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2015年6月30日火曜日

西欧中世の聖女ヒルデガルド・フォン・ビンゲンはニンニクを礼賛していた


近所のスーパーでスペイン産のニンニクを売っていたので購入した。闘牛のイラストがなんだか妙に説得力があるね。パワー全開!(笑)  

日本国内で流通している格安ニンニクは中国産が多いが、スペイン産はめずらしい。基本的に国内産愛用の立場から、いつもは青森産を買っているのだが、珍しさもあってスペイン産を試してみることにした。日本国内で流通している塩漬けタネ抜きオリーブは大半がスペイン産だが、ニンニクにもスペイン産があるわけだ。

ニンニクを包んだ網についているタグには San Isidoro  Ajo Santo とある。スペイン語なので、「サン・イシドロ アホ・サント」と読む。

ニンニクはスペイン語でアホ(ajo)。「j」はスペイン語では「x」音。完全に一致ではないが、日本語のハ行の音で代用可能。英語だとガーリック(garlic)なので、ずいぶんと違う印象を受ける。

さらにいえば、雌牛はスペイン語でバカ(vaca)。スペイン語の「v」音は「b」音に同じなので、めずらしく日本人にも発音しやすい。雌牛の群れはバカだ(vacada)というのも、日本語人としては笑ってしまう。

奇しくもこの「スペイン産ニンニク」のタグにはアホとバカが共存している。もちろん、このイラストは雌牛ではなく雄牛っぽいので、バカ(vaca)ではなくトロ(toro)というべきだろうが・・・。

「サン・イシドロ アホ・サント」は、スペインのニンニク生産農家の協同組合のものらしい。

サン・イシドロ(San Isidoro)は、正確には San Isidoro de Sevilla とあるように、スペインのセビーリャの聖イシドールスのことだ。5世紀から6世紀にかけて活躍した「後期ラテン教父」なかで最も重要な神学者の一人。 30年以上セビーリャ大司教を務めた人で、カトリックでは「インターネット利用者およびプログラマー」の守護聖人となっている。

だが、この聖イシドールスとニンニクには直接の関係はなさそうだ。関係があるのは、サン・イシドロという地名だけである。

カトリックの聖者でニンニクと関係があるのは、11世紀から12世紀にかけてのドイツの聖女ヒルデガルド・フォン・ビンゲン(Hildegard von Bingen)である。

(聖ヒルデガルド・フォン・ビンゲン wikipediaより)


『ニンニクと健康』(フルダー/ブラックウッド、寺西のぶ子訳、晶文社、1995)という本には、鉱物学や医学や薬草学など、さまざまな実用的な学問に通じていた神秘家の聖ヒルデガルドによるニンニクの効用が引用されているので、ここに孫引きしておこう。

ニンニクは、健やかな人にも病める人にも健康を与えてくれる。ニンニクは生で食べる方がよい。調理すると効き目が弱くなるからだ。ニンニクを食べても目が痛くなったり、目の周辺の血管が強い刺激を受けたりはしない。むしろ、ニンニクによって目はすっきりする。
身体の血液が暖まりすぎるといけないので、ニンニクは適度に摂るのが望ましい。実際のところ、もしニンニクを食べることを禁止されたら、人の健康と力は失われていく。だが、食品と混ぜて適当な量だけ食べれば、力をとりもどせる。

日本の禅寺には、「不許葷酒入山門」(=葷酒、山門に入るを許さず)と彫られた石柱が立っていることが多い。ニンニクなどの刺激物は摂取が禁じられていたのは、男子出家僧中心の僧坊が女人禁制であったことと関係がある。刺激物は修行の妨げとなるからだ。ベネディクト会系の女子修道院長であった聖ヒルデガルドの発言とは真逆なのが興味深い。しかもナマで食べる方が良い、だとは。

ニンニクといえは吸血鬼ドラキュラという連想があるが、ドラキュラはバルカン半島のルーマニア地方の伝説である。ニンニクはドラキュラの天敵だが、じつは栽培にあたっては、コンパニオン・プランツ(companion plants)として、どんな植物とも相性がいいようだ。

もともと和食ではネギ以外の薬味はあまり使用されず、ニンニクを食べる習慣はなかった。中国人や韓国人との大きな違いである。肉食民族と魚食民族の違いというべきか。いまでは中華料理や韓国料理の普及、食の洋風化、とくにイタリア料理の普及にともなって、家庭でもニンニクは常用されるようになっている。

いまでも匂いがきつい、口臭が心配だという日本人が多いが、ニンニクを食べないのはもったいない。「もしニンニクを食べることを禁止されたら、人の健康と力は失われていく」という聖ヒルデガルドの発言を想起したいものだ。へんなサプリなんかより、はるかに効くはずだ。






<関連サイト>

天才レシピ「バカのアホ炒め」
・・料理研究家・平野レミ氏のレシピ 「スペイン語でバカは牛。アホはニンニク。バカみたいに簡単にできるのに、アホみたいに美味しい、天才的なレシピです。ごはんにのっけてもよし。パスタにのっけてもよし。平野レミの大ヒット・レシピのひとつです。」

(2015年7月15日 項目新設)


<ブログ内関連記事>

「スペイン料理」 の料理本を 3冊紹介

猛暑の季節こそ「とうがらし」!

「生命と食」という切り口から、ルドルフ・シュタイナーについて考えてみる 
・・Man is what he eats. (人間は、食べるところのものである)は、やさしくいいかえれば You're what you eat.

書評 『食べてはいけない!(地球のカタチ)』(森枝卓士、白水社、2007)-「食文化」の観点からみた「食べてはいけない!」

邱永漢のグルメ本は戦後日本の古典である-追悼・邱永漢

『檀流クッキング』(檀一雄、中公文庫、1975 単行本初版 1970 現在は文庫が改版で 2002) もまた明確な思想のある料理本だ
・・「この全篇をつらぬく主張が、「あるものは何でも使い」「ないものはないですませるに限る」調理思想だという、そのことの重大さが、次に問題にされなければならない。 檀氏は、少なくとも「食」に関して、われわれに身近な民族でいえば、中国人にこそ最も近い人物であるだろう。・・(中略)・・本書を通じて、味の引き出し方の基本が、ニンニクとショウガ、そしてしばしばネギでおこなわれるのも檀氏の「中国」的ホンネをほうふつさせるが、「ない材料(もの)はなくて済ませるに限る」たくましい思想を根強く生ませたのかもしれない、とかんがえることは大事だと思う。」(荻政弘氏による解説より)






(2012年7月3日発売の拙著です)










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2015年6月29日月曜日

ネギ坊主はネギの花


ネギ坊主はネギの花だ。5月から6月にかけてネギ畑で見ることができる。

ネギ坊主ができてしまうと、そのネギは食用できなくなるのだが、ネギの花はやがて実をむすぶ。ネギ農家がタネを取るために、あえて放置させたからネギ坊主が出現するのである。

ネギの学名は Allium fistulosum、原産地は中国西部や中央アジアとあるが、日本では古来から薬味として使用されてきた。

ネギ坊主というと、ロシア正教の寺院を想起するが、あながち無縁でもないようだ。

先に中国西部や中央アジア原産と書いたが、文豪ゲーテが訪れたこともある、かの有名なイタリアのパドヴァ植物園の一角にはネギも栽培されており、そこにはシベリア原産と書いてある。この写真は、わたしがパドヴァ植物園を訪れた際に撮影しておいたものだ(下掲の写真)。

(パドヴァ植物園のネギ)

薬味として日本人の食事に欠かせないネギ。新鮮なネギを切るとネバネバしていることからわかるように、滋養強壮の精力材でもある。

この季節に咲く花は多々あるが、ネギもまた生命をつないでいくために花を咲かせ実をつけることにも関心を払っておきたいものだ。

ネギは、タネから栽培するのである。




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猛暑の季節こそ「とうがらし」!

「生命と食」という切り口から、ルドルフ・シュタイナーについて考えてみる 
・・Man is what he eats. (人間は、食べるところのものである)は、やさしくいいかえれば You're what you eat.

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2015年6月27日土曜日

マンガ 『きのう何食べた ⑩』(よしながふみ、講談社、2015)-50歳台になっても自分で料理してスタイルを維持しつづける主人公



『きのう何食べた』の最新刊が発売された。ついに第10巻。さっそく購入して読了。すでに長寿マンガとなりつつありますね。

第10巻のカバーは発売時期に合わせたのか梅雨時のものかな? でもマンガは夏から年末にかけて。なんせスローペースの月一の連載だから。

主人公の弁護士・筧史郎も、すでに50歳台(!)、仕事の面では中堅どころかベテランの域に達しているはず。

とはいうものの、事務所から独立する気も、事務所をつぐつもりもなし。万年ヒラ弁護士のままで過ごしたいという脱力系の主人公は、いまの日本の空気がよく現れているような気も・・・。

というわけで、主人公の情熱が向かうのは、ずばり料理! 料理! 料理!

今回の料理は、コロッケパン、エスニック料理でタイカレー、牛肉とズッキーニの炒めもの、海老と春雨のサラダ、おうち焼き肉、パンケーキ、かれいの甘酢あんかけ、白菜とホタテのクリームスープ、などなど。

第74話で、いただきものの「そうめん」をめぐって、「そうめんに萌えのない人間ってけっこういるもんだな」という主人公のつぶやきに、「そうめん」大好き人間のわたしは、「世の中そんなもんなのかな・・・」と思ってみたりもして。もちろん、わたしの場合は、子ども時代から揖保の糸。

50歳過ぎても、外食を極力控えて自分で料理をして、しかもスタイルを維持しつづけるナルシスト的な主人公。女性マンガ家が描くゲイの男性という設定だからではありますが、なんだか「いま」という時代を象徴しているような気もしますね。もちろん、主人公のような男性が主流派ではありませんが、間違いなく時代は変化しています。

スローテンポで展開するマンガですが、主人公も読者も確実に年を取っていきます。年老いつつある両親。成長する友人夫妻の孫。頭頂部が寂しくなりつつあるパートナー。自分は若いと思っていても、周囲の環境は確実に年を取っていく。

とはいえ、料理と食事は人間にとってもっとも大事なこと。まだまだ続いていきそうですね。





<関連サイト>

きのう何食べた?"なにたべ"公式ブログ

きのう何食べた? / よしながふみ - モーニング公式サイト

祝!画業20周年記念サイト よしながふみの漫画世界 (白泉社)
・・立ち読みできます!


