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2013年5月18日土曜日

韓国現代史の転換点になった「光州事件」から33年-韓国映画 『光州 5・18』(2007年)を DVD でみて考えたこと(2013年5月18日)


韓国現代史の転換点になった「光州事件」から33年のいま、韓国映画 『光州 5・18』(2007年)をDVDではじめてみた。

1980年5月18日から27日にかけて韓国南部の光州市でおこった、軍による一般市民に対する無差別発砲という悲劇的事件を全面的に取り上げたヒューマン・ドラマである。

この映画が製作されたのはいまから6年前の2007年。事件から27年後になる。日本で公開されたことは知らなかった。この頃は、わたしはタイにいたためだろう。

映画はもちろんドラマとして脚色はあるのだろうが、光州事件を海を挟んだ対岸の日本からマスコミ報道をつうじてリアルタムにみていたわたしにとっては、さまざまなことを思い出すことをうながす内容であった。

感動的な内容の映画だが、映画そのものについてよりも「光州事件」そのものについて書いてみたいと思う。



「光州事件」とは

わたしの脳裏には当時つかわれていた「光州事件」という名称が濃厚に刻み込まれているのだが、現在では「5.18光州民主化運動」と呼ばれているようだ。

5.18光州民主化運動は、1980年5月18日から27日にかけて大韓民国(韓国)の全羅南道の道庁所在地であった光州市で発生した、民主化を求める活動家とそれを支持する学生や市民が韓国軍と衝突し、多数の死傷者を出した事件。(wikipedia 日本語版 5.18光州民主化運動

上記のサイトに引用されているデータによれば、死者154名、行方不明70名、負傷者3,000名以上とある。かなりの規模であったことがこの数字からわかる。

だが、リアルタイムで事件の推移を知っている日本人としては、「光州事件」として濃厚に記憶に刻み込まれてるので、以下の文章では「光州事件」と記述することにする。

当時は高校三年生だったわたしにとっては、衝撃的な事件だった。日本人にとって朝鮮半島で発生する事件は他人ごとではないのは、いまもむかしも変わらない。

新聞見出しの大きさやマスコミ報道の多さによって刷りこまれているのかもしれないが、日韓の心理的な距離感はじつはきわめて近いのであろう。とくにそれが事件や動乱である場合は、つぎは日本に波及するのかという無意識に感じる不安感のあらわれかもしれないが。

1980年当時の韓国は、ちょっと前までのミャンマーと同様、軍事独裁政権によって支配された不幸な国というイメージが日本では一般的であった。いまではまったく想像できないだろうが、韓国に対する好印象などカケラもなかったのである。

そんな固定観念が支配的だったなかで起こったのが、1979年10月26日の朴正煕大統領暗殺事件である。朴大統領の暗殺によって、やっと軍事独裁政権が終わり、韓国は民主化に向かっているというムードは、韓国だけでなく日本国内にも大いにあった。ちなみに現在では韓国語読みでパク・チョンヒといっているが、当時は日本語読みでボク・セイキといっていた。

ところが「光州事件」によって楽観ムードは一気に暗転することになった。朝鮮半島情勢はめまぐるしく変化するのである。これは当時も現在も変わらない。

当時は、日本以外の東アジア諸国は、韓国も台湾も戒厳令がしかれ、中国は毛沢東が死んでからまだ数年で改革開放などまだまだ先の話であった。冷戦構造のまっただなかであり、いまからは書想像もできないが共産主義の脅威がリアルに存在した時代である。

「光州事件」から2年後のことか、大学時代の前期には寮生活をしていたのだが、隣の隣の部屋にいた韓国からの留学生から聞いた話はじつに印象深いものだった。彼は、光州事件の際にはすでに大学生であったが徴兵されており、おなじく大学生に対して発砲する側に回されていたのだという。

思えば1979年はつぎからつぎへと大事件が起こっていた。イラン革命と第二次石油ショック、朴正煕大統領暗殺、そして年末にはソ連によるアフガニスタン侵攻・・・

ちょうど就職活動をしていた1984年の9月、光州事件を武力制圧し大統領となった全斗煥(チョン・ドファン)が国賓として来日していた。暑いさなかであったが東京は厳戒態勢にあったことを思い出した。

その後、1988年にはソウルオリンピックを実現させ、韓国は軍事政権のイメージを払拭させていくのだが、光州事件以後の韓国のイメージは、大学生による民主化デモと催涙弾の応酬といった映像で埋め尽くされることになる。そんな時代であったのだ。

(韓国版ポスター)


軍が一般市民に発砲するということは・・・

この映画に限らず、韓国映画に登場する韓国軍は、いい面も悪い面もふくめて、戦前の大日本帝国陸軍をそのまま引き継いでいる印象を受ける。だが、その日本においては戦前においても国軍が一般市民に対して発砲したことはない

「二・二六事件」というクーデター鎮圧以後は、軍による治安出動は検討はされても実行に移されたことはない。治安維持法のもとにおける思想犯に対する拷問はあったが、それは軍ではなく特高という警察の一部門の権限内のことである。

幕末の戊辰戦争は旧幕府軍と新政府軍との戦争であり、明治維新後の西南戦争の終結以来、日本では内乱は存在しない。その西南戦争も旧武士階級と新政府側との戦いであり、一般市民を犠牲にしたものではなかった。

日本では五・一五事件や二・二六事件のように軍人による政治家に対するテロは存在したが、一般民衆に対する組織的な発砲はなかった。ただし、戦地においてはかならずしもそうでなかったということは、まことにもって残念で恥ずべきこととして記憶されつづけなければならない。量的規模については論争が残るにせよ。

日本の五・一五事件もそうだが、5月というのはどうも血なまぐさい連想が多い。1980年の韓国の「光州事件」、1992年のタイの「5月流血事件」、そして2010年の5月に終結したバンコク騒乱・・・。タイの「5月流血事件」は、奇しくも5月17日から19日にかけておこった事件だ。民主化をもとめた学生や一般市民に軍が発砲して300人以上の死傷者がでた事件である。

韓国もビルマもタイも、みなかつてのラテンアメリカやアフリカのような軍事政権の時代を経験してきたのである。一般市民が流した流血の犠牲が民主化を進展させたことは否定できないことだ。

と書いてきて、いま映画『レ・ミゼラブル』の市街戦のシーンを思い出したが、日本人はみずからの血を流して民主化を勝ち取ったのではないという知識人のコンプレックスが生まれるのも、ある意味では仕方がないかもしれない。

だが、日本では国軍が自国民に対して発砲したことはないという伝統、これは旧軍でも戦後の自衛隊でも一貫している。誇るべき伝統ではないだろうか。


再び映画 『光州 5・18』について

全部で121分。けっして長い映画ではない。

きわめて重いテーマを題材にした映画だが、韓国社会とはどういうものかよくわかる内容でもある。基本的に儒教をべースにしているが、キリスト教が社会にとってもつ意味の大きいこと。

この映画ではカトリック教会とその司祭が重要な役割を果たしているが、おなじ全羅南道の木浦(モッポ)出身でのちに大統領となる金大中(キム・デジュン)もカトリックであった。

さまざまな意味で、隣国をよく知るためにぜひ一度は見ることを薦めたい。そういった関心がなくても、感動的な内容の映画である。

「光州事件」の犠牲者にはこの場を借りて、あらためて哀悼の意を表したいと思う。





<関連サイト>

5·18 民主化運動の歴史的な意義(光州広域市 日本語)

1992年5月のタイの「5月流血事件」(YouTube映像)


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