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2014年10月29日水曜日

マンガ 『レッド 1969~1972』(山本直樹、講談社、2007~2014年現在継続中)で読む、挫折期の「運動体組織」における「個と組織」のコンフリクト


『レッド 1969~1972』(山本直樹、講談社、2007~2014年現在継続中)というマンガを知ってますか? 

新左翼による「革命運動」に青春を捧げた大学生たちの生き様を描いたマンガです。単行本で、2014年10月現在で第8巻まで出版されている。

作者の山本直樹は、かつては「有害図書宣告」も受けたことのある「エロマンガ家」というラベリングもされていたが、「家族崩壊」を描いた1994年の 『ありがとう』 (・・まだまだエロの要素が濃厚)などの秀作を描いている、1960年(昭和35年)生まれの現役マンガ家だ。

日本で新左翼による「革命運動」がピークを迎えたのが、日米安保条約改定が焦点となっていた1970年、(昭和45年)。いまから44年前のこの年は、大阪万博が開催された年であり、また三島由紀夫が割腹自殺というセンセーショナルな死にかたをした年でもあった。高度成長期の末期でもある。

1960年生まれの山本直樹は、新左翼による「革命運動」を同時代として体験しているわけではない。1970年にはまだ10歳なので、おそらく小学校四年生だろう。1962年生まれのわたしにとってもまたそれは同じだ。その当時は小学校二年生、「大学というものは、ゲバ棒で殴り合いをする場所」だと思い込んでいた(笑)

その意味では、当事者によるノスタルジーでもなければ悔恨の記録でもない。後続世代による冷めた視線を感じることができるはずだ。思い入れを排した、淡々とした描写がえんえんとつづく。



運動の挫折期には「運動体組織」の問題が集中的に顕在化する

このマンガの設定は、1970年にピークを迎えた新左翼の学生運動が下火になっていった時期遅れて参加してきた大学生たちが、そのためにかえって純粋に「革命運動」にのめり込んでいく悲劇(?)を描いた作品だ。その悲劇的結末は、集団リンチ殺人事件における「総括」というコトバに集約されている。

作中の登場人物にはモデルがあるが、いずれもみな最後は逮捕か死亡という形に至ることが、あらかじめ読者には示されている。その時まで「あと××日」という記述は、物語の語りとしては異例なものだろう。

いかなる組織であれ、組織が形成される初期段階においては、なんらかの理想やミッションをもっているものだ。その段階においては、内容の是非はさておき、理想が高らかに掲げられ、理想実現のために邁進する。企業組織であればベンチャーもまた運動体組織の一種である。

だが、理想実現は並大抵のことではない。運動体組織においては、挫折が重なってくると、高らかに掲げた理想と現実のギャップは増大していく。組織に属する個人と組織とのコンフリクトが顕在化してくる。

このマンガが描いている世界は、そうした運動体組織が形骸化した理想を掲げたまま、現実に破れゆくなかで遭遇する、おぞましいばかりの結末である。開放形の組織とは異なり、閉鎖的組織であるがゆえに離脱が容易ではない状況。そういう状況がもたらすものがなにか、これがこのマンガが描く世界である。

先にも書いたように、作者もわたしも学生運動の世代ではない。あくまでも浅間山荘事件などの陰惨な内部テロ事件を、お茶の間のテレビの前で傍観していた人間だ。しかも京成電鉄沿線の住民であったわたしにとっては、成田闘争という、さらに遅れてきた過激派によるテロ行為には大いに迷惑を被ったという記憶が残る。

しかし、先入観なしで、この時代を描いたこの作品を読んでいると感じるものがある。革命のために身を挺して邁進する過激派学生たちを、真綿のように自縄自縛して締め付けていく「閉鎖的な組織」についてだ。

さらに『レッド』のテーマには、2つの異なる志向性と文化をもった組織が、規模拡大のために合併したときに発生するコンフリクトも登場する。組織どうしのコンフリクト、組織に属する個人のコンフリクト、個人どうしのコンフリクトである。「個と組織」にかかわるテーマとして、一般社会でも経験することがすくなくないはずだ。


山本直樹には『ビリーバーズ』(1999年)というマンガもある。ビリーバーとは、何かを信じこんだ人間のことである。その対象は宗教のこともあるし、あるいは実現すべきと考えている理想社会などもそれに該当する。後者の場合であっても、限りなく宗教に近い。信仰者といってもいいだろう。

