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2015年5月31日日曜日

すでに5月にアジサイの花-梅雨の時期も近い


ことし2015年の5月は、初夏というよりもほとんど真夏に近い日が続いている。

全国各地で真夏日を記録し、熱中症の危険が語られる毎日は異常としかいいようがない。5月の真夏日は異常日というべきだろうが、やはり異常気象はすでに異常ではなくなっているのか。

5月の花の変遷はいちじるしい。5月初旬の花といえば日本原産の藤の花。そしてツツジとサツキ。サツキは皐月(さつき)であり、文字通りの五月(さつき)である。サツキもまた日本原産の植物だ。

そしてつぎにくるのがアジサイ。アジサイは基本的に梅雨の時期の花だ。

アジサイもまた日本原産の植物。藤の花(=ウィステリア)もアジサイも日本から世界に普及している。品種改良されたアジサイは、日本に逆輸入されている。シーボルトとお滝さんのエピソードが知られているように、アジサイのラテン語の学名にはオタクサが含まれることになった。

5月なのにアジサイが満開に咲いていた。美しい花である。

真夏日がつづいたと思ったら、冷たい雨となり、そしてまた真夏日となる。5月は真夏日が何度もあったが、季節は確実に流れてゆく。

明日からは6月。梅雨の季節である。






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ウィステリアとは日本の藤(ふじ)のこと-アメリカでは繁殖力の強い「外来種」として警戒されているとは・・・

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2015年5月29日金曜日

『ドラッカー・コレクション 珠玉の水墨画- 「マネジメントの父」が愛した日本の美-』(千葉市美術館)に行ってきた(2015年5月28日)-水墨画を中心としたコレクションにドラッカーの知的創造の源泉を読む

(雪村周継 「月夜独釣図」 ドラッカー・コレクションより)

『ドラッカー・コレクション珠玉の水墨画- 「マネジメントの父」が愛した日本の美-』(千葉市美術館)に行ってきた(2015年5月28日)。千葉市美術館の「開館20周年記念展」である。会期 2015年5月19日から 6月28日まで。

ドラッカーとは、もちろん「マネジメントの父」といわれた経営学者で社会生態学者のピーター・ドラッカー(1909~2005)。「ドラッカー・コレクション」とは、そのドラッカーが生涯をかけて収集した日本美術のコレクションである。みずから「山荘コレクション」(Sanso Collection)と名付けていた。

しかも、その収集の出発点であり、中心であったのが室町時代の水墨画ドラッカーと水墨画の取り合わせは、ビジネスやマネジメントしか関心のない人にはピンとこないだろうし、逆に日本美術愛好家にはドラッカーといってもピンとこないかもしれない。それくらい一般的には水と油のような関係の組み合わせである。


水墨画のなかに「没入」するドラッカー

「正気を取り戻し、世界への視野を正すために、私は日本画を見る」と、コレクター本人が書いているらしい。

人によってはアウトドア活動であったり、スポーツであったりするが、雑事にまみれた実務の世界などの「アクティブ・ライフ」(Vita activa)から離れて「没入」する対象が、書斎派のドラッカーの場合は掛け軸で水墨画であったということだ。

「没入」は「沈潜」といっていいかもしれない。無意識に始まったものとはいえ、その後に確立された、ある種の瞑想法にも近い自己(再)発見のテクニックではないか、と思われる。

水墨画といえば雪舟くらいしか思い浮かばないのが一般的な日本人の反応だろうが、ドラッカーのコレクションは日本人もまったく知らないような絵師の作品にまで及んでいる。

収集がもっとも活発であった時期は、マネジメントにかんする考察がもっとも活発に行われていたクリエイティブな時期と重なるという。「没入」と「創造性」の関係について示唆的な話である。無意識のうちに集中している状態は、ハンガリー出身の心理学者チクセントミハイの提唱した「フロー」の概念に該当する。

水墨画世界のなかに「没入」することが、ある種の「観想的生」(Vita contemplativa)であったと考えれば、ドラッカーにとって、一点を除いてすべてが掛け軸であった日本美術のコレクションを「観る」ことが一番のストレス解消策であり、インスピレーションの源泉でもあったと考えるべきなのだろう。

経営はアートかサイエンスか、という議論が昔から続いているが、答えは言うまでもなく両方である。ここでいうアートとは「芸」「と「術」の双方を含むものであるが、ドラッカーのマネジメントはより人間重視のアート志向といっていいだろう。ドイツ語圏のウィーン出身で、「教養」のもつ重要性を熟知し、みずから実践していた人である。

しかも、ドラッカーが日本美術に目覚めたのは偶然の出会いからだという。

ナチス支配の強まるドイツを逃れ、ロンドンで証券アナリストをやっていた25歳のとき、1934年6月である。雨宿りのために入った美術館の展示を見て、突然恋に落ちてしまったのだという。ドラッカーの日本とのかかわりは、マネジメント指導を通じた日本企業とのかかわりよりもはるか前に、日本美術との偶然の出会いから始まっていたのである。

その時代に誕生したのが、思想家ドラッカーの出世作でチャーチルにも大きな影響を与えた名著『経済人の終わり』(The End of Economic Man)である。マネジメント概念の確立以前のドラッカーには、思想家としての側面と水墨画愛好家という側面があったわけだ。



30年ぶりの「ドラッカー・コレクション」の企画展

『ドラッカー・コレクション 珠玉の水墨画』を企画したのは、ことしが開館20年目の千葉市美術館。同時に開催されている「歴代館長が選ぶ所蔵名品展」にも現れているように、初代館長の辻惟雄氏、第二代館長の小林忠氏、そして現在は第三代の河合正朝氏はいずれも日本美術史研究の泰斗である。

三代目館長は、室町時代の水墨画研究家の河合正朝氏。まさに『ドラッカー・コレクション 珠玉の水墨画-』のテーマを扱うのにこれほどの適任者がいないというだけでなく、じつは今回の企画展は、河合氏自身が30年前に企画した展覧会をさらに精選し、パワーアップしたものだとのことだ。

「公式サイト」の紹介文には、企画展の趣旨が以下のように記されている。

 人口当たりでは最大の読者を持ち、特に影響が大きく深かった日本。しかしこれまでのさまざまな "ドラッカー学" の中でも、美術コレクションが意味したものについての考察は、未開拓の分野であったと言えましょう。 本展は、知られざる存在となりつつあった本コレクションを改めて調査し構成した、初公開作品を含む111点の里帰りとなるものです。コレクションの軌跡をたどり、ドラッカーその人への関心と彼が美術を通じて見た日本という視点を加えながら、新たな切り口で作品の魅力をご紹介いたします。

企画展は8部構成となっている。


序章 日本美術との出会い
第1章 1960年代、初期の収集
第2章 室町水墨画
第3章 水墨の花と鳥 動物画の魅力
第4章 聖なる者のイメージ
第5章 禅画 江戸のカウンターカルチャー
第6章 文人画の威力
終章 書斎に吹く風 クレアモントのドラッカー


それぞれの展示作品につけられたキャプションを読むと、ドラッカーによる日本美術のキーワードは、意匠としてのデザイン、トポロジー、そして統合性と両極性とある。ドラッカーは、日本美術と日本文明の特色は、美術だけではなく経営にも現れているとみているようだ。

今回の企画展は展示品だけでなく、「目録」(2,300円)もじつによくできているので購入することをぜひすすめたいが、目録所収の論文や関係者の回顧録やコラム記事などすべて読み、あらためて展示作品を目録の掲載されている写真で眺めていると、またさまざまな角度から思考を深めることが可能となる。

デザイン性や統合性については、日本美術については比較的よく語られてきたことだが、トポロジーという把握が印象に残る。トポロジーとは位相幾何学のことである。

遠近法の背景にある西欧の幾何学でも、中国の対称性の代数学でもなく、日本美術はトポロジカルというのはドラッカーならではの理解だが、なかなか美術だけをやっている人間から聞くことのない指摘である。トポロジーはギリシア語のトポス(=場)からの派生語だが、「現場」など、なによりも「場」を重視する日本人の志向性を想起させるものがある。

ドラッカーが禅仏教に傾倒したという話は聞かないが、みずから収集した水墨画や禅画のコレクションをつうじてドラッカーは禅的なものに強く影響を受けているようだ。禅画をカウンターカルチャーと位置づけるのは、1970年代のアメリカ、とくに西海岸のトレンドとは無縁ではあるまい。世代は大きく異なるが、禅仏教に傾倒し、日本好きであったスティーブ・ジョブズと同時代を生きていたのである。

青年期まで過ごしたウィーンやフランクフルトなどで接していた、第一次世界大戦と同時代の「ドイツ表現主義」が実現できず終わったことを、すでに江戸時代の日本人が禅画で実現していたというドラッカーの発言もまた興味深い。日本文明の根底の一つを形成している、禅仏教的な知覚による直観的把握について語っているわけだが、西洋美術との比較で禅画を見直してみるのも、一つの鑑賞方法であろう。

ドラッカーは西欧文明の中心地の一つであるウィーンに生まれ育ったユダヤ系の知識階層出身者であり、自分自身が徹底的に教育を受けたデカルト的な分析的知性と日本美術をつうじて学び取った知覚による直観的把握を大事にしてきたようだ。この両者が合わされば、まさに鬼に金棒だろう。西欧人にとっては後者が、日本人にとっては前者を強化することが重要である。

この企画展の英文タイトルは、Masterpieces from the Sanso Collection: Japanese Paintings colleted by Peter F. and Doris Drucker となっている。収集はドラッカー個人によるものではなく、夫婦によるものであったことにも注目しておきたい。

「ドラッカーコレクション」は、基本的に著名な絵師の著名な作品よりも、日本人ですらまったく聞いたことのないような絵師も多く、テーマ性のきわめて明確なコレクションだが、なかにはいま日本でも人気の高い若冲の水墨画もある! 「梅月鶴亀図」(1795年)がそれである。マグネットも販売されていたのが、美術マグネット・コレクターとしてはうれしいかぎりだ。

(伊藤若冲 「梅月鶴亀図」の一部  ドラッカーコレクションより)


この企画展は巡回展で、千葉市美術館のあとは、長野県信濃美術館(2015年7月11日~8月23日)山口県立美術館(2015年10月30日~12月6日)で開催される。東京や大阪など大都市ではなく地方都市の公立美術館での開催だが、価値ある企画展なので、ぜひ足を運んでほしいと思う。

(2015年6月5日 大幅加筆して再構成)





PS 『すでに起こった未来-変化を読む眼-』(ドラッカー、ダイヤモンド社、1994)「第7部 社会および文明としての日本」の「11章 日本画に見る日本」が、ドラッカーの日本美術論である



PS2 『ドラッカー 教養としてのマネジメント』(ジョゼフ・マチャレロ/カレン・リンクレター、日本経済新聞社出版社、2013)の「日本語版序文」(村山はな)に、ドラッカーと日本美術との関係が簡潔に記されている。





<関連サイト>

『ドラッカー・コレクション 珠玉の水墨画- 「マネジメントの父」が愛した日本の美-』 出品リスト

ピーター・ドラッカー 日本美術へのラブレター(NHK日曜美術館、2015年6月7日 放送)


<ブログ内関連記事>

日本美術展

「若冲と蕪村-生誕300年 同い年の天才絵師-」(サントリー美術館)に行ってきた(2015年5月6日)-なるほど二人合わせてジャクソン(=若+村)か!

