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2011年6月17日金曜日

特別展 「五百羅漢 ー 増上寺秘蔵の仏画 幕末の絵師・狩野一信」 にいってきた(2011年6月16日)


 これはスゴイ。これがいつわらざる感想だ。もう一度くりかえすが、これはスゴイ。この特別展を見逃してはいけない!

 法然上人八百年御忌奉賛 特別展「五百羅漢-増上寺秘蔵の仏画 幕末の絵師 狩野一信」のことである。江戸東京博物館(両国)での開催だ。

日時: 2011年4月9日~7月3日(「3-11」の影響で会期変更)
場所: 江戸東京博物館
主催: 公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都江戸東京博物館、大本山増上寺、日本経済新聞社
監修: 山下裕二(明治学院大学教授)
企画協力: 浅野研究所
http://500rakan.exhn.jp/top.html

 昨日(2011年6月16日)、所要のついでに江戸東京博物館に立ち寄って、この特別展をみてきた。


そもそも五百羅漢(ごひゃく・らかん)とは?

 五百羅漢といえば、関東の人間なら、まずなによりも川越の五百羅漢を思い出すことだろう。埼玉県川越市にある喜多院の五百羅漢の石像は有名である。川越は、江戸時代の町並みを現在まで保存した「小江戸」の風情を残した町である。東京都心からはちょっとした小旅行にはもってこいの場所だ。

 その川越の喜多院にあるのが五百羅漢。羅漢さんの石像が500体、しかもどれひとるとして同じ表情をしたものはないという・・だ。しかもその五百羅漢のなかには、かならず自分とよく似た羅漢さんがいるといわれるほど・・なのだ。五百羅漢の画像は、wikipedia の喜多院の項目を参照されたい。

 わたしは、大学時代は東京都小平市に住んでいたので、いちどだけだが川越を訪れて五百羅漢を見てきたことがある。小平からだと埼玉県との県境は近いので、それほど遠いという感じではない。

 ところで、羅漢(らかん)は正式には阿羅漢(あらかん)、サンスクリット語のアルハット(arhat)の漢字表記。wikipedia にはこうある。

元々、インドの宗教一般で「尊敬されるべき修行者」をこのように呼んだ。
中国・日本では仏法を護持することを誓った16人の弟子を十六羅漢と呼び尊崇した。また、第1回の仏典編集(結集(けつじゅう))に集まった500人の弟子を五百羅漢と称して尊敬することも盛んであった。ことに禅宗では阿羅漢である摩訶迦葉に釈迦の正法が直伝されたことを重視して、釈迦の弟子たちの修行の姿が理想化され、五百羅漢図や羅漢像が作られ、正法護持の祈願の対象となった。

 そういえば、『阿羅漢』というタイトルの少林寺拳法ものの香港映画にあったような? 

 さいきんだと「アラカン」といえばアラウンド還暦を略して「アラ還」、50歳台後半から60最大前半の人を指しているようである。以前ならアラカンといえば、 嵐寛壽郎(あらし・かんじゅうろう)のことをさしていたようなので、ときどき世代の異なった人どうしでは、話がチグハグになることがある。

 余計な話をしてしまった、本題に戻ろう。


特別展「五百羅漢」の見どころ

 今回の特別展は、法然上人八百年御忌奉賛とあるように、法然上人ゆかりの浄土宗総本山増上寺(東京・芝)に秘蔵の仏画を一挙展示したものだ。

増上寺は、関東大震災と空襲によって焼け落ちたが、「五百羅漢図」をふくめた寺宝は焼失することなく、現在まで保存することができたという。そのなかの一つが、今回はじめて一挙公開された「五百羅漢図 全100幅」なのだ。掛け軸として装丁されているので「幅」という単位をつかう。

 狩野派の最後を飾る幕末の絵師・狩野一信(かのう・かずのぶ 1816~1863)は、1970年代に再発見されて、現在の日本では人気の高い曾我蕭白(そが・しょうはく)や、さきに大規模な里帰り展が実施されて根強い人気をほこる伊藤若沖(いとう・じゃくちゅう)とならんで、今後の人気を集めること間違いなし(!)の絵師である。

 つまるところ、狩野一信の仏画は、まったく現代的なのだ。いや、現代人の眼が欲しているというか、明治から昭和にかけてひた走りに走ってきた「近代日本」が終わって、ようやくわれわれの視野に入ってきた存在だといえるかもしれない。

 中国風にインドを描いたらこうなる(?)といったエキゾチズム追求のようにみえて、かならずしもそうではない。画題が要求する、奇妙きてれつな画風という捉え方もあろう。とくに「六道地獄」は最高だ。どうも地獄というものは、洋の東西を問わず、アーチストのイマジネーションを最高に刺激するもののようだ。



 何といっても不思議感がつよいのは「神通」(じんつう)。神通力(じんつうりき)の神通のことだが、超能力やテレパシーといったものを見える化した図像表現の数々だ。多宝塔や鏡から発せられる光線は、ウルトラマンのスペシウム光線のようなもの。

 上掲の写真は、購入したワッペン型磁石に採用された図柄だ。羅漢のひとりがかかえた鏡のなかに写っているのはお釈迦様の頭部。鏡の周囲に後光(ハロー)のような光線が放射状に拡散、それをみる者がおそれいりましたといいう表情で描かれている。

 仏教のありがたい教えが可視光線として、目に見える形で大きな影響を与える図像。鬼や悪魔がひれ服すさまを描いたものは、民衆教化という目的にはピッタリ。なにかしらキリスト教世界のイコンを想起するものがあって不思議な感覚を覚えるのだ。あるいは、フランスの近代画家ギュスターヴ・モローの「サロメ」にも似ている。後光をはなつヨハネの首に似ている。まあ、このモローの絵も、宗教絵画の流れのなかにあるのだが。