<ブログ内関連記事>

マンガ 『きのう何食べた? ⑨』(よしなが ふみ、講談社、2014)-平凡な(?)人生にも小さなトラブルはつきもの

マンガ 『きのう何食べた?⑧』(よしなが ふみ、講談社、2013)-一年に一回の楽しみはまだまだ続く!?

『きのう何食べた?⑦』(よしなが ふみ、講談社、2012)-主人公以外がつくる料理が増えてきてちょっと違った展開になってきた

『きのう何食べた?⑥』(よしなが ふみ、講談社、2012)-レシピは読んだあとに利用できます

『きのう何食べた? ⑤ 』(よしなが ふみ、講談社、2010)

『きのう何食べた? ④ 』(よしなが ふみ、講談社、2010)

『きのう何食べた?』(よしなが ふみ、講談社、2007~)


『檀流クッキング』(檀一雄、中公文庫、1975 単行本初版 1970 現在は文庫が改版で 2002) もまた明確な思想のある料理本だ

『こんな料理で男はまいる。』(大竹 まこと、角川書店、2001)は、「聡明な男は料理がうまい」の典型だ





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2015年6月26日金曜日

書評 『外食の裏側を見抜く-プロの全スキル、教えます。』(河岸宏和、東洋経済新報社、2014)-「食の安全」の盲点となりがちな「外食チェーン店」を含めて考えなくては画竜点睛を欠く


いまこの日本で「食の安全」に関心のない人はまずいないだろう。「食の安全」に対する関心は、子育て中の女性だけのものではないはずだ。

中国産の食材についてはもちろん、日本国内で加工された食品ですら安全が確保されているかどうか、疑心暗鬼になるのは当然だろう。高級レストランでさえ、メニューに記載されている料理が偽装表示されていることも発覚というありさまだからだ。

食品スーパーなどで食材を購入する際には、かならず表示に記載されている情報を確認するという人も少なくないはずだ。国内産であるかどうか、そして賞味期限、添加物の有無についてのさまざまな」情報、などなど。もちろん、価格との関係から買う意味があるかどうかを判断するのが、自衛策の第一歩である。

だが、「食の安全」を考えるうえでは盲点が存在する。それは「外食」である。とくにチェーン展開している外食店である。外食チェーン店で提供される料理や飲料についても「食の安全」から注意を払わなくてはならない。

チェーン展開の外食店について、あらゆる角度から問題点を取り上げているのが、『外食の裏側を見抜く-プロフィールの全スキル、教えます。-』(河岸宏和、東洋経済新報社、2014)だ。「食の安全」を考えるうえの盲点について喚起している希有なレポートである。

なぜ「外食」が「食の安全」において盲点となっているのか?

それは、外食チェーンが均一化した料理を安価に提供し、かつ利益をあげるために行っているコスト削減策に真因がある。そのために行われているのが、料理価格に占める食材費の比率である原価率の低減であり、人件費削減のため、職人ではないアルバイトでも調理できるようないした仕組みである。

ファミレスなどのチェーン店の「外食」で提供される料理には表示義務がない。小売店の店頭で販売されている食材や加工食品には内容にかんする表示が義務づけられているが、外食にはその義務はない。

「食の安全」への関心の高まりから、食品スーパーには新鮮で安全な食品が当たり前となった結果、そうではない食品のはけ口が「外食」になっているというのが状況だ。いくら食材への意識を高めても、外食の裏側を知らなければ意味がないのである。

この本の存在を知ったのは、東洋経済オンラインで連載中の著者による記事を読んでからだ。著者は、「食品業界を知り尽くした男」だと言われているそうだ。経歴をみれば、じっさいにそうだと思ってよいのだろう。

本書は、「外食」の問題点を徹底的に指摘しているが、安心して食べることのできるおすすめの外食チェーン店についても言及している。おすすめのチェーン店がなぜ安全なのかは、本書で指摘されている問題点の真逆を日々実践しているからだ。ビジネス界一般でいえば、いわゆる「見える化」の実践である。

「外食」はいっさいせず、食材の一つ一つまで気を配ったうで、すべて自宅で料理するのがベストであるが、なかなかそう理想通りにはいかないものだ。

であるからこそ、本書で指摘されている事項をアタマのなかに入れたうえで、自衛策を講じるべきであろう。「食の安全」は盲点となりがちな「外食」を含めなくては、画竜点睛を欠くのである。






目 次

衝撃の覆面食べ歩きレポート 「食品業界を知り尽くした男」河岸が「裏側」の見抜き方を徹底解説!
[ルポ&解説] ラウンド1 某大手ファミレス・チェーン店・・・いまの外食店の実態をよく表している店
第1章 日本の外食がダメになった理由-「安さ」と「安全」を優先するあまり「おいしさ」を失った
第2章 外食の強烈にショッキングな裏側―増量し放題!? ほとんど輸入食材!? ご飯は2年前の米!? 
 [ショック①] 成形肉が使われ放題
 [ショック②] 肉がどこまでも増える「植物性たんぱく」の衝撃
 [ショック③] JAS法等の法律適用外をいいことにカサ増し食品、ニセモノ食品が大横行
 [ショック④] 輸入食材が使われ放題
 [ショック⑤] 外食は食品添加物まみれ!?
 [ショック⑥] 持ち帰り弁当のご飯は2年前の古米
第3章 包丁いらずでバイトでできる! 何でもありの「仕入れ品」はこうして見抜け!
第4章 衝撃の覆面食べ歩きレポート 「食品業界を知り尽くした男」河岸が「裏側」の見抜き方を徹底解説!
 [ルポ&解説] ラウンド2 洋食屋【都内某店】・・・真っ黒でベトベトの油で揚げた肉とすっぱいご飯
 [ルポ&解説] ラウンド3 某大手イタリアン・チェーン店・・・水で2割薄めた味のチーズ、ホワイトソース
 [ルポ&解説] ラウンド4 某大手コーヒーショップ・チェーン店・・・衰退するのも当然の店
 [ルポ&解説] ラウンド5 某大手定食チェーン店・・・当たり前のことをきちんとやればおいしい
 [ルポ&解説] ラウンド6 某居酒屋チェーン店・・・ほとんどがニセモノ食材のひどい店
 [ルポ&解説] ラウンド7 老舗ビアホール【都内某店】・・・安心して食べられる職人がいる店
 [ルポ&解説] ラウンド8 ベジレストラン【都内某店】・・・TPPで日本の農業が生き残るための唯一の方法
 [ルポ&解説] ラウンド9 某大手回転寿司チェーン店×2軒・・・急成長する店、凋落する店にはちゃんと理由がある
第5章 外食の達人が奥義を伝授!いい店、おいしい店を見抜く極意
【外観・内装編】
【客席編】
【料理編(チェーン店)】
【料理編(個人店)】
おわりに

著者プロフィール

河岸宏和(かわぎし ひろかず)
「食品業界を知り尽くした男」。食のプロや業界関係者のあいだで「食品業界を知り尽くした」と言われる男。大手ハムメーカー、大手卵メーカー、大手スーパー&コンビニ、数々の食品工場での勤務経験から「肉のプロ」「卵のプロ」「スーパー・コンビニのプロ」とも呼ばれる。
1958年、北海道生まれ。帯広畜産大学を卒業後、「農場から食卓まで」の品質管理を実践中。「食品安全教育研究所」代表。これまでに経験した品質管理業務は、養鶏場、食肉処理場、ハム・ソーセージ工場、餃子・シュウマイ工場、コンビニエンスストア向け惣菜工場、卵加工品工場、配送流通センター、スーパーマーケット厨房衛生管理など多数。著書に『スーパーの裏側』(東洋経済新報社)、『ビジュアル図解 食品工場のしくみ』(同文舘出版)などがある。ホームページ「食品工場の工場長の仕事とは」を主宰。 毎週発行している無料メルマガは、食品問題や事件が起こったときにすぐに解説するなど好評を得ている。


<ブログ内関連記事>

「生命と食」という切り口から、ルドルフ・シュタイナーについて考えてみる
・・You're what you eat..(あなたは、あなたが食べるものそのものである)という意味をかみしめるべし

書評 『食べてはいけない!(地球のカタチ)』(森枝卓士、白水社、2007)-「食文化」の観点からみた「食べてはいけない!」

書評 『CoCo壱番屋 答えはすべてお客様の声にあり』(宗次徳二、日経ビジネス人文庫、2010 単行本初版1995に改題加筆)
・・『外食の裏側を見抜く』の著者も推奨

書評 『俺のイタリアン、俺のフレンチ-ぶっちぎりで勝つ競争優位性のつくり方-』(坂本孝、商業界、2013)-ビジネスモデル×哲学(理念)を参入障壁にブルーオーシャンをつくりだす
・・回転率をあげることで食材の原価率を高めに設定するモデル

書評 『マクドナルドで学んだすごいアルバイト育成術』(鴨頭嘉人、新潮文庫、2015)-「仕事をつうじて成長する」、ということ

「ブルータス、お前もか!」-立派な「クレド」もきちんと実践されなければ「ブランド毀損」(きそん)につながる





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2015年6月23日火曜日

書評 『沖縄戦いまだ終わらず』(佐野眞一、集英社文庫、2015)-「沖縄戦終結」から70年。だが、沖縄にとって「戦後70年」といえるのか?


本日(2015年6月23日)は、沖縄戦終結から70年。太平洋戦争において、もっとも激しく、かつ唯一の地上戦となったのが沖縄戦である。
    
先日も、NHKスペシャルで「沖縄戦 総記録」という特集が放送(2015年6月14日)されたが、軍人ではない非戦闘員の一般人も大量に巻き込まれた地上戦の実態は、いまだに完全に解明されているとは言い難いという。アメリカとの戦いは6月23日に終結したが、そのまま1972年の本土復帰まで占領状態がつづいたのである。
   
『沖縄戦いまだ終わらず』(佐野眞一、集英社文庫、2015)という本を読んだ。「戦後70年」という年に、あえて「沖縄戦いまだ終わらず」というタイトルをぶつけてきたのは強烈である。挑発的というべきか。刺激的なタイトルである。もともとは、『僕の島は戦場だった-封印された沖縄戦の記憶-』として2013年に出版されたが、文庫版出版にあたってタイトルを変更したのだという。
   
この本を読んで、いかに自分が沖縄戦について表面的にしか知らなかったか、あらためて深い反省をしている。沖縄戦は、「ひめゆり」だけではない。

とくに、「第5章「集団自決」の真実」は必読だろう。この本に描かれている事実があまりにも悲惨すぎる。

「自決」とはあるが、じっさいには追い詰められた末の「強いられた集団自殺」ではないのか? 「生きて虜囚の辱めを受けず」という戦陣訓は大戦中の日本軍人に課されたものであったが、一般人に求められたわけではなかったはずなのだが・・・。日本の軍人が強いたものであったのか、それとも自発的に「自決」したのか。

それにしても思うのは、なぜ追い詰められた日本軍人は、沖縄の一般人に対してあれほど過酷な態度がとれたのか、ということだ。植民地の満洲でも、壊滅して敗走する日本軍は、民間人を見捨てて逃げたことが現在でも非難されているが、沖縄ではもっと酷いことをしたというべきではないのか?

