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2010年12月1日水曜日

書評 『ゼロから学ぶ経済政策-日本を幸福にする経済政策のつくり方-』(飯田泰之、角川ONEテーマ21、2010)-「成長」「安定」「再分配」-「3つの政策」でわかりやすくまとめた経済政策入門書




「成長」「安定」「再分配」-「3つの政策」でわかりやすくまとめた経済政策入門書

 経済政策の基本をわかりやすく解説した新書版のレクチャー。順を追って読んでいけば、経済政策の素人にもスッキリわかるようなロジカルな構成の本になっている。

 著者の基本姿勢は、国民の一人一人にとっての「幸福度」を高めるための経済政策とは何かということにある。

 「幸福を増やす」政策は、「成長政策」と「安定化政策」(財政政策と金融政策)

 「不幸を減らす」政策として「再分配政策」がある。この「3つの政策」で説明する著者のレクチャーは、非常に明確で理解しやすい。

 結論からいえば、この「3つの政策」をバランスよく、うまく行うことが経済政策の基本である。ぞれぞれの経済政策についての詳しい説明が、時事的なテーマも織り交ぜながら、新書版一冊で説明されている。

 「経済成長政策」はミクロ経済学「安定化政策」は財政政策と金融政策にかかわるマクロ経済学。基本的な経済理論を、時事的な話題を織り込みながら、比喩的な表現も使った説明はたいへんわかりやすい。

 「再分配政策」は、著者の表現をつかえば「不幸を減らす」政策である。この政策にかんする議論は、政策のテクニカルな側面だけではなく、必然的に政治経済思想にまで踏み込まざるをえないので、賛否が大きくわかれるであろう。1975年生まれの著者が属する世代とそれより上の世代とでは、再分配をめぐる利害関係が一致しないからだ。若い世代を不幸にしないための経済政策提案まで踏み込んでいるので、この点にかんしては、さらにより突っ込んだ議論を理解するための前提となろう。

 全体的に非常に明快でわかりやすい経済政策入門書であるが、編集にはもう一工夫ほしかったところだ。最近のビジネス書のように重要用語や重要事項は太字ゴチックで強調したり、本の構成をフローチャートとして一枚入れておくとか、各章ごとに「本章のまとめ」として整理するなどされていると、レファレンスとしても使える本になったと思う。あまり教科書っぽくしたくないというのが著者の意向なのかもしれないのだが・・・

 とはいえ、さらなる政権交代も視野に入ってきた現在、各政党が打ち出す経済政策の理解は、日本国民にとっての基本的教養となったといってもいい。

 経済政策の中身が、回り回って自分の経済的な「幸福」にどうつながってくるのか、これを基礎から理解したい人のための適切な入門書になっている。

 この分野で何か一冊と聞かれたら、迷わず本書を推薦したい。


<初出情報>

■bk1書評「「成長」「安定」「再分配」-「3つの政策」でわかりやすくまとめた経済政策入門書」投稿掲載(2010年11月19日)
■amazon書評「「成長」「安定」「再分配」-「3つの政策」でわかりやすくまとめた経済政策入門書」投稿掲載(2010年11月22日)

*再録にあたって再編集した。




目 次

第1章 幸福を目指すための経済政策
 幸福と経済
 経済政策の3つの柱
 経済政策を考える出発点
第2章 成長政策
 成長政策の基本
 市場の機能と競争政策
 「市場の失敗」にどう対処するか)
第3章 安定化政策
 安定化政策の基本姿勢
 財政政策
 金融政策
第4章 再分配政策
 再分配政策の基本理念
 「セーフティネット」としての再分配政策
 日本の社会保障制度の再分配機能をいかに変えていくべきか


著者プロフィール

飯田泰之(いいだ・やすゆき)

エコノミスト。1975年、東京生まれ。東京大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科博士課程単位取得中退。内閣府経済社会総合研究所、参議院第二特別調査室、財務省財務総合政策研究所等で客員を歴任。現在は駒澤大学経済学部准教授を務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



<書評への付記>

 あとは直接手にとって読んで下さい、というのではあまりにも不親切なので、私が個人的に面白いと思った点を参考のために書いておこう。

 第1章の、経済学の立場からみた「幸福」とは何かの考察が面白い。

 つい最近もGDPで中国に負けたことが話題になっているが、これは国民一人一人の経済的幸福とは関係ない話だ。「一人あたりGDP」でものをみるクセをつけることが重要

 この指標を「購買力平価」でみたとき日本は24位(!)、なるほど生活実感からいって豊かではないことが理解できる。「満足度」は現状と参照点(レファレンスポイント)との比較に左右されるという、行動経済学による心理学的な説明も面白い。

 第2章の、「成長政策」は、政府による競争政策と企業がプレイヤーである産業組織論(ミクロ経済学)にかんする議論なので、とくにビジネスパーソンにとっては基礎教養として知っておくべき最低限の知識である。

 経済成長の担い手である企業の行動と政府の経済政策の違いを認識しておかねばならない。そして、市場における競争政策のゆがみを解消するために、「安定政策」と「再分配政策」が必要になる。

 第3章の「安定化政策」は、経済の基礎体力を向上させ体調を整えるのが安定化政策であると著者はいう。このように経済学用語にとらわれない比喩的な説明はわかりやすい。

 これはミクロの「成長政策」を補完する、マクロ経済学にかかわる経済政策である。

 また、「財政再建」にかんする著者の議論は傾聴すべきものがある。国内の富の減少をともなわない点において、ギリシアとは問題の性格を異にするが、「3つの政策」がバランスよく実行されないと財政再建につながらないという説明は、俗説にまどわされないためにも重要な指摘である。

 第4章の「再分配政策」は、著者の表現をつかえば「不幸を減らす」政策である。

 民主主義である先進国においては、経済政策を円滑にすすめるためには、経済的な不満層をなくすために、民間の保険では代替できない、国としての「再分配政策」が政治的に必須となる。

 したがって、この章の議論は政策のテクニカルな側面だけではなく、必然的に政治経済思想にまで踏み込まざるをえない

 著者の立場は「パターナリスティック・リバタリアン」、すなわち自由主義的解釈を前提にしながらも所得を「再分配」して公平を期すべしという立場である。これは資本主義経済を前提とした場合、現実的でバランスのとれた見方であると思われるが、この章で扱った政策はきわめて賛否のわかれるものであろう。1975年生まれの著者が属する世代とそれより上の世代とでは、再分配をめぐる利害関係が一致しないからだ。

 若い世代を不幸にしないための経済政策提案まで踏み込んでいるので、さらにより突っ込んだ議論を理解するための前提となろう。



<ブログ内関連記事>

月刊誌「クーリエ・ジャポン COURRiER Japon」 (講談社)2011年1月号 特集 「低成長でも「これほど豊か」-フランス人はなぜ幸せなのか」を読む
・・「再分配」にかんして対極の立場にある米国型の「小さな政府」フランス型の福祉重視の「大きな政府」。さて日本は、どちららを選択すべきであるか?

「雷龍の国ブータンに学ぶ」に「学ぶ」こと-第3回 日経GSRシンポジウム「GSR と Social Business 企業が動けば、世界が変わる」に参加して
・・経済成長の真の目的は「幸せ」の実現。ブータン国王が提唱した GNH は、経済成長指標としての GDP に代わりうるか?





(2012年7月3日発売の拙著です)







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