 このほか、アニメのように、顔の皮をビリビリとはがしながらほんとうの姿をみせる不動明王や観音など(・・下図参照)、不思議感にみちみちた仏画がつぎからつぎへと並んでいる。

 全体的に、構図といい筆力といい、予備知識がなくても見たら圧倒されるし、思わず細部をのぞきき込みたくなるような緻密さも兼ね備えた一級の作品である。仏教の信仰と知識があれば言うことないが、かならずしもそれは必要ない。これでもか、これでもか、と過剰に迫ってくるこれら仏画は、日本のバロックといってもいいかもしれない。

 わたしにとって狩野一信の作品は、見るのは今回が初めてだ。狩野一信という絵師の存在だけでなく、精魂傾けて描いた「五百羅漢図」が増上寺に所蔵されていたということすら知らなかった。この展覧会の存在をしったのも、ある意味では仏縁といえるだろうか。

 今回の展示には、増上寺のために作成した「五百羅漢図」と平行して、成田新勝寺もために作成された仏壁画も展示されている。これまた成田山新勝寺との縁も感じて感慨深い。

 狩野一信は、全100幅の完成まであと4幅をのこして画家は力尽きて病に斃(たお)れ、けっきょく完成を見ることはなかったという。のこり 4幅は、妻の妙安と弟子によって作成されたのだが、あきらかにパワーを感じることができないものになっている。

 見どころについては、今回の特別展の監修を行った山下裕二氏が解説したビデオが、特別展「五百羅漢-増上寺秘蔵の仏画  幕末の絵師 狩野一信」のサイトにアップされているので、行かれる前に見ておくとよいと思う。22分強でやや長いが、見ておく価値は十分にある。会場でもビデオは流されている。



 できれば会場で図録(税込み2,300円)も購入しておくことをすすめたい。貴重な図録というだけでなく、現代人の眼からみても、またあらたなイマジネーションをかき立ててくれるものであるからだ。

 日本には、ほんとうにすごいものが、まだまだ埋もれているのだなあという感想をもつのは、わたしだけではないはずだ。

 最後にまた繰り返すが、これはスゴイ。
 この特別展を見逃してはいけない!


両国駅と江戸東京博物館

 江戸東京博物館は、じつは訪れたのは今回がはじめて。特別展じたい、所要のついでに時間をつくって立ち寄ったのだが、博物館のある両国駅は、地下鉄都営大江戸線の開通によってずいぶん接続がよくなった。開通してからだいぶたつが、大江戸線を利用して両国にいったのは初めてである。

 両国は、国技館が蔵前から戻ってきてから、ふたたび両国国技館という形でセットにして記憶されるようになったが、かつては総武本線を経由した房総半島(内房線と外房線)と潮来方面行きの特急列車の始発駅としての意味をもっていた駅である。

 東京の都市計画はパリなどの欧州都市をモデルにしていたため、中長距離列車の出発駅は分散していたのだった。東北方面の長距離列車は上野駅、信州方面の中長距離列車は新宿駅、東海道方面の中距離列車は品川駅がそれぞれ始発駅だった。これらの駅をつなぐために敷かれたのが環状線である山手線。

 ネットワークの観点からは、すべてが東京始発になると利便性が増すが、駅ごとの個性や風情が喪失してしまったのは寂しいことである。

 国技館は JR駅の真ん前。江戸東京博物館も JR駅からは目の前なのだが、ぐるっとまわっていくことになるので 3~5分ほどかかる。地下鉄都営大江戸線の両国駅はすぐ近くである。

 両国駅からは東京スカイツリーも近い。両国駅のかつての風情はなくなりつつあるとがいえ、墨田区のあらたな魅力づくりによって、新生しつつあるといえるかもしれない。
 
 両国にとっては、あとはスキャンダルに揺れる大相撲が、一日も早く正常化することが求められていることだろう。

 江戸東京博物館はミュージアムショプが充実しているのがすばらしい。江戸がらみのおもちゃなど多数あるので、時間とおカネに恵まれたひとは、じくりと見て回る価値があるということを付け加えておこう。




<関連サイト>

特別展「五百羅漢-増上寺秘蔵の仏画  幕末の絵師 狩野一信」(公式サイト)

江戸東京博物館(公式サイト)



<ブログ内関連記事>

書評『近世の仏教-華ひらく思想と文化-(歴史文化ライブラリー)』(末木文美士、吉川弘文館、2010)
・・狩野一信をより深く知るために、江戸時代の仏教の知識を与えてくれる本

成田山新勝寺「断食参籠(さんろう)修行」(三泊四日)体験記 (総目次)
・真言宗の新勝寺、お不動さん(=不動尊)信仰、護摩、成田山と増上寺をつなぐのは祐天上人(1637~1718)

書評『HELL <地獄の歩き方> タイランド編』 (都築響一、洋泉社、2010)・・上座仏教の地獄ジオラマなどなど極彩色の世界

書評『若冲になったアメリカ人-ジョー・D・プライス物語-』(ジョー・D・プライス、 山下裕二=インタビュアー、小学館、2007)
・・伊藤若沖に惚れ込んでコレクションをつくりあげた米国の実業家ブライス氏。彼の収集のおかげで、われわれは伊藤若沖を再発見することができたのだ。ブライス氏に感謝!

書評『日本文明圏の覚醒』(古田博司、筑摩書房、2010)
・・近代のくびきを離れたいま、ようやく江戸時代のほんとうの姿がわれわれに見えるようになってきた


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