「白隠展 HAKUIN-禅画に込めたメッセージ-」にいってきた(2013年2月16日)
・・仙崖とともにドラッカーが収集していた

「ザ・ビューティフル 英国の唯美主義1860~1900」(三菱一号館美術館)に行ってきた(2014年4月15日)-まさに内容と器が合致した希有な美術展
・・日本の美術や工芸品が世紀末英国美術に与えた決定的影響。 とくにオスカー・ワイルドの日本美術びいきには注目


日本美術コレクション

書評 『若冲になったアメリカ人-ジョー・D・プライス物語-』(ジョー・D・プライス、 山下裕二=インタビュアー、小学館、2007)
・・テーマ性で収集したドラッカーとは異なり、埋もれていた一人の絵師の作品に惚れ込んだアメリカ人コレクターによるコレクション

「特別展 ボストン美術館 日本美術の至宝」(東京国立博物館 平成館)にいってきた(2012年5月18日)
・・岡倉天心がその整理にかかわった日本美術の一大コレクション

「人間尊重」という理念、そして「士魂商才」-"民族系" 石油会社・出光興産の創業者・出光佐三という日本人
・・ドラッカーも好んだ仙崖を中心に収集した個人コレクターとしての出光佐三


「社会生態学者」を自称するドラッカーの原点

『「経済人」の終わり』(ドラッカー、原著 1939)は、「近代」の行き詰まりが生み出した「全体主義の起源」を「社会生態学」の立場から分析した社会科学の古典
・・欧州における「キリスト教の失敗」が一般民衆のファシズムやナチズムへの熱狂を生み出したことを、ヒトラーと同時代人として若き日に指摘したドラッカーは、ユダヤ系だがキリスト教の洗礼を受けて育った同化ユダヤ人である。水墨画への「没入」は、宗教の代替物としての美術という文脈で捉えることも可能かもしれない

書評 『知の巨人ドラッカー自伝』(ピーター・F.ドラッカー、牧野 洋訳・解説、日経ビジネス人文庫、2009 単行本初版 2005)-ドラッカー自身による「メイキング・オブ・知の巨人ドラッカー」


「経営学者」としてのドラッカー

レビュー 『これを見ればドラッカーが60分で分かるDVD』(アップリンク、2010)
・・「経済よりも社会のほうがはるかに重要だ」というドラッカーの発言がすべてを言い表している。「マネジメントはサイエンスでもアートでもない、プラクティス(実践)である」という発言も

書評 『ドラッカー流最強の勉強法』(中野 明、祥伝社新書、2010)-ドラッカー流「学習法」のエッセンス

NHKのアニメ 『もしドラ』 最終回(5月6日)後に全10回のおさらい-ミッションの重要性と「顧客」は誰か?

ドラッカーは時代遅れ?-物事はときには斜めから見ることも必要
・・ホリエモンの興味深い発言を参照のこと

経営計画の策定と実行は、「自力」と「他力」という仏教の考えをあてはめるとスムーズにいく
・・「ゆだねる」という他力の思想


「向こう側」を探索する自己発見のテクニック

書評 『ヨーロッパ思想を読み解く-何が近代科学を生んだか-』(古田博司、ちくま新書、2014)-「向こう側の哲学」という「新哲学」
・・自分の内部という「向こう側」に沈潜して再び戻ってくる「^という自己発見のテクニックは、ドイツ語圏の思想家であるユングやシュタイナーにもみられる

カラダで覚えるということ-「型」の習得は創造プロセスの第一フェーズである
・・イエズス会の創始者ロヨラは『霊操』でイメージトレーニングによる観想方法を確立した。この手法はイメージを消していく禅仏教の方法とは真逆の関係にある


千葉市美術館で開催された日本美術展

『酒井抱一と江戸琳派の全貌』(千葉市美術館)の初日にいってきた-没後最大規模のこの回顧展は絶対に見逃してはいけない!

「蕭白ショック!! 曾我蕭白と京の画家たち」(千葉市美術館)にいってきた

「生誕130年 橋口五葉展」(千葉市美術館) にいってきた
・・千葉市美術館は館長に美術史家の小林忠氏がいるので、じつによい企画が多い。これもその一つ

美術展 「田中一村 新たなる全貌」(千葉市美術館)にいってきた
・・百貨店でよく取り上げられる田中一村だが、きちんと美術館で正当な評価を行ったことはすばらしい

(2015年6月6日 情報追加)




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2015年5月28日木曜日

映画 『アルプス-天空の交響曲-』(2013、ドイツ)を見てきた(2015年5月28日)-360度のパノラマでみる「アルプス地理学」


『アルプス-天空の交響曲-』という2013年製作のドイツ映画を見てきた。ヨーロッパの七ヵ国にまたがるアルプス山脈を上空から撮影した93分の映像作品である。

セリフも効果音もいっさいなくナレーションがあるのみ。しかもナレーションは日本語。女優の小林聡美によるもの。つまりナレーションは吹き替えである。

上空から撮影した映像はまさに360度のパノラマ。ときにズームイン、そしてまたズームアウトする距離の取り方も面白い。登山家ではない圧倒的多数の一般人にとって、アルプスの頂上からの眺めがこんなに素晴らしいのか!と感じさせてくれる。

シネフレックス・カメラというヘリコプター搭載の軍事偵察用カメラで撮影したらしい。軍事技術もこういう活用も可能だということだ。


英語版のタイトルは、A Symphony Of Summit: The Alps From Above(=頂上交響楽-上空から見たアルプス)。ドイツ語のタイトルは、Die Alpen: Unsere Berge von oben(=アルペン-上空から見たわれらの山々)である。

日本語版は英語版から作製したのかもしれない。シンフォニー(=交響楽)というコトバをタイトルに入れた方が、英語圏の人間にも日本語圏の人間にもアピールするものがあると考えたのだろう。たしかに交響楽ともいうべきすばらしい映像だ。

(ドイツ語版ポスター)

だが、ドイツ語版のタイトルに注目してほしい。Die Alpen: Unsere Berge von oben(=アルペン-上空から見たわれらの山々)である。

アルプスは、ドイツ、オーストリア、フランス、イタリア、スロベニア、リヒテシュタイン、スイスの7カ国にまたがるのだが、この映像作品の中心は、スイスとオーストリアである。Unsere Berge(=われらの山々)というのはそういう意味だろう。

ドイツ語版のタイトルにあるとおり、この映像作品は交響楽(=シンフォニー)というよりも、「アルプス地理学」ともいうべき作品だ。

最初は圧倒的な映像の力に感嘆するが、いきなり地球温暖化によって氷河が溶ける危機にあること、そして氷河問題とは本質的に水問題であることを知ることになる。

氷河が消えてゆくことで地面がむき出しになった山岳の崩壊スピードアップ、降雪量が減少していることによるウインタースポーツの危機、水力電力のために建設されたダム湖と下流域の水不足・・・。いかにもドイツ的な環境問題への警告といった内容が随所にちりばめられている。

この映画は、生きた「アルプス地理学」の教科書なのだ。そう見るべきなのではないかと、途中まで見ていて思った。

自然地理学をベースに、人文地理学、経済地理学、産業地理学のテーマが取り上げられている。自然科学をベースとしながらも、自然と人間とのかかわりを水平的に、つまり人間とその環境である自然、そして自然をいかに人間が利用してきたかについて、過去・現在・未来を水平的に取り扱っているのである。

歴史学がディアクロニック(=通時的)なものとすれば、地理学という学問はサンクロニック(=共時的)なものだ。アルプス周辺国にとっては、アルプスとは過去・現在・未来という時間の堆積(=歴史)が刻み込まれた存在である。

そしてヨーロッパ以外の人間にとっては、ヒマラヤ山脈についても想起することになる。急峻な山脈は、アルプスもヒマラヤも、ともにもともと海底にあった地層が褶曲によって地上にせり上がって形成されたものであり、地球温暖化のために氷河が消えつつある問題も共通している。

この映画は、宣伝文句とは違って、環境問題とは自然と人間のかかわりの問題なのだということを、あらためて喚起してくれるものとなっている。もちろん映像はすばらしい!