もし本土でも沖縄と同様に地上戦が行われていたなら、沖縄の悲劇が拡大されて繰り返されたかもしれもしれない。いや間違いなくそうなっていたであろう。その意味では、戦艦大和が無謀な「沖縄特攻作戦」で花と散り、海の藻屑と消えていったのは、その意味では、せめてもの日本軍人の罪滅ぼしとなったといえるのかもしれない。


8月15日の終戦記念日(・・・ただしくは「敗戦記念日」)、8月6日の広島の原爆記念日8月9日の長崎の原爆記念日だけでなく、そして3月10日の東京大空襲などだけでなく、6月23日の沖縄慰霊の日も祈りの日としなければならない。天皇皇后両陛下も、この日をことのほか重要とお考えになっているときく。

『沖縄戦いまだ終わらず』は、読むと重い気分にさせられる内容で、けっして読んで楽しい本というわけではないが、「戦後70年」のいま読むべき本として強くすすめたいと思う。





目 次

文庫版のための短いまえがき

第1章 「援護法」という欺瞞
第2章 孤児たちの沖縄戦
第3章 「幽霊は私の友だち」
第4章 那覇市長の怒り
第5章 「集団自決」の真実
第6章 沖縄の民意はなぜ日本に届かないのか
主要参考文献
解説 大田昌秀

著者プロフィール

佐野眞一(さの・しんいち)
1947年、東京生まれ。早稲田大学文学部を卒業後、出版社勤務を経てノンフィクション作家に。1997年、『旅する巨人―宮本常一と渋沢敬三』で、第28回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。2009年、『甘粕正彦―乱心の曠野』で第31回講談社ノンフィクション賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



<ブログ内関連記事>

佐野眞一氏のノンフィクション

「沖縄復帰」から40年-『沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史』(佐野眞一、集英社、2008)を読むべし!
・・『沖縄戦いまだ終わらず』とあわせて読むべし

書評 『津波と原発』(佐野眞一、講談社、2011)-「戦後」は完全に終わったのだ!
・・福島を考えるとき、沖縄も同時に想起すべきだろう。なぜなら・・・

書評 『私の体験的ノンフィクション術』(佐野眞一、集英社新書、2001)-著者自身による作品解説とノンフィクションのつくり方

書評 『あんぽん 孫正義伝』(佐野眞一、小学館、2012) -孫正義という「異能の経営者」がどういう環境から出てきたのかに迫る大河ドラマ


沖縄関連

「沖縄復帰」から40年-『沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史』(佐野眞一、集英社、2008)を読むべし!
・・『沖縄戦いまだ終わらず』とあわせて読むべし

戦艦大和が「沖縄特攻作戦」に出撃してから70年(2015年4月6日)-桜の季節に散っていった戦艦大和への鎮魂

書評 『「普天間」交渉秘録』(守屋武昌、新潮文庫、2012 単行本初版 2010)-政治家たちのエゴに翻弄され、もてあそばれる国家的イシューの真相を当事者が語る

書評 『日米同盟 v.s. 中国・北朝鮮-アーミテージ・ナイ緊急提言-』(リチャード・アーミテージ / ジョゼフ・ナイ / 春原 剛、文春新書、2010)

書評 『沖縄本礼賛』(平山鉄太郎、ボーダーインク、2010)-本を買うのが好きな人、コレクター魂をもつすべての人に





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2015年6月22日月曜日

東京ミッドタウンのゴジラ-最近なぜかゴジラブームが再燃しているようだが・・・

(東京ミッドタウンに出現したゴジラ像 筆者撮影)

サントリー美術館にいくために、ひさびさに六本木のミッドタウンにいったのだが、知らないうちにゴジラがいた!
   
写真の取り方にもよるが、子どもの大きさと比べると,ゴジラの大きさがよくわかる(・・ちなみに、この子は知らないよその子です)。地上に出ているのは胸から上だけだからねえ。全身ともなれば、ビルディングなみの大きさか?

それにしても、東京のあちこちにゴジラ出現だねえ。だが、ここまで大きい、実物サイズのゴジラを見るのは初めてだ。

ゴジラ・ブーム(?)の背景にあるのは、少年時代へのノスタルジー?
 
それこそ、ゴジラだけじゃなく、ガメラ、モスラと、かつては巨大生物ものが大流行した時代があった。「♪ 大きいことは いいことだ~」というCMもあったくらいだ。1960年台から1970年台にかけての高度成長期のことである。ウツトラマンも巨大生物(?)ものか?

ミッドタウンの巨大ゴジラは、東京のパワーをシンボライズしたものか? 東京は壊滅する、その前兆? それとも東京を破壊してしまいたいという密かな願望?

日比谷のTOHOシネマズシャンテ前の広場にあるゴジラ像は有名だが、じつは世田谷・砧の東宝スタジオ前にもゴジラ像があることを、ちょっと前のことだが仕事の関係で訪れてはじめて知った。これもまた突然の遭遇だ(・・写真下)。

(東宝スタジオ前のゴジラ像 筆者撮影)

『核と日本人- ヒロシマ・ゴジラ・フクシマ-』(山本昭宏、中公新書、2015)という本が出版されているが、放射能というキーワードでみると、ゴジラを媒介にして1945年8月6日の広島と2011年3月11日の福島がつながる。 もちろん、そのなかには1945年8月9日の長崎も含まれる。

ゴジラは放射能を受けて巨大化したとされている。そういう設定だ。1954年のビキニ環礁の水爆実験に巻き込まれて被爆し被曝した第五福竜丸の悲劇が背景にあるとされる。直近でも放射能被害があった。「3-11」による福島第一原発の事故である。

となると、これは福島から来たものと考えるべきなのだろうか? 福島発の世直し願望?

新宿にもゴジラのあるホテルが開業したという話だが、そちらはまだ見に行ってない。ゴジラとは遭遇するものであって、あえて見に行くものではないのだ。向こうから、いきなりやってくるものだ。こちらの都合には、いっさいおかまいなく。

ある日突然、気がついたらそこにゴジラがいることに気がつく。そのとき、すでに東京は破壊されている。もはや人間の力ではどうにもならない・・・。

だが、それはゴジラではないのかもしれない。ではいったい何か? 大地震か、津波か、空爆か、大噴火か・・・。「想定内」にできるのか、どうか。






<ブログ内関連記事>

遅ればせながらアニメ 『進撃の巨人』を第10話からローカル局の東京MXで見始めた-戦わなければ生き残れない!
・・巨人がシンボライズしているものはいったい何か?

「夢の島」にはじめて上陸(2014年11月15日)-東京都江東区の「夢の島」に日本戦後史の縮図をみる
・・ビキニ環礁で被爆した第五福竜丸の実物が夢の島にあるミュージアムで保管されていることを知った

書評 『原発と権力-戦後から辿る支配者の系譜-』(山岡淳一郎、ちくま新書、2011)-「敗戦国日本」の政治経済史が手に取るように見えてくる
・・自民党は第五福竜丸の水爆被害もその一つもキッカケとなった反原水爆運動と反米運動をいかに乗り切って原発政策を推進したのか

書評 『津波と原発』(佐野眞一、講談社、2011)-「戦後」は完全に終わったのだ!

「天災は忘れた頃にやってくる」で有名な寺田寅彦が書いた随筆 「天災と国防」(1934年)を読んでみる
・・天災は、こちらの都合にはおかまいなく、いきなりやってくる!

書評 『東京劣化ー地方以上に劇的な首都の人口問題-』(松谷明彦、PHP新書、2015)-東京オリンピック後がこわい東京。東京脱出のすすめ!?




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2015年6月21日日曜日

書評 『複合大噴火』(上前淳一郎、文春文庫、2013、単行本初版 1989)-地球規模で発生する自然災害は容易に国境を越える


『複合大噴火』(上前淳一郎、文春文庫、2013)は、単行本初版が 1989年に出版されているので、すでに出版から25年もたっている本だが、噴火と異常気象の関係を、地球レベルで考えるための必読書である。

この本が扱っているのは、1783年の日本とアイスランドの火山大噴火と、異常気象がもたらした大凶作と食糧危機の関係である。二世紀も前の話だが、日本全体で火山活動が活発してきているいまこそ読むべき本だというべきだろう。日本列島は、すでに本格的な地震・火山活動期に入っているのである。

日本とアイスランドというと、同じ島国であるという認識まではもっている人が多いだろう。さらによく知っている人であれば、ともに捕鯨国であり、国際捕鯨委員会非加盟のアイスランドから鯨肉が日本に輸入されていることも。

だが、日本もアイスランドの最大の共通点とは、世界有数の火山国であるという点である。日本についてはいうまでもないが、2010年にアイスランドの火山の噴火で欧州の航空路線に大きな影響が出ていることを思い出す必要がある。

北半球のある2つの火山国で、ほぼ同時期に火山の大噴火があったのである! 両者に直接の関係があったわけではないにせよ、ほぼ同時期である。ときは1783年。日本でいえば天明3年ヨーロッパではフランス革命が起こる6年前のことであった。

浅間山の大噴火にともなう異常気象については、日本史の教科書にも記されているほど有名な出来事である。だが、100万人も餓死者が出た(!)といわれる大飢饉の原因は浅間山の大噴火だけではなかったのだ! 浅間山の大噴火とアイスランドのラキ山の大噴火がほぼ同時期に重なっていたため、「複合大噴火」となったことが、その原因であったのだ。

アイスランドで火山が噴火し、桁違いに大量の火山灰と火山ガスが噴出されたのだ。アイスランドの歴史時代(=9世紀以降)で最大規模の溶岩流が流れ出たという。

膨大な量の火山灰と火山ガスは、アイスランドだけでなく、上空を吹く偏西風にのって北半球全体に拡散。大量の亜硫酸ガスが成層圏にまで達したあと、紫外線の影響によってエアロゾルに変化、そのため日照量が大幅に減少し、冷害という形で大凶作と飢饉という形になって現れたのである。一部が酸性雨となって被害をもたらしている。

