シルミド』(2003年)。シルミドとは実尾島の韓国読み。この島で「キム・イルソン暗殺作戦」の過酷な訓練が行われていた。

この映画は、日本でも2004年に公開されている。もちろん映画なので事実そのものではなく脚色はあるが、この映画で「斬首作戦」にいたる過酷な訓練のプロセスをシミュレーションしてみるのもいいかもしれない。

映画の概要については、日本語字幕付きの予告編が YouTube で見当たらないので英語字幕付きの予告編でご覧いただきたい。「斬首作戦」からみの報道で、 『シルミド』について日本のニュース報道でまったく取り上げられないのが不思議だ。



現在の事象も過去の事例を参照すれば、よい広いパースペクティブからものを見ることが可能となる。韓国映画『シルミド』は、エンターテインメント作品として楽しんだらいいだろう。







<関連サイト>

米国が北朝鮮を攻撃できない「もう1つの理由」 米スパイが潜入不可能で、核・ミサイル施設の実態つかめず?(高濱賛、JBPress、2017年9月28日)

(2017年9月28日 項目新設)


<ブログ内関連記事>

書評 『朝鮮半島201Z年』(鈴置高史、日本経済新聞出版社、2010)-朝鮮半島問題とはつまるところ中国問題なのである!この近未来シミュレーション小説はファクトベースの「思考実験」

韓国現代史の転換点になった「光州事件」から33年-韓国映画 『光州 5・18』(2007年)を DVD でみて考えたこと(2013年5月18日)

韓国で初の女性大統領誕生-彼女の父親を「同時代」として知っている世代には感慨深い

「ムクゲの花が咲きました」-原爆記念日に思うこと(2012年8月6日)





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2017年9月4日月曜日

「教養」を身につけたかったらリアル書店で無料配布している『岩波文庫解説目録』を熟読せよ!

(最新版の「岩波文庫解説目録」 2017年は岩波文庫創刊90年)

「教養」を身につけたかったらリアル書店で無料配布している『岩波文庫解説目録』を熟読せよ!

『岩波文庫解説目録』。これ一冊を熟読すれば、いわゆる「教養」はかならず身につくはずだ。

岩波文庫は、古今東西の「古典」を網羅しているから、その解説文を読んでいるだけで、その本の概要がわかるのである。

もちろん、「教養」=「知識」と考えればという前提ではあるが、「教養」は「知識」のベースがなければ成り立たない。

岩波文庫をそんなに読んでいなくても問題はない。わたし自身は、中学生の頃から岩波文庫を読むようになったが、『岩浪文庫解説目録』はその頃の愛読書であった。その頃の解説目録は「1975年夏」のもの。手垢で真っ黒になっている(下の写真)。

(かつての「愛読書」 マイコレクションより)

その頃はまだ文庫本ブーム以前の時代で、角川文庫もエンターテインメント路線ではなく、新潮文庫も文芸路線であり、岩波文庫が日本の文庫本のモデルであった。より現代に近い教養路線のものとしては「現代教養文庫」があったが、出版社の社会思想社が倒産したため、いまはもうない

そういう事情もあって、岩波文庫は昭和2年(1927年)の創刊以来90年、日本人にとっての「教養」のベースを提供し続けてくれている。これは版元の岩波書店の「戦後」の政治姿勢とは関係ない、「戦前」から引き継いだ日本人にとっての大きな財産というべきである。

なにごとも是々非々で望むべきである。「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」なんていうのは愚か者の戯れ言である。「戦前」の岩波書店と、「戦後」の岩波書店は、連続しているが、不連続の側面もある。

(1977年は岩波文庫創刊50年 マイコレクションより)

その昔、岩波文庫だけでなく角川文庫も新潮文庫も文庫本カバーがなかった時代、文庫本を覆っていたのはパラフィン紙で、その下に帯があった。青・緑・黄・白・赤の色分けの帯は、それぞれ思想・日本近代文学・日本古典文学・社会科学・外国文学に対応していた。岩波文庫は、現在でもカバーに色は反映させている。