<関連サイト>

映画 『アルプス 天空の交響曲(シンフォニー)』公式サイト(日本語版)

アルプス 天空の交響曲<シンフォニー> Facebookページ

映画 『アルプス 天空の交響曲(シンフォニー)』予告編(日本語版)

DIE ALPEN - UNSERE BERGE VON OBEN - Trailer deutsch(ドイツ語版トレーラー)
・・ドイツ語版のナレーションは男性による


* この映画では取り上げられていない「アルプスの南側」にあるスロヴェニアの美しい自然は、スロヴェニア出身の思想系バンド Laibach(ライバッハ)のミュージック・ビデオ Laibach - Opus Dei (Life is Life) Official Video を視聴するとよい。

(2015年7月11日 情報追加)


<ブログ内関連記事>

「小国」スイスは「小国」日本のモデルとなりうるか?-スイスについて考えるために

1980年代に出版された、日本女性の手になる二冊の「スイス本」・・・犬養道子の『私のスイス』 と 八木あき子の 『二十世紀の迷信 理想国家スイス』・・・を振り返っておこう 
・・現在から30年前はまだスイスは観光先としてしか認識されていなかったようだ。そういう現状認識への異議申し立ての内容でもある

書評 『スイス探訪-したたかなスイス人のしなやかな生き方-』(國松孝次、角川文庫、2006 単行本初版 2003)

書評 『ブランド王国スイスの秘密』(磯山友幸、日経BP社、2006)-「欧州の小国スイス」から、「迷走する経済大国・日本」は何を教訓として読み取るべきか

書評 『レッドブルはなぜ世界で52億本も売れるのか-爆発的な成長を遂げた驚異の逆張り戦略-』(ヴォルフガング・ヒュアヴェーガー、長谷川圭訳、日経BP社、2013)-タイの 「ローカル製品」 を 「グローバルブランド」に育て上げたストーリー
・・現代オーストリアを代表する企業の一つとなったレッドブル

むかし富士山八号目の山小屋で働いていた <総目次>

「理科のリテラシー」はサバイバルツール-まずは高校の「地学」からはじめよう!

「第1回 国際ドローン展」に行ってきた(2015年5月20日)-百聞は一見にしかず!




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2015年5月27日水曜日

書評 『チャイニーズ・ドリーム-大衆資本主義が世界を変える-』(丸川知雄、ちくま新書、2013)-無数の「大衆資本家」たちの存在が中国の「国家資本主義」体制の地盤を堀崩す


「チャイニーズ・ドリーム」(=中国夢)というと、どうしても習近平によって大国化を目指して打ち出された政治的スローガンを想起してしまう。

だが、本書のタイトルになっている「チャイニーズ・ドリーム」は、政治的なものではない。経済をつうじて実現したいと願っている一般大衆の「夢」のことである。それが著者のいう「大衆資本主義」というものを支えている「夢」である。アメリカンドリームと同様に、ビジネスをつうじての成功という「夢」である。

中国経済は、かってほどの比率ではないものの、いまでも依然として国有企業のプレゼンスの大きな経済である。中国共産党が推進したい「社会主義資本経済」の主要な担い手が、石油や鉄鋼など主要産業を押さえている国有企業なのである。国内外の株式市場で上場している企業の大半は国有企業グループである。

1989年の「天安門事件」以後、政治的な自由を抑えつける代償として、経済的な自由を開放する政策が行われている中国だが、一般大衆にも経済的に成功するチャンスが与えられている。そこに開花したのが著者のいう「大衆資本主義」だ。

儲かるチャンスがあればそこに殺到する「大衆資本家」たち。規制のスキマを発見したらそこに殺到する「大衆資本家」たち。中国ビジネスというと、不動産や株式投資ばかりが日本のマスコミ報道では取り上げられているが、製造業の分野で事業を立ち上げる「大衆資本家」が存在することを本書は教えてくれる。

中国ではそれをさして山塞(さんさい)型というらしい。山塞とは、山賊の要塞のこと。山塞型とは、つまりゲリラ的な参入のことである。著者が前著の『現代中国の産業-勃興する中国企業の強さと脆さ-』(中公新書、2008)でも取り上げていた携帯電話、太陽電池といった事業分野が、まさにその典型的な実例である。特定の分野に専門特化して一点集中突破を図る戦略である。

「垂直統合」の産業構造が解体して、パーツやモジュール単位で「垂直分裂」した結果、分業化が進んで参入障壁が低くなると、小さな資本でも事業を立ち上げることが可能となったのである。いわゆるモジュール型の製造分野では、市場で購入したパーツやモジュールを組み立てれば、製造の敷居がきわめて低くなる。そして低価格での販売も可能となる。

著者は、こういった「大衆資本家」たちの取り組みを「キャッチ・ダウン型」と命名している。先行技術に「キャッチ・アップ」するのではなく、スペックの要求水準を下げることによって低価格というアドバンテージを手に入れる戦略である。

このほか、規制の網をかいくぐって急成長したのが電動自転車なども、じつに興味深い事例だ。

だが、「大衆資本主義」はときに大暴走することもある。その典型的な例がレアアース採掘である。

供給不足に狼狽した日本側の動きを知って、レアアースが日本揺さぶりの武器になると勘違いした中国政府の対応は、WTO加盟の先進諸国の猛烈な批判を招く結果で終わったが、「大衆資本家」たちが暴走すると規制当局も手をこまねくばかりであることが如実に示された事例としてじつに興味深い。WTO加盟に際して「市場経済国」と認められていない中国である。猛烈なレアアース採掘が環境破壊につながっている点も看過できないことである。 

「大衆資本家」社会の実現には、経営者の共産党参加への道を開いた江沢民の政策の意味も大きい。企業内に共産党員がいるのが中国企業のガバナンスの実情だが、経営者の共産党参加が実現したことにより、民間企業内の二重権力が解消したことがメリットであった。一方では、中国の救いがたい汚職と腐敗体質を招く結果となったのではあるが・・・。

このように、現実の動きに押されて現状追認する傾向にあるのが規制当局の反応であり、国有企業中心の中国経済に風穴を開けているのが実態である。無数の「大衆資本家」たちの動きは、いわゆる「国家資本主義」をくつがえす可能性があるのではないかと著者は指摘している。

そう考えれば、中国共産党以後の中国のカギを握るのは、起業家マインドに満ちた「大衆資本家」たちがその担い手の一部となるのかもしれない。

 『現代中国の産業-勃興する中国企業の強さと脆さ-』(丸山知雄、中公新書、2008)の続編ともいうべき内容。前著同様、というより前著以上に面白い。知的刺激に満ちた一冊である。






目 次

はじめに
第1章 草の根資本家のゆりかご・温州
第2章 ゲリラたちの作る携帯電話
第3章 太陽電池産業で中国が日本を追い抜いたわけ
第4章 大衆資本主義がもたらす創造と破壊
第5章 中国経済と大衆資本主義
おわりに-「中国夢」に日本は何を学べるか?
あとがき
参考文献

著者プロフィール


丸川知雄(まるかわ・ともお)
1964年東京都生まれ。1987年、東京大学経済学部卒業。同年アジア経済研究所入所。2001年4月より東京大学社会科学研究所助教授、2007年4月より同教授。著者に『現代中国の産業-勃興する中国企業の強さと脆さ-』(丸山知雄、中公新書、2008)ほか。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの追加)。



*「山塞企業」モデルについて解説されている


<ブログ内関連記事>

製造業ビジネスモデルの変化

書評 『現代中国の産業-勃興する中国企業の強さと脆さ-』(丸山知雄、中公新書、2008)-「オープン・アーキテクチャー」時代に生き残るためには
・・「垂直分裂」というコトバが定着したものかどうかはわからないが、きわめて重要な概念である。この考え方が成り立つには、「ものつくり」において、設計上の「オープン・アーキテクチャー」という考え方が前提となる。 「オープン・アーキテクチャー」(Open Architecture)とは、「クローズドな製品アーキテクチャー」の反対概念で、外部に開かれた設計構造のことであり、代表的な例が PC である。(自動車は垂直統合型ゆえクローズドになりやすいが電気自動車はモジュール型)

書評 『アップル帝国の正体』(五島直義・森川潤、文藝春秋社、2013)-アップルがつくりあげた最強のビジネスモデルの光と影を「末端」である日本から解明
・・米国製造業のアウトソーシング先としての、中国における台湾のEMS企業

書評 『日本式モノづくりの敗戦-なぜ米中企業に勝てなくなったのか-』(野口悠紀雄、東洋経済新報社、2012)-産業転換期の日本が今後どう生きていくべきかについて考えるために


中国の科学技術

書評 『「科学技術大国」中国の真実』(伊佐進一、講談社現代新書、2010)-中国の科学技術を国家レベルと企業レベルで概観する好レポート
・・「学問研究や科学的探求に不可欠な自由闊達な意見表明を行いにくい中国共産党統治下の政治風土にまで踏み込んで言及しているのは、著者が外国人であることのメリットだろう。科学(サイエンス)と技術(テクノロジーおよび工学 エンジニアリング)の違いがそこにはある。 現在の中国では「創新」が強調されているが、世界を変えるようなほんとうの意味でのイノベーションは不可能である。なぜなら、体制の安定を揺るがすような価値観変容をもたらす「恐れ」があるから、どうしても委縮しがちだ。しかも、不正監視機能の弱さという問題も存在する」

書評 『アップル、グーグル、マイクロソフトはなぜ、イスラエル企業を欲しがるのか?』(ダン・セノール & シャウル・シンゲル、宮本喜一訳、ダイヤモンド社、2012)-イノベーションが生み出される風土とは?
・・一党独裁の共産主義中国とは対極の独創性の宝庫イスラエル


「一党独裁」を支えるチャイナマネー

書評 『自由市場の終焉-国家資本主義とどう闘うか-』(イアン・ブレマー、有賀裕子訳、日本経済新聞出版社、2011)-権威主義政治体制維持のため市場を利用する国家資本主義の実態
・・中国経済の中心は国営企業。ロシアと同様、「国家資本主義」(=新・重商主義)で経済を政治の手段として使用する中国共産党

中国経済の将来

書評 『中国台頭の終焉』(津上俊哉、日経プレミアムシリーズ、2013)-中国における企業経営のリアリティを熟知しているエコノミストによるきわめてまっとうな論

「稲盛哲学」 は 「拝金社会主義中国」を変えることができるか?

