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2015年4月22日水曜日

書評 『なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか-「ニッポン大好き」の秘密を解く-』(中島恵、中公新書ラクレ、2015)-中国人の消費行動をつうじて、日本人と中国人の相互理解の道をさぐる


中国人の「爆買い」が話題になっている。とくに旧正月にあたる春節の時期がすごい。つい数年前に「反日」デモがあったことなどウソのような勢いだ。

ビジネスマンのわたしとしては、日本で湯水のようにカネを使ってくれるのはありがたいことだと考えている。「国内外需」なんていう表現も生まれているが、円安もその理由の一つだろう。なにはともあれ、日本の景気回復に大いに貢献していることは間違いない。ただし、水源などの土地の買い占めはいただけないが。

だが、中国人観光客の日本での「爆買い」の背景にある理由まで知れば、いろいろ見えてくるものがあることに気づく。

その意味で、『なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか-「ニッポン大好き」の秘密を解く-』(中島恵、中公新書ラクレ、2015)という本がじつに面白い。中国をテーマに取材するフリージャーナリストが、これまでオンラインメディアなど、さまざまな媒体に発表してきた記事を再編集して一冊にしたものだ。
  
タイトルにあるように、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」という問いがまず導入としておかれている。
     
ここでいう「日本のトイレ」とは、温水自動洗浄機能付きトイレ、つまりウォシュレットのことだ。1980年代はじめに日本で「おしりだって洗って欲しい」というコピーのCMで発売されたことが記憶にあるが、「中国人だっておしりを洗ってほしい」ということなわけだ。そりゃあ、日本人だろうがなかろうが、気持ちいいからね(笑) 

中国のトイレ事情は、1980年代前半の日本の比ではない。だから、中国人は、おカネさえあれば、日本に来てまでウォシュレットを買いたがるわけだ。
   
「●●が欲しい」のは、「●●がない」からだ。人は自分がもってないものにあこがれる。自分がもっていないものを欲しくなる。「なぜ中国人は日本の●●の虜になるのか?」という問いは、さまざまなものにもあてはまる。日本のアニメはいうまでもなく、日本ではダイソーなど「100円均一ショップ」で売っているような日用品にもあてはまるのだ。日本では当たり前のような製品が中国にはないからだ。
   
「メイド・イン・チャイナ」でも日本で売っている商品は安心して買える、「メイド・イン・ジャパン」でも中国で販売されている商品は買いたくないというのが中国人のホンネというのが面白い。それほど中国人は、中国の商売人にかんして疑心暗鬼だということなのだろう。ちなみに、「100円均一ショップ」で販売されている製品の大半は「メイド・イン・チャイナ」である。

このように、中国人が中国で生きていくということは、日本人が日本で生きていくことよりはるかに大変なことだ。GDPでは日本を抜いて世界第2位になった中国だが、一人当たりGDPでは日本にはるかに及ばない。数字以外の実質面でも、日本では当たり前の生活が中国では実現が難しい。日本人はそのことに気がついていない。
    
この本を読めば、日本人がいかにフツーの中国人を知らないかがわかる。日本人=日本政府でないのと同様、中国人=中国政府ではない。こういう当たり前のことを認識しておくことは、ビジネスに限らず相互理解にとって大事なことだ。中国人のおかれた状況を考えてみること、これもまた「複眼的思考」である。
    
この本は、日本人向けに書かれたものだが、けっして「日本ほめ」の内容ではない。ほめられてうれしいのは人間の自然な感情だが、「自分ほめ」は自信過剰や夜郎自大につながる危険がある。

日本人は自虐から尊大への振幅のブレが大きいので、自信を喪失しやすく、また自信過剰になりやすい点を認識しておくべきだろう。日本人はバランス感覚を発揮して、等身大の自分像をもつべきだという著者の主張には大いに賛同。

