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2011年5月19日木曜日

「バンコク騒乱」から1周年(2011年5月19日)-書評 『イサーン-目撃したバンコク解放区-』(三留理男、毎日新聞社、2010)


政治的権利に目覚め、声を上げだしたタイ東北部の農民たちの素顔に迫る写真集

 長年にわたって、とくにアジアの社会問題の現実を撮ってきた報道写真家の最新写真集。今年72歳のベテラン報道写真家が最前線で取材を行った「解放区」とは、2010年3月から5月まで2ヶ月以上にわたって続いた、バンコクの中心部に「赤シャツ隊」が作って籠城したバリケードの内側のことである。

 「赤シャツ隊」の中心は、かつての学生運動のように学生や労働者ではなく、政治的な権利に目覚め、自らの声をもつようになった農民たち、それもタイ東北部イサーンの農民たちである。著者は、写真撮影とともに、彼らの声を直接聞き取っている。

 イサーンといってもタイ通でなければピンとこないかもしれないが、かつての日本の東北地方と同様に、独自の文化をもちながらも首都バンコクを中心とする中央集権体制のもとで差別され、貧困に苦しんできた地域である。

 「バンコク騒乱」は、最終的には治安部隊の突入によって「解放区」が強制排除され、農民たちはイサーンに戻ることとなった。激しい銃撃戦の模様や、騒乱末期に放火されて焼け落ちた中心街の百貨店の映像は YouTube などで見ることができるが、放火や銃撃戦は実は農民ではなく、潜入していたテロリストが行ったものだという説もある。その意味でも、農民たちがほんとうに訴えたかったことを取り上げたことに、この写真集の価値があるといえる。

 なによりも圧巻は、5月13日のタクシン派のカティヤ陸軍少将の取材中に、著者の 50cm 先でインタビューに答えていた将軍が、スナイパーの狙撃によって額を打ち抜かれた現場に居合わせた際の写真だろう。防弾チョッキを着用しないポリシーをもつ著者は、その直後発生した銃撃戦のなか、かろうじて生きのびることができたことは報道されていたとおりだ。その際のインタビューの写真も収録されている。

 この作品集は、「バンコク騒乱」の背景にある構造的な社会問題、すなわちタイ東北部イサーンの貧困の現実について、1973年の学生叛乱と鎮圧後にイサーンの森に逃げた学生運動家たち、またこのほかタイの華僑華人とタクシンもその一人である客家(ハッカ)の故郷など、著者が過去に撮影してきた写真もあわせて収録して、タイが抱える問題の背景まで写真で説明している。

 政治家レベルの話ではなく、あくまでも民衆の視線から、写真で切り取ったタイの現実。こういう視線は日々の報道に終始しているマスコミには残念ながら欠けているものだ。

 まずは直接この写真集を手にとって、著者が生命を賭けて撮影してきた写真を眺めて考えてみるべきであろう。タイが抱える社会問題を知る一つの手がかりになるはずだ。


<初出情報>

■bk1書評「政治的権利に目覚め、声を上げだしたタイ東北部の農民たちの素顔に迫る写真集」投稿掲載(2010年12月1日)
■amazon 書評「政治的権利に目覚め、声を上げだしたタイ東北部の農民たちの素顔に迫る写真集」投稿掲載(2010年12月1日)





目 次

ゴザと竹やりの解放区
カティヤ少将の暗殺
91人の死者
イサーン地方とは
バンコクのスラム
学生革命と「血の水曜日」-タイ民主化の源流
森に入った学生
山岳少数民族
歓楽街パッポン、タニヤ
南部の町
タイの華僑


著者プロフィール

三留理男(みとめ・ただお)

1938年生まれ。報道写真家。日本大学藝術学部中退。在学中に写真集『小児マヒの記録』(法政大学出版局、1961)を発表。以後、アジア・アフリカを中心に取材を続け、1982年『国境を越えた子供たち』(集英社)をはじめとする一連の作品によって第三世界の国境線上の状況を広く伝えたことで「第1回土門拳賞」を受賞。1988年、長期にわたるアジア・アフリカ取材活動に対して「第4回アジア・アフリカ賞」受賞。1997年、『辺境の民 アジアの近代化と少数民族』(弘文堂)で「第9回アジア・太平洋賞特別賞」を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



<書評への付記>

 イサーンはタイの東北地方!

 歴史は古いのに、中央集権国家体制のもと、つねに抑圧されてきた存在は、日本の東北地方と似ている。

 タイの北部から、東北部にかけては、じつは現在のラオスと同じくラオ系なのである。余談だが、タイ北部のチェンマイには日本人好みの色白美人が多いといわれるのは理由があるのだ。

 単純な階級問題ではなく、身分差別の問題であり、地域差別の問題でもある。
 

 参考までに、twitter 投稿文章を再録して、一年前の再現しておこう。

2010年05月19日(水)
ソース取得:
バンコク情勢・・現地時間午前6時(=日本時間午前8時)、ついに強制排除が始まったようだ。
posted at 08:28:03

2010年5月19日(水)
タイ情勢について:バンコク市内の強制排除は本日完了したが、暴徒が各地に散らばって収拾がつかないとの報道。英語報道も、日本語報道も、「赤服組」内部に潜入していた"テロリスト"(外人傭兵)の存在に言及しないのはバイアス報道だという声がタイ国内であがっているようだ。
posted at 22:20:29

2010年05月20日(木)
【タイ】夜間外出禁止令を発令:各地で暴動、火災が発生 NNA・・・ビジネスに与える悪影響は計り知れない。クライシス・マネジメントの必要性をあらためて痛感 http://news.nna.jp/free/news/20100520thb002A.html
posted at 07:52:34

 バンコク市内は平穏を取り戻しているが、タイ王国がかかえる問題は依然として解決しているわけではない。その一方で経済は拡大傾向にある。これがさらなる社会矛盾の拡大を招いている点も否定できない。

 今年(2011年)7月にはタイでは総選挙が行われることが確実になった。つぎの政権は、真に民意を反映したものとなるであろうか?



<関連サイト>

バンコク反政府デモから1年: 日系企業、被害と再起 (NNA 2011年5月19日)


<ブログ内関連記事>

「バンコク騒乱」について-アジアビジネスにおける「クライシス・マネジメント」(危機管理)の重要性

「タイ・フェスティバル2010」 が開催された東京 と「封鎖エリア」で市街戦がつづく騒乱のバンコク

書評 『タイ-中進国の模索-』(末廣 昭、岩波新書、2009)
・・<書評への付記>にもかなり書き込んでおいた

書評 『バンコク燃ゆ-タックシンと「タイ式」民主主義-』(柴田直治、めこん、2010)

「タイのあれこれ」 全26回+番外編・・随時増補中




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