『レッド』は、テーマ的には『ビリーバーズ』の延長線上にある。設定を新左翼において、エロな要素をかなり抜いたのが『レッド』だといえるだろう。

「閉鎖系の組織」について考えてみることで、逆説的にあるべき組織形態について考えてみるヒントになるかと思い、あえて誤解をおそれずに取り上げてみた。

ぜひ、このマンガを読んで、「反面教師」として読むなど、さまざまな読みかたをつうじて、いろいろ考えてみてほしいと思う。かなり特異なマンガではあるが・・・。








<ブログ内関連記事>

「高度成長」関連

沢木耕太郎の傑作ノンフィクション 『テロルの決算』 と 『危機の宰相』 で「1960年」という転換点を読む
・・1960年の社会党委員長を刺殺したテロリストは、「遅れてやってきた右翼少年」であった

書評 『高度成長-日本を変えた6000日-』(吉川洋、中公文庫、2012 初版単行本 1997)-1960年代の「高度成長」を境に日本は根底から変化した

書評 『「鉄学」概論-車窓から眺める日本近現代史-』(原 武史、新潮文庫、2011)-「高度成長期」の 1960年代前後に大きな断絶が生じた


左派による世界的な「革命幻想」の時代

映画 『バーダー・マインホフ-理想の果てに-』を見て考えたこと
・・ドイツ赤軍を描いたドイツ映画

映画 『ハンナ・アーレント』(ドイツ他、2012年)を見て考えたこと-ひさびさに岩波ホールで映画を見た
・・社会心理学者ミルグラムの「アイヒマン実験」についても解説してある

「航空科学博物館」(成田空港)にいってきた(2013年12月)-三里塚という名の土地に刻まれた歴史を知る
・・成田空港闘争の史実や反対派のヘルメットなどを展示した資料館「成田空港 空と大地の歴史館」についても紹介しておいた

書評 『革新幻想の戦後史』(竹内洋、中央公論新社、2011)-教育社会学者が「自分史」として語る「革新幻想」時代の「戦後日本」論

書評 『海洋国家日本の構想』(高坂正堯、中公クラシックス、2008)-国家ビジョンが不透明ないまこそ読むべき「現実主義者」による日本外交論
・・国際政治学者・高坂正堯が原論活動を行った時代は新左翼の全盛期。、『総括せよ!さらば革命的世代-40年前、キャンパスで何があったか』(産経新聞社取材班、2009)から高坂正堯氏にまつわるエピソードを紹介してある

(カバー画は、マンガ家・山本直樹によるもの)

自分のアタマで考え抜いて、自分のコトバで語るということ-『エリック・ホッファー自伝-構想された真実-』(中本義彦訳、作品社、2002)
・・「ホッファーの The True Believer: Thoughts on the Nature of Mass Movements (1951)であった。『大衆行動』というタイトルで翻訳されている」  「ビリーバー」(believer)の本質について

書評 『オウム真理教の精神史-ロマン主義・全体主義・原理主義-』(大田俊寛、春秋社、2011)-「近代の闇」は20世紀末の日本でオウム真理教というカルト集団に流れ込んだ

「ユートピア」は挫折する運命にある-「未来」に魅力なく、「過去」も美化できない時代を生きるということ






閉鎖的組織、閉鎖的人間集団

書評 『ドアの向こうのカルト-九歳から三五歳まで過ごした、エホバの証人の記録-』(佐藤典雅、河出書房新社、2013)-閉鎖的な小集団で過ごした25年の人生とその決別の記録

資本主義のオルタナティブ (1)-集団生活を前提にしたアーミッシュの「シンプルライフ」について

映画 『ハンナ・アーレント』(ドイツ他、2012年)を見て考えたこと-ひさびさに岩波ホールで映画を見た
・・社会心理学者ミルグラムによる「アイヒマン実験」について触れておいた。「アイヒマン実験」を世に知らしめた『服従の心理』(原題は Obedience to Authority : 権威への服従)という本は1974年に出版されている。人間というものは「権威」からの命令にはいとも簡単に従ってしまう

映画 『es(エス)』(ドイツ、2001)をDVDで初めてみた-1971年の「スタンフォード監獄実験」の映画化
・・「この映画のモデルになったのは、1971年にアメリカのスタンフォード大学で実際に行われた「監獄実験」(Stanford prison experiment)という社会心理学の実験だという。通称「アイヒマン実験」として知られる心理実験のバリエーションである」。


日本人がそのなかで生きている人間集団

書評 『「空気」と「世間」』(鴻上尚史、講談社現代新書、2009)-日本人を無意識のうちに支配する「見えざる2つのチカラ」。日本人は 「空気」 と 「世間」 にどう対応して生きるべきか?




(2012年7月3日発売の拙著です)










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