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2013年2月14日木曜日

書評 『中国台頭の終焉』(津上俊哉、日経プレミアムシリーズ、2013)-中国における企業経営のリアリティを熟知しているエコノミストによるきわめてまっとうな論


この本は中国人こそ読むべきではないかと思う。経済大国になるという、「根拠なき過剰な自信」を背景に尊大な振る舞いの目立つ現代中国だが、本書に書かれた事実を虚心坦懐に見つめれば考えも変わってくるのではないだろうか。

きわめて冷静でロジカルな議論を虚心坦懐に読めば、読者は著者の結論を受け入れることをためらうことはないだろう。

日本でも中国でも、一般人の認識として実感されるまでかなりのタイムラグがあるだろうが、認識が共有されるようになった暁には、双方ともに、大きな失望と不安(・・あるいはその逆の感想)が顕在化することとなることは間違いない。それも今後数年のあいだに起る可能性があるのだ。今後の見通しが根底から覆されることになりかねないからだ。

本書は、中国経済がかかえる問題を、短期・中期・長期で整理し、課題解決の可能性とその困難さについて書かれたものだ。報告書のように理路整然と書かれているので、まずは「目次」を見ておくと、本書の内容を直観的に把握できるだろう。

第1章 中国は5年前には中成長モードに入っていた
第2章 「4兆元投資」の後遺症(短期問題)
第3章 中期的な経済成長を阻むもの-「国家資本主義」と「国進民退」
第4章 新政権の課題 (1)-国家資本主義を再逆転
第5章 新政権の課題 (2)-成長の富を民に還元(還富于民)
第6章 民営経済の退潮-投資家の体験談
第7章 新政権の課題 (3)-都市・農村二元構造問題の解決
第8章 少子高齢化(長期問題)-「未富先老」
第9章 中国がGDPで米国を抜く日は来ない
第10章 東アジアの不透明な将来

2020年でも米国のGDPのせいぜい2/3止まり一人当たりGDPでは遠く及ばないというのが著者の結論である。今後もせいぜい 5%成長がいいところだが、それさえ可能性に過ぎないというのは、思いきった発言というべきだろう。中国経済の成長による大国化は幻想として終わるであろうということだ。

なんといっても人口問題からみた将来の中国は驚くほかない。一人っ子政策批判がタブーの空気が醸成されている中国であるが、出生率はついに、なんと 1.18(!) となっているのである! 1.39 の日本や 1.22 の韓国より低い数値である! 1.15 のシンガポールいよりは若干高いが・・。いわゆる黒孩子(ヘイハイズ)という非嫡出子を含めても、せいぜい総人口の 1~2割増しだろうし、北京や上海などの大都市部はなんと1.0 以下なのだ.。

開発経済学の分野ではすでに常識となっている「人口ボーナス」の議論によれば、中国は生産人口拡大という「人口ボーナス」を十分に享受できないまま終焉するだけでなく、「人口オーナス」という形の逆ギアが入るのもそう遠くないのである。

日本はいちはやく生産人口の減少により経済が減速しているが、それでも「人口ボーナス」をうまくい活用できたので先進国となることができた。しかし中国は、1人当たりGDPが先進国の水準に達する前に、生産年齢人口の急減と急速な少子高齢化を経験する国になるのである。

しかも、少子高齢化だけでなく、人口減少がはじまるのである。人口減少がはじまるともはや止めようがないのは日本人ならかなり以前から実感していることだが、中国も遠からずそれが顕在化するのだ。社会保障もほとんど整備されていない状況、中国は国力を維持していくのも難しくなる。

著者は、中国経済の最大の問題は官民格差であるとする。官に蓄積される富、分配の不公平がマクロ的な意味での大問題であるが、それをミクロの面でみれば国営企業が民間企業を圧迫している状態であり、外資系企業だけでなく中国の企業にとっても、自由な企業活動には適さない環境であることを意味している。

たしかに中国発の著名企業といえば、アリババやホワウェイ、ハイアールなど数社しか思い浮かばない。それ以外の大半はドメスティックな国営企業である。これは、米国や日本など資本主義国とのきわだった違いであり、東南アジアとも大いに異なるのである。

著者は経済産業省出身で北京で経済アタッシェも経験しているエコノミストだが、退官後に中国における企業経営のリアリティを熟知しているだけに説得力はきわめて高い。マクロだけでなく、ミクロの状況に通じているのは、並みのエコノミストは大きく異なるアドバンテージである。

「歴史のトラウマ=途上国意識」、「都市と農村の二元問題」、「官製資本主義の増殖」、「漢奸タブー」、「人口減少・超高齢化」など7つの壁に直面している中国でいま進行しているのは後退する民間活力であり、それは経済成長に慢心していた中国共産党の失策であったといえよう。