(2016年7月24日 情報追加)



(2012年7月3日発売の拙著です)











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2015年5月26日火曜日

書評 『潜入ルポ 中国の女-エイズ売春婦から大富豪まで-』(福島香織、文春文庫、2013 単行本初版 2011)-中国に生きる女たちから中国社会のリアルを知る


この本はじつに面白い! 中国関連の本で、これほど面白いものはそうなかなかないのではないか。日本人初の女性北京特派員となった著者が、ときにはモンゴル人と偽ったりしながら、体当たりで行った取材の記録である。

過酷な政治に翻弄されつづける大陸の中国人。そのなかでも「天の半分を支えてきた」女性たちに焦点をあてた本書は、「中国の女」をとおしてみた中国論でもある。具体的であるだけに印象も強い。

「女性は天の半分を支えている」(=「婦女能頂半辺天」)とは、中華人民共和国が建国されてからの毛沢東のコトバだが、毛沢東自身が男女平等主義者であったかどうかは、きわめて疑問は多い。この本の随所に指摘されているが、儒教国・中国に根強く存在する男尊女卑が払拭されているとは言い難い。

著者には一貫して、中国という過酷な世界に生きる女性たちへ共感がある。文庫版の解説の金美齢氏によれば、著者の姿勢は日本の知識人女性からは嫌われているそうだ。日本社会で日本人女性がおかれている状況より、中国で中国人女性がおかれている状況の方が、はるかに過酷であることが視野にないためだろう。

「第1章 エイズ村の女たち」「第2章 北京で彷徨う女たち」は、そんな過酷な中国大陸で、しかも底辺で生き抜いている女性たちのナマの声を伝えてくれる。「都市戸籍」と厳密に区分された「農村戸籍」によって、実質的なアパルトヘイト政策で身分差別されている農村生まれの人間が生き抜く姿を日本人が知る必要がある。

「第3章 女強人(女傑)の擡頭」で取り上げられているのは、スーパーリッチとなった起業家や、セレブとしてNGO活動で世界を股にかけている女傑や、社会問題や民族問題解決のために逮捕もおそれずに活動する女性たちである。

「第4章 文革世代と八〇后と小皇帝たち」では、過酷な「文化大革命」時代を生き抜いた女性たちと、その歴史を知らずに生きてきた1980年代生まれの八〇后(バーリンホウ)の女性たちを対比させながら、両者のあいだに対話が成立するかどうかを考察している。

このように社会の底辺からの視点と、社会の頂点からの視点、さらには少数民族の視点や、中国現代史という視点が交錯しながら、「中国の女」という一貫した視点で描かれた中国社会の断面を知ることは、同時代に生きている日本人にとって必要なことであると思うのだ。





目 次

はじめに-「婦女能頂半辺天」
第1章 エイズ村の女たち
 男の子を産まないと、女は一人前と認められないから命をかけて男の子を産む--栄華
 売れる体があるのはラッキー。どうせなら都会でいい男に売りたい--小●
 男が上に乗っかっているとき目をつぶるの。幼い息子の笑顔が見えるから--小燕
 超生で罰金をくらったけれど、あの娘を産んでよかった--程麗
第2章 北京で彷徨う女たち
 私たちに居場所なんてないのよ! ただ、慰める腕がほしいだけ--艶児
 殺すより売る方がよっぽどいいでしょ--小華・小海
 幸せにはなれない。ただ、生活になれていくだけ--王美●
 私は誇りを買い戻したのよ--小張
 結婚しないことへのプレッシャーの方がずっと重い、同性愛より--秋月・小帆・・
 都会の片隅で、一人ひっそり命を断つ打工妹(出稼ぎ娘)がどれほどいるか--劉雲・謝麗華
第3章 女強人(女傑)の擡頭
 私は「おしん」と性格がすごく似ているの--張菌
 私の活動の力の源泉は「愛」--候文卓
 「私は民族主義者」と漢語で語るチベット民族主義者--ツェリン・オーセル
 人間は誰もが、ちょっとは障害を持っているのよ--胡蓉
 「グッチ・ガール」から「寅女」となりて--●●
第4章 文革世代と八〇后と小皇帝たち
 今の知識人はニセモノよ。本当の知識人はもう亡くなってしまった--章台和
 私は今、水の上に這い上がってようやく世界を見た--田原
 一人っ子である身の上に、祖父母の歴史の物語が凝縮されているのよ--張悦然
おわりに-『大地』から始まった中国への旅
文庫版のためのあとがき-その後の「中国の女」たち
解説-「中国の女、台湾の女そして日本の女」-「場の力」が女を創る(金美齢)

著者プロフィール

福島香織(ふくしま・かおり)
フリージャーナリスト。1967年奈良市生まれ。大阪大学文学部卒業後、産経新聞社に入社。大阪文化部などを経て上海・復旦大学に語学留学。2001年から産経新聞香港支局長に赴任、2002年に香港支局閉局にともない中国総局(北京)に異動。2008年まで常駐記者を務めた。2009年に退職し、中国関連分野でフリーの活動を開始(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)


<関連サイト>

福島香織『潜入ルポ 中国の女 エイズ売春婦から大富豪まで インタビュー① (ニコニコ動画、2011年2月20日)

高額化する上海小姐のゆすりたかり 蜜月時代こそ、ご用心 (福島香織、 日経ビジネスオンライン、2015年5月27日)



<ブログ内関連記事>

『中国美女の正体』(宮脇淳子・福島香織、フォレスト出版、2012)-中国に派遣する前にかならず日本人駐在人に読ませておきたい本
・・「もちろん、中国女性といっても、広大な中国のことです、十把一絡(じっぱひとからげ)げに語るのはムリというのは、この二人にはよくわかっていることですし、内容はその点についてくどいほど語られたものになっています。 なんせ13億人という人口、その半分が女性だとしてもすごい数です(・・じっさいは、非合法ですが男女産み分けが行われているので女性のほうが少ない)。全人口のたった1%でも 1,300万人(!)となるわけですから、違いがあるのは当然ですし、人口の大半が農村戸籍をもつ農民である以上、その生活レベルや文化レベルがいかなるものであるかは推して知るべしというべきでしょう」。

書評 『中国絶望工場の若者たち-「ポスト女工哀史」世代の夢と現実-』(福島香織、PHP研究所、2013)-「第二代農民工」の実態に迫るルポと考察

書評 『中国貧困絶望工場-「世界の工場」のカラクリ-』(アレクサンドラ・ハーニー、漆嶋 稔訳、日経BP社、2008)-中国がなぜ「世界の工場」となったか、そして今後どうなっていくかのヒントを得ることができる本

書評 『騒乱、混乱、波乱! ありえない中国』(小林史憲、集英社新書、2014)-映像と音声が命のテレビ局の記者によるスリリングな取材記録




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2015年5月25日月曜日

書評 『それでも戦争できない中国-中国共産党が恐れているもの-』(鳥居民、草思社、2013)-中国共産党はとにかく「穏定圧倒一切」。戦争をすれば・・・


『昭和20年』というライフワークを完成させることなく2013年に亡くなった民間史家・鳥居民氏の遺作である。日本・米国そして中国。この日米中の三カ国の絡み合いを独自の視点で探求してきた人の中国関連の著作である。

2007年時点の情報で書かれた遺作なので、その後の推移については触れられていない。だが、基本的な分析と中華人民共和国=中国共産党の構造は変わらないだけでなく、中国を蝕む汚職と腐敗はさらに進行し、最後の切り札である習近平をもってしても、完全な解決とはほど遠い状態に近づいている。

だからこそ、崖っぷちに立つ中国に残された唯一のカードが、東シナ海の尖閣や南シナ海における「軍事的挑発」活動なのである。

著者の独自の視点とは、建国以来の中華人民共和国の歴史を振り返り、朝鮮戦争も台湾への攻撃も、「亡党亡国」を恐れた毛沢東による熾烈な権力闘争を隠蔽するための戦いだったと見る点にある。尖閣問題もまたその行動原理があるのだ、と。

だから中国共産党の挑発に乗ってはいけないのである。ケンカも戦争も、先に手を出したほうが国際的な非難を浴びることになる。ルーズヴェルトの挑発に乗せられて、大東亜戦争に突入した日本は、「隠忍自重」を貫かなくてはならないのである。これが歴史に学ぶ賢者の道である。

すさまじい勢いで貧富の格差が拡大し、一人っ子政策をやめても少子高齢化が止まらない中国。これを端的に表現したのが「未富先老」という四文字熟語である。「いまだ富まずして、先に老いゆく」中国。

中国は戦争などできる状態ではないのである。戦争になったら、間違いなく中国共産党は滅びる。中国共産党=中華人民共和国である以上、「亡党亡国」となるのは必定なのである。

習近平による「虎も蠅も叩く」というスローガンのもとに行われている腐敗撲滅運動だが、はたして濡れ手に粟のスーパーリッチ層を全面的に敵に回すことが可能だろうか? それこそ虎の尾を踏むことになるのではないか?

本書には、海外とくに米国への資本逃避についての言及はないが、すでに世界の二大超大国となた中国と米国の経済関係が切り離せないほどに密接となっており、しかも軍事力にかんしてみれば、米国の圧倒的な実力を熟知している中国としては、戦争に踏み切るオプションはないと考えるのが当然というべきだろう。

中国共産党はとにかく「穏定圧倒一切」なのである。安定と現状維持が一切すべてを圧倒するのである。

中国共産党の基本姿勢である「穏定圧倒一切」、中国の現実である「未富先老」。この2つのキーワードをアタマのなかに刻み込んでおけば、中国共産党=中華人民共和国の行動パターンをある程度まで「想定内」のものにできるだろう。

いずれにせよ、挑発に乗ってはいけない。これが「戦後70年」目の日本と日本国民が肝に銘じなくてはならない歴史の知恵である。






目 次

はじめに
1 「亡党亡国」の恐怖-ソ連はどうして崩壊したのか。中国共産党はそれから何を学んだのか
2 「穏定」こそすべて-中国共産党指導部は戦争を仕掛けるのか。だれがそんなことを考えているのだろう
3 毛沢東の猜疑心-どうして中国は朝鮮戦争に介入したのか。毛沢東の猜疑心が原因だった
4 金門砲撃戦の虚構-「相手が福州、杭州などを攻撃してくれば、まことに面白い」と毛沢東は言った。その真意は
5 総統選とミサイル演習-李登輝を落選させようとしたのではない。かれに戒厳令を布かせ、台湾が民主化するのを阻止しようとしたのだ
6 つぎの統一戦線工作-尖閣諸島を利用して、台湾を「反日・親中」にする。中国が馬英九にやらせること
7 「未富先老」の宿命-「穏定圧倒一切」を変える利益はどこにもない。人口統計学が予測していること
8 百人のスーパーリッチ-第十七回党大会の真の勝者はだれだったのか。圧力団体の登場で、明日の中国は

