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2011年2月9日水曜日

ダイアローグ(=対話)を重視した「ソクラテス・メソッド」の本質は、一対一の対話経験を集団のなかで学びを共有するファシリテーションにある


 ETVの番組「ハーバード白熱授業」の放送がキッカケになって、日本全国でサンデル教授のような授業が拡がっているようだ。このこと自体はたいへんウェルカムなことだ。
 
 もちろん「正義」とは何かという、簡単に解答の出せない問題に対して考える内容が支持を受けている理由だろう。

 だがそれだけではなく、大学生のあいだでは大学の授業に対する不満や失望感が強いのではないか?サンデル教授人気は、その裏返しの人気現象という側面もあるのではないかと私は見ている。実際に、私が以前このブログに書いた文章へのアクセスも非常に多い。

 「ハーバード白熱授業」にインスパイアされた授業が、日本の大学でも行われるようになってきており、そのいくつかが同じくETVでも放送されているので、私もたまに見ている。

 サンデル教授がハーバード大学で行っている「白熱授業」。
 サンデル教授が、昨年2010年に来日して東京大学で行った「白熱授業」。
 日本人教授たちが、日本の大学で日本語で行っている「白熱授業」。

 この3つを比較してみると、共通点はあるものの違いもまた大きい。

 一言でいってしまえば、それは日本人と日本人以外(・・より正確にいうと、日本語人と日本語人以外)の大きな違いである。

 それは「個」の確立と主張のスタイルである。

 日本人「個」がないなどというつもりはないが、どうしても日本人の授業では特定の学生に発言が集中しがちである。よく言われるが、小学校ではあんなに発言を求めて活発だった日本人が、成長するにつけておとなしく(?)なっていくのはなぜかという疑問である。

 一方、とくにハーバード大学の学生は、映画『ソーシャル・ネットワーク』でもわかるとおり、米国だけでなく世界中から集まってきた選りすぐりのエリート中のエリートであって、自己主張のかたまりのような存在だ。

 東京大学での授業では、日本語で発言する日本人と、英語で発言する日本人と非日本語人のコントラストが目立つように思った。

 いい悪いは別にして、自己主張がサバイバルの武器となる日本以外の社会と日本社会との大きな違いが目につくのである。自己主張がサバイバルの武器となるのは米国社会だけではない、中国でもインドでも中近東でもみなそうである。日本と似ているのは、タイやインドネシアなど東南アジアくらいか

 きわめて個性の強い、自己主張する「個」を前提にしたハーバード大学の授業と、主張はもっていないわけではないが、それをあからさまにコトバにすることをためらう日本人への授業、この両者に違いがあって当然だ。

 そこにこそ、日本人の学生(・・学生だけはなく、大人も似たようなもの)向けに、サンデル教授型の授業を行うことの難しさがあるのだろう。


「ソクラテス・メソッド」の本質はファシリテーションにある

 基本的にサンデル教授の授業スタイルは、米国の大学では特別なものではないことは、このブログにも書いたとおりだ。「ハーバード白熱教室」(NHK ETV)・・・自分のアタマでものを考えさせるための授業とは

 基礎を教え込む科目ではレクチャーが主体であることは日本も米国も変わりはない。ケースメソッド・スタイルの授業では、ファシリテーション・スタイルが一般的に採用されている。

 複数の受講者とひとりの講師との対話を重視した「ソクラテス・メソッド」の本質は、講師がファシリテーターとなったファシリテーションにある。クラスが活性化し、受講者のそれぞれが「気づき」、ゆたかな「学び」を得ることができるかどうかは、講師の力量それ次第である。

 「ソクラテス・メソッド」は日本では「ソクラテス産婆術」のほうがよく知られているかも知れない。プラトンの『対話篇』で展開されている、哲学者ソクラテスと対話者との問答のことである。西洋哲学の原点にあるダイローグ(dialog)のログ(log)はギリシア語のロゴスからきている。

