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2010年10月12日火曜日

書評 『ユーロが危ない』(日本経済新聞社=編、日経ビジネス人文庫、2010)-日本経済新聞社の欧州特派員が足で稼いで取材した「ユーロ危機」をめぐる現地報告




日本経済新聞社の欧州特派員が足で稼いで取材した「ユーロ危機」をめぐる現地報告

 日本経済新聞社の欧州特派員が足で稼いで取材した「ユーロ危機」をめぐる現地報告。文庫版オリジナルである。

 本書を通読しての感想は、結局のところ共通通貨ユーロとは、かつてのドイツマルクの実質的な適用範囲を欧州全域まで拡大したものであり、共通市場と共通通貨によって一番メリットを享受したのが、ドイツそのものであったということだ。

 にもかかわらず、「何よりも規律を愛するドイツ国民」(*注)である。有権者の90%が抱いていた「放漫財政国ギリシア」への感情的反発ゆえに、メルケル首相の政治的判断にブレが生じた結果、ギリシア救済のタイミングを逸し、ユーロ危機拡大を招いたのが真相のようだ。

 その意味では、本書がドイツに多くのページを割いていることは大きな意味がある。EUは、政治大国のフランスと経済大国のドイツが中核国として実質的に仕切ってきたわけだが、経済的なパワーを背景にドイツの政治的発言力がさらに増しているということが手に取るようにわかった。これをさらに弾みをつけたのが、今回の「ユーロ危機」の一側面であったともいえよう。

 しかしながら思うのは、加盟国の国内財政問題に介入できないEUの統治機構の弱さとスピードの遅さだ。これでは、国連並といわれても仕方あるまい。 

 内部のゴタゴタにかんする記述を読む限り、欧州共通通貨ユーロが揺らいでいる状況から、アジア共通通貨構想などという幻想は捨てるべきだと強く思わざるをえない。アジア共同体(仮称)において、中国に比べて政治力もなく、しかも経済的にも衰退を始めている日本が主導権を握ることは不可能であろうからだ。
 
 通貨発行という究極の国家主権を手放すことの意味をよく考えねばならない。

 さらに本書の重要な指摘は、EU域内での不均衡の拡大についてである。国際競争力をもつドイツ、オランダ、フィンランドといった国々と、国際競争力に劣るギリシア、ポルトガル、スペインといった南欧の国々との域内南北格差。

 とくに、ポルトガルがさらに衰退する可能性の岐路にたっている記述を読むと、他国のことながら暗澹(あんたん)とした気持ちになる。若者に夢のない国として、母国に見切りをつける動きがでているらしいのだ。

 また、欧州内部のユーロ圏と非ユーロ圏との関係は、非ユーロ圏の英国やスウェーデンのスタンスを知ることの意味を教えてくれる。EUに加盟すらしないスイス、ノルウェーについての記述がないのが残念だが。

 EU加盟準備中の中東欧諸国の動向についても興味深い。ユーロに加盟することのメリットとデメリットを慎重に考えなくてはならない状況になっているからだ。

 日本経済新聞社=編の本は、いつものことだが単独執筆ではなく、複数の記者が書いた新聞記事の再編集なので、あまり読みやすくはない。

 とはいえ、ドキュメントとしての強みは、現地に取材網をもっている経済紙ならではのものである。読者が知りたいことには答えてくれる、過不足ない記述となっているといえよう。


(注)ドイツ語のことわざに、Ordnung ist das halbe Leben. というものがある。直訳すると、「秩序は人生の半分」。キチンとしていないのがいやだ、というドイツ人の民族性をあらわしたもの。こういうドイツ人からみたら、ギリシア人というのは・・・、といったとこだろう。


<初出情報>

■bk1書評「日本経済新聞社の欧州特派員が足で稼いで取材した「ユーロ危機」をめぐる現地報告」投稿掲載(2010年10月9日)
■amazon書評「日本経済新聞社の欧州特派員が足で稼いで取材した「ユーロ危機」をめぐる現地報告」投稿掲載(2010年10月9日)

*再録にあたって加筆した。
PS 読みやすくするために改行を増やした。写真を大判に変更した。内容にはいっさい手をつけていない。(2016年7月20日 記す)





目 次

第1章 揺れるユーロ
第2章 通貨統合の誤算
第3章 南欧諸国の実相
第4章 尾を引く金融危機
第5章 広がる余波
第6章 動揺する大国
第7章 ユーロ再興への道
「ユーロ危機」年表



<ブログ内関連記事>

書評 『ユーロ破綻-そしてドイツだけが残った-』(竹森俊平、日経プレミアシリーズ、2012)-ユーロ存続か崩壊か? すべてはドイツにかかっている

書評 『国家債務危機-ソブリン・クライシスに、いかに対処すべきか?-』(ジャック・アタリ、林昌宏訳、作品社、2011)-公的債務問題による欧州金融危機は対岸の火事ではない!
・・EU(欧州共同体)は「主権国家」(ソブリン・ステート)が、共通通貨ユーロ導入にあたって「主権」(ソブリン)の一部を放棄しているものの、予算作成など財政面での主権は確保したままという中途半端なものであった。そこに矛盾点が存在する

書評 『本当にヤバイ!欧州経済』(渡邉哲也、 三橋貴明=監修、彩図社、2009) ・・ユーロ危機を予見していた本

書評 『ギリシャ危機の真実-ルポ「破綻」国家を行く-』(藤原章生、毎日新聞社、2010) ・・ユーロ危機の引き金を引いた当事者ギリシアは?

書評 『ブランド王国スイスの秘密』(磯山友幸、日経BP社、2006)
・・ユーロ圏に浮かぶ孤島のようなスイスフラン

書評 『大英帝国衰亡史』(中西輝政、PHP文庫、2004 初版単行本 1997)
・・英国はさらに衰退してゆくのか?


ついに英国が国民投票で EU からの「離脱」を選択-歴史が大きく動いた(2016年6月24日)
・・非ユーロ圏の英国は、国民投票によって2016年6月24日にEU離脱を選択した。じっさいに離脱するまでにはまだ時間がかかるが、EU(欧州共同体)という組織のもつ矛盾点が明るみになった出来事である。(2016年7月20日 記す)

(2016年7月20日 情報追加)




(2012年7月3日発売の拙著です)






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