日本では、天明の大飢饉が発生、高度経済成長路線の田沼時代から、質素倹約の松平定信への転換の原因となった。一方、欧州のフランスでは小麦の不作にともなう食糧不足が導火線となり、フランス革命(1989年)に発展していく。この東西それぞれ独立に存在する歴史叙述が、ノンフィクションとして本書の大きな部分を占めている。

天明の飢饉に際して、東北の津軽藩では、なんと人肉食(!)が横行するなど失政を招いたのに対し、同じく東北の白河藩では善政の結果、餓死者がでなかった。津軽藩では貧民救済のためにコメを放出せずに、カネに変えるために売却してしまっていたのである。

一方、フランスは財政赤字解消のため豊作になった小麦を国際市場で売却してしまっていた。このため危機が発生してから小麦を輸入しようとしたが、うまくいかなかったために、「パン屋襲撃」という食糧暴動となってしまったのである。

火山の大噴火そのものは自然災害であるが、被害を拡大したのはむしろ人災であったことが、18世紀末のこの2つのケースについてもあてはまるのである。ノーベル経済学賞のアマルティヤ・セン博士が指摘しているように、食糧危機はむしろ分配にかかわる経済学の問題なのである。

地球規模で発生する自然災害は、容易に国境を越えるという事実をあらためて確認するとともに、日本国内では浅間の大噴火による火砕流の大被害についても記憶にとどめておく必要がある。

浅間山の大噴火では、秒速百メートルを越す速さ(!)に一村全体が呑み込まれ、一瞬のうちに数百人が犠牲となったのである。土石流の被害も大きいが、火砕流の被害もきわめて大きい。さらに溶岩流によって河川がせき止められ、氾濫を引き起こしたことも。本書に記されたなまなましい記録には、ほんとうに驚かされる。江戸にまで濁流が流れてきたのであった。

日本で出版されている良質な科学ノンフィクションの大半は英米の翻訳ものが多いが、本書は日本語で書かれたものとしてはめずらしい良書だ。気候学者でも歴史学者でもないノンフィクション作家の著者が、テーマを領域横断的に文理融合した成果だ。狭い分野の専門家ではできない仕事である。

「あとがき」に記された執筆の動機とともに、ぜひ読んでほしい本である。





目 次

不気味な暖冬-津軽
雨の日々-江戸
ラキ火を噴く-アイスランド
恐怖の山焼け-浅間
青い霧の下の騒擾-津軽
飢えた群れ-浅間・アイスランド
仁政録-白河
人相食む-津軽
殿中の刃傷-江戸
パンの値上がる-パリ
意次VS.定信-江戸
大打ちこわし-大坂・江戸
清き流れに魚住まず-江戸
バスチーユ攻撃-パリ
あとがき
参照引用文献
解説 三上岳彦

著者プロフィール

上前淳一郎(うえまえ・じゅんいちろう)
昭和9(1934)年、岐阜県生まれ。34年東京外国語大学英米語学科を卒業、同年朝日新聞社に入社。通信部、社会部記者を経て、41年に退社後は、評論家として活躍。52年「太平洋の生還者」で第8回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。






<関連サイト>

『複合大噴火〈新装版〉』 (解説 三上 岳彦 帝京大学教授・首都大学東京名誉教授)
・・「本の話」WEBに転載(2013年9月27日)。歴史気候学者による解説。全文を読める


<ブログ内関連記事>

「不可抗力」について-アイスランドの火山噴火にともなう欧州各国の空港閉鎖について考える(2010年4月19日)

「天災は忘れた頃にやってくる」で有名な寺田寅彦が書いた随筆 「天災と国防」(1934年)を読んでみる
・・「寺田寅彦が言っていることは、以下のように要約できるだろう。 (要約) 「天災」は、日本という国にいる以上、避けて通ることはできない。文明が進めば進むほど、自然災害による被害は増大するだけでなく、たとえ一部の損害であっても、すべてがシステムのなかに組み込まれている以上、その被害はシステム全体に拡がる。しかも、国防という観点からみたら、天災が外敵以上に対応が難しいのは、「最後通牒」もなしに、いきなり襲いかかってくるからだ。

明治22年(1889年)にも十津川村は大規模な山津波に襲われていた-災害情報は「アタマの引き出し」に「記憶」としてもっていてこそ命を救うカギになる
・・「明治22年(1889年)奈良県十津川村を襲った山津波のことです。テレビの災害報道ではなぜか触れていませんが、いまから 112年前の1889年8月17日から4日間つづいた大雨で大規模な山崩れが発生し、168人が亡くなったそうです。その結果、2,500人の住民が集団離村して、北海道に新天地を求め、新十津川を切り開いた苦闘の歴史がある」

『崩れ』(幸田文、講談社文庫、1994 単行本初版 1991)-われわれは崩れやすい火山列島に住んでいる住民なのだ!
・・火山灰が堆積してできた日本の土地はもろくて崩れやすい!

地層は土地の歴史を「見える化」する-現在はつねに直近の過去の上にある
・・火山の噴火や河川の氾濫の痕跡が地層として残る

むかし富士山八号目の山小屋で働いていた <総目次>
⇒ とくに (5) 噴火口のなかに下りてみた

庄内平野と出羽三山への旅 (9) 月山八号目から月山山頂を経て湯殿山へ縦走する
・・出羽三山の湯殿山や熊野の湯の峯。「同じく蘇りの聖地である熊野の「湯の峰」もそうだが、地表すれすれにマグマが来ているところは、間違いなく聖地として祀られてきた。 通常は、火山の噴火ということでしかみることのできない大地の働き。これが、地表スレスレにあるというのは古代人でなくても新鮮な驚きと感動を感じるものだ。マグマがすぐそこまで来ているのだ」

大震災のあと余震がつづくいま 『方丈記』 を読むことの意味

「理科のリテラシー」はサバイバルツール-まずは高校の「地学」からはじめよう!

大飢饉はなぜ発生するのか?-「人間の安全保障」論を展開するアマルティヤ・セン博士はその理由を・・・
・・「セン博士によれば、深刻な飢饉が生じるのは、以下の理由によると明らかにしています。
・凶作の後には「社会不安」が高まる
・正しい「情報不足」が理由で、「買い占め」が引き起こされる
・その結果、市場において「価格高騰」を招き、「分配メカニズム」が混乱して貧困層に食糧が行き渡らなくなるする
 つまり一言でいって、「人災」の側面が強いのです。」

(2015年7月28日 情報追加)





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2015年6月20日土曜日

「幻想耽美-現在進行形のジャパニーズエロチシズム-」(Bunkamura ギャラリー)に行ってきた(2015年6月18日)-現代日本の耽美派アーティストたちの作品を楽しむ

(清水真理 「禁断の果実」 2012年 40cm 案内ハガキより)

「幻想耽美-現在進行形のジャパニーズエロチシズム-」というタイトルの展覧会が東京・渋谷の Bunkamura 1階のギャラリーで開催されている(2015年6月17~6月28日)。

現代日本の耽美派アーティストたちによる、二次元(=絵画)作品と三次元(=立体)作品の展示販売会である。幻想絵画や球体関節人形、そして不可思議ながらその妖しい美に魅了されるオブジェの数々。オープンスペースのギャラリーなので立ち寄りやすい。作品を一点一点じっくり見ることができる。入場無料。

展覧会の紹介文が、あまりにもよく練りに練って書かれているので、そのまま紹介しておきたい。

耽美主義とは、表現されている事象の思想や善悪を問うことではなく、その美的享受及び形態のみに最上の価値を置く、19世紀後半ヨーロッパに広まった芸術思潮です。オスカー・ワイルドや江戸川乱歩、夢野久作、澁澤龍彦などに象徴される異端や幻想的な表現は、進歩的なアンチテーゼを醸し出してきました。耽美主義は、エロス(性)とタナトス(死)の両義性を主軸とした古代ギリシャより現代に至るまで、表現者の普遍的なテーマでもありました。  

日本でも平安時代より民間で定着していたお伽草子や怪談などが親しまれており、世界にも類例のない独自の表現世界が確立されました。画壇を中心とした保守的な作風が主流を占めていた時代に挑発的な表現で時代に風穴を開け、時代を切り開いた日本のルネサンスであり、アングラ演劇やサブカルチャー、現代のクールジャパンに至るまで影響をもたらしています。

本展ではその系譜を継承する次世代の36人の作家たちによる絵画・イラスト・人形作品など展覧販売します。刺激的な表現と陶酔を誘う根源的な美。日本の土壌から生まれた36作家による魅惑的な幻想耽美の世界に是非お立ち寄りください。

耽美主義、あるいは耽美派芸術は、正統な美術史では取り上げられない、限りなく異端ともいうべき分野である。だが、わたしはオスカー・ワイルドやビアズレーを知った高校時代から、限りなく魅了されてきた。自分の趣味に忠実に従えばそうなるのである。だから、なぜ耽美派につらなるアーティストたちが美術史に登場しないのか、ふしぎに思うとともに、じつに残念に思ってきたのである。

出品作家は以下のとおりである。

<平面>
東學、大友暢子、佳嶋、金子國義、黒木こずゑ、桑原聖美、沙村広明、須川まきこ、空山基、多賀新、たま、成田朱希、根橋洋一、長谷川友美、林アサコ、林由紀子、林良文、古川沙織、町野好昭、丸尾末広、森口裕二、山本タカト、山本じん、吉田光彦
<立体>
上野シゲユキ、オカムラノリコ、恋月姫、甲秀樹、清水真理、神宮字光、Dollhouse Noah、中嶋清八、衣(hatori)、三浦悦子、森馨、矢沢俊吾

このなかには金子國義のような超有名なアーティストもいれば、その世界でしか知られていない人もいる。もちろん、わたしもすべての名前を知っているわけではない。

前期の「紹介文」には、「日本でも平安時代より民間で定着していたお伽草子や怪談などが親しまれており、世界にも類例のない独自の表現世界が確立」とあるが、「ポジとしての西欧近代化」を選択した近代日本において、西欧文明の知られざるネガの部分と、日本的美意識がシンクロして合体して生まれたのが、日本の耽美派アーティストたちによる作品だといっていいかもしれない。

その意味では、出展作品のなかに、日本的なテーマを前面に打ち出した丸尾末広や山本タカトのものがあるのはファンとしてはうれしい。かれらの作品のなかに、先人たちの軌跡を読みとるのも一興というべきか。

