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2013年4月28日日曜日

書評 『命のビザを繋いだ男-小辻節三とユダヤ難民-』(山田純大、NHK出版、2013)-忘れられた日本人がいまここに蘇える


「命のビザ」の杉原千畝(すぎはら・ちうね)がはじめて知られるようになってからどれだけの時間がたったことだろうか。

調べてみると、未亡人(再婚相手)の杉原幸子氏による 『六千人の命のビザ-ひとりの日本人外交官がユダヤ人を救った-』(朝日ソノラマ)が出版されたのが1990年、それから23年たったことになる。

わたしが Sempo Sugihara(センポ・スギハラ)という日本人の名前をはじめて知ったのは、アメリカ留学中のことだ。「ウォール・ストリート・ジャーナル」で、その聞いたことのない日本人を顕彰する広告記事をみたときだ。帰国後の1992年に杉原幸子氏の本を読んだ頃は、まだそれほど知名度は高くなかった。だが、いまでは杉原千畝の名前を聞いたことのない日本人は少ないだろう。

わたしが本書の主人公・小辻節三(こつじ・せつぞう)の名前を知ったのは大学時代のことだ。杉原千畝は知らなくても、小辻節三は著書をもつ学者であったので、限られた少数者ではあれ知る人は知っていただろう。

おそらく小辻節三がこれまで取り上げられたことがなかったのは、杉原千畝のような外交官でもなく、樋口季一郎のような陸軍中将でもなかったためだろう。生涯を信仰者として、清貧な学者として送った一民間人であった

わたしは大学学部の卒論に中世ユダヤ史を選んだことによって、小辻節三という名前とその著書 『ユダヤ民族-その四千年の歩み-』(誠信書房、1965)の存在を知った。

1980年代前半当時は、現在と違って日本語で読めるユダヤ史関連の本はきわめて少なかったが、小辻節三によるこの本はそのなかでもきわめて良心的な内容の本であった。


(『ヒブル語原典入門』 と 『ユダヤ民族』・・マイコレクションより)


『命のビザを繋いだ男-小辻節三とユダヤ難民-』は、はじめて小辻節三その人を描いたノンフィクションである。満洲国ものを描いた作品に断片的に登場するだけの小辻節三は、なぜか限られた形でしか取り上げられたことはなかった。その意味では、うれしいサプライズ・プレゼントのようなものだ。

本書は、小辻節三の存在を知ったある日本人俳優が、その跡をたどって書きあげた小辻節三のライフストーリーであり、小辻節三を追い続けた彼自身の人生の軌跡でもある。

伝記的事実は、もっぱら小辻自身が英文で出版した回顧録をベースにし、さまざまな文献や直接の聞き取りをつうじてまとめあげたものだ。小辻の回顧録 「From Tokyo to Jerusalem」 は、キリスト教からユダヤ教に改宗後の Abraham Kotusji 名で 1964年にアメリカで出版されている。

日本語では、先にふれた 『ユダヤ民族-その四千年の歩み-』の末尾に 「私の歩んだ道」 としてわずか 6ページでしか語っていない。その意味では、本書によって、はじめて小辻節三の人生が日本語で一冊の本として語られたことになる。

なお、 『ユダヤ民族-その四千年の歩み-』は、反ユダヤ主義を掲げるナチスドイツが日本国内においても脅威となりかけていた1943年(昭和18年)に、身の危険を感じながらも勇気をふるって出版した『ユダヤ民族の姿』(目黒書店)を、戦後の1965年(昭和35年)に改訂して再刊したものである。

(小辻節三の英文自伝 『東京からエルサレムへ』・・マイコレクションより )

著者は俳優を職業とする人であり、学者による研究成果ではないので、伝記的事実についてはまだまだ書きなおされなければならないことも多いだろう。だが、小辻節三という日本人を忘却のなかから呼び戻す役割を果たしていただいたことには感謝したい。

本書の前半 2/3 は小辻節三の人生を上記の英文自伝をもとに親族をふくめた生存者の聞き取りで補強したものだが、のこり 1/3 は著者自身がイスラエルにいって聞き取りによって小辻節三の足跡をたどった記録である。この記録を読むことで、著者をしてなにが本書を完成させたチカラなのかを知ることになる。著者の情熱と行動力は称賛したい。

(小辻節三とユダヤ教のラビ3人 日本にて撮影  wiki英語版より)

「命のビザ」については、ビザを発行した杉原千畝ソ連から満洲国への入国を認めたジェネラル樋口(・・そして暗黙の了解を与えた東条英機)、日本入国と出国まで尽力をつくした小辻節三とモーラルサポートを与えた満鉄時代の元上司である外相・松岡洋右これでほぼ「命のビザ」にかかわる日本人たちがつながったことになる。

神道からキリスト教をつうじてユダヤ教へ。神の道を追い求めたその生涯について、すくなくとも外面的な生涯を描くことには成功した。ユダヤ民族の運命を自ら生きることを決意したその人物の内面の精神生活を知るにはユダヤ教を内在的に理解しなくてはならないが、これは非ユダヤ教徒にはむずかしい課題だ。