その帯には、本の内容が簡潔に記されていた。これは岩波文庫ならではのものであった。角川文庫や新潮文庫の帯には内容要約は記されてなかった。


岩波文庫の場合は、内容紹介は三行で、これがそのまま現在でもカバー表紙に印刷されている。これは読者にとってはじつにありがたいことだ。

ではじっさいにどのような文言が書かれているのか、比較的ここ数年の新刊を中心に紹介しておこう。岩波書店の公式サイトから引用しておこう。


『重力と恩寵』(シモーヌ・ヴェイユ、冨原真弓訳、2017)
https://www.iwanami.co.jp/book/b281715.html 
たとえこの身が汚泥となりはてようと,なにひとつ穢さずにいたい──絶え間なく人間を襲う不幸=重力と,重力によって自らの魂を低めざるをえない人間.善・美・意味から引きはがされた真空状態で,恩寵のみが穢れを免れる道を示す.戦火の中でも,究極の純粋さを志向したヴェイユの深い内省の書.その生の声を伝える雑記帳(カイエ)からの新校訂版.

『物質と記憶』(ベルグソン、熊野純一訳、2015)
https://www.iwanami.co.jp/book/b270887.html 
精神と物質,こころと身体の関係.アポリアと化した〈心身問題〉にベルクソンが挑む.実在論や観念論の枠組みを離れて最初から考え直してみること.そのためには問題の立て方じたいの変更が求められる.身体は生きるために知覚し,精神は純粋記憶のなかで夢みている.生の哲学から見られたときに現れる新たな世界像とは.新訳

『中国中世史』(内藤湖南、2015)
https://www.iwanami.co.jp/book/b270879.html 
日本の東洋学の祖・内藤湖南(1866-1934).彼の時代区分論は日本のみならず世界的な評価を受けている.本書は唐末五代を中世から近世への過渡期とみなすだけでなく,明清時代へと続く近世中国の特質が宋代から元代にかけて形成されたと論じる.具体的な史実に即した平明な叙述のなかに独創的で鋭い洞察に満ちた内藤史学の代表作.(解説・注=徳永洋介)

(カバー表紙に印刷されている文言と目録の文言は若干だが違いがある)


「青」に分類されるものから実例を紹介しておいたが、どうだろうか。いっけん取っつきにくい思想関係の本も、この内容紹介を読めば、なんとなく内容がわかったような気分になるだろう。さらに読んでみようという気になるかもしれない。じつに巧みな内容紹介ではないか!

個々の文庫本の解説については、岩波書店の公式サイトじたいがデータベースとなっているので検索すれば該当箇所を読むことができるのだが、いかんせん、いわゆる「古典」」そのものを前後関係をも含めて全体としてつかみとることには適していない

(「解説目録」よりギリシア哲学のページ)

その意味では、印刷版の小冊子である「解説目録」は有用であるといえよう。しかもリアル書店の店頭では最新版が「無料」で配布されているので、もらっておいて損はない。これは、電子辞書と紙に印刷された辞書との違いにも該当することだ。

『岩浪文庫解説目録』で「教養」を身につける。時代錯誤(?)かもしれないが、ぜひ実践してほしいと思う。







<関連サイト>

岩波文庫創刊90年にあたって――岩波文庫は,これからも進化し続けます (岩波書店公式ウェブサイト)


<ブログ内関連記事>

本の紹介 『阿呆物語 上中下』(グリンメルスハウゼン、望月市恵訳、岩波文庫、1953) ・・旧版のパラフィン紙時代の岩浪文庫はこんな感じ

ビジネスパーソンに「教養」は絶対に不可欠!-歴史・哲学・宗教の素養は自分でものを考えるための基礎の基礎

世の中には「雑学」なんて存在しない!-「雑学」の重要性について逆説的に考えてみる

「生誕130年 橋口五葉展」(千葉市美術館) にいってきた(2011年7月)
・・1927年創刊の岩浪文庫のブックデザインは橋口五葉が担当している

書評 『全体主義と闘った男 河合栄治郎』(湯浅博、産経新聞出版、2016)-左右両翼の全体主義と戦った「戦闘的自由主義者」と戦後につながるその系譜
・・現代教養文庫は河合栄治郎の後継者たちが「戦後」につくった社会思想社が発行していた




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2017年9月3日日曜日

書評  『戦争にチャンスを与えよ』(エドワード・ルトワック、奥山真司訳、文春新書、2017)-戦略の「逆説的論理」によって「意図せざる結果」がもたらされる


『戦争にチャンスを与えよ』(エドワード・ルトワック、奥山真司訳、文春新書、2017)を読んだ。この本は、じつに刺激的だ。知的に刺激され活性化することは間違いなし。