中国人の消費行動をつうじて、日本人と中国人の相互理解の道をさぐる内容の本。面白い読み物なので、お奨めしますよ。





目 次

プロローグ 日本のお土産、たくさん買ってきて!
第1章 日本は「暮らしGDP」世界一の大国
第2章 行列のできる中国パスポートの超不便
第3章 「一期一会」は通用しない中国人のコネ的日常
第4章 来世は日本人に生まれ変わりたい
第5章 「すきやばし次郎」は心の師匠
第6章 中国人の子育ては「孫のためなら海も越える」
第7章 病院の診察室のドアは、なぜか開けっぱなし
あとがき


著者プロフィール

中島恵(なかじま・けい)
1967年、山梨県生まれ。北京大学、香港中文大学に留学。新聞記者を経て、96年よりフリージャーナリスト。中国・香港・台湾・韓国など、主に東アジアのビジネス事情・社会事情等を新聞・雑誌、インターネット上に執筆。市井に暮らす中国人の生活に密着したていねいな取材には定評がある。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


<関連サイト>

ジャーナリスト中島恵の公式ホームページ

「爆買い」に透けて見える中国人の悩み:ジャーナリストの中島恵氏に聞く (NNA ASIA 中国、2015年4月30日)

なぜ中国人は日本で「便座」を爆買いするのか 来日して買っていく商品第3位!(中島恵、東洋経済オンライン、2015年4月22日)
・・この記事によれば、日本の量販店で中国人に売れているのはパナソニック製であってTOTOではない。パナソニック製は中国向けに開発した商品である

日本人より優雅?定年後中国人の「懐事情」爆買いする中国人はいかにして生まれたか (中島恵、東洋経済オンライン、2015年5月3日)
・・「都市部の“中間層以上、富裕層未満”の人々の実態」について

メディアが煽る「日本礼賛」ムードを中国人はどう見ているのか?(中島恵、ダイヤモンドオンライン、2015年6月4日)

日本人も銀聯カードを持つ日がやってくる? 中国銀聯幹部に「爆買い」について聞いた (武田安恵、日経ビジネスオンライン、2015年6月5日)
・・中国で普及して日本でも加盟店が増加中の「銀聯」のデビットカードの存在が、中国人の爆買いを助けている


「日本われぼめ症候群」の深層  デービッド・アトキンソン(小西美術工藝社社長) ×石倉洋子【特別対談7】 (ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー、2015年06月25日)

(2015年6月7日、7月21日 情報追加)



PS 著者のブログに「書評」のことが取り上げられています

著者の中島恵さんがご自身のブログに、この「書評」のことを取り上げてくださっています。的外れな書評ではなかったことにほっとしているとともに、著者との交流がこういう形で実現するのも、書評家冥利に尽きるというべきですね。 (2015年4月26日 記す)


PS2 おしりを水で洗う文化は中国文明ではなくインド文明

「書評記事」には書かなかったが、中国は紙でおしりを拭く文化であり、水でおしりを洗浄する文化ではない。おしりを水で洗うのはインド文明圏のインドや東南アジアである。タイでは、西洋式トイレの場合、ジェット噴射式の蛇口つきホースがトイレには備え付けられているのが標準。バンコク郊外ではいまだにバケツに水が汲んであって、自分の左手でおしりを洗うのが当たり前である。 (2015年4月26日 記す)





<ブログ内関連記事>

書評 『中国動漫新人類-日本のアニメと漫画が中国を動かす-』(遠藤 誉、日経BP社、2008)-中国に関する固定観念を一変させる可能性のある本 ・・「反日」は「反日」、日本のマンガとアニメは別格。それが中国のリアル

書評 『拝金社会主義中国』(遠藤 誉、ちくま新書、2010)-ひたすらゼニに向かって驀進する欲望全開時代の中国人

書評 『蟻族-高学歴ワーキングプアたちの群れ-』(廉 思=編、関根 謙=監訳、 勉誠出版、2010)-「大卒低所得群居集団」たちの「下から目線」による中国現代社会論 
・・この「80后」と「90后」がその中心である

書評 『中国台頭の終焉』(津上俊哉、日経プレミアムシリーズ、2013)-中国における企業経営のリアリティを熟知しているエコノミストによるきわめてまっとうな論

書評 『奪われる日本の森-外資が水資源を狙っている-』(平野秀樹/安田喜憲、新潮文庫、2012 単行本初版 2010)-目を醒ませ日本人!

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