鋭い論法、深い内容に支えられた文章(中嶋嶺雄)
鳥居民●著作一覧
『産経新聞』「正論」欄の中国時評一覧

著者プロフィール
鳥居民(とりい・たみ)
1928年東京生まれ、横浜で育つ。2013年1月逝去。膨大な資料を渉猟し、徹底した調査、考察をもとに日本および中国近現代史を鋭く洞察した独自の史観を展開。2005年『産経新聞』正論メンバーに加わり、同紙「正論」欄で中国時評等に健筆をふるう。著書に『毛沢東□五つの戦争』『「反日」で生きのびる中国』『横浜山手』『横浜富貴楼□お倉』『日米開戦の謎』『原爆を投下するまで日本を降伏させるな』他。ライフワークとなったシリーズ『昭和二十年』は第1部は13巻まで上梓したが未完に終わる。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものを編集)。



<ブログ内関連記事>

現代中国

書評 『なぜ中国は覇権の妄想をやめられないのか-中華秩序の本質を知れば「歴史の法則」がわかる-』(石平、PHP新書、2015)-首尾一貫した論旨を理路整然と明快に説く

書評 『語られざる中国の結末』(宮家邦彦、PHP新書、2013)-実務家出身の論客が考え抜いた悲観論でも希望的観測でもない複眼的な「ものの見方」
・・「中国崩壊」をシミュレーションする

書評 『中国外交の大失敗-来るべき「第二ラウンド」に日本は備えよ-』(中西輝政、PHP新書、2015)-日本が東アジア世界で生き残るためには嫌中でも媚中でもない冷徹なリアリズムが必要だ

書評 『習近平-共産中国最弱の帝王-』(矢板明夫、文藝春秋社、2012)-「共産中国最弱の帝王」とは何を意味しているのか?

書評 『中国台頭の終焉』(津上俊哉、日経プレミアムシリーズ、2013)-中国における企業経営のリアリティを熟知しているエコノミストによるきわめてまっとうな論 ・・中西輝政氏もこの本を詳しく取り上げている





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2015年5月24日日曜日

書評 『香港バリケード-若者はなぜ立ち上がったのか-』(遠藤誉、深尾葉子・安冨歩、明石書房、2015)-79日間の「雨傘革命」は東アジア情勢に決定的な影響を及ぼしつづける


タイトルの「香港バリケード」とは、昨年(2014年)に世界的な衝撃を与えた香港の「雨傘革命」のことを指している。学生の呼びかけで2014年9月22日にはじまったデモに、香港市民が自発的に(!)参加して79日間(!)つづいた巨大な運動のことだ。

香港トップの行政長官を選ぶ「普通選挙」が実施されないことに怒りと危機感を感じた学生たちが立ちあがったのである。1997年の香港返還に際して中国共産党が世界に公約した「一国二制度」のもとに真の民主主義があるのか、と。

「雨傘革命」(Umbrella Revolution)とは、米英メディアによる命名が定着したものだ。警察が使用した催涙弾や胡椒水などに対抗するため、非暴力で無抵抗(!)の学生たちにが雨傘で防戦したことからだという。授業ボイコットから始まった運動は、広場や幹線道路を占拠するにいたる。

日本人であるわたしは、香港人たちによる自由と民主を求める運動に心情的に共感するだけでない。現実的な意味において、この「雨傘革命」が真に民主的な中国への道を切り開くことにつながるのではないかと期待しながら、台湾で続いていた「ひまわり学生運動」(=太陽花學運)とともに、断続的に推移を見守ってきた。

「雨傘革命」も「ひまわり学運」も、ともに学生が中心となって、それぞれの政府を批判するデモである。共通するのは、自由と民主主義を抑圧する中国共産党に対する嫌悪感と危機感がある。民意をかならずしも反映しない一党独裁の体制への恐怖といってもいいだろう。香港も台湾も、中国共産党による大陸支配から逃れてきた人々が多いだけでなく、大陸中国で使用される簡体字ではなく、繁体字を使用している点にも共通点がある。

かつて返還後の香港と中国の関係について、いまは亡き台湾出身の投資家で経済評論家の邱永漢氏は、「香港の中国化」ではなく、「中国が香港化」するとポジティブな予言をした。香港返還が実現した1997年当時のことである。

経済とビジネスという側面についてのみ見れば、たしかにその通りとなった。鄧小平の「改革開放」路線後の中国は、いまや米国についでGDPで世界第2位の「大国」に成長している。「社会主義資本市場」という歪んだ体制が拝金主義を生みだしたという負の側面をともなったものであるが。

「中国が香港化」したことにより、中国にとって資本主義世界へのゲートウェイであった香港の存在意義が相対的に低下してしまったのである。中国共産党は、GDPで世界第2位の経済力によるチャイナマネーによって香港経済の生殺与奪を握りつつある状況である。政治という側面について見れば、「香港の中国化」が進行しているのである。台湾もまたその危機にある。

ここで想起しておくべきことは、日本人の一般的な認識では「香港返還」とされているが、中国共産党は「香港回収」としていることである。「返還」だと主体は植民地支配をつづけてきた英国にあるが、「回収」だと主体は中国共産党にある。富裕層を中心にした香港市民が、危険を感じて英国や英連邦のカナダやオーストラリアに「移民」していったのはある意味では当然の結果であった。

だが、金銭的に余裕のない人たちは香港にとどまることを選択した。かれらの多くが「一国二制度」における普通選挙の実施を信じていたが、その期待が裏切られたのである。英国と中国のあいだの交渉で決まった「一国二制度」(One Nation Two System Policy)で保証された「50年」が、かなりいい加減な数字であったことは、よもや香港市民も思いもしなかったことだろう。

英国の植民地であった香港は、中国共産党による支配を嫌って難民として逃れてきた人が多い。いわば「難民的メンタリティ-」の持ち主である。

「雨傘革命」の中心になった学生たちは、「難民」的メンタリティーの第一世代と異なり、そこで生まれ育ち、そこで生きていく「香港新世代」である。華人でありながら、アイデンティティの源泉は香港にある。自分たちの運命に直接的にかかわってくるからこそ、運動に立ち上がったのである。

「雨傘革命」は、途中から「オキュパイ・ウォールストリート」系の別勢力の合流によって性格が変容していき、その結果、香港市民の支持を失って収束する。香港経済そのものを機能不全にしたのでは、一般市民の生活が成り立たなくなってしまうからだ。

日本からみれば香港も台湾もともに「対岸」であるが、けっして「対岸の火事」とみなしてはいけない。台湾だけでなく、香港もまた日本の運命にも大きな影響を及ぼす存在である。

「国家資本主義」によって、カネのチカラで自由と民主主義を抑圧する一党独裁体制の中国への抵抗である、香港と台湾の運動がもつ衝撃的な意味を日本人はきちんと受け止めなくてはならない。





目 次

序章 雨傘革命を解剖する-香港新世代のメンタリティ(遠藤誉)
第Ⅰ部 バリケードはなぜ出現したのか(遠藤誉)
 第1章 「鉄の女」サッチャーと「鋼の男」 小平の一騎打ち-イギリス植民地から中国返還へ
  1 アヘンを使って香港を奪ったイギリス
  2 新中国の誕生とイギリスの対中政策
  3 米中が接近するならイギリスも-一国二制度を準備した中国
  4 中英共同声明-地にひれ伏した美しい金髪
 第2章 香港特別行政区基本法に潜む爆薬-成立過程とからくり
  1 香港特別行政区基本法起草委員会
  2 香港人という塊の「正体」は何か?
  3 基本法はいかなる爆薬を含んでいるのか?
  4 2003年、基本法第23条-爆発した50万人抗議デモ
 第3章 チャイナ・マネーからオキュパイ論台頭まで-反愛国教育勝利の中で何が起きたのか?
  1 CEPAと「9プラス2」汎珠江デルタ大開発-チャイナ・マネーが「民心」を買う
  2 愛国論争と愛国教育導入への抗議デモ
  3 チャイナ・マネーが買った選挙委員会と長官選挙
  4 用意されていたオキュパイ論
 第4章 雨傘革命がつきつけたもの
  1 立ち上がった学生たち-デモの時系列
  2 市民がついていかなかった、もう一つの理由-チャイナ・マネーが民主を買う
  3 中国中央はどう対処したのか?
  4 世界金融界のセンターを狙う中国
  5 アジア情勢を揺さぶる新世代の本土化意識-新しいメンタリティ
  6 ジミー・ライの根性と意地
 ◆コラム 自由のないところに国際金融中心地はできない(安冨歩)
第ⅡI部 バリケードの中で人々は何を考えたのか
 第5章 香港が香港であり続けるために-香港と日本人のハーフが見た雨傘革命(伯川星矢)
  香港の未来に不安を感じている若者たち
  新旧両世代間の葛藤
  誰のためにある香港?
  若者たちの声を聞く
  私にとっての雨傘革命
第6章 最前線に立った66歳の起業家と17歳の学生(刈部謙一)
 ジミー・ライ インタビュー
 黄之峰(ジョシュア・ウォン) インタビュー
第7章 香港のゲバラに会いに行く(安冨歩)
第8章 It was not a dream-占拠79日を支えた想い(深尾葉子)
 20年目の香港へ
 返還後の香港に生まれた新たな生きざま
 運動で得たもの、失ったもの
終章 雨傘世代-バリケードは崩壊しない(遠藤誉)
あとがき 深尾葉子/遠藤誉

著者プロフィール

遠藤誉(えんどう・ほまれ)
1
941 年中国吉林省長春市生まれ。1953 年帰国。東京福祉大学国際交流センター長。筑波大学名誉教授。理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『チャイナ・セブン 〈紅い皇帝〉習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』(以上、朝日新聞出版)、『完全解読 「中国外交戦略」の狙い』(WAC)、『ネット大国中国-言論をめぐる攻防-』(岩波新書)、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』(日経BP 社)など多数。


