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2010年2月23日火曜日

書評『「独裁者」との交渉術』(明石 康、木村元彦=インタビュー・解説、集英社新書、2010)+「交渉術」としての「食事術」




真の「現実主義者」明石康の軌跡-交渉術はテクニックではない、アートである

 1990年代以降、頻発する国際紛争の最前線で、調停者の立場で当事者としてコミットしてきた明石康。本書は、ユーゴスラビア問題とサッカーを中心に取材活動を続けてきたジャーナリスト・木村元彦が、よく準備し煮詰められた的確な質問で突っ込んで聞き出した、国際調停の現場で本当にあったこと。

 カンボジアボスニア(旧ユーゴ)においては国連事務総長特別代表として、スリランカでは日本政府代表として調停にあたった明石康の話からは、もちろん極秘事項については触れられていないだろうが、ウラ話も含めて実に興味深いエピソードの数々が披露されている。
 紛争当事国でリーダーシップを発揮する政治指導者(・・「独裁者」というのは、明石氏もあとがきでいうように、表現としては少し過激だが)のナマの人となりや言動も伝わってきて、読んでいて非常に面白かった。
 さまざまな制約条件のなかで、現場リーダーがいかにその時々で最善の意志決定を行うか、グローバル組織における現場と本部との関係、限りなく偏向した欧米マスコミ報道にどう対応したか・・などなど、国際機関に勤める人間以外にも興味深い内容だ。

 国際紛争の調停者として活躍した日本人・明石 康は、良き調停者はまず何よりも「良き聞き手」(グッド・リスナー)たれと繰り返している。交渉術についても、テクニックというよりもアート(・・このコトバにはもちろん”術”という意味もある)であるといっている。ソマリアにおける調停が失敗した理由の一つが、欧米流の黒白ハッキリさせる交渉術が現地では嫌われたからだと指摘されるとき、なるほどと深く納得させられた。
 国際社会で自己主張することは重要だが、日本人のよき特性である人間関係構築を活かしていくべきだ、という明石氏の主張には、長年国際調停の最前線で活躍してきた人の発言だけに耳を傾けるものがある。

 真の「現実主義者」明石康の軌跡をたどった本書は一読の価値がある。


<初出情報>

■bk1書評「真の「現実主義者」明石康の軌跡-交渉術はテクニックではない、アートである」投稿掲載(2010年2月19)




<書評への付記>

 この本を読んで思ったのは、明石康氏が思いの外、「現実主義者」である、という感想である。ここでカッコ書きで「現実主義者」と書いたのは、書評『海洋国家日本の構想』(高坂正堯、中公クラシックス、2008)に書いたように、「現実追随主義者」ではない「現実主義者」という意味である。


「交渉術」としての「食事術」

 この本の楽しみの一つは、第9章「食事術」である。箸休めとして挿入された一章であるが、「交渉術」において食事のもつ意味はあらためて強調するまでもない。

・・ちゃんとした会議の場で箸にも棒にもかからないような人物でも、食事の席で隣り合わせか、向かい合った席の場合、リラックスした瞬間をとらえてそれとなく話しかけてみるべきです。一対一で話すのが相手の本音を聞くには一番いいですね。(P.172)

 この章では、カンボジア王国のシハヌーク前国王、旧ユーゴから分離独立したクロアチアの故トゥジマン大統領のエピソードが興味深い。

 機会があって、私はカンボジア王国の日本大使館公邸を訪れてパーティに参加したことがあるが、その際振る舞われたワインの質とバラエティの豊富さには驚かされたものだ。
 外務省の無駄遣いとして、なにかとやり玉に挙げられがちだが、明石氏が紹介しているように、シハヌーク前国王が自らフランス料理の本を執筆しているほどの万能人であることと、王宮でだされたフランス料理が素晴らしいものであったことからも、最高級のもてなしを行う事のできる体制は、国力を測る物差しの一つだといえるだろう。一概に無駄遣いといい切れるものでもない。

 また、クロアチアのトウジマン大統領が、旧ユーゴスラヴィアの故チトー大統領を批判しながらも、ちゃっかりチトー大統領のワインセラーを自分のものにしてしまったエピソードが紹介されている。旧ユーゴの継承こくが新ユーゴ(セルビア・モンテネグロ)であったにもかかわらず。
 海に面したクロアチアの魚料理が美味いことが紹介されているが、ここらへんはジャーナリスト木村元彦氏にとっても得意中のテーマだろう。
 私は残念なことに、いまだ美しい海と世界遺産で有名なクロアチアにはいったことがないが、隣国のスロヴェニア(旧ユーゴ)には何度かいったことがあり、これまた機会があってお招きにあずかり、チトー大統領の元料理長がつくって目の前で給仕してくれる素晴らしい料理を、スロヴェニア・ワインと一緒にいただいた経験をもっている。たいへん貴重な経験であり、このときほど、すでに亡きチトー大統領を身近に感じたことはなかった。
 旧ユーゴのアドリア海側は実に"美味しい"地域である。スロヴェニアもイタリアのフリウーリ地方に近い地域では生ハムもワインも実に美味い!!こういう話は、思い出して書いているだけでも、口腹感でいっぱいになる。

 そんなこともあって、この第9章は楽しみながら読むことができた。できればこの内容だけを引き延ばして一冊にして欲しいくらいだ。

 うまい料理にうまい酒、ワインと料理の相性のことを、フランス語で結婚を意味する"マリアージュ"と表現することがあるが、このマリアージュが実現している「料理と酒」を堪能しているときにこそ、人間はホンネを漏らしがちなものだ。双方にとって気を許しながらも、気が許せない、なかなかやっかいな場面でもある。

 「食事術」「交渉術」の重要なアイテムとして、野蛮人のテーブルマナー』(講談社、2007)を書いた元外務省の佐藤優以外にも、多くの人に書いてもらいたいものだと思うのだ。

 「交渉術」としての「食事術」は、料理本の新しいジャンルとなるはずだ。


<参考サイト>

スロヴェニア・ブティック・ワイン
・・知られざる、酸化剤なしのオーガニック・ワインの世界を扱っているラネットのサイトです。いずれもワイナリーのオーナーの顔の見えるワインばかり。味は保証します!



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