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2013年4月22日月曜日

書評 『増補改訂版 なぜ欧米人は平気でルールを変えるのか-ルールメーキング論入門-』(青木高夫、ディスカヴァー携書、2013)-ルールは「つくる側」に回るべし!


「なぜ欧米人は平気でルールを変えるのか」という問いは、多くの日本人が日頃感じていることだろう。幕末の「開国」以来、「欧米列強」(・・アナクロだがイメージ喚起力のつよい表現だ)に苦杯をなめさせられ続けた歴史がトラウマに近いものにまでなっている。

本書の主張は、ルールは守るのは当然だが、ルールはつくる側にまわってこそ大きな利益を得ることができる、ということだ。これはスポーツだけではなくビジネスでも同じことだ。

日本人の美学を認めつつも、国際世界で勝つためにはルールは守るだけでなく、つくることによって競争環境を自社に有利に仕向けることを考慮に入れるべきことを説いている。

増補新版の「あとがき」で著者も触れているが、初版出版後の読者の反応でいちばん多かったのは、ルールとプリンシプルの違いを説明した個所であったそうだ(第1章)。わたしもこの個所がいちばん面白く感じた。

図式的にいえば、ルールは外的で他律的、プリンシプルは内的で自律的、となる(P.34)。わたし的にいえば、プリンシプルが個人の内面を律する原理原則であるとすれば、ルールはしょせん決め事に過ぎないということになる。決め事であれば、環境が変われば、それに応じて決め事も変えていかなかればならないのは当然だ。

それにしても日本には、時代遅れの規定や法律がそのまま放置されていることがあまりにも多すぎるのではないだろうか。

その理由は、著者も触れているが、法律やルールは自分たちがつくるものではなく、お上(かみ)から与えられたものを順守することだという日本人のマインドセットにある。企業社会ではコンプライアンスに法令遵守という訳語が与えられたために窮屈な空気が醸成されており、とくに大企業のビジネスパーソンは窒息状態にある。それもまた、日本人のこのマインドセットに起因するのであろう。

社会科学者の小室直樹がむかしから事あるごとに主張していたが、日本国憲法を「不磨の大典」(ふまのたいてん)のごとく、一字一句も変更をゆるさずに抱え込むなどは愚の骨頂。憲法もまたルールとしての法律であって、モーゼの十戒のような律法ではない(・・日本語では、「法律」と「律法」はまったく意味が異なる。英語では Law で同じだが)。

ビジネスの世界では「仕組み」をつくった者がいちばんうまい汁を吸う、というのは「常識」である。宝くじなども、買う立場の人間よりも売る立場で「仕切る」側にいる胴元がいちばん儲かるというのも「常識」である。

これを戦略的に行っているのがEU(欧州共同体)だ。

環境規制やISOなど厳しい規制をもうけることでビジネスをつくりだす欧州の知恵に学ぶべきだという著者の主張にも同感だ。むやみやたらに競争して疲弊することは避け、高く厳しいハードルを設けることによって「真の競争」を促すのが規制ビジネスのキモだ。その規制の胴元が欧州共同体である。

低成長時代の日本が、長らく低成長を続けている欧州の知恵に学ぶべきものは多い。今後は日本が主導してさまざまなルールを率先してつくっていくべきだろう。

副題にあるように、本書はルールメーキング論「入門」である。マインドセットについて語られるが、ルールメーキングの方法論までには言及がないので、物足りなさを感じる人も多いだろう。

まずは日本人のマインドセットを武装解除することが著者のミッションであるようだ。そのためのテキストとしては、増補改訂版が出版される意味はある。




目 次

はじめに 日本人はルールを守りすぎて、損をしていないだろうか?
第1章 なぜ私たちはルール変更を「ずるい」と思うのか?
第2章 実際に「ずるい」を味わってみる
第3章 ルールを変えれば本当に勝てるのか?
第4章 ルールがあってこそ成長する
第5章 ルール作りのプリンシプル
あとがきにかえて

著者プロフィール

青木高夫(あおき・たかお)
本田技研工業(株)勤務。HONDAでは、渉外業務において税制・通商など国内外の自動車産業に関わるルール作りに参画。海外営業時代は、豪州・英国に駐在し大洋州・中近東・北中欧での販社開発・企業合併を多国籍部門のマネジメントを通じて行う。この間、海外でのレース活動にも関与した。専修大学(大学院)にて、そうした経験を基礎として主に産業政策論を講じている。また、業務や講義に関連する欧米のビジネス書を発掘・翻訳。1956年、東京都出身(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。






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