深尾葉子(ふかお・ようこ)
1963 年大阪府生まれ。大阪外国語大学中国語専攻卒業。大阪市立大学大学院前期修了。大阪大学大学院経済学研究科准教授。修士(文学)。主な編著に『現代中国の底流』(行路社)、『満洲の成立』(名古屋大学出版会)、『黄土高原・緑を紡ぎだす人々』(風響社)、著書に『黄土高原の村――音・空間・社会』(古今書院)、『魂の脱植民地化とは何か』(青灯社)、『日本の男を喰い尽くすタガメ女の正体』『日本の社会を埋め尽くすカエル男の末路』(以上、講談社α新書)、翻訳書に『蝕まれた大地』(行路社)など。

安冨 歩(やすとみ・あゆむ)
1963 年大阪府生まれ。京都大学大学院経済学研究科修士課程修了。東京大学東洋文化研究所教授。博士(経済学)。主な著書に『原発危機と「東大話法」』『幻影からの脱出』『ジャパン・イズ・バック』(以上、明石書店)、『もう「東大話法」にはだまされない』(講談社α新書)、『生きる技法』『合理的な神秘主義』(以上、青灯社)、『ドラッカーと論語』(東洋経済新報社)、『生きるための論語』(ちくま新書)、『経済学の船出』(NTT 出版)、『生きるための経済学』(NHK ブックス)、『「満洲国」の金融』『貨幣の複雑性』(以上、創文社)など多数。


<関連サイト>

中国問題研究家 遠藤誉が斬る (連載 2013年10月2日から現在) 








近刊!『香港バリケード――若者はなぜ立ち上がったのか』 (共著者の一人である安冨歩氏のブログ掲載の記事

香港選挙制度改革案否決 香港の前途は 雨傘革命の勝利、北京支配の限界、更なる混沌へ  (福島香織、2015年6月24日)

アリババが香港英字紙買収-馬雲(ジャック・マー)と習近平の絶妙な関係(遠藤誉、「中国問題研究家・遠藤誉が斬る」Yahoo!ニューズ、2015年12月13日)

書店関係者の失踪で高まる香港自治権への不安 (The Economist、2016年1月15日)

ドキュメンタリーWAVE 「“傘兵”はどこへゆくのか~新党ブームに揺れる香港~」(BS1 2016年5月29日放送)
・・「今、香港で新政党の立ち上げブームが起きている。その中心になっているのは「傘兵」と呼ばれる30万の若者たち。一昨年、民主的な選挙制度を求めて路上を占拠し、政治に目覚めた人たちだ。彼らは、独立のために暴力も辞さない過激な「本土派」と、対話で民主主義を実現するという「民主派」の二つのグループに分かれ、9月の選挙に向けて議論が沸騰している。30万の若者たちはどんな選択をしていくのか。」

天安門から27年、香港「独立派」乱立の意味 6月4日、混乱の追悼集会で考える香港の今と未来 (福島香織、日経ビジネスオンライン、2016年6月8日)

水原希子とレオン・ダイはなぜ謝罪したのか?:垣間見えた「文革の亡霊」 (野嶋剛、フォーサイト、2016年7月22日)
・・「台湾や香港の人びとが中国に対する根源的な信頼感を失いつつある流れと軌を一にするものであり、こうした騒動が起きるたびに、かえって台湾の人々を心情的な部分での「台湾独立」へますます傾かせるのである」

香港議会、「独立派議員誕生」が意味するもの (日経ビジネスオンライン、 2016年9月7日)

香港の「反中独立派」が中国を揺さぶり始めた 香港議会選挙で反中勢力が6議席を獲得 (美根 慶樹、東洋経済オンライン、2016年9月12日)

(2015年6月24、12月15日、2016年1月15日、5月29日、6月8日、7月27日、9月7日・12日 情報追加)


<ブログ内関連記事>

遠藤誉氏の著作から

書評 『チャイナ・ギャップ-噛み合わない日中の歯車-』(遠藤誉、朝日新聞社出版、2013)-中国近現代史のなかに日中関係、米中関係を位置づけると見えてくるものとは?
・・権力を利用して蓄財したカネをマネーロンダリングしたチャイナマネーが、アングロサクソン諸国をうるおしているという実態、しょせん英米アングロサクソンの手のひらの上で踊らされているに過ぎない中国共産党の深層が明るみに出た事件

書評 『完全解読 「中国外交戦略」の狙い』(遠藤誉、WAC、2013)-中国と中国共産党を熟知しているからこそ書ける中国の外交戦略の原理原則

中国に依存する香港経済

書評 『ボルドー・バブル崩壊-高騰する「液体資産」の行方-』 (山本明彦、講談社+α新書、2009)-ボルドー・ワインにみる世界経済のいま 
・・「第4章 香港・中国は「ワインの覇者を目指す」であった。 2008年8月にスピリッツを除くワインや酒類の関税を一気にゼロにした香港は、「アジアのワイン首都」を目指しているという。すでに3年前の東京に追い付いているというから、この勢いは無視できないものがある。 香港は地理的には、シンガポール、上海、北京、東京など主要な消費地の中心に位置しており、物流網も完備、金融システムも安定しており、中国本土へのゲイトウェイである香港から関税ゼロでワインが再輸出されるからだ。 中国はワイン消費だけでなく、ワイン生産国としても大きな将来性があるというレポートがでているらしい。 まさに中国おそるべし、である。」


「一党独裁」を支えるチャイナマネー 

書評 『自由市場の終焉-国家資本主義とどう闘うか-』(イアン・ブレマー、有賀裕子訳、日本経済新聞出版社、2011)-権威主義政治体制維持のため市場を利用する国家資本主義の実態
・・一党独裁の中国は典型的な「国家資本主義」


中国民主化

天安門事件(1989年)から20年か・・

「天安門事件」から25年(2014年6月4日)-天安門は「見る」ものではなく、そこに「立つ」べきものだ


圧政に対して闘う市民

ミュージカル映画 『レ・ミゼラブル』を観てきた(2013年2月9日)-ミュージカル映画は映画館で観るに限る! ・・バリケードを構築して闘った市民たち

韓国現代史の転換点になった「光州事件」から33年-韓国映画 『光州 5・18』(2007年)を DVD でみて考えたこと(2013年5月18日) 

書評 『バンコク燃ゆ-タックシンと「タイ式」民主主義-』(柴田直治、めこん、2010)-「タイ式」民主主義の機能不全と今後の行方

『動員の革命』(津田大介)と 『中東民衆の真実』(田原 牧)で、SNS とリアル世界の「つながり」を考える


台湾人のための台湾

映画 『KANO 1931海の向こうの甲子園』(台湾、2014年)を見てきた-台湾人による台湾人のためのスポ根もの青春映画は日本人も感動させる 

書評 『新・台湾の主張』(李登輝、PHP新書、2015)-台湾と日本は運命共同体である!

(2015年10月25日、2016年7月21日 情報追加)



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2015年5月23日土曜日

「マリンフェスタ 2015 in FUNABASHI」 に行ってきた(2015年5月20日)-海上自衛隊の「掃海艦つしま」にはじめて乗船

(千葉県船橋市の京葉埠頭に停泊中の掃海艦つしま)

千葉県船橋市の京葉埠頭で開催中の「マリンフェスタ 2015 in FUNABASHI」に行ってきたというイベントに行ってきた(2015年5月20日)。

自衛隊千葉地方協力本部の主催で、「海軍記念日」(5月27日)を記念して開催されるもの。場所は東京湾岸(Tokyo Bay)の千葉側にある京葉埠頭。本日は、「天気晴朗にして、波穏やか」な東京湾。潮風が心地よい。
       
「南極観測船しらせ」(二代目)が碇泊する隣に、海上自衛隊の「掃海艦つしま」が碇泊。本日(2015年5月23日)と明日(24日)の二日間、一般公開されて無料で乗船することができる。約1時間をかけて内部を見学した。

(「つしま」艦内から見た「しらせ」)

掃海艦は、機雷の除去を任務とする艦船。「掃海艦つしま」は1991年に進水した旧型の掃海艦で、2011年には、日本のエネルギー安全保障にとって死活的な意味をもつペルシア湾にも派遣された実績をもつ。ペルシャ湾の地域大国イランが機雷を敷設する可能性がつねに存在するのである。

機雷除去という任務のため、つしまは艦全体が木造(!)である。樹齢200年から300年の米国産の松材から作られているという。日本では最大規模の木造船であろう。

艦内には当直士官たちが配置され、一般人からの質問に気軽に答えてくれる。さすがに東京湾内なので機雷除去の実演はないが、それでも実際に乗艦してみると、雰囲気を感じることはできる。

(掃海艦つしま)

海上自衛隊の掃海能力が米海軍からも高く評価されてきたことは、『海の友情-米国海軍と海上自衛隊-』( 阿川尚之、中公新書、2001)に記されている。太平洋戦争の際、米国によって日本の周囲に敷設されていた機雷の除去に、敗戦後も従事したこともあり、戦前から途切れることなく任務にあたっているのが掃海なのである。

(習志野基地に配備されている地対空ミサイルPAC-3)

このほか、航空自衛隊のパトリオット地対空ミサイル(PAC-3)などの実物が展示されていた。82式指揮通信車、LAV、偵察用オートバイ、81式短SAM、93式近SAMなど。ふだんなかなか目にすることのできない自衛隊の装備を実見できるよい機会となった。
  
売店では早くもオスプレイのおもちゃが販売されていた。米国製である。

(オスプレイのおもちゃ)

なにごとも「百聞は一見にしかず」。一般市民(シビリアン)がミリタリーを知るよい機会である。子どもたちは装備に乗って喜び、若い女性たちも多く訪れている交流イベントである。

(マリンフェスタ2015 in FUNABASHI のポスター)







<関連サイト>

自衛隊千葉地方協力本部 

「マリンフェスタ 2015 in FUNABASHI」 イベント・プログラム

イランによる「ホルムズ完全封鎖」は非現実的-掃海部隊を中東に派遣する前提に誤り (文谷数重 :軍事ライター、東洋経済オンライン、 2015年6月1日)

(2015年6月2日 情報追加)



<ブログ内関連記事>

海上自衛隊・下総航空基地開設51周年記念行事にいってきた(2010年10月3日)

祝! 海上自衛隊創設60周年-2012年10月14日の第27回海上自衛隊観艦式ポスターに書かれている「五省」(ごせい)とは?