 「戦争にチャンスを与えよ」という1999年に発表された英語論文から全体のタイトルが取られている。本書はこの論文の自己解説と、編訳者が著者に行った関連インタビューを一冊にまとめたもの。

 「戦争にチャンスを与えよ」という耳慣れないタイトルについてだが、本書には説明はないが、英語の Give PEACE a chance. の PEACE を WAR に入れ替えたものだろう。Give PEACE a chance.は言うまでもなくジョン・レノンの曲名。

著者の主張は、真の平和を欲するのであれば、戦争の当事者が不完全燃焼にならないように下手な介入はするな、というものだ。介入するなら、戦争相手国が敗戦したあとの戦後復興まで含めてフルコミットせよ、と。

戦争に負けた側は、敗戦後はまずは復興にチカラを注ぐから結果として平和になる。中途半端な停戦となると、お互いが再戦のために準備を注ぐため平和は訪れない。しかし平和がつづくと不感症になり、大丈夫だろうという根拠なき慢心が戦争を誘発する危険を高める。

これが著者のいう戦略の「パラドクシカル・ロジック」(=逆説的論理)というやつだ。戦争が平和をもたらし、平和が戦争をつくりだす。パレスチナ難民のように、難民キャンプでの支援が難民の存在を永続化させてしまうこともある。

この逆説的なロジックは、「意図せざる結果」と言い換えてもいいだろう。良かれと思った行為が、意図と反して逆の結果をもたらすことは、日常でもよく観察されるところだ。

このほか、戦略家の著者による「巨大で不安定な大国である中国」への対応、北朝鮮論への対応策、徳川家康を絶賛した戦国武将論、英国論など、いずれも刺激的で面白い。徳川家康も後期の大英帝国も、その巧みな同盟つくりによって成功したという指摘は重要だ。著者は、同盟は不快で苦痛を伴うものだという指摘も忘れない。日米同盟も同様であろう。

とくに著者の長年の研究テーマであるビザンツ帝国(=東ローマ帝国)の軍事戦略分析から得られる7つの教訓は、もっとも成功した戦略の実例として興味深い。ビザンツ帝国は千年続いた世界最長の帝国である。

全体的にインタビューで構成されているので読みやすいと思う。だが、ここで述べられている発想と思想は、いわゆる「平和愛好家」の神経を逆なでするものであろう。

こんなこと活字にしてしまっていのか(?)といった、現在74歳の著者自身による武闘派的エピソードも披露されているが、著者は象牙の塔のなかの研究者ではなく、つねに実戦的なフィールドに身を置いてきた人である。

おなじ編訳者による『中国4.0-暴発する中華帝国-』(文春新書、2016)とあわせ読むことを薦めたい。






<関連サイト>

Edward Luttwak (Wikipedia英語版
・・こちらは情報量が多いので、ルトワック氏のプロファイルと業績について知るには、英語版を見ておくことが重要





<ブログ内関連記事>

書評 『中国4.0-暴発する中華帝国-』(エドワード・ルトワック、奥山真司訳、文春新書、2016)-中国は「リーマンショック」後の2009年に「3つの間違い」を犯した

「意図せざる結果」という認識をつねに考慮に入れておくことが必要だ
・・どうも中国は、自分の行為がいかなる結果を引き起こすかについての想像力を著しく欠いているようだ。つまり、ルトワック氏のいう「パラドクシカル・ロジック」(=逆説的論理)が分かっ5ていないということ意味している

書評 『知的複眼思考法-誰でも持っている創造力のスイッチ-』(苅谷剛彦、講談社+α文庫、2002 単行本初版 1996) 
・・第4章で「意図せざる結果」についての重要な指摘がある。この本は必読書。

「ストライサンド効果」 (きょうのコトバ) 
・・「インターネット上に公開された情報を、個人や企業が封じ込めようとすればするほど、かえってその情報が拡散してしまうという、「行為の意図せざる結果」がもたらされてしまう現象のこと」

アダム・スミスの 「見えざる手」 は 「神の手」 ではない!-それは 「意図せざる結果」の説明として導入されたものだ




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