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2010年12月27日月曜日

ファラデー『ロウソクの科学』の 「クリスマス講演」から150年、子どもが科学精神をもつことの重要性について考えてみる




 いまからちょうど150年前の本日、すなわち1860年12月27日から翌年1月8日までの全6回、「クリスマス講演」と題して行われた、英国の化学者マイケル・ファラデーが 69歳の年の『ロウソクの科学』

 これはその翌年、一冊の本としてまとめられ、それ以後、科学教育史上における名著として現在に至るまで読み継がれてきた。
 
 今年2010年9月に、岩波文庫から『ロウソクの科学』の新訳が出版されたので、今回ここでとりあげたいと思う。


新訳『ロウソクの科学』に目を通してみる

 以前の岩波文庫の翻訳が、ドイツ語版からの重訳であったというのは、いくらなんでもひどい話だ。
 原文は言うまでもなく英語である。原題は、Michael Faraday, A Course of Six Lectures on the Chemical History of a Candle, 1861 である。直訳すれば「ロウソクの化学史の六回の講演コース」。

 新訳は全体的に非常にわかりやすい訳文になっており、これなら中学生でも読めるの文章になっているのではないかと思う。
 燃焼のなんたるかについて、そのメカニズムにかんする知識をもっている、すでに大人である私から見れば、なんだかまどろっこしい説明であるような感じがしなくもないのだが、知識のない子どもに対して、燃焼や化学反応を実験をつうじて一から理解させるためには、このような形で順をおって、無理なくロジカルに説明していく手法が大切なことが理解される。
 おそらく、文字で読むからそう感じるのであって、目の前で実験しながらお話を聞くのであれば、大人でも実に興味深く聞き入るレクチャーなのだと思う。

 とはいえ、大人であっても、たとえばクリーンエネルギーである燃料電池(fuel cell)のメカニズムを知るためには、ファラデーが説明するように、水素と酸素を結合させる際に発生するエネルギーにかんする基本的な原理を知っておくことが不可欠である。これは水を電気分解すると、水素と酸素が得られることの反対にあたる。

 ファラデーのレクチャーは、燃焼を論じて、二酸化炭素排出にかんして、人間と植物の問題にまで及ぶ。化学と電気をつうじて、科学的思考精神を大きく広げてくれる内容になっている。


科学教育(≒理科教育)の重要性は、ただ単に実用知識の習得だけにあるのではない

 ファラデーのように、科学をわかりやすく語る行為は、なによりも現在の日本で求められていることだと痛感している。日本でも米村でんじろう氏のような科学の伝道師が一人でも増えることを願うものである。

 とくに実験をつうじて、目に見える形で科学のもつオドロキに触れることは、センス・オブ・ワンダー(sense of wonder)感覚を養ううえで実に重要だ。日本語には訳しにくいが、自然界の不思議を感じ取る感覚といったらいいのだろうか。
 受験科目にないという理由で、理科から遠ざかっている子どもが少なくないようだが、これはおかしな話である。

 ビジネスの世界では、何よりも「仮説-検証」感覚といったものが求められるのだが、これは日常生活をただ単に送っているのでは身につかない感覚である。仮説をもとに自分で実験を計画し、実験によってその仮説が正しいかどうかを検証する。
 実験そのものは、あくまでも手技(てわざ)であり、自分のアタマで考え、自分の手を使って実験道具を組み立てて実験を行い、それをまた自分のアタマで判断して、結論を導いていくという一連のプロセスのなかで養われるものだ。
 「仮説-検証」感覚は、勉強本を読んで一朝一夕に身につくマインドセットではない。きちんと中学生と高校生のときに理科を勉強して、知らず識らずのうちに身につくものだ。

 訳者解説に引かれたコトバで、ファラデーは科学教育の目的について次のように言っている。

教育の目的は、心を訓練して、前提から結論を導き、虚偽を見いだし、不適切な一般化を正し、推論に際しての誤りが大きくなるのをくい止められるようにすることです。(P.227)