陸上自衛隊「習志野駐屯地夏祭り」2009に足を運んでみた


海上自衛隊と米海軍の関係

「日米親善ベース歴史ツアー」に参加して米海軍横須賀基地内を見学してきた(2014年6月21日)-旧帝国海軍の「近代化遺産」と「日本におけるアメリカ」をさぐる

「YOKOSUKA軍港めぐり」クルーズに参加(2013年7月18日)-軍港クルーズと徒歩でアメリカを感じる横須賀をプチ旅行


「海洋国家・日本」

書評 『海洋国家日本の構想』(高坂正堯、中公クラシックス、2008)-国家ビジョンが不透明ないまこそ読むべき「現実主義者」による日本外交論
・・「海洋国家」日本にとっての日米安保体制の意味

マンガ 『沈黙の艦隊』(かわぐちかいじ、講談社漫画文庫、1998) 全16巻 を一気読み


巨大木造船

「夢の島」にはじめて上陸(2014年11月15日)-東京都江東区の「夢の島」に日本戦後史の縮図をみる
・・マーシャル群島で米国の水爆実験の死の灰を浴びて被爆した第五福竜丸が展示されている。第五福竜丸は総トン数140トン、全長約30メートル、高さ15メートル、幅6メートル。これだけ大きな木造船はなかなかない


しらせ

南極観測船しらせ(現在は SHIRASE 5002 船橋港)に乗船-社会貢献としてのただしいカネの使い方とは?
・・しらせは海上自衛隊の艦船である




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2015年5月21日木曜日

「第1回 国際ドローン展」に行ってきた(2015年5月20日)-百聞は一見にしかず!

   (自律制御システム研究所の大型有線給電型ドローン)

幕張メッセで本日(2015年5月20日)から3日間にわたって開催中の「第1回 国際ドローン展」に行ってみた。事前登録で入場料無料。
    
「国際ドローン展」とうたっているものの、「テクノ・フロンティア2015」というメカトロニクスとエレクトロニクス分野の要素技術と製品設計関連の展示会の一部であった。ビジネス向けの展示会である。
  
ことし2015年の5月に入ってから、政府官邸に墜落していたことがテレビ報道で大々的に取り上げられてから、日本でもドローン関連の話題が一般化しているが、この展示会は社会で話題になる前に企画されたものであろう、無人機ドローン関連の出展者数は総計50社程度と少ないが、ドローンのビジネス用途を考えるうえではおおいに参考になる。
  
上空からの観測や空撮、監視とセキュリティ、災害現場や農場でのモニターなどでの使用など、多様な用途にすでに取り組んでいる企業の出展があり、見ていてなるほどと思わされた。具体的にいえば、建設現場での活用に取り組んでいるコマツやセキュリティ関連のセコム、それに中日本高速道路などである。法規制の問題は残るが、さまざまな用途での応用が活発に検討されるようになっていることが確認できる。
   
展示会のなかで一番存在感があったのが株式会社自律制御システム研究所の展示。千葉大学の野波研究室における研究成果を商業化するために設立された大学発ベンチャーである。ミニサーベイヤーという商品名で量産化に着手している。飛行実演のデモも行われた。冒頭に掲載した写真は、大型有線給電型ドローン、かなりの大きさである。


自律制御システムのドローンは、室内やトンネル内などGPSが利用できない環境での自律飛行を可能としたことが重要だ。ドローンは基本的に GPS で位置確認し、インターネットを利用した無線によって遠隔制御を行う。これらは、いずれも米国発の軍事技術が起源であるが、その枠組みの外にある技術開発に注目すべきだろう。

いまではあたり前の情報通信技術のインターネット、衛星をつかって位置を特定する GPS(=Global Positioning System)、これらはみな米軍の軍事技術として誕生し、その後に民間に開放されてきたものだ。無人機ドローンもまたそうであり、しかも先にあげたの2つの軍事技術なくしては誕生しなかったものである。無人機そのものはハードウェアだが、無人機の運用はインターネットとGPSを統合したシステムなのである。
  

自分の仕事には直接関係がなくても、あるいはすぐにはかかわらないものであっても、話題になっているものは、自分の目で直接見て確かめるべきだろう。百聞は一見にしかず、である。






<関連サイト>

「第1回 国際ドローン展」(2015年5月20日~22日 幕張メッセ)

「ドローン 可能性と脅威のはざまで」 (NHKクローズアップ現代、2015年5月21日放送)


<ブログ内関連記事>

書評 『無人暗殺機ドローンの誕生』(リチャード・ウィッテル、赤根洋子訳、文藝春秋、2015)-無人機ドローンもまた米軍の軍事技術の民間転用である
・・インターネットとGPS、そしてその延長線上の軍事技術として開発されたドローン

書評 『21世紀の歴史-未来の人類から見た世界-』(ジャック・アタリ、林昌宏訳、作品社、2008)-12世紀からはじまった資本主義の歴史は終わるのか? 歴史を踏まえ未来から洞察する
・・プライバシーがなくなり監視がつよまる世界という未来図

法哲学者・大屋雄裕氏の 『自由とは何か』(2007年) と 『自由か、さもなくば幸福か?』(2014年)を読んで 「監視社会」 における「自由と幸福」 について考えてみる
・・ドローンの普及は、ビジネス面における利便性向上と同時に、上空からの監視の強化にもつながるであろう

(2015年5月22日 情報追加)




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2015年5月17日日曜日

「イスラム横町」に行ってみた(2015年5月17日)-東京・新大久保でハラール・フードの世界を知る

(東京・新大久保駅近くの「イスラム横町」 筆者撮影)

友人が出演している芝居を新宿のミニシアターで観劇したあと、「イスラム横町」に立ち寄ってみた。新宿・歌舞伎町から歩いて数分なのだが、JR新大久保駅周辺は歌舞伎町以上にエキゾチックな界隈である。

途中にコリアタウンがある。数年ぶりに訪れたが、韓国料理店の数は依然として多い。だが、かつてほどの賑わいが感じられないのは、韓流ブームがすでに去ってしまったからだろうか。それとも嫌韓派のデモを避けるためだろうか。

それに比べて新大久保駅周辺は、あいかわず国際的というか、それも中国大陸や朝鮮半島だけではない、イスラーム世界も含めたエキゾチックな様相を呈している。だから、歩いていて面白い。

「イスラム横町」の存在を知ったのはつい最近のことだ。ネット記事を読んで知った。これはぜひ行ってみたいものだと思ったので、新宿に用事があるついでに立ち寄ってみることとしたわけだ。

面白いことに Google Map で「イスラム横町」で検索すると、すぐに場所が表示される。ごく狭い地域に、イスラームのハラールフード関連の食材店と飲食店がある。

そのなかでもっとも有名なのがグリーン・ナスコ(Green Nasco)。JR新大久保駅改札から道路をはさんで北側に少し歩くとすぐに目に飛び込んでくる。店頭で肉の串焼を売っている。

日曜日とはいえ夕食の時間帯では込んでいるだろうと思い、それを避けるためにまずレストランに入る。4人掛けのテーブル席が6つほどあり、空いていたテーブルに座る。

こういうときにネットのブログ情報は有用だ。ブログ記事を読んで、あらかじめ食べたいと思っていたが、メニューをもらって確認してからマットン・ビリヤニ(1,000円)を注文メニューのウラはモロッコ料理で有名なクスクスである。

(ビリヤニのメニュー3種)

ビリヤニとはインドの米料理カレー味のスパイスとコメと肉などで作るものだ。この店では羊肉のマトンと鶏肉のチキン、卵の三種がある。「マットン」という表記は笑ってしまうが、mutton というつづりだから、けっして変ではない。

(マットン・ビリヤニ)

注文したら、あっというまに出てきたマットン・ビリヤニはドライカレー風でじつにうまい。マトン味がしみこんだコメ、その下に敷き詰められたマトン肉がうまい。コメはもちろん細長くてパサパサしたインディカ米である。つけあわせは、ヨーグルトにひたした野菜。

北海道を除く本州では、子ヒツジのラム肉しか流通しなくなってしまったので、羊肉のマトン料理はインドカレーを除けば、なかなか食べる機会がない。マトンを食べることができてじつにうれしい。

(コメの下にはうまいマトン肉)

この店はインド料理だが、アラブ料理もトルコ料理も扱っているので、イスラームのハラール適用である。したがって、もちろんアルコールはない。タダで飲める水があれば十分だ。

お店にも、周辺の食材店でも豊かなヒゲを蓄えたムスリム男性が店頭に立っているので、価格表示が日本円である以外は、イスラーム圏そのものである。エキゾチックというべきか。

国際化でもグローバル化でもコトバはどちらでもいいのだが、イスラーム世界もまたグローバル世界の重要な要素であることを肌で感じることのできるスポットである。「イスラム横町というネーミングもまた面白い。

タイの首都バンコクのアラブ人街と比べると、まだまだだなという印象は否定できないが、それでもこういう一角が日本全土に増えていくことは、たいへん良いことだと考えている。







<関連サイト>

新大久保にある「イスラム横丁」に行ってみた ハラル専門店が増殖しているワケ(東洋経済オンライン、2015年5月5日)

イスラム横丁の人情 (菅瀬晶子・国立民族学博物館助教、初出:毎日新聞 2014年5月8日)

ハラルフードなら新大久保「イスラム横丁」で 小さなモスクもある外国人の街 (How To Read Maps、2013年4月30日)

イスラム横丁街角食堂。「ナスコ フードコート」 (カレー細胞 -The Curry Cell-、2014年2月28日)

Nasco Halal Food (公式サイト 英語)
・・食材の写真と価格表示(日本円)が記載されている



<ブログ内関連記事>

インド文明圏とイスラーム

「ナマステ・インディア2010」(代々木公園)にいってきた & 東京ジャーミイ(="代々木上原のモスク")見学記

書評 『日本のムスリム社会』(桜井啓子、ちくま新書、2003)-共通のアイデンティティによって結ばれた「見えないネットワーク」に生きる人たち

書評 『ハビビな人々-アジア、イスラムの「お金がなくても人生を楽しむ」方法-』(中山茂大、文藝春秋社、2010)

タイのあれこれ (18) バンコクのムスリム

バンコクのアラブ人街-メディカル・ツーリズムにかんする一視点 ・・この記事では、バンコクに長期滞在しているアラブ人について書いてある。


ラムとマトンの羊肉

サッポロビール園の「ジンギスカン」を船橋で堪能する-ジンギスカンの起源は中国回族の清真料理!?