小辻節三にかんしては、ほかにもまだまだ書かれるべきことは多いと思うが、こうして一冊の本として形になったことは喜ぶべきことだ。

本書がキッカケとなって、今後その人生の軌跡と成し遂げたこの日本人の存在が、さらに顕彰されることを望みたい。








目 次

はじめに
少年期、青春期の小辻
ナチスによるユダヤ人迫害
奇想天外な『河豚計画』
満州へ
小辻と松岡洋右
杉原千畝の『命のビザ』
日本にやってきたユダヤ難民
ビザ延長のための秘策
迫るナチスの影
神戸に残ったユダヤ人
反ユダヤとの戦い
再び満洲へ
ナチスドイツの崩壊
帰国
小辻を支えた妻・美禰子
改宗の旅へ
小辻の死
エルサレムへ
あとがき
参考・引用文献、資料

著者プロフィール

山田純大(やまだ・じゅんだい)
1973年生まれ。東京都出身。俳優。ハワイの中学・高校を経て、米ペパーダイン大学国際関係学部卒。1997年、NHK連続テレビ小説「あぐり」でテレビデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。

<関連サイト>

日本のユダヤ人(wikipedia日本語版)

Setsuzo Kotsuji (wikipedia英語版)


<ブログ内関連記事>

『ユダヤ教の本質』(レオ・ベック、南満州鉄道株式会社調査部特別調査班、大連、1943)-25年前に卒論を書いた際に発見した本から・・・
・・「なお、国策会社であった南満洲鉄道株式会社の調査部(いわゆる満鉄調査部)が、なぜユダヤ関係の報告書を翻訳ふくめて大連(満洲国)で多数出版しているのか、この理由についてはまた機会をあらためて、後日書いてみることとしたい。 あまりにも面白い話なのだが、このためには「満鉄」そのものと「フグ計画」(Fugu Plan)について知っておく必要がある。 キーパーソンの一人は、小辻節三(=小辻誠祐 a.k.a. Abaraham S. Kotsuji)である」。

書評 『井筒俊彦-叡知の哲学-』(若松英輔、慶應義塾大学出版会、2011)-魂の哲学者・井筒俊彦の全体像に迫るはじめての本格的評伝
・・同書の「第2章 イスラームとの邂逅 セムの子-小辻節三との邂逅」には、世界的なイスラーム哲学の権威で日本を代表する哲学者井筒俊彦が、日本を代表する旧約学者となった関根正雄とともにヘブライ語を小辻節三の私塾「聖書原典研究所」で学んだことが記されている

書評 『ノモンハン戦争-モンゴルと満洲国-』(田中克彦、岩波新書、2009)-もうひとつの「ノモンハン」-ソ連崩壊後明らかになってきたモンゴル現代史の真相
・・このブログ記事で取り上げた 『虹色のトロツキー(全8巻)』(安彦良和)に「フグ計画」の話もでてくる

書評 『指揮官の決断-満州とアッツの将軍 樋口季一郎-』(早坂 隆、文春新書、2010)
・・「ジェネラル・ヒグチといえば、「ユダヤ人を救った将軍」として知る人ぞ知る存在であったが、「ユダヤ人を救った外交官」センポ・スギハラ(杉原千畝)に比べると、日本人のあいだだけでなく、ユダヤ人のあいだでも現在の一般的な知名度は決して高くないようだ。 著者はイスラエルまででかけて、ジェネラル・ヒグチの名前が記載されているという「ゴールデン・ブック」の実物も確認している」
・・ユダヤ民族に貢献のあった人を顕彰するという、いわゆる「ゴールデンブック」に記載されていないことも原因かもしれない。それはユダヤ教徒となった小辻節三がユダヤ民族にとっての異教徒ではないからだ。

書評 『諜報の天才 杉原千畝』(白石仁章、新潮選書、2011)-インテリジェンス・オフィサーとしての杉原千畝は同盟国ドイツからも危険視されていた!

本の紹介 『ユダヤ感覚を盗め!-世界の中で、どう生き残るか-』(ハルペン・ジャック、徳間書店、1987)
・・「ちなみに「タルムード」研究がどういうものかについては、ハリウッド女優で歌手のバーブラ・ストライサンドが監督・製作・主演・歌唱のすべてを行った、1983年度のミュージカル映画作品『愛のイエントル』(Yentle)をご覧になっていただきたい」

『イスラエル』(臼杵 陽、岩波新書、2009)を中心に、現代イスラエルを解読するための三部作を紹介

書評 『ロシア革命で活躍したユダヤ人たち-帝政転覆の主役を演じた背景を探る-』(中澤孝之、角川学芸出版、2011)-ユダヤ人と社会変革は古くて新しいテーマである

書評 『ユダヤ人が語った親バカ教育のレシピ』(アンドリュー&ユキコ・サター、インデックス・コミュニケーションズ、2006 改題して 講談社+α文庫 2010)

書評 『ユダヤ人エグゼクティブ「魂の朝礼」-たった5分で生き方が変わる!-』(アラン・ルーリー、峯村利哉訳、徳間書店、2010)

書評 『日本近代史の総括-日本人とユダヤ人、民族の地政学と精神分析-』(湯浅赳男、新評論、2000)-日本と日本人は近代世界をどう生きてきたか、生きていくべきか?





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