展示販売会なので、販売価格や売約情報から美術とおカネの関係を知ることができるのも、美術展とは違った楽しみがある。出品作品はいずれも高額だが、美術品の価格は、需給関係というマーケットメカニズムだけで決まるわけではないからだ。

二次元の複製によって楽しむのがもっぱらのわたしのような者にとっては、たまに実物を見るのは楽しみである。とくに三次元の立体は、実物にまさるものはない。三次元を二次元で表現することは、じつに困難であるためだ。





<ブログ内関連記事>

米倉斉加年画伯の死を悼む-角川文庫から1980年代に出版された夢野久作作品群の装画コレクションより

夢野久作の傑作伝記集『近世怪人伝』(1935年)に登場する奈良原到(ならはら・いたる)と聖書の話がめっぽう面白い

「旧江戸川乱歩邸」にいってみた(2013年6月12日)-「幻影城」という名の「土蔵=書庫」という小宇宙

「長靴をはいた猫」 は 「ナンバー2」なのだった!-シャルル・ペローの 「大人の童話」 の一つの読み方
・・渋澤龍彦訳で読む「長靴をはいた猫」

書評 『猟奇博物館へようこそ-西洋近代の暗部をめぐる旅-』(加賀野井秀一、白水社、2012)-猟奇なオブジェの数々は「近代科学」が切り落としていった痕跡
・・ポジとしての西欧近代化から見えなくなっていたネガの部分

『バロック・アナトミア』(佐藤 明=写真、トレヴィル、1994)で、「解剖学蝋人形」という視覚芸術(?)に表現されたバロック時代の西欧人の情熱を知る
・・オブジェとしたの解剖学蝋人形

「没後50年 谷崎潤一郎展-絢爛たる物語世界-」(神奈川近代文学館)に行ってきた(2015年4月12日)-谷崎ファンなら絶対にいくべき企画展

「ザ・ビューティフル 英国の唯美主義1860~1900」(三菱一号館美術館)に行ってきた(2014年4月15日)-まさに内容と器が合致した希有な美術展

「ホイッスラー展」(横浜美術館)に行ってきた(2015年1月24日)-フランス人でもなく英国人でもないアメリカ人ホイッスラーの「唯美主義」と「ジャポニスム」





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2015年6月19日金曜日

映画 『ダライ・ラマ14世』(日本、2014)を見てきた(2015年6月18日)-日本人が製作したドキュメンタリー映画でダライラマの素顔を知る


ドキュメンタリー映画 『ダライ・ラマ14世』を、東京・渋谷のユーロスペースで見てきた。

ダライラマについては熟知している人はもちろん、ダライラマは名前は知っていても詳しくは知らないという人も、ぜひ見てほしい映画だ。


日本人に見せた素顔のダライラマ

このドキュメンタリー映画は、日本人が製作したものだ。日本だけでなく、欧米社会を中心に信奉者の多いダライラマだが、日本人が描くダライラマはすこし違うかもしれない。

仏教徒ではなくても「非暴力」のスピリチュアル・リーダー(=精神的指導者)として、欧米社会で礼賛されているダライラマ。熱心さの度合いはさておき、いちおう仏教徒が大半の日本社会におけるダライラマ。当然のことながら、受け止められ方が異なるのは、ふしぎでもなんでもない。もちろん、ダライラマ自身も、日本と日本人との接し方には、無意識レベルでの違いがあるはずだ。

この映画が面白いのは、ごくごくフツーの日本人が抱いている、ごくごく素朴な疑問を遠慮なくぶつけてみるという姿勢である。東大生のようなインテリ候補生もいるが、それ以外のストリートにいる若者たち、おじさんやおばさんなど、それぞれの立場からの質問の内容が面白い。

これらの質問に対して、ダライラマは真摯に真っ正面から答えることもあれば、冗談交じりで笑いを誘ったり、あるいはじつにそっけなくはぐらかしてしまうこともある。いつものことながら、この態度こそダライラマ14世の人気の源でもあるかもしれないと思う。

カリスマらしくないカリスマ。答えを押しつけず、問いを建てる者みずからに考えさせるよう誘導する姿勢。まさに人生の教師としての仏教者のあるべき姿ではないか!

このドキュメンタリー映画は、日本人写真家の親子が、6年にわたって日本やチベットやインドなどで写真と動画で追ってきたダライラマの素顔を見せてくれる。

わたし自身も訪れたことのあるインド北部のチベット人居住地域ラダックの荒涼とした風景も懐かしい。いまだ訪れたことのない、亡命政府のあるダラムサラにおける子どもたちも興味深い。そして、南インドのチベット仏教寺院での問答修業。チベット本国では不可能となったチベット仏教の本格的な修行がそこでは行われているのである。


迫害を受ける同胞のチベット民族へのメッセージ

印象的なシーンがいくつもあった。もっとも感動的で、ふだん見ることのないダライラマの素顔がかいまみることができたのが、日本で勉強しているチベット人留学生たちを激励するシーンである。

講演やインタビューでは英語でしゃべることの多いダライラマだが、滞在先の日本のホテルのロビーでダライラマを歓迎するチベット人留学生の一人一人に、母語(!)のチベット語で激励のコトバをかけるダライラマ。迫害を受ける少数民族が、厳しい環境のなかをサバイバルするためには、母語の維持と教育がなによりも大事なことをみずからが示しているのである。

チベット人にとって、切って切れないチベット語とチベット仏教の関係。民族を民族たらしめているものが、まずなによりも母語であること、そしてチベット語によって伝えられてきたチベット仏教の伝統を、世代をつうじて保持していくことの重要性を強調されているのだ。

これは、欧米社会にむけてのメッセージとは質的にまったく異なるものである。チベットの政治上のリーダーを公式に引退し、あくまでも精神的なリーダーとしてみずからを位置づけているダライラマは、みずからの責務として、チベット民族が生き残るための言語と文化の重要性を深く認識されているのであろう。

ダライラマは世界の精神的指導者であるが、なによりもチベット民族への強い同胞意識の持ち主なのである。


日本の若者たちへのメッセージ

閉塞感を訴える日本の若者たちへのメッセージもある。

「英語を勉強して、外の世界を見よ!」というメッセージは、亡命を余儀なくされ、国際社会に向けて「非暴力」のメッセージを発信しつづけてきいたダライラマだからこそ説得力がある。すでに80歳になりながら、いまなお世界中を飛び回って「非暴力」を説くダライラマ14世。

この映画を見終わる頃には、仏教が説く「非暴力」が、きわめて強い意志に支えられてはじめて実現可能であることを認識することになろう。暴力に対して暴力をもって対したのでは、一時的な解決にはなっても最終的な解決にはならないのだ。

どこにでもいるお坊さんのようなダライラマ14世。すべての人に、すべての生きとし生けるものに、慈悲のまなざしで、同じ目線で接することのできる人

ほんとにすごい人とは、そういう人なのだ。あらためて、強くそう思う。




<関連サイト>

ドキュメンタリー映画 『ダライ・ラマ14世』 公式サイト 

監督:光石富士朗
出演:ダライ・ラマ法王14世
2014年/日本/カラー/116分
配給=ブエノス・フィルム

ドキュメンタリー映画 『ダライ・ラマ14世』 予告編

ドキュメンタリー映画 『ダライ・ラマ14世』 | Facebook




ウイグル語ネイティブが中国語を使って英語を学ぶ?! 新疆で進む中国語教育の実態 The Economist (日経ビジネスオンライン、2015年7月3日)
・・「母語」が奪われつつあるのはチベットだけではない!






<ブログ内関連記事>

ダライ・ラマ14世関連

「ダライ・ラマ法王来日」(His Holiness the Dalai Lama's Public Teaching & Talk :パシフィコ横浜)にいってきた
・・「ダライラマ・スーパーLIVE横浜」(2010年6月26日)とでもいうべき一期一会

書評 『目覚めよ仏教!-ダライ・ラマとの対話-』 (上田紀行、NHKブックス、2007. 文庫版 2010)

書評 『こころを学ぶ-ダライ・ラマ法王 仏教者と科学者の対話-』(ダライ・ラマ法王他、講談社、2013)-日本の科学者たちとの対話で学ぶ仏教と科学

書評 『世界を動かす聖者たち-グローバル時代のカリスマ-』(井田克征、平凡社新書、2014)-現代インドを中心とする南アジアの「聖者」たちに「宗教復興」の具体的な姿を読み取る
・・第3章でダライラマ14世が取り上げられている


チベット民族とチベット仏教

映画 『ルンタ』(日本、2015)を見てきた(2015年8月7日)-チベットで増え続ける「焼身」という抗議行動が真に意味するものとは

「チベット蜂起」 から 52年目にあたる本日(2011年3月10日)、ダライラマは政治代表から引退を表明。この意味について考えてみる

「チベット・フェスティバル・トウキョウ 2013」(大本山 護国寺)にいってきた(2013年5月4日)

チベット・スピリチュアル・フェスティバル 2009
・・ 「チベット密教僧による「チャム」牛と鹿の舞」と題して、YouTube にビデオ映像をアップしてある。ご覧あれ http://www.youtube.com/watch?v=jGr4KCv7sAA

(2015年6月28日、9月3日 情報追加)




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2015年6月17日水曜日

書評 『東京劣化ー地方以上に劇的な首都の人口問題-』(松谷明彦、PHP新書、2015)-東京オリンピック後がこわい東京。東京脱出のすすめ!?


