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2012年12月20日木曜日

書評『修羅場の経営責任-今、明かされる「山一・長銀破綻」の真実-』 (国広 正、文春新書、2011)ー 山一と長銀、このふたつの「事件」が明らかにする「法的責任」と「経営責任」の違い


1997年の山一証券破綻、翌年1998年の長銀破綻からすでに15年。

その間に「3-11」という巨大な災害を体験したわたしたちは、すでに4年前の「リーマンショック」ですら、遠い過去のように感じてしまう。

山一証券破綻や日本長期信用銀行(=長銀)破綻という「事件」は、すでに20世紀日本金融史のヒトコマとなってしまっているかもしれないが、本書によって、その最後まで見届ける必要がある。それは、わたしが元長銀関係者というからだけではない。

2012年に発覚したオリンパスの「飛ばし」による粉飾決算などを見ていると、山一の事件は既視感にとらわれる思いがする。「飛ばし」もまた需要サイドがいるからこそ供給されるという経済法則を考えると、一方的に証券会社の責任に帰すことができないのではないか。本書が、そのように再考するキッカケになることを望みたい。

長銀事件は、厚労省事件における「検察不信」も、「国策捜査」なるコトバが世に知れ渡る以前の「事件」であった。「国策調査」とは、元外交官の佐藤優氏の著作によって世の中にしられるようになったコトバである。

裁判というものは、裁判官と検察と弁護士(・・これにくわえて立場は分かれるが法律学者も)という法律のプロどうしの戦いであるだけではない。裁判所と検察という官僚機構の背後にある国家、そしてそれを下支えする大手マスコミと、民間企業の経営者という民間人との「正義をめぐる戦い」でもある。

2012年現在から振り返れば、無罪を立証するまでのプロセスがいかに困難を極めたかは想像に難くない。長銀の経営者たちが最高裁で無罪が確定したことは、「法治国家」としての最低ラインは死守できたというべきであろうか。

本書で逆説的に明らかになるのは、「法的責任」とは性格をまったく異にする「経営責任」を明らかにすることの重要性についてである。失敗原因の追及と法的責任の追及は峻別しなくてはならないのだ。

山一にかんしては、若き日の著者は弁護士として「社内調査委員会」にかかわることとなった。現在の「第三者委員会」の原型である。山一にひきつづいて長銀に関与することになった著者は、刑事事件の被告とされた破綻当時の経営陣の一人の弁護団長として最高裁の無罪判決まで伴走することとなった。

本書に描かれた世界を過去の話と一蹴してしまう前に、その後の法改正や一般国民の裁判やマスコミ観に変化を与える端緒ともなった事件として、貴重な教訓を読み取りたいものである。


(注)amazonレビューとして 2012年4月4日に投稿した文章に加筆修正を行った。





目 次

まえがき
第1章 山一證券破綻と社内調査委員会
第2章 長銀破綻と国策捜査との闘い
第3章 「企業の社会的責任」を果たす「前向きの責任論」
あとがき-「経営責任」とは、どういうことか

著者プロフィール  

国広 正(くにひろ・ただし)
1955年大分県生まれ。東京大学法学部卒業。弁護士(国広総合法律事務所)。専門分野は、企業の危機管理(プレス対応を含むクライシスマネジメントの立案・実行、重大案件の社内調査)、リスク管理体制構築(コンプライアンス、内部統制、コーポレートガバナンス)、会社法・金融商品取引法分野の訴訟(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



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書評 『マネーの公理-スイスの銀行家に学ぶ儲けのルール-』(マックス・ギュンター、マックス・ギュンター、林 康史=監訳、石川由美子訳、日経BP社、2005)・・「■スイスの銀行家の「したたかさ」について」という項目で、1998年にUBSとアライアンス(提携)を結んだ「末期の長銀」について回顧した文章を書いている。なお、「長銀破綻」関連書籍については、上記のブログ記事を参照されたい。





(2012年7月3日発売の拙著です)





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