経済学の常識的理解があるビジネスパーソンなら十分に読みこなせる内容である。本書に書かれたインパクトをどう評価し、自分の活動に反映させていくかは読者の課題である。ぜひ読むことをすすめたい。





目 次

はじめに
第1章 中国は5年前には中成長モードに入っていた
第2章 「4兆元投資」の後遺症(短期問題)
第3章 中期的な経済成長を阻むもの-「国家資本主義」と「国進民退」
第4章 新政権の課題 (1)-国家資本主義を再逆転
第5章 新政権の課題 (2)-成長の富を民に還元(還富于民)
第6章 民営経済の退潮-投資家の体験談
第7章 新政権の課題 (3)-都市・農村二元構造問題の解決
第8章 少子高齢化(長期問題)-「未富先老」
第9章 中国がGDPで米国を抜く日は来ない
第10章 東アジアの不透明な将来
結び


著者プロフィール   

津上俊哉(つがみ・としや)
現代中国研究家、津上工作室代表。1957年生まれ。東京大学法学部卒業。通商産業省入省。中国日本大使館経済部参事官、通商政策局北東アジア課長、経済産業研究所上席研究員などを歴任後、東亜キャピタル株式会社社長を経て現職。著書に『中国台頭』(サントリー学芸賞受賞)等がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



<関連サイト>

中国は先進国になれない The End of Chinese Growth 最大の強みだった豊富な労働力は過去のもの。巨大な成長マシンが一気に崩れる意外な理由とは(ニューズウィーク日本版 2012年01月05日)・・「真の豊かさを達成する前に人口が減り始める衝撃の大きさは、前例がないだけにはっきりとは分からない。だが、先進国の仲間入りも時間の問題と思われてきたアジアの超大国のイメージは、少なくとも下方修正する必要があるだろう」。

In China, an Unprecedented Demographic Problem Takes Shape(Analysis AUGUST 21, 2013  Stratfor)
・・中華人民共和国教育部の発表によれば、2012年には中国全土で 13,600 の小学校が廃校になったという。急速に人口減少が進行している実態

中国は「7%成長」公約を放棄せよ 迫り来るバランスシート危機 (津上俊哉、ダイヤモンドオンライン特別レポート、2014年2月28日)

上記の「特別レポート」の詳しい内容は著者の最新刊 『中国停滞の核心』( 津上俊哉、文春新書、2014)を参照。



目 次

序章 瀬戸際の中国経済
第1章 「7%成長」のまやかし
第2章 「三中全会」への期待と現実
第3章 これが三中全会決定の盲点だ
第4章 「中国経済崩壊」は本当か
第5章 「経路依存性」との闘い
第6章 危機が押し上げた指導者・習近平
第7章 米中から見た新たな世界-二冊の本を読んで
第8章 「ポスト・中国バブル」期の米中日関係
第9章 中国「防空識別圏」問題の出来
第10章 安倍総理の靖国参拝
第11章 中国「大国アイデンティティ」の向かう先
第12章 当面の日中関係に関する提案-尖閣問題に関する私的な提言


<関連サイト>

Urbanization and Demographics Could Skew China's Economic Rebalancing (Stratfor, Analysis SEPTEMBER 3, 2014)
・・都市化と少子高齢化という人口問題の観点から中国経済と政治についての展望を行うインテリジェンス記事



<ブログ内関連記事>

書評 『誰も語らなかったアジアの見えないリスク-痛い目に遭う前に読む本-』(越 純一郎=編著、日刊工業新聞、2012)-「アウェイ」でのビジネスはチャンスも大きいがリスクも高い

書評 『中国ビジネスの崩壊-未曾有のチャイナリスクに襲われる日本企業-』(青木直人、宝島社、2012)-はじめて海外進出する中堅中小企業は東南アジアを目指せ!

「脱・中国」に舵を切るときが来た!-『中国がなくても、日本経済はまったく心配ない!』(三橋貴明、ワック、2010)はすでに2年間に出版されている

書評 『中国の次のアジア(日経BPムック)』(日経ビジネス=編集、日経ビジネス、2012)-アジアの中心は東南アジア、南アジアへシフトしていく

書評 『中国は東アジアをどう変えるか-21世紀の新地域システム-』 (白石 隆 / ハウ・カロライン、中公新書、2012)-「アングロ・チャイニーズ」がスタンダードとなりつつあるという認識に注目!

書評 『中国バブル崩壊』(日本経済新聞社編、日経プレミアシリーズ、2015)-現在進行形の事象を整理するために有用な本

(2016年7月11日 情報追加)



(2012年7月3日発売の拙著です)





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