2020年の東京オリンピック開催が決定されたのは、いまから約2年前の2013年9月のことだ。

開催決定がきまった瞬間は喜びに満ちあふれていた日本だが、その当時から東京圏以外の地方は冷めた対応をしていたのではないかと思う。そもそも東京オリンピックによる経済効果が、はたして地方経済にも波及するのかどうか、と。

東京じたいも、建設ラッシュが景気回復につながると大歓迎されたのであったが、オリンピック開催の2020年が、さまざまな意味でターニングポイントであることが指摘されるようになって、手放しの礼賛ムードは、かなり冷めているような気もする。

「祭りのあと」という表現が日本語にはある。オリンピックという「祭り」のあとがこわいのだ。「祭り」が華やかであればあるほど、祭りが終わったあとの脱力感、そして突きつけられる現実の姿に目が覚めることになる。
  
『東京劣化-地方以上に劇的な首都の人口問題-』(松谷明彦、PHP新書、2015)という本が出版されている。経済学の立場から人口問題を研究してきた研究者による、キャッチーなタイトルに、直視すべき暗い展望が描かれた本だ。
 
ぐだぐだ書くよりも「目次」を見れば、2020年以降の東京の姿が明らかとなるだろう。一部を抜粋しておこう。とくに序章の最後と、第1章と第2章が「東京劣化」の未来像を描いている。

序章
 国のタブー その1~その3
 地方のタブー その1~その3
 首都東京の劣化  首都東京のスラム化
  文化や情報の発信力が弱まる
  生活環境の悪化
  「中流都市への劣化」
第1章 東京これからの現実
 東京では高齢者が30年間で143.8万人増える
 貧しくなる東京
 老人ホームはそう簡単には建てられない
 インフラが維持できない-スラム化する東京
 GRPの低下-民間資本による再開発も困難に
 オリンピックの狂躁の後に残るもの
第2章 東京劣化現象への誤解 
 東京の現在の人口構成は維持できない
 出生率2.07は絶対に達成できない-未婚率に注目すべき
 東京は世界の情報が集まらない「田舎の都市」
 日本の経済成長率が世界最低になることは確実
第3章 これからの東京の経済
第4章 なぜ政府は間違えるのか-人口政策の歴史が教えてくれること
第5章 東京劣化への対処 今できること  

著者は人口問題研究の第一人者。政策研究大学名誉教授。人口ほど確実に未来を示しているものはほかにない。大学での講義録を活字化したものだが、「言われてみればそのとおりな内容。

人口動態からいえば、、次回の東京オリンピックの2020年は右肩下がりの下降曲線となる。しかも全国的な少子化で東京への流入人口が減るだけでなく、巣でに流入した人間は確実に年を取る。その結果、高齢者比率が増大するだけでなく、高齢者の絶対数が増大するのだ。

「東京劣化」とタイトルにあるが、東京だけの話ではない。神奈川・千葉・埼玉を含んだ「東京圏」全体の問題なのだ。

本書には大規模災害の想定については扱われていない。それでも、これだけ「劣化」することが予想されるのである。人口の変化が安定するのは、2060年台以降のことだという。それまでは、たとえ平時であっても厳しい時代が続くのである。

東京オリンピック後がこわい東京。「東京脱出」を考えるべきなのかもしれない。






<関連サイト>

Population Decline and the Great Economic Reversal (George Friedman, Geopolitical Weekly STRATFOR, FEBRUARY 17, 2015)
・・先進国における「人口減少問題」は、500年つづいた「近代」の終焉とその後を示している。人口減少スピードの早い先進国では資本よりも労働力のほうが希少財となる

東京圏の高齢者は地方へ移住する? 政府主導で進む日本版CCRC (日経BPセレクト、2015年6月22日)
・・米国政府が推進する CCRC(Continuing Care Retirement Community)の日本版。現代の「乳母捨て山」と言っては言い過ぎだが、東京圏で高齢者をケアするのは限界に達しつつあることは明らかだ

「終の棲家」がない「待機老人」が急増していく 下向きの人口動態がもたらす悲惨な未来 (上野泰也、日経ビジネスオンライン、2015年6月30日)
・・「東京五輪が起爆剤になって日本経済が新たな成長ステージに入る」といったバラ色のストーリーとはまったく異なる深刻な現実が日本でいま着実に広がっていることは、日本人のみならず、海外の投資家なども知っておくべきことではないだろうか。」

(2015年6月24日、30日 情報追加)



<ブログ内関連記事>

「東京オリンピック」(2020年)が、56年前の「東京オリンピック」(1964年)と根本的に異なること

書評 『自爆する若者たち-人口学が警告する驚愕の未来-』(グナル・ハインゾーン、猪俣和夫訳、新潮選書、2008)-25歳以下の過剰な男子が生み出す「ユース・バルジ」問題で世界を読み解く
・・日本にとって、東京にとって、「人口爆発」は過去の話

『移住・移民の世界地図』(ラッセル・キング、竹沢尚一郎・稲葉奈々子・高畑幸共訳、丸善出版,2011)で、グローバルな「人口移動」を空間的に把握する
・・2020年以降の東京は、人口流入よりも人口流出か?

書評 『なぜローカル経済から日本は甦るのか-GとLの経済成長戦略-』(冨山和彦、PHP新書、2014)-重要なのはグローバルではなくローカルだ!




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2015年6月15日月曜日

書評 『世界に冠たる中小企業』(黒崎誠、講談社現代新書、2015)-知られざる日本の「グローバルニッチトップ企業」の紹介


日本の製造業を支えているのは、誰もが名前の知っている大企業ではなくて、じつは中小企業である。これは産業界の「常識」なのだが、一般人は意外と知らない。これはたいへん残念なことだ。
  
とくに重要なのが部品メーカー。最終製品というのは、部品の組み合わせである。部品がユニットとなり、ユニットがモジュールとなり、モジュールの組み合わせが最終製品となる。部品の善し悪しが最終製品の品質を左右する。
   
「大組織の部品なんかなりたくない」といったフレーズがクチにされることがあるが、この表現ほど実体とかけはなれたものはない。むしろ「なくてはならない部品になれ!」というべきなのだ。こういうことは、部品屋さんではいつも語られているのだ。
     
『世界に冠たる中小企業』(黒崎誠、講談社現代新書、2015)は、そんな日本の中小の部品メーカーを中心とした「知られざるグローバルニッチトップ」24社を紹介したもの。いずれも日本では「無名」だが、世界シェアを占める部品や製品をつくっている中小企業である。
 
紹介されている企業の大半が B2B(=法人向け)の専門企業なので、関係する分野で働いていないと知ることもないだろう。わたしが名前を知っているのも、たった2社だけだった。
  
かつての全盛期にくらべると、日本の産業の裾野を支えてきた中小企業の地盤が崩れてきているのだが、そんななかでもサバイバルしてきた企業があることを知っておいたほうがいい。日本市場だけでなく、世界市場を相手に顧客を獲得してきた中小企業である。
 
そのエッセンスは、「目次」のタイトルに表現されている。 
    
第1章 「伝統技術」を活かして世界を統べる
 -「トヨタを目指すつもりはない」企業など5社
第2章 「専門分野に特化」が成功のカギ
 -「値引きしてまで売らない」企業など5社
第3章 「超先端技術」を武器に世界に挑む
 -「国内市場の嫌がらせにも屈しない」企業など4社
第4章 大手が参入できない「ニッチ市場」を制す
 -「管理部門なんていらない」企業など6社
第5章 ノウハウを活かした「業態転換」で勝つ
 -「心臓部は中国に移さない」企業など4社

著者は時事通信で長年にわたって経済畑を歩いてきた人。綿密な取材をもとに、もれなく簡潔な文章で記述されている。製造分野での専門用語が多発するが、文章のレベルが高いので読みやすい。
   
ただ惜しむらくは、『世界に冠たる中小企業』というタイトルがあまりにも堅すぎることだ。コンセプトとしては、ドイツ人の経営コンサルタントのヘルマン・ジモンによる「隠れたチャンピオン」(hidden champion)が該当するのだが、「知られざる世界企業」、「知られざる国際企業」、「知られざるグローバル企業」、「無名のリトルジャイアント」、「日本人は知らないが世界は知っている」などなども候補にあがってしかるべきだったと思う。

『日本でいちばん大切にしたい会社』(坂本光司、あさ書房)がベストセラーになったのは、なによりもタイトルのつけかたがうまかったからだ。せめてタイトルに「グローバルニッチ」といいう文言を入れた方がよかった思うのだが・・・・。

日本企業の生き残りのためのケーススタディとして読んでみたらいいと思う。世界最大のカニカマ工場がリトアニアにある!なんてことは、この本を読まなくては知ることはできませんよ。





著者プロフィール


黒崎 誠(くろさき・まこと)
1944年群馬県生まれ。時事通信社に入社後、一貫して経済畑を歩み、経団連、日銀、旧大蔵省などを担当したほか、リクルート事件など大型経済事件も報道してきた。宮崎支局長、福島支局長、編集委員、解説委員などを歴任。2004年に退社し、現在、帝京大学経済学部教授。著書に『世界を制した中小企業』(講談社現代新書)、『起業家の条件』(平凡社新書)など多数。 (本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。






<ブログ内関連記事>

書評 『あっぱれ技術大国ドイツ』(熊谷徹=絵と文、新潮文庫、2011) -「技術大国」ドイツの秘密を解き明かす好著
・・「ドイツを特徴づけている、いわゆるミッテルシュタント(Mittelstand:中規模企業)だという。日本でいえば中堅中小企業がこれに該当するといっっていいだろう。 ドイツ人経営コンサルタントのヘルマン・ジモン(Hermann Simon)のいう「隠れたチャンピオン」(hidden champions)の一つと考えてよいのだろう。ニッチ市場に特化して、世界シェアを占める無名のミッテルシュタント(中規模企業)が活躍しているのがドイツなのである。 ポルシェやディーゼル、ツェッペリンなどの綺羅星のような発明家は本書でも取り上げられているが、世界的な知名度は高くなくても、現在でも多くの起業家を輩出している国がドイツなのである。たとえ、アメリカのソリコンバレーほどの派手さはないとしても。」

書評 『日本でいちばん大切にしたい会社』、『日本でいちばん大切にしたい会社2』(坂本光司、あさ出版、2008、2010)-取り上げられた中小企業はみなすばらいのだが・・・

書評 『ねじとねじ回し-この千年で最高の発明をめぐる物語-』(ヴィトルト・リプチンスキ、春日井晶子訳、ハヤカワ文庫NF、2010 単行本初版 2003)-「たかがねじ、されどねじ」-ねじとねじ回しの博物誌

書評 『アップル帝国の正体』(五島直義・森川潤、文藝春秋社、2013)-アップルがつくりあげた最強のビジネスモデルの光と影を「末端」である日本から解明
・・ファブレス・メーカーであるアップルの強みとは何か?

(2015年6月18日 情報追加)



(2012年7月3日発売の拙著です)











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2015年6月14日日曜日

書評 『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる-日本人への警告-』(エマニュエル・トッド、堀茂樹訳、文春新書、2015)-歴史人口学者が大胆な表現と切り口で欧州情勢を斬る


ここ数年、うすうすと感じてきたことを、かくも大胆に言語化してくれたことに敬意を表したい。そういう感想をまず記しておきたい。

『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる-日本人への警告-』(エマニュエル・トッド、文春新書、2015)は、日本でも著書が多数翻訳されて著名な、フランスを代表する歴史人口学者が大胆な切り口で欧州情勢を斬ったインタビュー集である。著者の申し出がキッカケとなって実現した、日本オリジナル編集版である。初出はいずれもフランスのネットメディア。

日本人読者にとって、なによりも関心が高いのは「ドイツ帝国」という表現とその実態についてであろう。

第一次世界大戦の敗戦でドイツ帝国が崩壊してすでに約1世紀、「第三帝国」の名のもとに世界を混乱に陥れたナチスドイツが崩壊して70年。そして米ソ冷戦体制崩壊から四半世紀以上が立ったいま、ふたたび「ドイツ帝国」が浮上してきたのである。

もちろん、いま浮上してきたドイツ帝国はカッコ書きの「ドイツ帝国」である。ドイツ自身が帝国を名乗っているわけでも、ドイツ人自身が豪語しているわけでもない。むしろ、その逆であろう。だが、ドイツは好むと好まざるにかかわらず、実質的に「帝国」というべき存在になりつつある。すくなくとも欧州の中心がドイツになっているのは、もはや誰も否定できないことだ。

なぜドイツが欧州の中心となり、帝国化しつつあるのか?