 小学校や中学校レベルで感じたセンス・オブ・ワンダー感覚、たとえ自然科学を専攻しなくても、この感覚は大人になっても持ち続けたいものである。そしてこれが「仮説-検証」感覚の基礎となる。

 でないと、日本人の将来は実に暗いといわざるを得ない。


ロウソクをつうじたファラデーと日本との縁(ゆかり)

 ところで、1860年12月27日に行われた第1講には、こういうフレーズがでてくる。(*太字ゴチックは引用者=さとう 以下同様)。

また、これは私たちが開国をうながした、はるか遠くの異国、日本からもたらされた物質です。これは一種のワックスで、親切な友達が送ってくださったものです。これもロウソク製造用の新しい材料ですね。(P.25)

 訳者注によれば、以下のものである。

いわゆる「和ロウ」。ハゼノキやウルシなどのウルシ科の実を砕き、蒸し、しぼりとった固体脂肪を原料とした。脂肪、つまり脂肪酸のグリセリンエステルだが、パルミチン酸 CH3(CH2)14COOH が多く含まれている。(P.182)

 「日本のロウソク」は最終日の第6講の冒頭にもでてくる。

光栄にもこの連続講演を聞きに来てくださったご婦人が、私にこの二本のロウソクをくださいました。重ね重ねのご親切に感謝します。このロウソクは日本から来たもので、おそらく前に申し上げた物質からできているのでしょう。・・(中略)・・このロウソクは驚くべき特性を備えています。すなわち中空の芯で、この見事な特性は、アルガンがランプに採用して価値を高めたものです。・・(中略)・・また、日本の鋳型ロウソクは、イギリス製の鋳型ロウソクに比べて、上の部分がより広い円錐形になっています。(P.151~152)

 日本とも見えない糸でつながっていたファラデー発明王エジソンが電球のフィラメントに京都の竹を使用したというエピソードとあわせて、日本人として、その当時のメイド・イン・ジャパンの工芸品のレベルの高さを知るのは、なんだかうれしくなってくるエピソードではないか。

 こんなことからファラデーに親しみを感じるのもいいことだろう。

 ファラデーはもともと製本工から実験助手を経て、自らの意思のチカラでつかみとった幸運を活かしきり、独学で科学者として身を立てた人である。偉大な科学者である前に、手技(てわざ)の人であったのだ。職人のマインドを持ち続けた人であった。

 ファラデーこそまさに「地頭のよい人」であったといえるだろう。


 ファラデー『ロウソクの科学』の新訳にざっと目をとおして、こんなことを考えてみた。




目 次

『ロウソクの科学』ができるまで-訳者前書きに代えて-
序文
第1講 ロウソク 炎とそのもと‐構造‐動きやすさ‐明るさ
第2講 ロウソク 炎の明るさ‐燃焼に必要な空気‐水の生成
第3講 生成物 燃焼によって生じる水‐水の性質‐化合物‐水素
第4講 ロウソクの中の水素‐燃えて水になる‐水の他の部分‐酸素
第5講 空気中の酸素‐大気の性質‐ロウソクからの他の生成物‐炭酸とその性質
第6講 炭素つまり木炭‐石炭ガス‐呼吸‐呼吸とロウソクの燃焼との類似‐結論
訳注
ファラデー 人と生涯
文献・資料
訳者後書き


著者プロフィール

マイケル・ファラデー(Michael Faraday)

1791年、ロンドンで鍛冶屋の三男として生まれる。両親とともにロンドンに移住、製本工から実験助手に志願して、独学で夢を叶えて科学者となり、1825年には英国王立研究所の研究所長となる。数々の科学上の特筆すべき業績を残しただけでなく、1826年から「少年少女のためのクリスマス講演」を開始、この講演は現在まで続くものとなった。1860年の『ロウソクの科学』講演の2年後の最後の講演後、研究所を引退、1867年に眠るような大往生を遂げた(訳者解説から作成)。

竹内敬人(たけうち・よしと)

1934年東京生まれ。1960年東京大学教養学部教養学科卒業。理学博士。東京大学名誉教授、神奈川大学名誉教授。専攻は有機化学、化学教育(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



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