書評 『世界屠畜紀行 The World's Slaughterhouse Tour』(内澤旬子、解放出版社、2007)-食肉が解体される現場を歩いて考えた自分語り系ノンフィクション

書評 『食べてはいけない!(地球のカタチ)』(森枝卓士、白水社、2007)-「食文化」の観点からみた「食べてはいけない!」 ・・羊と羊肉についての記述がこの本にはある

フランスの童謡 「雨が降ってるよ、羊飼いさん!」(Il pleut, Il pleut, bergère)を知ってますか?





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2015年5月10日日曜日

書評 『チャイナ・セブン-<紅い皇帝>習近平-』(遠藤誉、朝日新聞出版社、2014)-"第2の毛沢東" 習近平の「最後の戦い」を内在的に理解する


「チャイナ・セブン」とは、中国共産党の最高意志決定機関である中共中央政治局常務委員のメンバー7人をさしている。本書の著者・遠藤誉氏による表現である。

もともとは「チャイナ・ナイン」だったが、習近平体制になってから2人減らし「チャイナ・セブン」となった。「反日」を前面に打ち出し、みずからのカリスマのなさを糊塗しようとした江沢民が増員して9人にしたものを、ふたたび7人に戻したのである。「チャイナ・セブン」は集団指導体制であり、かならず多数決で結論がでるよう奇数になっていることには変わりはない。

「チャイナ・セブン」による意志決定は集団指導体制によるものだが、実質的に現在の習近平体制において権力集中が進んでいるように見える。さまざまなバックグラウンドをもつメンバーによって構成されているとはいえ、それぞれが習近平に近い考えの持ち主であるためだ。個別の議案にかんしては意見が一致しないことがあっても、基本政策に異論はない

その習近平の基本政策とは、中国共産党による支配を守り抜くために、経済成長を維持しながらも腐敗を撲滅するというものである。経済成長は中国共産党が支持される唯一のレゾンデートル(=存在理由)であり、同時に腐敗が撲滅されない限り国民の不平等感は体制批判に発展しかねないからだ。

鄧小平の「改革開放」路線によって中国は、いまや米国についでGDPで世界第2位の「大国」に成長したが、「社会主義資本市場」という歪んだ体制は拝金主義を生みだし、民意をかならずしも反映しない一党独裁の体制への不満が日に日に増大している。社会のすみずみに跋扈(ばっこ)する汚職官僚に対する国民の怒りは暴動に発展することもありすさまじものがある。

鄧小平が打ち出した「先富論」は、経済成長によって先に豊かなった地域が、貧しい地域に移転してくことによって最終的にはみな豊かになるという理論であった。経済学でいう「トリクルダウン論」だが、現在明らかになったことは、先に豊かになった地域や人がさらに豊かになる一方、経済発展の遅れた地域は依然として貧しいだけでなく、国全体の経済発展の犠牲になっているという事実である。

「先富論」が前面に打ち出された結果、鄧小平のもう一つ重要な政策方針がかき消されてしまったのである。それは「共富論」である。経済学でいう所得移転、富の再分配のことであるが、「共富論」のほうは胡錦濤時代にも実現できず、習近平時代にバトンタッチされているが、いまだ実現にはほど遠い。

だからこそ、習近平は「虎も蠅も同時に叩く!」というスローガンのもとに腐敗撲滅に邁進しているのである。腐敗官僚が搾取した富を回収して、国民に再分配を図ろうとしているのである。

虎は高級官僚をさしており、蠅は日本語でいえば雑魚(ざこ)となろう。「虎も蠅も同時に叩く!」という表現だが、方法論としては、無数に存在する蠅叩きからはじめて腐敗情報を集積しながら、本丸である高級官僚まで摘発するというものだ。腐敗の温床である国有企業がらみの鉄道利権や石油利権など、つぎつぎと解体に着手するという実績をすでにあげている。つぎのターゲットは江沢民の長男がかかわる通信利権のようだ。

なぜ習近平は、腐敗撲滅という過激な政策を実行できるのか? これは習近平という人物を丁寧にたどることによって明らかになる。本書の醍醐味はまさにそこにある。「<紅い皇帝>への道」という副題のついた「第1章 延安の誓い」「第2章 雌伏のとき」「第3章 中央へ昇る」を読むと、手に取るように納得するのである。

毛澤東ともに革命戦争を戦った世代の二代目である「紅二代」(・・日本では誤解されているが「太子党」は蔑称である)であるにもかかわらず、習近平は農村に「下放」(かほう)されることになる。革命の功労者であるのにかかわらず、父親が逮捕され16年間も牢獄生活を強いられたためである。習近平の苦労は並大抵のものではない。

注目すべきことは、習近平が「下放」先として、あえて延安をみずから選んだという点だ。延安と聞いてピンとくれば、もうその時点で習近平という存在が瞬間に理解されるハズである。延安とは、中国国民党に追われた中国共産党が、「長征」とう美名のもとに行った逃避行の末にたどり着いた中国内陸部の土地のことである。中国共産党を率いた毛澤東と密接な連想を想起させる象徴的な地なのである。

習近平体制の初期の最大の事件は、 『チャイナ・ジャッジ-毛沢東になれなかった男-』(遠藤 誉、朝日新聞出版社、2012) で全面的に取り上げられている「薄熙来事件」である。「チャイナ・ナイン」入りを狙っていた薄熙来は、毛澤東のイメージを最大限につかって「大衆路線」を演出しようとしたのだが、最終的には逮捕され、その野望は挫折した。

この薄熙来もまた「紅二代」であるが、習近平と比べたら、毛澤東イメージにかんしては比較しようもない。習近平はポーズとして毛澤東イメージをつかっているのではなく、毛澤東精神の体現者といっても言い過ぎではないのである。「紅い皇帝」としては毛澤東以上かもしれないという著者の指摘には耳を傾ける必要があろう。

だが、「毛澤沢東以上の毛澤東」である習近平は、同時に「最後の毛澤東」でもある。革命第二世代としての「紅二代」が最高権力者となるのは世代的に習近平が最後であり、習近平時代に腐敗撲滅が実現できなければ、その後の体制に期待することは難しい。

腐敗撲滅に成功するかが、中国共産党が生き延びることができるかどうかのカギなのである。中国共産党=中華人民共和国である以上、中国共産党が崩壊するとき、中国もまた国家として崩壊することになる。

そういう瀬戸際にあるのが習近平体制なのである。日本からみると「反日」をはじめとする対外的な強硬路線ばかりが目につくが、国内情勢をみれば想像を絶する戦いを強いられている状態であることがわかる。まさに「内憂外患」ともいうべき状態が、いまの中国である。

「内在的理解」による習近平とその体制解読の本書は、中国情勢のみならず国際情勢理解のためにぜひ一読しておきたい。





目 次

序章 中国の苦悩-チャイナ・セブンの顔ぶれ
第1章 延安の誓い-<紅い皇帝>への道
 1. 父・習仲クンの逮捕
 2. 「私は延安の人」-「大衆路線」の原点
 3. 「皇帝」への道-その分岐点
第2章 雌伏のとき-<紅い皇帝>への道
 1. 河北省正定県での活躍
 2. 17年間もいた福建省
第3章 中央へ昇る-<紅い皇帝>への道
 1. 浙江省書記 
 2. 上海市書記
   江沢民はなぜ上海市書記にまでなれたのか
第4章 李克強と五人の男たち
 1. 李克強-「国字顔」の男
 2. 残り5人の男たち(=党内序列ナンバー3~7)
第5章 次期・次次期チャイナ・セブン候補
第6章 <紅い皇帝>は13億人をどこへ導くのか?
 1. 胡錦濤ができなかったこと-「先富」から「共富」へ
 2. 国有企業改革
 3. 国家新型城鎮化計画
 4. 外交戦略
終章 香港デモの真相-金か、人間の尊厳か


著者プロフィール

遠藤誉(えんどう・ほまれ)
1941 年中国吉林省長春市生まれ。1953 年帰国。東京福祉大学国際交流センター長。筑波大学名誉教授。理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『チャイナ・セブン 〈紅い皇帝〉習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』(以上、朝日新聞出版)、『完全解読 「中国外交戦略」の狙い』(WAC)、『ネット大国中国-言論をめぐる攻防-』(岩波新書)、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』(日経BP 社)など多数。



<関連サイト>

中国問題研究家 遠藤誉が斬る (連載 2013年10月2日から現在) 



<ブログ内関連記事>

遠藤誉氏の著作

書評 『チャイナ・ギャップ-噛み合わない日中の歯車-』(遠藤誉、朝日新聞社出版、2013)-中国近現代史のなかに日中関係、米中関係を位置づけると見えてくるものとは?

書評 『チャイナ・ジャッジ-毛沢東になれなかった男-』(遠藤 誉、朝日新聞出版社、2012)-集団指導体制の中国共産党指導部の判断基準は何であるか?



現代中国

書評 『習近平-共産中国最弱の帝王-』(矢板明夫、文藝春秋社、2012)-「共産中国最弱の帝王」とは何を意味しているのか?

書評 『中国外交の大失敗-来るべき「第二ラウンド」に日本は備えよ-』(中西輝政、PHP新書、2015)-日本が東アジア世界で生き残るためには嫌中でも媚中でもない冷徹なリアリズムが必要だ
書評 『語られざる中国の結末』(宮家邦彦、PHP新書、2013)-実務家出身の論客が考え抜いた悲観論でも希望的観測でもない複眼的な「ものの見方」
・・「中国崩壊」をシミュレーションする

書評 『中国台頭の終焉』(津上俊哉、日経プレミアムシリーズ、2013)-中国における企業経営のリアリティを熟知しているエコノミストによるきわめてまっとうな論 ・・国内の社会問題を解決できない中国に未来はあるか?

「稲盛哲学」 は 「拝金社会主義中国」を変えることができるか?

(2015年5月15日、17日 情報追加)




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