まずは地政学的なポジションがある。冷戦崩壊によって再浮上したのが「中欧」という概念である。ドイツ語でミッテルオイローパ(Mitteleuropa)という。このドイツ語のニュアンスは英語でもフランス語でも表現しにくいが、文字通りドイツが欧州の中心に位置するということを意味している。

さらに重要なことは、いまやドイツは欧州経済の中心となったという事実である。欧州共通通貨ユーロ(Euro: ドイツ語ではオイロという)の危機が問題となっているが、危機的状態にあるギリシアを筆頭に南欧経済が閉塞する一方、ドイツ経済の一人勝ち状態がもたらされており、ますます状況が進展しているのである。

共通通貨の最大の受益者であるドイツは圧倒的な経済力をもつに至り、その経済力が実質的な政治力を発生させている。かつてのバブル期の日本を想起させる状況となってきているのである。

再統一前のドイツは東西に分割されており、西側先進国の日本も西ドイツも、アメリカの支配体制のもとにがっちりと組み込まれていたが、日本が経済的な絶頂期に達した1980年代後半は、いまだ米ソ冷戦期であり、衰退過程にあったとはいえ米ソともに軍事的なパワーは圧倒的なものがあった。増大する日本経済のパワーはアメリカをも凌駕する勢いを示し、日米経済戦争といわれる状況であったのだ。

「シュレーダー改革」によって強靱なパワーを確立した2010年代前半のドイツは、1980年代後半の絶頂期の日本とは置かれている環境が異なる強大化するドイツは、東アジアでいえば台頭する中国のような存在であり、アメリカのパワーが縮小するなかで、相対的にアメリカと対等の存在となりつつあるのだ。

エマニュエル・トッド氏の分析が興味深いのは、人口学の観点から「ドイツ帝国」のパワーを見ている点にある。

ドイツ本国自体は、日本と同様に出生率も低下しているのだが、周辺のドイツ語圏や、ドイツ経済圏に組み込まれている国々の人口を合わせると、人口規模ではアメリカを上回る(!)のである。

ドイツは、冷戦崩壊後に資本主義体制に組み込まれた旧東欧の国々の安い賃金を利用して生産を行い(・・この点は日本よりも有利な立場だ)、ドイツマルクを捨てて導入を決意した共通通貨ユーロがつくりだした広域市場では、為替リスクなしで(!)製品を輸出販売することができるのである。

ドイツ経済にとっては、きわめて都合のよい仕組みができあがったというわけだ。

欧州で一人勝ちしているドイツは、「秩序は人生の半分」(Ordnung is halbe des Leben)という格言をもつドイツ人のオブセッションである財政規律をドイツ以外にも押しつけている。経済の枠を越えて、政治の領域でもドイツがパワーを行使しはじめたのである。その対象は財政破綻状態のギリシアだけではない。その他の南欧諸国に対しても同様である。

エマニュエル・トッド氏もなんどか指摘しているが、ドイツ人は巨大なパワーを握ったときの、パワー行使の仕方に問題があるという。

ドイツ統一の最大の功労者ビスマルクが作り上げたドイツ帝国を崩壊させたヴィルヘルム二世しかり、第三帝国をつくりあげたが無謀な戦争で崩壊させたヒトラーしかり。大日本帝国を破綻させた日本もそうであったが、ドイツもまた「帝国」をマネジメントする能力には欠けるものがあるようだ。この点は、古代ローマとも、英国とも、アメリカとも異なる点だ。

気がついたら出現していた「ドイツ帝国」。はたしてドイツ人に帝国をマネジメントしていく覚悟と能力があるのか? 「ドイツ帝国」がふたたび世界の混乱要因となるのではないかという著者の懸念と憂慮は、大いに傾聴に値するといえよう。

ユダヤ系フランス人だからドイツ嫌い(?)だという印象を受けるかもしれない。たしかに、ドイツに従属的な無力なフランスの現状に対するいらだちのようなものは感じるのだが、イスラーム世界への偏見をもたない著者であり、とくにドイツ人に対する嫌悪感を抱いているわけではないようだ。
  
基本的に「普遍的人間像」を想定するフランス人の思考の弱点をついている点こそ、歴史人類学者としての立場が鮮明にでており好感がもてる点だ。基本的に左派の立場だが、旧来型の「フランス知識人」とは違って、経済学者のピケティと同様、アングロサクソン的思考法も身につけている人である。もちろん、いい意味のフランス的教養の厚みも兼ね備えてる。

出版元の文春としては、「ドイツ帝国」出現のアナロジーとして、中国台頭に目を向けたいのであろう。そのアナロジーが正しいのであれば、中国共産党もまた同じ道を歩む可能性が高い。現在、「ドイツ帝国」は肥大化しつつあるが、急速に巨大化したがゆえに比較的短期間で崩壊した過去の「ドイツ帝国」を想起する必要があろう。

台頭するドイツと、ふたたび復活しつつあるロシア欧州大陸の政治経済情勢を左右するのはフランスデも英国でもなく、ふたたびドイツとロシアである。人口学の観点を踏まえた議論をすすめていくと、著者とは異なる立場にあるジョージ・フリードマンの地政学の議論と似てくるのが興味深い。ただし、フランスから見ているトッドと、アメリカから見ているフリードマンとのあいだには、それぞれの国のドイツとの関わりかたの違いに起因するズレはある。

著者はビジネス界の人ではないので言及がないが、本書の議論に重ねて、ドイツ産業界が国を挙げて推進している「インダストリー4.0」を重ねてみれば、世界の政治経済におけるドイツが無視できない強大なパワーとなっていることに気がつくはずだ。

欧州情勢の構造的変化を知ることにより、世界情勢の構造的変化を知ることにつながる好著であるといえよう。





目 次

日本の読者へ
1 ドイツがヨーロッパ大陸を牛耳る(2014.8)
2 ロシアを見くびってはいけない(2014.5)
3 ウクライナと戦争の誘惑(2014.5)
4 ユーロを打ち砕くことができる唯一の国、フランス(2014.6)
5 オランドよ、さらば!-銀行に支配されるフランス国家(2013.5)
6 ドイツとは何か?(2011.12)
7 富裕層に仕える国家(2011.12)
8 ユーロが陥落する日(2011.11)
編集後記

著者プロフィール

エマニュエル・トッド(Emmanuel Todd)
1951年生まれ。フランスの歴史人口学者・家族人類学者。国・地域ごとの家族システムの違いや人口動態に着目する方法論により、『最後の転落』(76年)で「ソ連崩壊」を、『帝国以後』(02年)で「米国発の金融危機」を、『文明の接近』(07年)で「アラブの春」を次々に“予言”。『デモクラシー以後』(08年)では、「自由貿易が民主主義を滅ぼしうる」と指摘。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


訳者プロフィール

堀茂樹(ほり しげき)
1952年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部教授(フランス文学・哲学)。翻訳家。アゴタ・クリストフの『悪童日記』をはじめ、フランス文学の名訳者として知られる。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



・・ジョージ・フリードマンの最新刊 Flashpoints The Emerging Crisis in Europe, 2015 の「第9章 ドイツ問題ふたたび」を参照。トッド氏とは異なる立場にあるジョージ・フリードマンの地政学の議論は重要だ。トッドの著書とあわせて読むべき


<関連サイト>

インフラ投資銀、ドイツが第4位の出資国に=資料 (ロイター、2015年6月10日)
・・[ベルリン 9日 ロイター] - 中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)にドイツが 4.1%出資する意向であることが9日、ロイターが入手した財務省の書類草案で明らかになった。 出資比率は中国、インド、ロシアに次ぎ、第4位になる見通しだ。 ドイツ政府は10日、AIIB設立文書に関する採決を行う予定」 西欧諸国のなかで突出した存在のドイツの意味を考えよ

Germany Emerges  Geopolitical Weekly FEBRUARY 10, 2015 (By Gertoge Friedman, STRATFOR)
・・地政学の立場から「ドイツ問題」を考察するジョージ・フリードマンの論考

Beyond the Greek Impasse  Geopolitical Weekly JUNE 30, 2015 (By George Friedman, STRATFOR)
・・同上。「ギリシア問題」は「ドイツ問題」であることを、キプロスと対比させる形で論じている。債務国のギリシアと債権国のドイツは、裏返しの関係にある。ドイツにとってユーロ危機は存在そのものを脅かす脅威である

An Empire Strikes Back: Germany and the Greek Crisis   Geopolitical Weekly JULY 14, 2015 (By George Friedman)
・・上記の記事のつづき。「ギリシア問題」は「ドイツ問題」である!

