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2015年1月24日土曜日

「ホイッスラー展」(横浜美術館)に行ってきた(2015年1月24日)-フランス人でもなく英国人でもないアメリカ人ホイッスラーの「唯美主義」と「ジャポニスム」

(ポスターより「白のシンフォニー No.3)

「ホイッスラー展」(横浜美術館)に行ってきた。日本では27年ぶり、世界でも20年ぶりとなる大回顧展とのことだ。横浜美術館の開館25周年記念とのことである。すでに京都での開催を終えて、横浜で2015年3月1日まで開催中である。

ホイスッラーといえば、ジャポニスムの画家といイメージがある。はじめてホイスッラーの絵を画集で見たのはずいぶん昔のことだが、金髪娘が着物を着てポーズしているという、いわゆるエキゾチックなものであった。だから、ホイッスラーのジャポニズムを確認したいというのが、わたしが見に行った最大の目的であった。

その意味では、「参考」としてに同時に展示されている浮世絵の数々との比較がじつに興味深く感じられた。陶磁器や扇子など日本趣味あふれる小道具を絵画のなかに配置しただけでなく、浮世絵のテーマや構図といったエッセンスを抽出し、みずからの画業に独自に応用していたことが確認できるからだ。参考として出品された浮世絵のすべてが大英博物館をはじめとするなど英国所蔵品である。

日本趣味や浮世絵からの影響というと、モネなどのフランス印象派やゴッホなどがすぐに想起されるが、アングロサクソン圏の画家であったホイスッラーもまたその一人なのであった。 

(ホイッスラーの「自画像」 1972年)

ジェイムズ・マクニール・ホイッスラー(James Abbott McNeill Whistler, 1834~1903)は、19世紀後半にロンドンとパリで活躍したアメリカ人の画家、版画家である。主にロンドンに拠点にして英仏海峡を往復していたわけである。

したがって、パリでフランス印象派の画家たちと同世代で交流もあったが、ロンドンを拠点にしていたこともあり、ラファエル前派の画家たちとも交流があった。二股というわけでもないが、フランス印象派的なアプローチだけでなく、英国の「唯美主義」(=芸術のための芸術 art for art's sake)の影響もおおいに受けていたということになる。

日本趣味というと、フランス語の「ジャポニスム」(japonisme)としてフランス印象派ばかりが語られるが、大英帝国もまた英語の「ジャパニズム」(Japanism)として日本趣味を全面的に受容したのである。

そこからホイッスラーの独自世界が生まれてくるという見方をしてもいいのではないかと思って見ても、的外れではなさそうだ。フランス人ではなく英国人でもない、アメリカ人という立ち位置。いわゆる「三点測量」の可能な立ち位置である。より大きいな影響は、同じ英語圏である英国のほうがつよいものがあったであろう。

(「白のシンフォニー No.2」 wikipediaより)

今回は20年ぶりの回顧展ということだが、「白のシンフォニー No.2:小さなホワイト・ガール」(1864年)や「ノクターン:青と金色-オールド・バターシー・ブリッジ」(1872~1875)や自画像作品を除くと、大半は版画や素描などの小品が出展品の大半を占める。

明るく華やかにみえながらも憂いを帯びた「白のシンフォニー No.2:小さなホワイト・ガール」は、モデルが団扇(うちわ)をもってので、ジャポニスムの影響はすぐにそれとわかる。

幻想的な「ノクターン:青と金色-オールド・バターシー・ブリッジ」は、その約30年ほど前に制作されている浮世絵の歌川広重の作品の影響が濃厚に反映している。構図を応用しているのだがさらにデフォルメしており、ホイッスラーの独自の絵画世界となっているといっていいだろう。

(「ノクターン:青と金色-オールド・バターシー・ブリッジ」 wikipediaより)

シンフォニーやノクターンといった音楽用語を絵画作品のタイトルに使用していることにも注目したいところだ。ホイッスラーはこう書いている。

音楽は音の詩であるように、絵画は視覚の詩である。そして、主題は音や色彩のハーモニーとは何のかかわりもないのである

主題性や物語性の否定。音楽を音楽そのものとして、絵画を絵画そのものとして、いっさい余計なものを排すべきだという「唯美主義者」として姿勢。この姿勢にもとづいた創作がホイッスラーの絵画作品の世界である。

その意味では、「ジャポニスムの画家」などという余計なレッテル張りは排して、ホイッスラーの作品を虚心坦懐に味わってみる機会としてみたらいいのではないかと思う。フランス印象派でもラファエル前派でもなく、ホイッスラーという独自な存在であるのだから。

(横浜美術館前にて)


<後記>  美術マグネットの販売がないのが残念

ただ、一点残念だったのは、絵画作品のマグネットが販売されていなかったことだ。「ひげのマグネット」のみである。美術マグネット収集家にとっては大いに不満が残った。





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