 ダイアローグは、ジャッジの前で黒白をハッキリさせるディベートではない。ファシリテーションとディベートの大きな違いを認識しておく必要がある。対話者のなかに疑問をもたせ、常識を疑い、自分で考えることを促すことにある。

 ファシリテーションは「術」は「術」でも、技能を意味するスキル(skill)よりもアート(art)に近い。ここでいうアートは芸術ではなく、ラテン語のアルス(ars : 術)に近い意味である。ラテン語の ars amatoria とは恋愛術のこと。テクノロジーの技術ではなく、ワザといったほうが適切だろう。

 ファシリテーションとは、促し、導くワザである。どこに導くか? 授業の場合はあらかじめシナリオは描かれているが、問題発見の場では、それはそのときの状況に応じて変化する。いずれの場合も、軸さえぶれていなければ、許容範囲は多少は広くてもいいのではないか。

 「個」を前提に、「個」の集まりである「集団」の議論を活発にさせる方法。
 そうでなくても発言することに抵抗のある日本人を議論に参加させるためには、別の工夫も必要だ。 

 つねに真剣勝負で取り組むファシリテーションは、その一回一回がライブパフォーマンスとしての作品でもある。



PS 読みやすくするために改行を増やした。内容には手は入れていない(2014年7月8日 記す)。
 





<ブログ内関連記事>

対話(=ダイアローグ)の本質

書評 『対話の哲学-ドイツ・ユダヤ思想の隠れた系譜-』(村岡晋一、講談社選書メチエ、2008)-生きることの意味を明らかにする、常識に基づく「対話の哲学」


「NHK白熱教室」関連

「ハーバード白熱教室」(NHK ETV)・・・自分のアタマでものを考えさせるための授業とは

「ハーバード リーダーシップ白熱教室」 (NHK・Eテレ)でリーダーシップの真髄に開眼せよ!-ケネディースクール(行政大学院)のハイフェッツ教授の真剣授業

NHK・Eテレ 「スタンフォード白熱教室」(ティナ・シーリグ教授) 第8回放送(最終回)-最終課題のプレゼンテーションと全体のまとめ

コロンビア大学ビジネススクールの心理学者シーナ・アイエンガー教授の「白熱教室」(NHK・Eテレ)が始まりました

「バークレー白熱教室」が面白い!-UCバークレーの物理学者による高校生にもわかるリベラルアーツ教育としてのエネルギー問題入門

「オックスフォード白熱教室」 (NHK・Eテレ)が面白い!-楽しみながら公開講座で数学を学んでみよう

慶応大学ビジネススクール 高木晴夫教授の「白熱教室」(NHK・ETV)

ビジネスパーソンにもぜひ視聴することをすすめたい、国際基督教大学(ICU)毛利勝彦教授の「白熱教室JAPAN」(NHK・ETV)






ハーバード大学関連

ハーバード・ディヴィニティ・スクールって?-Ari L. Goldman, The Search for God at Harvard, Ballantine Books, 1992
・・「教師の役割は、ソクラテスの産婆術に擬して語られることも多く、ケースメソッドは別名 Socratic method ともいわる。 この教育メソッドのキモは、ビジネスでは唯一の解答というものはありえない、ということを学生に体得させることにある」 記事ではプロフェッショナルスクール(専門大学院)の一つである「神学大学院」について、ビジネススクールとの対比で書いている

書評 『ハーバードの「世界を動かす授業」-ビジネスエリートが学ぶグローバル経済の読み解き方-』(リチャード・ヴィートー / 仲條亮子=共著、 徳間書店、2010)
・・ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)における、国際ビジネスをめぐる政治経済についてのディスカッション用ケーススタディ

映画 『ソーシャル・ネットワーク』 を日本公開初日(2011年1月15日)の初回に見てきた
・・ハーバード大学の学部の寮生活から生まれたフェイスブック

(2014年7月8日 情報追加)





(2012年7月3日発売の拙著です)








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