いま、ドイツと北京を直通列車が走っている 中国とEUつなぐ、習金平の新シルクロード構想(遠藤誉、日経ビジネスオンライン、2014年4月10日)
・・その後、この構想は「一帯一路」として公表されることになる

インダストリー4.0とは何か? ドイツが官民一体で進める「第4の産業革命」(1)  熊谷 徹 (日経ビジネスオンライン、2014年7月22日)

難民問題に臨んでメルケル首相が行なった歴史的決断  「モラルと倫理の政治」は、ドイツと英仏間の格差を歴然とさせた (熊谷 徹、日経ビジネスオンライン、2015年9月10日)
・・EUの盟主としての自覚を発揮するドイツにも注目する必要がある

緊急インタビュー! 仏学者エマニュエル・トッド 「VW事件から見えてくる ドイツ最大のの弱点」 ~やっぱりドイツが世界をダメにする? (現代ビジネス、2015年10月12日)
・・ドイツはギリシア問題、難民問題につづいてフォルクスワーゲンの排ガス規制不正事件など、つぎからつぎへと困難に遭遇中。
「私はさきほど技術的な評判はあまり問題ではないと言いました。なぜかといえば、排ガスをごまかすための装置というものを作れること自体、技術的に妙技であるといえるからです。では、私が真に問題と考えるのはなにか。それは、諸問題を単にテクニカル(技術的)なものとして扱い、モラル(道徳)の面を忘れてしまうという古くからのドイツの傾向です。フォルクスワーゲンのスキャンダルが起きて、世界中の人々はそんなドイツの特質を思い出したでしょう。知っての通り、この種の『中身のない合理性』は、それ自体が危険なのです」

【日本人へ】 なぜ、ドイツ人は嫌われるのか(塩野七生、「文藝春秋」2015年9月号 巻頭エッセイ)
・・イタリア人詐欺団による『300ユーロ紙幣事件』でだまされたドイツ人の話

ドイツも中国に見切り…不要論まで飛び出す強烈な手のひら返し (MAG2ニュース 国際、2016年1月27日)
・・「無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者、北野幸伯氏が中国経済の状況に不安を感じたドイツが中国を見放し始めていることを指摘

ドイツ人教授が、E・トッドらのドイツ脅威論に反論する (フランク・レーヴェカンプ、幻冬舎plus、2016年4月9日)

メルケル首相も王毅外相も見落としている-日本とドイツでは戦後状況が異なる (遠藤誉、2015年3月10日)
・・「ドイツのヨーロッパ近隣諸国における戦後処理と、日本の戦後処理は全く異なり、日本には選択の余地はなかった。アメリカの言う通りに動き、アメリカのご機嫌をうかがいながら、その意向に沿って動く以外になかったのだ。メルケル首相も王毅外相も、その事実を直視していない」 つまり中国とドイツは、事実から目を背けほっかむりしているということだ。

(2015年7月1日、15日、9月10日、2016年1月2日、27日、5月21日、7月24日・27日 情報追加)



<ブログ内関連記事>

書評 『アラブ革命はなぜ起きたか-デモグラフィーとデモクラシー-』(エマニュエル・トッド、石崎晴己訳、藤原書店、2011)-宗教でも文化でもなく「デモグラフィー(人口動態)で考えよ!
・・「2008年のリーマンショック後にEU域内で強くなる一方の一人勝ち状態のドイツについて、トッドは以下のような発言をしている。「第10章 ドイツ-昨日はナチス、今日はエゴイスト」。

なぜドイツは、いまヨーロッパ内で、完全に利己主義的な経済政策を取っていると、お考えですか? ドイツは、普遍主義的なヨーロッパ的態度を取ることができないのです。・・(中略)・・ 普遍的なヨーロッパ的人間という何らかの観念に導かれて、ドイツがその強大な経済力をもってヨーロッパ全体の面倒を見てやるという気になる、ということがないのです。ドイツと日本は、沈静化した国で、本物の民主主義国です(ただ、日本人の方が、ユーモアのセンスがありますので、優位に立っていますが.......) ・・(以下略)・・  (*太字ゴチックは引用者=さとう)

ドイツの特殊性を論じるトッドだが、彼がフランス人だからというバイアスも感じなくはない。だが、世界情勢を見るにあたって傾聴に値する見解である。日本人の優位性を指摘する( )内の発言は、日本人としてはありがたい発言ではあるが(笑)

ドイツは、本物の政権交代型民主主義国ではありません。ともすると大連立を選ぼうとする傾向があります。それは脅威と言っているのではありません。ドイツは、巨大なドイツ語系スイスのようなものだと、言っているのです。・・(中略)・・ 西洋民主主義とは、その最も狭い意味において、その出発点において、その創設的中核というものは、フランス、イングランド、アメリカ合衆国だからです。つまりはトックヴィルの世界なのです。今日、歴史的な西洋というのが、当初から政治面でドイツを含んでいたなどという考えは、妄想というべきなのです。 (*太字ゴチックは引用者=さとう)


2015年1月から放送されたNHK・Eテレの「パリ白熱教室」は、「格差問題」という旬の話題の研究者であるピケティ教授の連続レクチャーシリーズ
・・ピケティ教授も、いわゆる「伝統的なフランス型知識人」ではない

書評 『歴史入門』 (フェルナン・ブローデル、金塚貞文訳、中公文庫、2009)-「知の巨人」ブローデルが示した世界の読み方
・・20世紀を代表する歴史家フェルナン・ブローデル。アナール派の総帥として「数量史」「時系列史」の先鞭をつけた社会経済史家


現代ドイツとドイツ人

書評 『ドイツリスク-「夢見る政治」が引き起こす混乱-』(三好範英、光文社新書、2015)-ドイツの国民性であるロマン派的傾向がもたらす問題を日本人の視点で深堀りする
・・トッドとほぼ同時期に出版された本。日本人の著者による日本人向けの本書は、日本人読者にはよピンとくる内容であろう

書評 『ユーロ破綻-そしてドイツだけが残った-』(竹森俊平、日経プレミアシリーズ、2012)-ユーロ存続か崩壊か? すべてはドイツにかかっている
・・「いい意味でも悪い意味でも、いまやドイツは欧州の中核にある。ドイツがいかなる行動をとるかによってユーロの運命は決まるのである」 ユーロ ドイツ一人勝ち アタマの引き出し

ドイツを「欧州の病人」から「欧州の優等生」に変身させた「シュレーダー改革」-「改革」は「成果」がでるまでに時間がかかる
・・大連合によって成立したメルケル政権は「シュレーダー改革」の延長線上にある

ドイツが官民一体で強力に推進する「インダストリー4.0」という「第4次産業革命」は、ビジネスパーソンだけでなく消費者としてのあり方にも変化をもたらす

書評 『なぜメルケルは「転向」したのか-ドイツ原子力40年戦争の真実-』(熊谷 徹、日経BP社、2012)-なぜドイツは「挙国一致」で「脱原発」になだれ込んだのか? 
・・福島第一原発の事故の際、ドイツ人が示した態度につよい違和感を感じたのは、わたしだけではあるまい。ドイツ人の意識あるいは無意識の根底には、ぬぐいがたいアジア人への蔑視があるのではないか?
本書を読むと、先進工業国という共通性をもちながら、およそドイツ人と日本人は似て非なる民族であることが手に取るようにわかる。
ユーラシア大陸の東端にある島国と、大陸の「中欧」国家であるドイツとは地政学的条件もまったく異なるのである。陸続きで何度も国土を蹂躙された経験をもつドイツ人の不安心理は長い歴史経験からくるものであろう。
本書を読んで、日本人とドイツ人のリスクにかんする意識の違いはわかった。もちろん日本人の「根拠なき楽観」は大きな問題だが、といって一概にドイツを礼賛する気にはなれない。なんだかナチスドイツに一斉になびいた戦前のドイツを想起してしまうからだ。

書評 『あっぱれ技術大国ドイツ』(熊谷徹=絵と文、新潮文庫、2011) -「技術大国」ドイツの秘密を解き明かす好著
・・「ドイツを特徴づけている、いわゆるミッテルシュタント(Mittelstand:中規模企業)だという。日本でいえば中堅中小企業がこれに該当するといっっていいだろう。 ドイツ人経営コンサルタントのヘルマン・ジモン(Hermann Simon)のいう「隠れたチャンピオン」(hidden champions)の一つと考えてよいのだろう。ニッチ市場に特化して、世界シェアを占める無名のミッテルシュタント(中規模企業)が活躍しているのがドイツなのである。 ポルシェやディーゼル、ツェッペリンなどの綺羅星のような発明家は本書でも取り上げられているが、世界的な知名度は高くなくても、現在でも多くの起業家を輩出している国がドイツなのである。たとえ、アメリカのソリコンバレーほどの派手さはないとしても。」  「隠れたチャンピオン」についてはトッドも言及

書評 『ブーメラン-欧州から恐慌が返ってくる-』(マイケル・ルイス、東江一紀訳、文藝春秋社、2012)-欧州「メルトダウン・ツアー」で知る「欧州比較国民性論」とその教訓
・・「秩序と規律をこよなく愛すドイツ人は、ギリシアとはまさに正反対にあるこことは言うまでもない。だが、そのドイツにも落とし穴があったことを指摘するルイスはじつに鋭い。「リーマンショック」の際、ドイツの金融機関が無傷であったわけではないのだ。「ルールを偏愛するがゆえの脇の甘さ」という指摘はじつに示唆に富む。・・(中略)・・さらに、「ドイツははたしてヨーロッパ化されたのか」という根源的な疑問が欧州で復活していることも見逃せない。ナチス以後の「ユダヤ人を欠いたドイツ金融界」は、考えてみれば日本と同じである。これは、英米の金融界との大きな違いであることは間違いない。このことが何を意味しているかは、いろいろ考えてみる価値はある。」

書評 『スノーデンファイル-地球上で最も追われている男の真実-』(ルーク・ハーディング、三木俊哉訳、日経BP社、2014)-国家による「監視社会」化をめぐる米英アングロサクソンの共通点と相違点に注目
・・「ドイツのメルケル首相の個人使用の携帯電話が NSA によって盗聴されていた事実。旧東ドイツの秘密警察・情報機関シュタージの盗聴世界のなかで生き抜いてきたメルケル氏にとっては、まさに悪夢の再来ともいうべき事態であったことだろう。 この件が明るみになってドイツの世論に火がついたのだが、東ドイツ時代の秘密警察シュタージによる監視社会を体験しているドイツ人は、ことさら監視についてはナーバスであり、西ドイツ出身者であってもナチズム体制を体験している点においてドイツ人にとっての共通認識であるのかもしれない。」


ドイツと中国の「野合」?

書評 『日中戦争はドイツが仕組んだ-上海戦とドイツ軍事顧問団のナゾ-』(阿羅健一、小学館、2008)-再び繰り返される「中独合作」の原型は第一次世界大戦後にあった


「帝国」という統治システムの成功例:大英帝国

書評 『大英帝国衰亡史』(中西輝政、PHP文庫、2004 初版単行本 1997)-「下り坂の衰退過程」にある日本をどうマネジメントしていくか「考えるヒント」を与えてくれる本

書評 『大英帝国という経験 (興亡の世界史 ⑯)』(井野瀬久美惠、講談社、2007)-知的刺激に満ちた、読ませる「大英帝国史」である

書評 『大英帝国の異端児たち(日経プレミアシリーズ)』(越智道雄、日本経済新聞出版社、2009)-文化多元主義の多民族国家・英国のダイナミズムのカギは何か?

(2015年7月7日、10月16日、25日 情報追加)
(2016年1月15日 情報追加)




(2017年5月19日発売の新著です)


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